【完結】生意気な義妹がいじめで引きこもりになったので優しくしたら激甘ブラコン化した話   作:崖の上のジェントルメン

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前書き

みなさん、いつもこの作品を読んでくださり、ありがとうございます。

余計な話かも知れませんが、この作品を完結させてから、私もいろいろなことがありました。結婚を経て子どもが産まれたり、職場のパワハラで鬱になったり、小説が受賞して書籍化の予定がつくなど、良いも悪いも目白押しな数年間でした。

そんな中、私は今度、カクヨムさん主催の賞に『漫画原作賞』というものがあり、この作品をエントリーしてみようと考えています。

もしよければ、その漫画原作版の方も読んで反応を貰えると嬉しいです(*´ω`)

作品はこちら↓
https://kakuyomu.jp/works/2912051601133887417

この作品は漫画映えすると思いますので、受賞してコミカライズをぜひ狙いたい!そんな気持ちに溢れています。

さて今回、私はパワハラで鬱になった経験を元に、少しだけ番外編を書くことにしました。

明くんたちのその後を、楽しんでいただけたらと思います。


【番外編】明の休日(1/2)

 

 

「……ですから、今の人員は間違いなく必要です。これ以上削減すると、明らかに仕事が回らなくなります」

 

俺は顔をしかめながら、部長へと詰めよった。

 

ここは、市役所の5階にある「こども育成部」の会議室。そこには八人がけのテーブルが設置されており、こども保護部の部長と、こども支援課の課長、副課長、そして俺を含めた平の職員が3人いた。

 

俺が所属している市役所では、このこども支援課の管轄に、児童相談所がある。児童相談所の運営やこどもからの悩みの電話を受けたりするのが、この課の主な仕事だった。

 

今回、会議の議題に上がったのは、こども支援課の人員削減だった。

 

こども育成部の部長より、今の人員から3人減らせという、かなり無茶苦茶な要求をされていたのだ。

 

「渡辺くん。そういうのを、思考停止って言うんだよ」

 

部長は俺を小馬鹿にした態度でそう告げた。

 

「物価高騰の波は未だに衰える様子がない。費用を削らなきゃいけないのはどこも一緒なんだよ」

 

「だからって、限度があります」

 

俺はテーブルの上に、課の席次表を出した。そして、その内の4人に丸で印をつけていった。

 

「見てください、部長。今現在で、この4人もの人が鬱で休職しています。みんな、業務量が多すぎて身体を壊してしまったんです。ここからさらに減らしていったら、いよいよ本当に課が破綻します」

 

「ちゃんと頭を使わないから、そういうことになるんだよ。電話対応をAIに任せるとか、児童相談所の規模を縮小するとか。そういうところで知恵を絞ってもらわないと」

 

「それでは本末転倒です。このこども支援課は困っているこどもたちの助けになるべき場所です。私たちの仕事は楽になるかも知れませんが、こどもたちの気持ちはどうなるんですか?」

 

「気持ちねえ……」

 

「助けを求めて電話してきたのに、その電話口がAI音声だったら……『自分は事務的に処理されているんだな』って、そう思ってしまいます。そうしたら、本来助けられるはずだった子を助けられなくなってしまうかもしれない」

 

「渡辺くん。そういう拘りがさあ、余計な仕事を増やしてるんだって」

 

「………………」

 

「昔のやり方に拘るばかりじゃ、組織改革はできないよ」

 

部長は腕を組んで、ため息をついた。

 

「業務の効率化、予算の軽減化。これが、市長の出した今年の目標だ。君たちはこれに逆行しようとしている」

 

「………………」

 

「結局君たちは、なんにも仕事してないんだねえ」

 

「!」

 

 

ガタッ

 

 

俺は拳を握って、思わず立ち上がった。

 

「渡辺くん」

 

横にいた課長が、俺に「落ち着け」というアイコンタクトを送った。

 

「………………」

 

今すぐにもこの部長を殴りつけたい気持ちをなんとか押さえて、俺はまた席へと着いた。

 

「そもそも、鬱の職員が出るのは、君たち課長と副課長のマネジメント不足なんじゃないの?」

 

部長は次に、課長たちへと矛先を向けた。

 

「最近の若い子は心が弱いんだからさ、もっと管理してもらわないと」

 

「……マネジメントに関しては、私どもも行き届かないところがあったことは否めません。今度は、より職員に気を配りたいと思います」

 

課長は感情を圧し殺した表情で、部長に頭を下げていた。

 

こうして、俺たちの会議は終了した。

 

 

 

「あーーー!ちくしょう!腸が煮え繰り返るーーー!」

 

夜の11時。俺はデスクで仕事をこなしながら、パソコンに向かって雄叫びを上げていた。

 

「口を開けば、費用削減費用削減って!費用削減botかよ!」

 

「ほんと、全然聞く耳なかったですね……」

 

横の席にいる後輩の竹田くんが、虚ろな目で資料を作っていた。

 

「これ他の課の人から聞いたんですけど、人員削減のために電話対応用のAIを導入しようとしたら、『費用が高い』って部長に言われて、結局導入できなかったみたいです」

 

「なんだそれ!?結局AIもボツになるなら、あの話はなんだったんだ!?矛盾しすぎだろ!」

 

俺と竹田くんがそうして愚痴を溢していると、俺の対面のデスクにいた橋本さんも参加してきた。

 

「市長が費用削減って言い出してから、あの部長も言うようになったのよね。あの人、結局自分の意見なんかなくて、上の言葉に右ならえしてるだけなのよ」

 

「そのせいで俺らが割を食うって……ほんと、頭くるな!」

 

俺は乾燥した目を手でゴシゴシと擦り、ガリガリと頭を掻いた。

 

