タイトルの通りです。原作でもはよいちゃつけ


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ケルシー先生はね、あったかそうな服なんて着ないし、短い文章なんて喋らないし、ケルドクではいちゃいちゃしてないといけないの


重役だからって自社でオフィスラブしてそう

 

「ドクターさあ、公共の場でケルシー先生といちゃいちゃするのやめてくれない?」

 

「忙しなく部屋に突撃して来たと思ったら一体なんの話だブレイズ」

 

 目下山積みの書類と格闘しながら昼食を摂る午後2時、唐突に訓練終わりのブレイズが私しか居ない執務室に愚痴を溢しにきた。それも心当たりが全くと言って良いほどない。私が?ケルシーと?イチャイチャ?

 

「訓練で頭を強く打ったのか?」

 

「相変わらずケルシー先生とうさぎちゃん以外には愛想がないね。それ結構本気で言ってるでしょ?」

 

「愛想がないとは失礼だな、それに君への全ての言葉は100%本気で言っているぞ」

 

「じゃあ君はもっと失礼だよ!」

 

 青筋を立てて口元をヒクつかせるブレイズは両の手で机を強く叩く。埃が舞うからやめろ。

 

「冷やかしや暇を持て余して来たなら帰るといい。君も明日期限の報告書があるはずだ。リフレッシュのためのトレーニングだったのだろう?」

 

「えっ何で知って……」

 

「君の性格上動いていないと落ち着かない質だからな。机と向かい合っているうちに我慢できなくなって体を動かして来たんだろう?それにその書類の提出先は私だったはずだ。前回は3日遅れで提出しただろう、その時は多めに見てやったが今回は1分、いや1秒でも提出が遅れた場合2週間アルコール禁止を言い渡す」

 

「ええっ!?そんなぁ!お酒は関係ないでしょ!?」

 

「期限は優しく1ヶ月設けたはずだが。毎週毎週飲んだくれて廊下で寝ていたそうじゃないか。健康管理も時間管理もできないなら十分にこちらから禁止を言い渡す理由になる。嫌ならさっさと戻って今日で仕上げろ」

 

「うう〜、わかったよ。戻って仕上げ……じゃなかった!危ない危ない!ケルシー先生とドクターがイチャイチャしてる件だよ!話をずらして逃げる気だったんでしょ!?」

 

「いや、仕事に戻れと注意しただけだが」

 

「言い訳はもう十分!言い逃れはさせないんだから!」

 

「……はぁ。聞いてやるから言ってみろ。いつ私がケルシーと……その、い、イチャイチャしてたって?」

 

「あははっ!イチャイチャで恥ずかしがらないでよドクター!童貞じゃないんだか……あっ、はい。ごめんなさい。言います。言うからその目やめて。怖いから」

 

「……さっさとしろ」

 

「はい。……んんっ!これは食堂の職員の証言映像なんだけど」

 

 いつもは作業効率化アプリすらロクに運用できないあのブレイズがこなれた手つきで録画ファイルをこちらに共有してきた。……アプリ容量をしょうもないもので圧迫するな。

 

ーーーーー

 はい、ケルシー先生とドクターですよね?とんでもないです。本当に凄い。2週間前、通常の営業時間が終わって仕事の多い重役の人たちのみ利用できる時間帯にたまたま2人が来たんです。最初は2人とも仕事の話なんかして、休憩中でも変わらないのかー、なんて思ってお冷を運びに行ったら席を隣同士で座ってるんですよ!

 

 別々の席でも、対面するような形でもなく!ひとつのテーブルに!隣同士で!2人ともさも当然のような顔をして!

 

 勝手なイメージで申し訳ないんですけど、かなりの頻度、というよりほぼ毎日朝と夜はオペレーターたちと食事を摂るドクターはまあ特に問題はないとして、ケルシー先生はパーソナルスペースがとても広い方だと思っていたのでなんというか……凄い衝撃を受けましたね。でもこんなもの始まりに過ぎません。次は注文を取った時です。

 

『……そうだな、今日はこのサーモンのチーズクリームサンドイッチを玉ねぎを辛味少なめ、サーモンはカルパッチョ風味で、クリームチーズは少なめ、マスタードはハニーマスタードに変更、粒が粗めのもので頼む。それとブラックコーヒーを1つ。ボリバル産の深煎りを人肌程で頼もう』

 

