浦原維助、弟子である朽木白哉が隊長になった少し後。
彼は
見た目は日本刀、だが内部には精密にまた頑丈な機械が付けられており、待機中の霊子を吸収し刀身に収束、またその霊子のひしめき合いにより斬れ味が増すという、霊力を持っていなくても戦えるような代物。
言葉で言えば簡単だが、弊害が多い。
霊子を収束し、またそれを維持する。半端な機械設計では空気中に散開、または
最初に盗み出した藍染惣右介は、まず霊刀に似た物を作ることにした。
だが、その結果は失敗続き、ネジやマイクロ単位に及ぶ歯車。とてもでもないが真似もできない。形どったところで金属加工も彼の得意とするところ、特殊な鉱石を精密な単位で混ぜて作る金属。
その技術も
だから浦原維助は天才だと言うのだ。
そして藍染惣右介はコピーするのを辞めた。
そう、藍染は藍染なりに考え別の方法で作ったのだ
それが疑似的な霊刀。霊刀の性質は変わらないが、鬼道や術、結界類を無理に使ったもの。
意思のある生物から溢れる霊子を吸い取ると霊刀に意思が宿るという性質を見つけた。
そうして要らなくなった盗み出した霊刀をホワイトという虚と混ぜ合わせ戦わせ
黒崎真咲の魂魄に溶け込んだ霊刀はかつて志波一心の霊力を吸い取っていた。それを霊刀の意思で黒崎真咲の危機を知らせ一時的に霊力を一心に戻した。
そして霊刀は回復のためか、はたまた別の理由があってか半分に別れ、黒崎一護に溶け込んだ。
そう、魂魄に結合するのは霊刀に意思があるからこそなのだ
だが、それにも壁があった。
魂魄が先に耐えられない、暴走、異物質と魂魄が結合することにより崩壊する体。
霊力の吸い取る力を強くしすぎると、意識が呑まれる。また自身が分解される等々リスクもどうしても越えられない壁もある。
数多くの破面で実験し、浦原維助と戦わせた。
そして___ようやく生まれた。
「崩玉に霊刀。私の敵など___もう居ない」
崩玉を持っていない時でも、隊長格を凌ぐ強さを持っていた藍染惣右介。
崩玉により更にパワーアップ。そして霊刀により鬼道類の攻撃を無効化した。
未だ、藍染惣右介の理想とは何なのか。それは分からないが、とても良くないことだということは…誰にも分かった
「久しぶりだね、旅禍の少年」
虚圏で貯めた霊力と天鎖斬月の力。
だが藍染惣右介はただの結界の防御のみで受け止めた。
「だが、霊刀を使ったのはいい判断だ。霊刀と戦えるのは単純な暴力か、霊刀同士のみ…」
霊刀に霊刀をぶつける__
霊刀と戦う術は例外を除き3つ
1つ浦原維助のように単純な己自身の力で戦う。
2つ霊刀が吸収する霊子の時間、それは一瞬では無い。
一瞬で掃除機が部屋全ての埃を残らず吸い取ることが出来ぬように。限界値も吸収時間も存在する。
つまり、1度に吸収できる量以上のものをぶつければ威力は半減するが届くと言うこと。だがこれは未知数、また失敗すればそれ以上のものが跳ね返ってくる危険もある。
3つ霊刀に収束された霊子や放たれた霊子は霊刀では吸収できない。お互いに意思があるからか混ざり合うことが無く相殺してしまう。
だからと言ってなんだ。
藍染惣右介は強かった
隊長格や仮面の軍勢総出で藍染惣右介の隙を作るも傷は付けられない。
そして鏡花水月により味方である雛森桃を傷つけてしまった。
霊刀の対処法2つめ───一か八かノ賭けに出たものがいた
轟々と燃え盛る炎。
身も魂も燃やすほどの圧倒的な霊圧
「ようやく総隊長のおでましか、君が倒れれば護廷十三隊は文字通り崩壊する。後任の総隊長として育てればよかったものを」
そう、現れた山本元柳斎重國に目を細める
「浦原維助か、
「ふっ__霊刀の事は理解していないのかい?」
っと笑う
「舐めるな、そのような刀一本で儂の霊圧を封じ込めれるとでも」
「ほらね」
そう言った藍染はいつの間にか、元柳斎の腹に刀を突き立てていた__だが、
「藍染惣右介捕えたり」
突き立てられた腕ごと握りしめる元柳斎
「なるほど、面白いね。君の掴んだその腕は本当に私の腕なのかい?」
「目で見るだけ、肌で感じるだけならそれもあろう、じゃが腹に刺さった斬魄刀の霊圧を読み違うことは無い」
