転生しても戦争だった  ~数多の転生者が歴史を紡ぎ、あるいは歴史に紡がれてしまう話~   作:ガンスリンガー中年

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深夜アップです。
果たして読んでくれる読者様はいるかな?

とりあえず、”主砲”にまつわるエピソードかな?

前半は(ある意味、深夜時間帯にマッチする)久しぶりに色気と人肌の温もりが少しはある話で、後半は鋼鉄と火薬の匂い(?)ががする冷たさを感じるかも。
前後で温度差がありますので、風邪など召さぬようにご注意くださいw







第433話 掴み取ったクリスティアーナの大勝利、そして88㎜59口径長砲という概念 ~それぞれ違う意味でのサンクトペテルブルグの新たなる希望~

 

 

 

 さて、宴の後に……

 

 

【挿絵表示】

「えへへっ♪ 大公様ぁ~♡ 私、何だか疲れちゃった♪」

 

 ドレス姿のまま、クルスの私室(寝室)にてドレスのまま無防備を装いベッドに座るクリスティアーナ……

 

 

【挿絵表示】

「オイオイ……誘ってるのか?」

 

 情勢的に厳しい表情や考え込むような表情の多かったクルスが、最近では珍しく柔らかい苦笑を浮かべた。

 

「もう正式に婚約したし、告白してからもう四ヶ月も経ったし、いいかなぁ~って。ほら、私ってば気が付いたらとっくに二十歳過ぎてた(※クリスティアーナ=1920年生まれ)し、コンプラ的にも問題ないでしょ? 前世込みで」

 

「いや、コンプラってなんだよ。っていうかめっちゃ”転生者(サクセサー)”らしい意見(コメ)だな、おい」

 

「大公様の発言も大概だと思うよ?」

 

「そういう事を言ってると……」

 

”どさっ”

 

 

【挿絵表示】

「大公様に押し倒されちゃった♡」

 

「な~に、嬉しそうな顔してるんだ? 悪い()だな」

 

「それ、まさかとは思うけど、”頭の悪い子”って意味じゃないよね?」

 

「んな訳無いだろ? いや、たまにアホの娘だなぁ~とは思うが」

 

「ちょっとぉ」

 

「”クリス(・・・)”、お前はアホの娘で悪い娘で、とても魅力的な娘だよ」

 

”しゅる……”

 

 

【挿絵表示】

「脱がされちゃったよぉ♡」

 

「可愛いぞ?」

 

「えへへ~。あのね、実は私、今生では”初めて”なんだけど」

 

「そうなのか?」

 

「うん。でもね……」

 

 クリスティアーナは心から嬉しそうに、そして瞳に穏やかな、されど”狂おしいほどの愛”を片鱗のように滲ませ……

 

「大公様、滅茶苦茶に……私を貴方専用の性玩具(おもちゃ)にしていいよ♡」

 

 

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「……もう止められんぞ? 俺とて理性の限界という物はある」

 

 

【挿絵表示】

「うん♡」

 

 

 

 その後の事を書くのは流石に野暮という物だろう。

 ただ、一言言うとすれば……

 クリスティアーナ、大勝利おめでとう。

 詳しくは書かないが……君がいる限り、クルスは「まだ人間」でいられそうだ。

 クルスが心許した、「再び人間(おんな)として愛した」君が”鎖”となり、クルスを地上に繋ぎとめられている間は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 どんな形であれ、愛とは素晴らしい物だ。

 古事記(せいしょ)にもそう書いてある。

 だが、残念なことにこの世界には愛だけではどうにもならないことも多いし、また愛で地上が満たされることもない。

 あのパーティー、クルスとクリスが結ばれた夜から数日後、同じサンクトペテルブルグ市の軍事工廠から、ついに量産型の”最初の1両”がロールアウトした。

 その車両の名は、”KSP-44/44”。正式には”的には”Kampfpanzer Sankt Petersburg-44/44(「サンクトペテルブルグ44年式44t戦車」の意)”。

 ”KSP-34/42(Kampfpanzer Sankt Petersburg-34t/42年式)”、並びにその発展改良型(マイナーチェンジ)”KSP-36/43”の後継として大戦後半に投入すべく開発された戦車である。

 