 確認を取った時は特に違和感は感じませんでした。食に拘りを持つ方はロドスにも多いですし、それなりに地位のある方は水にすら拘る人もいるほどです。

 あまりケルシー先生は食堂を利用しないものですから、意外にグルメな面が見れて先生も食に喜びを覚えてくれる人なんだなぁと料理に携わる者としてちょっと感動してたぐらいです。

 

 でも、次にケルシー先生の口から出た言葉は私を一瞬フリーズさせました。

 

『これで当たっているか?ドクター』

 

 一瞬本当に混乱しましたね。え?何でドクター?って具合に。

 ケルシー先生、注文していたの自分の食べるものじゃなくて、ドクターの食べる物を先に注文してたんです。一度も引っかかることもなくスラスラと、まるで自分がそれを食べたいかのように。

 

『今日はちょうどその配分にしようと思っていた。ありがとうケルシー』

 

 ドクターから発せられたこの言葉で再度回り始めた頭がまたフリーズしました。考えたんですよ、あ、2人で食事をするときはケルシー先生がまとめて注文するから先にドクターの好みを聞いておいたのかなとか、ドクターの好きな食べ物を覚えているとか。

 

 違います。その日のその時、ドクターはどんな味のどんなものが食べたいのかケルシー先生は把握してたんです。しかも、ドクターには一回もその時の気分なんか聞かずに。

 

 なんで知ってたのか?私なんかがわかりませんよ。

 

 そして次はドクターです。

 

『ふむ……ではエビとアボカドのサンドイッチを1つ。パンはパニーニ風に外側に焼き目をつけてくれ。あとは酸味の強いレモンを軽く絞ってほしい。ソースは甘めで、全体で味の濃さにばらつきが出るように。あと、ブラックコーヒーをシエスタ産とボリバル産のブレンドで、濃いめのものに氷を5個入れてくれ』

 

『これでよかったかな?ケルシー』

 

『ああ』

 

 またですよ。またこの2人お互いが食べたいもの注文してますよ。本当にどうなってるんですかね?

 

 いやまあ、仲の良い同年代のオペレーターがゲーム感覚でお互いの食べたそうなものを注文する、なんてことは多々あります。でも殆ど外すんですよ。当然ですけど。でもこの2人、特に口裏を合わせたわけでもなく当然のように好みと気分を息をするように注文してきたんです。……凄いでしょ?

 

 それと、これは後から聞いた話なんですけど、同僚にこの話をしたらドクターが注文した一通りのオーダー、数ヶ月前にケルシー先生が1人で食堂に来た時に頼んだものと全く同じものだったそうです。

 

 それ聞いて思ったことは「いや、何で?」ですね。だって、そのときってドクターがまだチェルノボーグで眠っているときですよ?だから、ドクターが目覚めてからケルシー先生が食堂にきたのはこの日が初めてのはずなんです。

 

 なんでって、私が知りたいですよそんなの。

……怪物の尺度で遊んでいるだけなんですかね?

 

 さて、食事を運んでから僕はずっと食器を磨くふりをして2人の方に耳を傾けてましたね。

 

『これは前も言ったが私は君のバイタルチェックを担当するにあたり、作戦行動の指揮や書類作業が日常生活におけるアルゴリズムを大きく阻害した際の精神的な面の変化を統計として現し、カウンセリングや食事の栄養配分といった治療の一側面として組み込んでいる。

 

 したがって昨日から今日にかけて行われた作戦行動の顛末を君の口から聞きたい。時間が経っての報告書というものは多少なりの記憶の改変があってもおかしくはない。

 

 君を疑っている訳ではないが事実として記憶の欠落が確認されている君の脳は一般的に取るに足らない心身的なショックにも過剰に反応してしまう可能性はゼロと決定づけることは主治医である私にとって排除しなければならない選択肢だ。どんなに機微で取るに足らないことでも報告してくれ』

 

『これといった問題点はない。戦地に赴く必要がなかった程度の規模の戦闘、初期配置から2手で摘める盤面だった。……ああ、レッドを預けてくれたことを感謝しよう。お陰で10分ほど帰投を早めることができた』

 

『目を通した限り敵の部隊には指揮官に相当する者がいるのは明白だった。それなら彼女が最も戦場起動と別部隊への奇襲で活躍できると判断したまでだ。上手く使いこなしたのは君だ、ドクター』

 

『それにしては性急な提案だったじゃないか。いつもは私の担当指揮を報告させるだけでとくに意見を挟んだりしない君がPRTSにわざわざレッドも作戦に組み込む旨の指示を送ってくるなんて』

 