轟々と燃え盛る炎柱が藍染達を包み込む。
大規模の炎柱────
「皆覚悟は出来ておる、
その目は、その覚悟は、その霊圧は惜しみなく広がっていく
霊刀に炎が取り込まれる前により膨大なものをぶつける───だが
白煙と共に炎が一瞬にして無にかえる
「__私がそれを考えないわけは無いだろう?」
山本元柳斎重國が放つ技は、
だが一瞬にして衝撃音と共に破面は遥か彼方に飛んでいく
「あまい…甘いわい。流刃若火を封じれば儂を討てると思うてか、なぜワシが護廷十三隊の総隊長を務めてると思うておる。
────────────
藍染惣右介は無傷でそこに立っていた。
「ぐぅ__っ」
クレーターの中心にひれ伏す山本元柳斎、
「山本元柳斎、尸魂界の歴史そのものである君は、せめて私の剣でトドメを刺そう」
刀を抜いた藍染が山本元柳斎へ刀を振り下ろそうとする──が
「舐めるなよ__小童」
焼き焦がした我が身を触媒としてのみ発動できる禁術
反射的に霊刀により吸収するが、藍染の足を掴んで直接発動された破道ダメージは0ではない。
一護が藍染を吹き飛ばし下がらせる
一護の斬魄刀に霊刀が宿っているせいか、一護は藍染に一太刀をいれる__が。
シュウゥっと音をたて、体の傷が治っていく
「超速再生…!」
「ふっ──私が虚化などすると思うか?これは主に対する防衛本能…」
藍染の胸には崩玉が埋め込まれていた。
「君は私の探究の最高の素材だ。君は朽木ルキアと出会い、石田雨竜との戦いを経て死神としての力に目覚めた、浦原喜助との修行で霊刀の力を知り、阿散井恋次との戦いで自らの斬魄刀の力を知り、更木剣八との戦いで卍解への足がかりを、朽木白哉との戦いで虚化へと踏み出した。」
ドクン___
心臓の音が聞こえた気がした。
藍染は続ける
「1度もおかしいとは思わなかったのかい?出会いは運命だとでも思ったかい?出会いは偶然だとでも?襲撃も偶然だとでも思ったのかい?」
それ以上聞きたくはないとでも言うように一護は藍染に斬りかかる
「こんなものじゃないはずだ、君の今の力は__さぁ、霊刀の力を見せてくれ。初代の__破片を」
「あんたさっき言ったよな。あんたの探究の素材だ…って。なんでだ、何を根拠に確信した?」
一護の体は震え、冷や汗が肌に流れる
「最初からだよ、私は
君は産まれた瞬間から特別な存在、そしてあの日
爆音と共に現れた
「喋りすぎだぜ、藍染」
黒崎一心
すぐに一護を頭突きして蹴り飛ばし距離を取った一心
「距離を取ったか、聡明な判断だ、浦原維助の弟子なだけはある」
藍染は黒崎一護に興味を持っていた、虚の力。死神の力。
そして、黒崎真咲が虚に襲われた日に一護に半分移った霊刀
そんな存在、興味を示さないわけが無い。
再び一心は藍染の元へ、一護はギンとそれぞれ戦闘を始める
藍染の胸元の崩玉から、何かが溢れでる
「物を考えず直感で名ずける兄とは違い__崩玉とはよく名付けたものだ、正しくこれは神なるものと神ならざるものとの交わらざる地平を凌ぐ打ち崩す力だ!!」
だが、その胸を貫通する青い光__
「やはり、崩玉と霊刀のバランスは崩れるようッスね。」
「来たか____浦原喜助」
崩れたビルの上で帽子を押えた喜助が霊銃片手に藍染を見下ろす
「お久しぶりッス。藍染サン、随分__珍しい格好ッスね」
「何事も進化の途中というものは醜いものだ」
崩玉と融合した藍染の姿が変わっていく
「融合ではなく、従えた__と言ってもらおうか、君が御しれなかった崩玉を…ね」
「御しきれなかった、そうッスね…当時は」
「当時?実に明確な負け惜しみだ。いや、それが負け惜しみかどうかはどちらでもいいこと。君は崩玉を御する機会を___永遠に失うのだから」
藍染が刀で喜助の胸を貫いた__かと思えば。
「甘いッスね」
パァンっと破裂する喜助、携帯用義骸と入れ替わっていたのだ。
藍染を六つの光が拘束する。
「この程度の縛道で私を縛ってどういうつもりだい、それに霊刀…崩玉と融合し不安定とはいえ能力は変わっていない。こんなもの…」
だが、鬼道は消えず目を見開く
「あら…鬼道が消えなくて驚いちゃったのかしら」
