それはきっと、変わらない。
いつだって心配で、でも何処かで安堵して。
親心だって、難しい。
やれやれ、どうも防御力が落ちてきたかな。
夫が仕事で数日留守にしたくらいで、娘に逢いたくなるなんて。
こないだ久し振りに千夏と暮らした一ヶ月が、恋しくて仕方ない。勝手の違うマンスリーマンション暮らしではあったけど、母子水入らずだったし。
こっちに越してもう半年以上になるけど、やっぱり家族が揃わないのは辛いな。
でもま、千夏の意思は尊重したい。かつて私の勝手で、それを歪めてしまったのだから。
「ままっ、ちーもこれやりたい!」
プロバスケの試合映像に目を輝かせる幼い我が子、それを見て抱いたのは若干の不安とそれを上回る満足感。そして――小さな罪悪感だった。
まだハイハイしていた頃からそばにバスケットボールを転がし、遊びと言えばボール投げ。事ある毎にバスケの動画を流し、興味を持つように誘導していった。全ては「自発的に」バスケを始めさせる、その為に。親が押し付けてもどうせうまくいかない、あくまで自分の意思で始めた事にしないと。
千夏には私の夢を継いで欲しい、私たちが掴めなかった全国制覇を成し遂げて欲しい。そう思うから、私は千夏を
なにしろ当時の千夏は友達と遊ぶより私とボールで遊ぶのが好きで、結構な人見知りに育ってしまっていた。本来なら同年代の子供たちの中で揉まれて対人能力を育む時期に、徹底してバスケの英才教育を施したのだから当然ではあるんだけど。でもそれが後々千夏の人生を縛るかもしれない、と思うと少しだけ胸が痛んだ。
それに、だ。小学生のうちはともかく、中学になっても色恋沙汰の気配さえ無かったんだよね。普通それくらいになったら、惚れた腫れたと騒いでてもおかしくないのに。我が娘ながらさすがに心配で、それとなくあれこれ聞いては見たけど「バスケで忙しい」だもんなぁ……。私がそれで後悔してるんだよ、勢いで遊べる年頃のうちに
それはともかく千夏だって御年頃だし、久し振りに逢った時にはずいぶん大人っぽくなっていて驚いた。たった5ヶ月で、あんなに人は変わるのかと思ったくらい。あれはもしかして、大喜くんと何かあったのかな。うーん、もしかしたら由紀子と親戚になる日も来るんだろうか。でも大喜くん、由紀子に似て奥手っぽいんだよね。人見知りと奥手じゃ、難しいかも。
私としては、あの二人がくっつく分には歓迎なんだけどね。由紀子はどうかな、さすがに渋るかも。
私と由紀子は同じ夢を追って、でもそれを果たす日は来なかった。だから次の世代に託したんだけど、――じゃあそれで果たせなかったらどうするんだろう。
また次へと送るんだろうか、孫の代曾孫の代まで。
逆に千夏が私たちの願いを果たしきったなら、その先はどうなるんだろう。今のご時世は人生100年時代、まだ80年以上残ってるのに「じゃあ後は自分で考えなさい」なんて無責任すぎる。
どうなろうがどうしようが、千夏の高校生活はあと一年半。高校バスケ引退までは一年くらいだろう。その間に、次の目標を見出だせるんだろうか。千夏にとって、何が最善なんだろう。
――ああ、全く。こうやって離れて暮らしている分、余計なことをかんがえていけないな。
あの子だって、いつまでも私の小さな娘じゃない。どんどん大人になって、羽ばたいていくんだ。
きっと大丈夫、何しろこの私が股を痛めて産んだ子なんだから。
私は私で、どうにかやっていこう。遠い空の下で、娘の幸福を祈りながら。
千夏ママの名前はオリジナルです、何回か使ってますが公式の名前が出てくるまでは多分使い続けます。