『……あらゆる作戦行動とは論理と事実から割り出された構築物であるべきだ。他意はない』

 

『隠さなくても良いさ。確かに最近は一緒に過ごせる時間が取れていなかった』

 

『私が君の帰投する時間を把握して時間を合わせ、食事に誘ったと?……非合理だ。例えそれが事実であったとしても君の作戦を乱すような真似をしてオペレーターや君を危険に晒すような指示を私は出さないはずだが』

 

『逆に聞くが違うのか?作戦の人員を1人増やす程度で生じる危険性などあってないようなものだとと思うが。それにヘリの搭乗ゲート内の待合室でオペ終わりの医者が1人寂しく報告書を認めながら誰かを待っている筈がないだろう?』

 

『たとえそれが故意であろうと、あらゆる要素を計算して君が帰ってくる時間を算出するなどいくら私にも不可能に近い』

 

『「不可能に近い」だけだろう?ケルシー。見ず知らずの他人が操縦するどこへ行くか見当もつかないヘリならまだしも、「どこへ何をしに行くのか明確な私」が「オペレーターが操縦する」「ロドスのヘリ」に乗っている。ほら、全て数値化できる情報だ。あとは単純な計算で導ける』

 

『君は目が覚めてから私のことを神格化しすぎているきらいがある。一学者として理論上可能なことを不可能と明言するのは気が引けるだけさ、例えそれが机上の空論だとしても。期待されることに私個人としては不快感を覚えることはないが個人への過度なイメージは時に偏見となって正確な評価を損なうことになるものだ。贔屓を評価に入れ込むのは一企業のトップとして褒められたことではない。それに』

 

『それに?』

 

『君が無事に帰ってくるなら私は何時間だって君を待とう、ドクター』

 

『ーー本当に君は可愛らしいな。そういえば私としたことがまだ言っていなかったな、ただいまケルシー』

 

『おかえり。無事で何よりだ』

 

 あとは特に会話とかは無かったですね。……この後ケルシー先生がドクターの肩に頭を乗っけて寝ちゃったみたいで。静かに私を呼んで支払いを済ませたドクターがそのまま無言でコーヒーを楽しみながら、時折ケルシー先生の頭を撫でるんです。

 

 食事の時ですら付けてる手袋も外して、無表情で何も言わずに撫でているはずなのに手つきは愛おしい人を撫でるようで、ゆっくりと労って慈しむように。思わずちょっとドキッとしちゃいましたね。

 

 そして食器をシンクで水に浸してフロアの方に目を戻すとドクターがケルシー先生をお姫様抱っこして食堂を後にしているのが見えましたね。ゆっくりと足音一つ立てずに先生を起こさないように。

 

……はい?2人をどう思うかって?……末永く爆発してくださいコンチクショク。

 

 ああああああ!私もイケメンで企業のお偉いさんで頭が良くて高収入で女性の扱いが完璧な彼氏欲しいなー!私もあんな恋してーよぉぉぉぉぉ!だって私今年で3×ですよ!?大体ロドスは……(ここからは愚痴のため記録終了)

 

ーーー

 

「………?何かおかしな所があったか?」

 

 いつも通りの私とケルシーの食事風景だ。

 

「え!?無自覚!?あんなにイチャイチャしといて!?」

 

「これのどこがイチャイチャなんだ?」

 

「完全に最近構ってくれない彼氏に遠回しにアピールする彼女の構図だったよ?ケルシー先生。……アプローチの仕方だいぶ変だったけど!」

 

「そうなのか?自慢じゃないが恋をしたことがないのでな」

 

「……ドクターさ、たとえば最近付き合い始めたオペレーター同士が食堂でこれやってたらどう思う?」

 

「特に何も?気を回して2人の時間に重なるよう休日を設けてやるが。……何だその目は」

 

「だとしてもお姫様抱っこはどうなのさ!どれだけ仲のいい異性の友人でも普通そこまではやらないでしょ!?」

 

「いや、2人で食事を共にする時間が遅くなるとよくあることだぞ?ケルシー曰く私の匂いは何故だか深いリラックスができる香りだそうだ。私の胸に顔をうずめてそのまま寝てしまうことが多いな」

 

「……!ドクター、フェリーンの嗅覚が優れてるのは知ってるでしょ?中でも特別強く感じる匂いっていうのがあって、好きな匂いを嗅ぐとリラックスして脱力することがあるんだよ」

 

「ほう?ならばケルシーはローズマリーとユーカリの香りが好みというわけか。パフューマーから貰ったアロマオイルを今度わけてあげようか」

 