「ふっ___黒崎真咲…」
藍染の胸を貫く青く光る剣。
髪をなびかせる黒崎真咲がふと笑う
「その不安定な霊刀、私の霊刀で簡単に抑え込める、甘いんではなくて?」
そして喜助の鎖状鎖縛と九曜縛に藍染は固められる
喜助は目を鋭くさせ杖を向ける
「千手の涯 届かざる闇の御手 映らざる天の射手 光を落とす道 火種を煽る風 集いて惑うな我が指を見よ 光弾・八身・九条・天経・疾宝・大輪・灰色の砲塔 弓引く彼方 皎皎として消ゆ」
その詠唱に目を見開く
「甘いッスね…鬼道は兄サンに勝てる唯一の得意技でして」
真咲はその瞬間に剣を抜き飛び退き
赤い光が藍染の元へ降り注ぐ____
轟々と大爆発が空中で巻き起こり、残っていたビルのガラスが衝撃波で砕け散る
「藍染サン、貴方は本当に…崩玉の力を取り込んだことで油断したんスね。霊刀も未完成のようだ」
「違うね___霊刀は
喜助の体から鮮血が舞う
「九十番台の鬼道ですら、躱すに値しない。」
「違いますよ、鬼道を躱さなかったことが油断だと言っているんじゃない。昔のあなたなら、なんの策も無く僕に2度も触れさせることは無かった」
藍染の手首から光が溢れ出る
「これは__!」
「封ッス。すべての死神の両手首にある霊圧の排出口を塞ぎました。貴方の霊刀は貴方の斬魄刀ではなく体と融合した。つまり霊子を吸い取り己の霊圧へと変換しそれは己の霊圧と合わさり膨大なエネルギーとなる。
排出口が塞がり__貴方は己自身の霊圧で内側から焼き尽くされる」
次の瞬間雲が吹き飛び流れるほどに、轟音と光が辺り一体を包み込む
「倒した…のか?それにお袋…!その刀」
っとその光景を見て一護がこぼす
「いいえ、あれで死ぬんならただのバケモノですむ話ッス」
「一護、話は後よ__きっと出てくる」
「その通りだ」
目を離してもいないのに気配も感じていないのに。
藍染は白で全身を埋めつくした姿で真咲らの間に現れた
その場の全員がその姿にハッといきをのみこむ
「自ら開発した鬼道で内側からやく__私が相手じゃなければ、否__。崩玉を捉えた私じゃなければ、勝負は終わっていただろう。残念ながら君が作った崩玉も浦原維助が作った霊刀も理解を超えているものとなった
私の霊刀は斬魄刀ではなく魂と、体と融合した。己の意思で霊子を吸い取り己の力に変換。それは正解だ流石は浦原維助の弟なだけはある。不安定なのも肯定しよう」
胸元の崩玉に触れる藍染
「この子らは仲が悪いようでね、だがそのうち完璧に融合するだろう。そうすれば別の霊刀ですら抑え込めるようになり、霊子で形作った攻撃や防御の完全無効化、霊子を己の霊力に変換しただの攻撃を数段の力に変換し放出__黒崎真咲、君の霊刀…いいや浦原維助が作った霊刀など、とうに超えているのだ。完全に支配し飲み込まれることもない、意思があるからこそ理想の形に進化する。」
そう、別な霊刀で対処する、そして吸収を上回る膨大なエネルギーをぶつける事、その二つの弱点が無くなるというのだ。
斬魄刀の鞘を抜いた浦原喜助
「ふっ…聡明な判断だ。術が効かぬなら力で。だが浦原維助の弟とはいえ__」
「甘い、何度言わせるんスか。ボクが何度あの人の剣をみて、刀を交わしたと?貴方よりも何倍も彼を見てきた」
「ふっ___確かに私は君を甘く見ていたようだ」
腕が痺れるような痛みを感じ
片手で喜助の刀を受け止めた藍染が笑いを零す
後ろから一心が襲い、腕と足に鎖を繋ぐ
「なんのつもりだ__こんなもの……!なっ四楓院夜一」
先程まで藍染がいた場所は土煙で覆われた、上空から夜一が藍染に攻撃を食らわせたからである
「どうじゃ…少しは____」
「っ…!夜一サン!避けてください!!!」
夜一のつけていた片足の鉄甲が砕け散り咄嗟に距離をとる
立ち上がった藍染は無傷であった___。
「
「なんじゃ!儂が気を抜いたせいだとでもいいたいのか?ん?」
「いやーそんなんじゃないんスけど…」
「作り込みが甘かったせいじゃろ!!」
夜一の足に目を向けた藍染
「成程、確かに特別なもののようだ、私の一撃で足が無傷というのは、浦原維助の弟なだけはある」