 まず、主砲から話そうと思う。

 原型となったのは、ドイツの88㎜高射砲”FlaK18/36/37”。

 史実ではVI号戦車”ティーガーI”の主砲となった高性能砲だが、”この世界線”では「VI号戦車ティーガーは、IもⅡもなく88㎜71口径長砲(ランゲ・アハトアハト)を搭載した重量級戦車1本のみに開発を絞る」という事が決定した為に、ティーガーに”FlaK18/36/37”の系譜の主砲が搭載されることはなかった。

 そして、そのティーガーのランゲ・アハトアハトと共用の822㎜薬莢を使う新長88㎜高射砲の導入が決まり、”FlaK18/36/37”シリーズは旧式高射砲という区分になり、生産終了が決定した。

 しかし、それを勿体ないと考えたクルスが廃棄予定の製造機械やら治具やらをサンクトペテルブルグに取り寄せ、更には紆余曲折があり、最終的にサンクトペテルブルグが新たな開発拠点として落ち着いたイタリア系技術集団、その中でも本国で90㎜高射砲を開発していたチームで、当時はイタリア90㎜高射砲を戦車砲に手直しする作業を行っていた戦車砲研究開発チーム(スクアドラ・カッロ・カノーネ)に協力を仰ぎ、”FlaK18/36/37”を叩き台に戦車砲を開発することにしたのだ。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 史実の”ティーガーI”の主砲の類似品のような物が出来上がると思いきや、そこはサンクトペテルブルグとクルスである。

 開発が遅延しない程度に「一手間強化(まかいぞう)」する事を忘れない。

 まず、クルスが目を付けたのは、旧88㎜高射砲(FlaK18/36/37)の長さ571㎜の薬莢だ。

 この時代、大砲の薬莢素材は銃弾と変わらず真鍮が主流だった。

 そして、クルスはまずこの571㎜真鍮製薬莢を、”冷間鍛造法”で作ることにしたのだ。

 おそらくヒントになったのは、ドイツの主流航空機関砲である”MG151/20”だ。

 この20㎜機関砲の薬莢は、鋼製であり冷間鍛造法を用いて製造されていた。

 塑性変形のしやすい真鍮は鍛造法に向く金属とされ、また冷間鍛造法は元々大量生産向きな上に、金属を常温で加工(塑性加工)すると、金属の結晶が緻密になり、繊維状の流れ(メタルフロー)が形成されてより高強度になる……

 言い方を変えよう。「同じ強度でより”薄く”作れる」のだ。

 つまり発射薬(装薬)量を同じサイズの薬莢とはいえ、少しでも増やせる(=高威力にできる)。また雷管や装薬自体も新型が用いられている。

 またこのサイズは変わらないが新型冷間鍛造薬莢に合わせるように、薬室(チャンバー)は発射速度が重要な高射砲より、よりシンプルな構造に変更ながら強装弾の発射に耐えられるようにより肉厚に再設計された。

 そして、砲身だ。

 基本的に大砲の砲身は消耗品であり、近代砲ではほとんどの物が交換できる構造になっている。

 そして、装薬増量薬莢に頑強な薬室という組み合わせで発射される砲弾性能を活かすために、砲身にも一工夫が加えられた。

 今やサンクトペテルブルグの十八番である砲身の単肉自己緊縮式(オートフレッタージ)製造法とライフリングの硬化クロームメッキ処理という”FlaK18/36/37”が開発された時代では、まだドイツではメジャーでは無かった最新の工法や技術が取り入れられ、より軽量で高強度に仕上げられるようになった。

 そして、軽量高強度に仕上げられるようになった故に、「同じ重量で長砲身化」が可能になったのだ。

 そう、”KSP-44/44”の主砲は、”88㎜59(・・)口径長砲(アハトアハト・フンフノイン)”に強化されるに至った。

  これらの手法は”KSP-36/43”開発時に行われた物と同種である為、開発自体は比較的スムーズに行われた。

 

 実は新型薬莢、それに最適化された軽量長砲身の組み合わせは、驚くべきことに大抵の砲弾(弾頭)で”10%かそれ以上の砲口初速の増加”を実現した。

 たかが1割の増速と侮る勿れ。質量×速度の二乗という運動エネルギーに換算すれば、単純計算ならば実に威力は21%増しになる。

 これを対戦車戦で重要な”貫通力”として表してみよう。

 

