これは二代目火影の卑劣な転生だ   作:駅員A

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オビト外伝~里のボーイズライフ~
ある日の特別任務


 生きて戻って来たと公表されたオビトはしばらく療養しつつ里内での任務、主にクシナの護衛についた。

 しかし暗部の面はせず、表向きは彼女の買い物に付き合うフリ。

 

「遅いってばね、オビト! 今日はとびきり買うつもりなんだから……ってなんで買い物する前からそんな大荷物なの?」

「いやぁ、爺ちゃん婆ちゃんたちに捕まっちまって……あ、これは生きていたお祝いにって貰った」

 

 玄関を開けたクシナは呆れてしまった。

 なぜならこれから荷物持ちにしようと思っていたオビトがすでに野菜だのお菓子だのを山積みにして持って来たのだから。

 

「クシナさん、俺は食えないからもらってよ。今日はミナト先生が大名との顔合わせから帰ってくるんでしょ?」

「トビラはいないの?」

「あいつは今、任務中で里を離れてるよ」

「なら遠慮なく貰おうかしら。おかげで買い物の手間は省けたわ。じゃあオビト、代わりに散歩に付き合って。オビトがいれば結界の外も自由に歩けるから」

 

 マダラと一緒にチャクラの一部も封印したことにより、クシナの封印は不安定になっていた。

元々、彼女は地面に刻まれた結界の外には出られず、里を自由に移動することができない身の上であったが、不安定な封印によってその範囲はさらに狭まっていた。

 

 けど、弟のトビラから木遁の扱い方を習ったオビトはクシナの中の九尾が暴走したとしても抑えることができる。

 そのため、彼がそばにいるときに限ってクシナの行動範囲は制限されなくなった。

 

「うーん、やっぱり自由に歩けるのって気分いいってばねー!」

 

 隣にオビトがいるのと、見えないところから暗部の監視があるものの、クシナにとっては結界の外に出られるだけで自由な外出だ。

 

「クシナさん、どっか行きたいところある? ないなら適当に見晴らしいいところでも案内するよ」

「あら、オビト。アンタってばいつの間にそんな気遣いできるようになった?」

「そりゃー俺だって色々と勉強してんだよ! 女は気遣いできる男が好きなんだろ!」

 

 自信満々に言ったオビトが懐から本を見せる。

 

「なにこれ……『これであなたもモテる! 恋の忍法ベスト100』?」

 

――うさんくさっ!

 

 つい呆れ顔になるクシナ。

 ペラペラとめくると、「気遣いできる男はデートコースから違う!」だの、「デートで成功すればモテる!」だの書かれている。

 

――まあ、エロ本に興味持つのに比べればまだ健全か……

 

 本を閉じてオビトに返そうとしたクシナは気づいた。

 ちょうど二人が通りがかった本屋の入り口にも同じ本が平積みにされ、近くには「大ベストセラー!」のポップまで。

 

「……オビト、この本をリンに見せるのだけはやめなさいよ。ダサいから」

「ええ?! だ、ダサいってなんだよ! 別に初めっから見せるつもりなかったし!」

 

 本を懐に仕舞いつつ、ちょっと納得のいっていない様子のオビト。

 そんな彼にクシナは思いついた。

 

「そうだ! アンタ、デートコースを考えてるなら私に案内してみるのはどう?」

「えー! なんでクシナさんにぃ? そういうのはミナト先生に頼めよ」

「分かってないわね。私がアンタの考えるデートプランを査定してあげるって言ってるの。どうせリンに告白、まだしてないんでしょ?」

 

 図星を突かれ顔を真っ赤にするオビト。

 

「そもそもデートに誘う方法から相談に乗った方が良さそうかしら」

「う、うっせーな! デートに誘うぐらいすぐにできるし!」

「ふーん……」

 

 まったく信用していないクシナの視線。

 それから逃れるようにオビトが歩き出した。

 

「ほ、ほら行こうぜ! 案内すっから! べ、別にこれ、デートプランとかと関係ないからな! まあ、女目線でいいとこかどうか教えてくれても別にいいけどさ!」

「はいはい」

 