「……………(胸元にオイル塗らないでしょ……)」

 

 ブレイズの目は何か言いたげな暖かいものを見る目だ。こいつにやられると腹が立つ。

 

「言いがかりならさっさと帰れ。私も暇じゃない」

 

「あ!待って!じゃあこれはどう!?」

 

「(まだあるのか……)」

 

ーーーーー

 

 ケルシー先生とドクター?まあお似合いなんじゃないか?言っちまえばお互いこの人を逃せば一生結婚なんて無理だろ、と思う程度にはな。

 

 お前も見ただろ?ブレイズ。先週のエリートオペレーターと幹部の定例会議であの2人何してやがったよ?

 

 ドクターの膝の上にケルシー先生が座りながら会議してやがっただろ?

 

 俺がたまたま会議室の隣で機械いじりしてたからな。一番乗りで入室した時は理性回復剤のせいで目がイかれたのかと思ったね。なんだアレは?お陰様で眠気も全部飛んで居眠り常習犯の俺が真面目に2時間会議を聞くハメになったぞ。

 

 見たか?後から入ってきた連中の顔。みんな目の前の光景にマヌケヅラしながら固まってたぞ?miseryなんか一回入室し直して、ため息つきながら俺に向かって『俺のアーツは俺自身にも効くらしい』なんて言ってくる始末だ。あの難解な皮肉屋が一撃でのされちまったよ。

 

『2枚目の資料のここの部分だが』

 

『そこはーーだ。それでいい。今回議題として挙げる部分は』

 

 んで俺らの動揺なんて知らぬ存ぜぬで肩越しに打ち合わせしてる渦中の2人。地獄か?

 

『定時だ。それではこれから会議を始める』

 

 あのときゃみんなの心の声が揃ったね。

 

 いやそのまま始めるんかい。

 

『それではこの資料は……こちらのグラフからも分かる通りに……私からは以上だ。ドクター、君からの留意点を説明してくれ』

 

 ここまではいい。ケルシー先生が立ち上がって説明を終えて、マイクの電源を切ってドクターに渡した、ここまではいい。

 

 なんでドクターを席に座らせたまま、またその上に座り直して喋らせる?

 

 意味わからねぇよ。なんでドクターは立たせねぇんだよ。ていうかドクターの席の右隣よく見たら空席じゃねぇか。確実にあんたが座る予定で空けられた場所だろ。だってアーミヤ社長以外に今のあんたらの隣座れるやついないもん。いろんな意味で。

 

 んでそのアーミヤ社長、ドクターの左隣に座ってるもん。すっげぇいい笑顔であんたらのこと見てるもん。年頃の女の子の目の前で大の大人2人が何やってんだよ。

 

『えー、私からは四つほど押さえておくべき点を説明させてもらおう』

 

 なんであんたはあんたで疑問持たないんだよ。おかしいだろ。

 

『以上だ。……ああ!すまない、もう一つ提案したいことがある。えーっとこの資料か。すまないケルシー、失礼する』

 

 説明しそびれた資料があったのか、机の上に置いてあったいくつかの紙を持ってドクターが立ち上がった。

 

 片腕でケルシー先生をお姫様抱っこしながら。

 

 いや、なんで??????

 

 先生は先生でドクターの首に腕を回して一緒に資料を眺めている。

 

『今みんなに回した資料を見てほしい。3ページ目のーー』

 

 いやぁ、ドクター器用だなぁ。左腕で軽々とケルシー先生を抱えながら右手でマイクと紙持ってんだぜ?すげぇなぁ。

 

 あん?コメントが適当って?……じゃあお前だったらなんて言うよ。

 

……だろ?理解できないものを無理に理解する必要はねぇよ。世の中理屈で説明できねぇこともいっぱいあんのさ。……これについては理解したらなんか死ぬ気がする。

 

 最後になるけどよ、この映像見てるんだよなドクター?なんだ。その。避妊はしっかりな?

 

(記録終了)

 

ーーーーー

 

「これは言い逃れできないでしょ……というか流石に時と場所は弁えてよ」

 

「何がだ?」

 

「えっ」

 

「このときは扱う資料やスライドの量の関係上、机の面積を圧迫してしまうが故にケルシーが座る予定だった椅子の上に荷物を置いただけだ。君たちからは見えなかったかもしれないが。

 

 地面に固定されている以上椅子はパイプ椅子しか追加できないし、そもそも重役が集まる前でトップを安物のパイプ椅子に座らせるなどあってはならないだろう」

 

「でも膝の上には座らないと思うよ?」

 

「心配ない。ケルシーは軽いからな」

 

「そういう問題なの?」

 

「ああ。君のちょうど半分ぐら」

 

 ガァン!