 史実の”ティーガーI”の88㎜砲は諸説あるが、”傾斜30度の装甲”に対して以下の貫通力があったとされる。

 ・標準徹甲弾(APCBC):1000mで100㎜、1500mで91㎜、2000mで84㎜

 ・高速徹甲弾(APCR):1000mで138㎜、1500mで123㎜、2000mで106㎜

 

 これを”KSP-44/44”の88㎜59口径長砲に修正すると、

 ・標準徹甲弾(APCBC):1000mで121㎜、1500mで110㎜、2000mで102㎜

 ・高速徹甲弾(APCR):1000mで167㎜、1500mで149㎜、2000mで128㎜

 

 流石に同条件での88㎜71口径長砲の

 ・標準徹甲弾(APCBC):1000mで152㎜、1500mで139㎜、2000mで128㎜

 ・高速徹甲弾(APCR):1000mで193㎜、1500mで171㎜、2000mで152㎜

 

 には見劣りするが、実はドイツ戦車との威力比較をするより、もっと注目すべきデータがある。

 つまり、破壊対象である「この先対峙するであろう米ソ戦車の装甲厚」だ。

 まず、ソ連戦車はそのほとんどが丸みを帯びた傾斜装甲、避弾経始を重視したデザインになっているが上記のデータはそれを加味した上での理論値だ。

 

 T-34/85:砲塔正面90㎜、車体正面47㎜

 T-44:砲塔正面120㎜、車体正面90㎜

 IS-2:砲塔正面160㎜、車体正面120㎜

 IS-3:砲塔正面230㎜、車体正面120㎜

 M4シリーズ:(最大)89㎜~108㎜

 M26:砲塔正面102㎜、車体正面102㎜

 

 流石に88㎜59口径長砲でもIS-3の相手は厳しいが、標準徹甲弾(APCBC)を用いても2000mで最も戦闘機会が多いだろうT-34/85や大抵のM4シリーズ2000mで車体のあらゆる場所を貫通可能(理論上はM26パーシングも。ただし撃破確実を狙うなら1500m以内)で、T-44とて1000mで撃破できる。

 高速徹甲弾(APCR)を用いるのなら、M26とT-44を2000mで、IS-2でさえも1000mで貫通可能だ。

 おそらくだが、この88㎜59口径長砲のコンセプトを練ったクルスは、「現状でできる範囲での米ソ戦車に対する”最大公約数的な数値”」を求めたのではないだろうか?

 

 つまり、最も対峙する機会が多いT-34/85とM4シリーズを安価な標準徹甲弾を用いても2000mで安全に撃破でき、強敵であるT-44やIS-2、いずれ出てくるであろうM26に対しては虎の子である高速徹甲弾を用いるという感じだ。

 

 無論、上記の貫通力は理論値で、実際の戦場では様々な要因が絡み、必ずしもカタログデータ通りの威力を発揮するとは言い切れないが……サンクトペテルブルグ産の兵器を見る限り、大きく外れるということもないだろう。

 

 

 

 そして次回は、この新型砲を活かしきるべく作られた車体の詳細を追ってみたいと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




とりあえず、”クルスの主砲(意味深)”絡みといよいよ姿を現す”KSP-44/44”戦車の主砲にまつわるダブルミーニングで「主砲関連」のエピソードでした(挨拶

書いておいて言うのもなんですが、クリスティアーナ、マジで作者的に大金星っス。
いや、一歩間違えばクルスって今にも人外・亜人・半神とかに片足ツッコみそうな気配があったしw
「人間としての気持ちでクリスティアーナを愛せる」なら、まだ当分は現世で人間としてやっていけるのではないかな~と。
あと、思ったよりクリスティアーナがMっ気強いかも?w

そしてそして後半……
お待たせいたしました! 前々から登場が示唆されていたサンクトペテルブルグの新戦車、”KSP-44/44”が遂に登場です。
実はまず主砲をクローズアップしたのは「主砲合わせネタ」……というだけではなく、前半が「クルスを繋ぎとめる愛」だとするなら、後半は”転生者クルス”の根源たる「米ソ(特にソ連戦車)に対する殺意の具現化」なんですよ。
「最も大量にポップする米ソ戦車を最大効率で駆逐」でき、なおかつ「難敵が出てきても簡単には撃ち負けないし、大抵は撃破できる」だけの戦車砲……それが88㎜59口径長砲(アハトアハト・フンフノイン)なのですから。

さて、次回は”KSP-44/44”の全貌かな?

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次回もどうかよろしくお願いいたします。



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