 ニヤニヤしていたクシナだが、すぐに怒りに髪を逆立てた。

 

「で、一番に案内するところがアカデミーってどういうことだってばね!」

「だって二人の思い出の場所に連れて行けって本には……」

「初手アカデミーは無し!」

 

 激しい否定にがっくり来るオビト。

 クシナは訳知り顔で講釈を始めた。

 

「そもそもデートっていうのはもっと特別感が必要よ。すっごい高級レストランで綺麗な夜景を見ながらディナーとか」

「はぁ? ミナト先生ってばそんなことしたのか?」

 

 ミナトのイメージとかけ離れたデートプランに訝し気なオビト。

 クシナもうっと痛いところを突かれた表情に。

 

「わ、私とミナトがどんなデートしたかは別に関係ないってばね! そんぐらいの特別感が必要だってこと!」

「……そもそもクシナさん、ミナト先生からデートに誘われたことってあんの?」

「そ、そりゃあ二人で封印術の修業をしたり、ミナトが開発した術を教えてもらったり……」

「それデートじゃなくて修行じゃん。高級レストランでディナーは?」

「…………行ったことあるわけないでしょ」

「それでよくデートについて語れたな。というかそれならそのデート観はどこ情報だよ」

「だって雑誌にはそう書いてあったんだってばね!」

「雑誌? うさんくせーなぁ」

 

 実は二人が通り過ぎた本屋にはオビトが買った本の隣に「月刊くノ一 理想のデート編!」が置かれていたのだが、オビトはそちらには目が向いていなかったようだ。

 アカデミーを出た二人が歩きながらギャーギャーやっていると、

 

「ギャー!」

 

 本当に叫んでばたりと倒れた者が。

 オビトは駆け寄って驚いた。

 

「おい! どうしたんだよガイ!」

「ゆ、幽霊……オビトの幽霊が…………」

 

 逆立ち歩きの修業をしていたガイはそのままひっくり返った状態で呟いた。

 あまりの衝撃に真っ青な顔をしている。

 

「俺は幽霊じゃない! 死んだと思われてたけど生きてたんだ! そうか、お前説明の時に任務で里にいなかったんだな?」

「死んだと思っていたのに生きてた……それはつまり幽霊?!」

「ちげーよ! ったく、熱血青春バカのくせに幽霊はこえーのか。ダセーな」

 

 オビトが差し出す手を恐る恐る掴んだガイ。

 

「む? 実体があるな……オビト、お前本当は生きていたのか?」

「だからそう言ってるだろ」

「ハーッハッハ! それは良かった! また会えて嬉しいぞ!」

 

 どうやら実体があれば怖くないらしく、すぐにガイは回復した。

 

「じゃあ俺と一緒に青春の修業をするか?」

「何がじゃあ、なんだよ。俺は案内があっから無し!」

「案内? また道案内か?」

「まあ、そんなところ」

 

 アカデミー時代から里中を修行で駆け回るガイは同じく人助けで里中を駆け回るオビトを見かけることがよくあった。

 クシナのことを知らないため、道に迷っている里の人ぐらいに思えたらしい。

 そのままガイは逆立ち歩きを再開し去って行った。

 

「なぜあなたがこんなところにいる」

 

 佇むクシナに声をかけたのはフガク。

 

「あれ? フガクさんだ。どうかしたんですか?」

「オビトも一緒か。なるほど、それで結界の外にいたのだな」

「そういうことだってばね」

 

 どうやらクシナの陰に隠れていたオビトが見えていなかった様子。

 

「その後、封印の調子はどうだ?」

「おかげさまで今のところは安定してるってばね。前より減ったチャクラにも慣れて来たところです」

「そうか。何か異変があればすぐに呼ぶように」

 

 オビト以外に九尾を抑えられるとしたら万華鏡写輪眼を持つフガクだけだ。

 警務部隊長としての仕事があるため、オビトのように護衛任務を受けることはできないものの、里にいることが多いためすぐ駆け付けることができる。

 