 

「……何か言った?」

 

 私の数センチ右をブレイズの拳が抜き去り壁に突き刺さった。

 

「……すまない。気にしていたのか」

 

「二度目はないよ。あとそれ、私は一回だけは許すけど他の女の子に言ったら一回目で殺されると思ってね」

 

「ふむ。翌日が出勤なのを承知の上で深酒して遅刻した挙句に職場で盛大にゲロを吐く君にも羞恥心があったとは……」

 

「うるさい。君が飲まなきゃやってられない量の仕事を振ってくるのが悪いでしょ」

 

「ほう?一般の企業と比べてもロドスかなりホワイト企業と言えるが。なら理性回復剤(違法スレスレの薬物)を鼻から吸引した上に静脈注射しなければ正気を保っていられない量の仕事を任せようか?……すまない、冗談だ。冗談だから本当に哀れみの目を向けるのはやめてくれ」

 

「……本当にロドスは医療機関だよね?なんでトップのひとりが薬物で正気保ってるのさ」

 

「まて、誤解だ。ケルシーもたまに使っている。5日間連続で別の患者のオペを執刀するときとか」

 

「語るに落ちてるよ。医療部門のトップまで違法スレスレの薬物使って仕事してるなんて知られたらロドスの信用ガタ落ちだよ。ていうかそれアーミヤちゃんには使わせてないでしょうね?」

 

「そこは当然だ。彼女と君たちに使わせないために私が使って働いているのだから。アーミヤの1日のルーチンワークは私とケルシーが最大限注意を払って構築している。

 3食バランス良い食事を心がけ、必ず夕食は3人で摂る。10代前半のコータスに必要な1日の運動ノルマを貸し、お小遣いは1日50龍門弊。完全週休2日の仕事は1日8時間。2時間経過するごとに10分のリラックスタイムを挟み体を軽く動かして長時間座り続けないように…「わ、わかったから!もういいよ!」そうか」

 

「アーミヤちゃんに配慮してるのはわかったけど、君自身も無茶しちゃダメなんだからね?なにかあったら悲しむのは先生とアーミヤちゃんなんだから」

 

「死にはしない程度には気を使っているつもりだ。……アーミヤは最近『もっとロドスのために働きたいんです!』なんて言い始めている。

 

 それだけならまだいいが、彼女は理性回復剤を軽い睡眠阻害の薬か何かだと思っている節がある。軽い気持ちで手を出すと大変なことになってしまうから近いうちに理性回復剤の詳細と副作用について詳しく教えないといけないな」

 

「軽い睡眠阻害薬と勘違いしてるのは確実に君のせいだけどね。前に薬物乱用防止教室で流したドクターが理性回復剤使ってるときの映像、本当に怖かったんだからね?スズランちゃん泣いてたよ。……でも何か手立てがあるの?あれみたいなあまりショッキングなものは見せないであげなよ?」

 

「いや、少し前にケルシーが理性回復剤でオーバードーズを起こしてな」

 

「……え?ちょちょちょちょっと待ってよ!?ケルシー先生が!?それっていつの話!?」

 

「んー……確か3ヶ月前だったか?特に入院を必要とするような深い症状や継続した禁断症状、後遺症はなかったから2日くらいで医療部へ復帰した」

 

「ほ、本当に大丈夫なんだよね!?」

 

「その後似たようなことは起きていない。こんなことが起きる上に成分の解析もできないから原則禁止にしているんだ。最も私とケルシーが乱用する上にクロージャやワルファリンなどよりにもよって古参の連中が守る気がないかの如く使うから個人で発注して個人で使う者へ強く注意できないのが現状だがな。……あった、この音声だ」

 

「それにしてもよく撮ってたねこれ」

 

「ああ、何かの防止呼びかけで使えるかと思って撮っておいた。……クロージャに使えるかこんなもんと言われてお蔵入りになったが」

 

「(あれ?何か物凄く嫌な予感……)」

 

ーーーーー

 

『どくらぁ』

 

『どうしたんだい?』

 

『こわい、さむい』

 

『……ほら、おいで。抱きしめてあげよう』

 

『ぅう。こわい』

 

『大丈夫、大丈夫だから。今日はずっと一緒にいよう』

 