「儂の足が特別なんじゃ」
「…藍染サン。1ついいっスか」
そんな藍染に喜助は鋭い目を向ける
「ずっと疑問だったんスよねぇ。どうして兄サンにそこまで執着するんスか」
浦原維助の弟なだけはある
浦原維助の弟子だな
浦原維助の___
確かに藍染は浦原維助のことばかりを口にしていた。
「彼は特別だからだ」
「特別?」
「初めて
私は彼を理解し彼の思想を肯定し、彼と渡り合える力をようやく手に入れた。特別な死神を特別視するのは当たり前のことだろう?」
すると、喜助に問うように首を傾げる藍染
「なぜ、私ばかりを敵視するのか理解できないな。私は崩玉と霊刀を使い君達の敵となった…が、内側にいる浦原維助はどうだと思う。切っても切れない尸魂界の一部となり、法を作り味方を作り、思想を作り、外堀を埋めた彼は…敵では無い。そう言い切れるのか」
その言葉に目を見開く一護
霊刀を作った維助。藍染と知り合いの維助。
外堀を埋めている、内側から呑まれる。
確かに___そう思えば…っと一護は思考をめぐらせる。
「私と彼はやり方が違うだけ___そうは思わないのかい」
「弟であるボクが…兄の行動に気を使わないとでも?知ってますよォ。貴方が兄サンを知るずっと前から…ね。それを対策しないボクじゃない。あらゆる未来を想定している、兄を止めるのは弟であるボクの役目ッスから」
「_____成程」
一護はなんの話をしているのかは理解できなかった。
そう…だが、藍染と喜助は話が噛み合い自分の知らない何かを話している、それは理解できた。
「なぁに、面白そうな話してんじゃん。俺の事大好きかよ2人とも」
その雰囲気に合わない呑気な声が上空から聞こえる
「いやぁ、弟と男に言われてもねぇ…女の子に言われるならまだしも…」
よっとでも言いたげに片手を上げた浦原維助が現れたのだ。
「ようやくお出ましか___随分と遅かったじゃないか」
「本当に惣右介…?だよな、なんか姿変わったなイメチェン?いやぁ、ちょっと黒膣走ってたら落ちちゃって!」
落ちれば虚圏と現世のどこともしれぬ空間に落ちて帰ってこられなくなる__はずなのだが
「いやなんでそれで戻ってこれたんスか。」
「いやぁ、頑張った」
「頑張ったってお主…」っと呆れたような目を向ける。
スタッと夜一の隣に立った維助
「とりあえず久しぶりだな、惣右介。いやぁ、過大評価してるところ悪いし俺が敵とか何とか言ってるけど…夜一さんと喜助がいる限り。俺はこっち側だよ」
「へぇ___」
2人の後ろに周り肩を組む維助
「まぁ、やろうと思えば頂点にたてるだろうね。俺強いし、もう最強ってかんじ?まぁ、全てを手に入れたら面白そうだな〜って思ったことあるよ?そりゃ男は勇者だけじゃなく魔王にも憧れるもんだろ?」
惣右介はゲームわかんないか、っと零す維助が心底楽しそうに笑う。
「でも俺2人のこと大好きだからさぁ。こっち側にこの2人がいる限りおれはこっち側、もし2人が世界の敵になるなら俺は喜んで2人につくよ。
そして喜助が俺に埋め込んだもんはいわゆる保険だよ。とっくに気づいてるさ、そういう喜助だーいすきだぜ。」
それに、敵に回すと俺の技術見てもらう人減っちゃう。なんて言って2人に体重かける維助
「重いっス。」
うりうりと、頭を撫でる維助に心底ウザそうな顔を向ける喜助
「て、照れるじゃろ…」
大好きなんて…っと口をとがらせてそっぽを向く夜一
「そうか____なら。その手網を斬ってしまおう」
理想の霊刀____それは対維助の為に。
崩玉との融合で反発し不安定とはいえ
判明している能力だけでも___
鬼道系の攻撃の無効化、更に意識を呑まれず、霊子を確実に操り、吸収し霊力に変換し、攻撃力を上げ放出、崩玉と融合したことにより限界値は無いに等しく____。
自分で自在に操れる霊刀、オンオフも自由。意志を持っているため不意打ちすら無効化し、並の死神なら霊力を全て吸われ消滅する。
───そして維助の全てを防御する霊圧硬化も剥ぎ取る。
「はは、全力バフをかけたお前を倒す俺、かっこいいだろうなぁ、そうだろう?久しぶりに___剣を交わそうか」