(就職してから早二年……。仕事をするってことの過酷さが、日を増すごとに実感するなあ)

 

組織というのは、本当に上の立場の人間に左右される。上の人から言われたら、あっさりといろんなことが覆る。

 

それに振り回されるのは、いつだって俺たち下っぱの人間なんだ。

 

部長を殴りたいと何度も思った。でも、その瞬間に俺は職を失う。美結や結喜ちゃんを路頭に迷わすことになる。

 

(働くってのは、生活を人質に取られることなのかも知れないな……)

 

俺はそんなことを思いながら、細く息を吐き、椅子から立ち上がった。

 

「竹田くん、休職中の人の分で、まだ終わってないのある?」

 

「先輩、まだ仕事するんですか?」

 

「期限が迫ってるのもあるし、みんなでカバーしないと、休職中の人も不安だろうからさ」

 

「でも、もう明日にしましょうよ。先輩、根詰めすぎですって」

 

「大丈夫、俺はまだまだ……」

 

と、そこまで言いかけた、その時だった。

 

目の前が、いきなり霧に入ったかのようにモヤがかかった。

 

視界のほとんどが白く、ぼやけていた。

 

(な、なんだこれ?)

 

そう思うのも束の間、俺は不意に平衡感覚を失った。

 

ぐらりと足元がもつれて、身体が真っ直ぐに保てなくなった。

 

(あら、これ、やべえかも)

 

そう思う頃には、既に床へと倒れていた。

 

 

ガタガタッ!!

 

 

「先輩!?」

 

「渡辺くん!?」

 

竹田くんと橋本さんの声が、俺の耳に届いた。それもどこかくぐもって聞こえており、まるで口を手で塞いでから話しているような具合だった。

 

それを最後に、俺はぷつりと意識が途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………」

 

目が覚めた時には、病院のベッドに寝かされていた。

 

右腕には点滴の管が通されており、既に半分以上の中身がなくなっていた。

 

真っ白な眩しい朝日が目の前に飛び込んできて、俺は思わず目を細めた。

 

「お兄ちゃん、大丈夫?」

 

俺の視界へと入ってきたのは、心配そうに眉をひそめる美結だった。

 

「お、俺は……どうしたん、だっけ?」

 

「職場で倒れてたのを、病院に運ばれたの」

 

「倒れた?」

 

「うん、過労だって」

 

「ああ、そっか、そうだったかも」

 

倒れた時のぼんやりした記憶が、だんだんと脳裏に甦ってきた。

 

「結喜ちゃんは……今、どこに?」

 

「城谷さんにあずかってもらってるよ」

 

「そっか……。ごめんな美結、心配かけたな」

 

「……うん」

 

美結は泣きそうな顔で、俺の手を取った。

 

ぎゅっと強く握る彼女の手から、人肌のあたたかさがじんわりと伝わっていた。

 

「………………」

 

この時になって、俺はようやく……自分が愚かだったことに気がついた。

 

(何をしてたんだ、俺は)

 

美結と結喜ちゃんを幸せにするために、俺は仕事を頑張ってきたはずだ。なのに、その美結を不安にさせてどうする。

 

そりゃ、やりたくてやっている仕事だが、自分が潰れちまったら元も子もない。自分を助けられずに、他人を助けられるわけもない。

 

この、バカ者め。

 

「……ごめんな、美結」

 

「うん」

 

美結は涙目ながらに少し微笑んで、軽く頷いた。

 

「ねえお兄ちゃん、しばらくお休みした方がいいと思う」

 

「………………」

 

「仕事のことが気にかかるのは分かるけど、でも私……」

 

「そうだな、そうするか」

 

「ほんと?」

 

「ああ、一週間くらい有休を貰うよ。ほんで、ちょっと羽を伸ばそう」

 

「うんうん、そうしよ?」

 

「せっかくだし、どこか遊びに行くか!」

 

「うん!行きたい!」

 

美結は、本当に嬉しそうに笑ってくれた。

 

 

 

 

……翌日の、お昼10時頃。俺はとある遊園地へと来ていた。

 

チケットを買って入場を済ませ、周り一面にある遊具を見渡していた。

 

「はー!遊園地なんて久々だなあ!」

 

「ふふふ、そうだね」

 

美結は目を細めながら、優しい笑みを浮かべていた。

 

「結喜ちゃんの保育園のお迎えは、柊さんがしてくれるって。だから時間を気にせず、ゆっくり遊ぼうね」

 

「ああ、そうだな」

 

「わー!見てください明さん!あのジェットコースター、すごく大きいですよ!」

 

ふと見ると、俺の隣にいる“メグちゃん”は、満面の笑みで遠くのジェットコースターを指さしていた。

 

「懐かしいわね。ここ、アキラと来たところじゃない」

 

今度は“湯水”が嬉しそうに微笑みながら、俺の身体にすり寄ってきた。

 

「いやーしかし、まさかこの三人で行くことになるとはな……」

 

「人が多い方が、お兄ちゃんも楽しいかなって」

 

「いやあ、まあそれはそうなんだが……」

 

「ふふふ、なに?お兄ちゃん」

 

「どうしたんですか?明さん」

 

「なによアキラ、私たちじゃ不服ってわけ?」

 

三人の女の子から、じっと一辺に眼差しを向けられて、俺は思わずたじろいだ。

 

みんな何故か不適な笑みを浮かべていて、妙なことを企んでいるように思えた。

 

「い、いや、ありがとう。ほんじゃ、行くか」

 

みんなの顔が怖いなと思いつつも、ひとまず俺たちはここで遊ぶことにした。

 

 

 

 

アンケートはこちら(何度も申し訳ない汗)

  • 1.第二部が欲しい
  • 2.上記以外の構成で第二部が欲しい
  • 3.蛇足なのでいらない
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