『うそ』

 

『おや。どうしてかな?』

 

『いなくなった』

 

『……』

 

『わたしをおいていなくなった』

 

『それを言われると困ってしまうなぁ』

 

『またいなくなる』

 

『それは……そうだね。勝手に居なくなってごめんよ。でもほら、ちゃんと帰って来たじゃないか』

 

『……うん』

 

『もう居なくならないさ。君といっしょにずっとロドスにいるよ』

 

『……ん。ほんとう?』

 

『本当だよ。ほら、このまま眠ってしまおう。疲れたね、頑張ったね。今日ぐらい休んでも誰も怒らないさ』

 

『だれもおこらない?』

 

『怒らないさ。休んでくれた方がみんなも嬉しいよ。ほら、一緒に寝よう。力を抜いて、ゆっくり息を吸って、吐いて。……そう、そう。良いね。起きるまで隣にいるからね』

 

『うん……うん……』

 

『おやすみケルシー。起きたら一緒にごはんを食べよう。2人っきりで、ゆっくり時間を忘れて』

 

(音声記録終了)

 

ーーーーー

 

「え誰」

 

「信じられないがケルシーだ。確かにあの知的なしゃべり「いやそっちもなんだけど」……は?」

 

「あと1人喋ってるの誰!?」

 

「……いや、私だが?」

 

「嘘!?絶対嘘だよ!あんな気の効いた言葉、君には言えないって!」

 

「……本当に失礼な奴だな」

 

「だって私が酔って倒れてる時、邪魔って言って顔に水かけてくるじゃない!あんなに優しく介抱されたことないよ!」

 

「単なる深酒と一緒にするな。アルコールで酔っ払うことがロドスの益に資することなどあるものか。……次に通路で酔っているのを見かけたらセイリュウを呼び出して酔いが覚めるまで顔に水をぶちまけてやるからな」

 

「わー!嘘嘘!怒らないでよ!」

 

「やかましい。そろそろ戻らないと半年酒禁止にするぞ」

 

 とっととこいつをつまみ出してくれる人はいないかと考えるが、あいにく今日の秘書はもう割く仕事がないので先に上がってもらったところだ。呼び戻すのは気が引ける。

 

「すまない、ドクターは居るだろうか」

 

 そんなことを考えていると、数回のノックとともに壁越しに私を呼ぶ声が聞こえる。特に返答を返す間もなく声の主は部屋へと続く扉を開く。

 

「君も居たのかブレイズ。今日は君が秘書担当では無い筈だが。なぜここに居る?」

 

「サボりに来ていただけさ。今に追い返そうとしていたところだ」

 

「えっ」

 

「……………はぁ。君は今日私に提出する資料があったはずだが。油を売っている暇があるということは終わったという認識で構わないな?」

 

「ち、違う違う!私はドクターとケルシー先生が付き合ってるのかどうか知りたくて!」

 

「おい馬鹿!ケルシーにこの手の冗談は「なんだ。そんなことか」えっ」

 

「私とドクターは恋仲などでは無い。これで十分か?さっさと仕事へ戻れ」

 

「……ちぇー。つまんないのー。せっかくみんなに言いふらそうと思ってたのになぁ」

 

 事実確認を取れて満足したのか、はたまた興味を失ったのか、ブレイズは大人しく執務室から出て行ってしまった。

 

「何だったんだ一体……すまないケルシー、助かった」

 

「構わない。彼女が人の恋愛沙汰に首を突っ込もうとするのは自身の地位と感染者という身で自分の愛する人を作れないという諦めの感情と、それを諦めきれていない本心の裏返しだ。邪険にはしないでやって欲しい」

 

「確かにブレイズにも事情はあるか。もう少し乗ってやるべきだったか」

 

「いや、新しい話の種を見つければすぐに忘れるさ。フットワークの軽さが彼女の強みだ。生き方にしてもな。……この資料を渡しに来た」

 

「わざわざ直々にありがとう」

 

「ああ、それと」

 

「?」

 

 手渡された資料に目を通しながら受け取る。忘れていた、と言わんばかりのケルシーの言葉に紙から顔を上げると、

 

「んっ……」

 

「…………!?」

 

 ケルシーにキスをされた。……え?……何で?

 

「恋仲、などではない。そんな言葉で表せるものか。昔も今も。……以上だ。失礼する」

 

 そう言って少しだけ頬を赤らめて口元を綻ばせるケルシーは、酷く綺麗だった。

 





2023/01/08にちょっと編集しました。

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