「その時は頼らせてもらいます。それよりもミコトは元気ですか?」

「ああ。あなたの話をしたら会いたがっていた」

「クシナさんってミコトさんのこと知ってんの?」

「昔、任務で一緒になって意気投合したのよ」

「クシナさんとミコトさんがぁ?」

 

 オビトにとってミコトは落ち着いた感じのお姉さん、一緒にギャーギャー騒げるクシナとは真逆のイメージだ。

 どこに意気投合する要素があるんだと言わんばかりのオビトにクシナの目が吊り上がる。

 

「なーんか言ったってばねェ? オビトォ?」

「まだなんも言ってねーよ! ……あ! ミコトさんって言えば! フガクさんとミコトさんって甘栗甘でデートしてましたよね! ミコトさん、喜んでましたか?」

「なっ?!」

 

 オビトとしてはリンとの完璧なデートプランのためになりふり構っていられないのだが、突然ぶちかまされたフガクはいつもの仏頂面が崩れてしまった。

 しかしオビトにとって族長のフガクは頼れる男、ぜひとも意見が聞きたいところだ。

 

「それとも綺麗な夜景の見える豪華なディナーの方がやっぱりいいんですか?」

「豪華なディナー? それはいったい誰の入れ知恵だ」

 

 動揺するフガクの問いかけにクシナの目が泳ぐ。

 その間にオビトは懐からまたしても胡散臭い恋愛指南本を出し、フガクに見せた。

 

「この本みたいなことフガクさんも実践しましたか?」

「俺は読んだことのない本だな……」

 

 あまりの動揺に往来で熟読を始めるフガク。

 

「気遣いのできるデートコース? この道の左手側に曲がった通りは治安が良くない。気を付けなさい」

 

 さらにフガクなりにアドバイスをしてみようとするが、警務部隊長としてのアドバイスになっている。

 しかし幼いころからフガクを頼れる大人として見ていたオビトはいたって真面目に聞いている。

 

――いくら私でもこれは違うって分かるってばね! というかフガクさんってこんな人なの?! ミコト! 今すぐここに来て!

 

 友人のミコトはともかく、フガクと大して接点のないクシナは遠慮してこの謎空間にツッコミを入れることもできない。

 彼女の願いが微妙に通じたのか、彼らに話しかける人物が新たに。

 

「あれ? クシナさんだ! それにオビトも! こんなところでどうしたの?」

「り、リン!」

 

 まさにリンのためにフガクからアドバイスを受けていたオビトは大いに焦る。

 慣れないことを聞かれ困っていたフガクはこれ幸いとばかりに、「頑張りなさい」と言って離れていく。

 

「あの人ってうちは警務部隊の確か……フガクさん? 何かあったの?」

「い、いや! 俺らもたまたま道で会ったから話してただけだよ! な、クシナさん!」

「リン、助かったってばね! リンはホントにいい子~!」

 

 謎空間から解放されたクシナはリンを抱きしめ喜んだ。

 

「そういえばクシナさん、ミナト先生の帰りが早くなるみたいですよ。もうすぐ里に着くって!」

「ええっ?! ミナト、もう帰ってくるの?! まずいってばね! まだ何の準備もしていないのに! オビト、今すぐ家に帰って夕飯の準備よ! アンタも手伝いなさい!」

「俺も?! なんで?!」

「アドバイス料だってばね! じゃあ、リン。悪いけど私たち行くわね」

「はい! オビト、頑張ってね」

 

 ニコニコと手を振るリンに見惚れるオビトだが、むんずと首元を掴まれクシナに連れて行かれる。

 

「というかアドバイス料も何も、クシナさんからのアドバイスなんの役にも立ってねーんだけど!」

「うっさい! 早く豪華なディナーを用意しないとミナトが帰ってくるってばね!」

 

 その日、里では猛烈なスピードで駆ける赤い閃光を見たという噂が立ったとか立たなかったとか。

 

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