その鴉天狗は白かった   作:ドスみかん

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お久しぶりです。
幕間となりますが、試運転までに投稿させていただきますね。


幕間︰色鮮やかなる雲煙過眼

 

 

ーー物事には必ず始まりというものが存在する。

 

 

生き物は母から産まれた瞬間に、焔は種火が息づいた刹那に、物語は最初の一文字が描かれる時に。それ故、妖怪にも『その時』は存在する。『己』の場合は唐突なもので、気がつくと大きな大河を眺めるようにして座り込んでいたのが始まりだったと思う。

付喪神のように道具から変化したわけではない、一部の魔女たちのように人間から成ったわけではない、白い翼の少女のように両親から産まれたわけでもない。

 

単なる偶然か運命に導かれての必然か。これといった産声を上げることもなく、誰かに祝われることもなく。ともかく己という妖怪は、もう思い出せない遠い昔に広い大陸の何処かにて生まれたのである。

 

生を受けてから、しばらくは戦いに明け暮れる日々だった。

別に手先が不器用というわけではないし、やろうと思えば『能力』で風水師や気功師の真似事もできただろう。しかし、そこは自分も生まれたぱかりの妖怪だったためか、血気盛んな方へと走っていってしまったわけだ。人間と殴り合ったところで負けるわけもなく、槍や弓矢で刺された程度で死ぬこともない。戦には事欠かない土地柄だったこともあり、何十年かはそうやって暇を潰して暮らしていた。

 

しかし、ある時から戦いへの情熱は失せてしまった。今でも原因は分からない。あれほど拳を振るっていたというのに飽きてしまったのか、それともようやく罪の意識でも芽生えたのか。願わくば、後者であって欲しいと今では思う。

 

そして自分のような種族も不確かな妖怪は、産まれた土地を離れたところで大きな制約が生じるわけでもない。あっさりと故郷を離れてしまうという選択肢に、何一つとして後悔はなかった。

 

数年くらいだっただろうか。

放浪した末に辿り着いたのは後々に絹の道と呼ばれることになる通商路の一つであり、ここで何故か自分は砂漠で道案内なんてことをしようと決めたのだ。単に砂漠に潜む盗賊よりも、活気に満ちた商人たちが好きだったからという理由だけだ。思えば、この頃に一番多くの人々と出会ったような気がする。

 

 

ーーーやがて海路が確立されたことで、賑やかだった路が廃れて見る影もなくなるまで。ほんの数百年の賑やかな思い出だ。

 

 

その後は、西の国まで行ってみようと思った。

かつて自分が見送ってきた彼らのように、自分もまた長い旅に出ようと決めたのだ。あれは希望に胸膨らませた出立で、何一つ見通しも立っていなかったけれど、砂漠の星空のように清々しいものだったことを覚えている。

あとから考えると、これも今の主人が『能力』で仕組んでいたのかもしれないのだが、考えても仕方のないことだろう。あの時の気持ちに嘘はないのだから、それだけで十分なのだ。

 

道中の言葉は旅人たちから教わったモノが役に立った。お金は常に不足していたが、そもそも地面で横になったところで野盗や飢えにやられることもない。せいぜいが立ち寄る街の名物を食べ歩く時に使うくらいなのだから、さしたる問題でもなかった。延々と何年、何十年と徒歩で旅を続ける。

出会いは無数にあり、当然ながら別れも同じ数だけあった。時には余所者として追い払われたりもしたし、若い青年に恋文を届けられて苦笑いしたこともある。

数えきれない都市を訪れた。建築物は泥を固めたモノから木造やレンガまで、生活の糧となる放牧や栽培も多種多様。どれも見たことのない人間たちの姿だった。自分が見送ってきた商人たちの子孫も、あの中に一人くらいいたのかもしれない。

永い永い時間を掛けて、長い長い旅をした。まるで何かに惹かれるように西へ西へと。

 

 

そして、旅路の果てに自分は遂に『紅い運命』と出会ったのだ。

 

 

あれは満月の夜、人里離れた廃れた教会でのこと。

その建物に住んでいた人間は絶えて久しかったようだが、まだまだ屋根と壁は朽ちていなかったので一夜の宿として利用していたのだ。古びた宗教画の飾られた礼拝堂、かつて信者たちが祈りを捧げていたであろうベンチで横になって目を瞑る。異国の神々に見張られているかのような雰囲気は落ち着かなかったが、その程度で眠れなくなるほど繊細な神経はしていなかった。やがて半刻もしないうちに、自分は緩やかに意識を闇に沈めていた。

変化があったのは、夜が日付を跨いだ頃のこと。

 

 

「………随分と、デカイのが来てますね。縄張りにでも入り込んでしまったのか、それとも単に餌を求めているのか。いずれにしても、戦闘は避けられそうもない」

 

 

教会の入り口に張り巡らせていた『気』から伝わってくる『震え』が侵入者の到来を告げている。瞳をゆっくりと開くと、音を立てずにベンチから起き上がった。近づいてくる気配は一つ、されど妖力は一級品で文字通りに一騎当千といったところ。硬い石の床を叩くのは、高いヒールの靴音。気配を隠すつもりはないらしい。まるで散歩でもするかのように軽快な足取りで何者かは近づいてくる。距離が縮まるにつれて、絶大なまでの『チカラ』が壁と天井を独りでに軋ませていく。

そして、ひび割れた天井から降り注ぐ月光の下、悠然と気高き夜の支配者は姿を現した。

 

 

「ご機嫌よう、良い月ね」

 

 

夜にあって僅かな光で輝きを放つ蒼銀の髪。

レースを施された優美なドレスから覗くのは、星空に透けるかのような白磁の肌。ただ立っているだけだというのに気品のようなモノを感じさせる佇まい。そして、何よりも鮮血のごとくに染まった真紅の瞳。そのいずれもが己の今まで出会ったことのある妖怪とはかけ離れていた。武器もなければ、妖気も漂わせてはいない、そこにいたのは何処までも少女然とした化生であったのだ。

 

 

「ちょっと、この私が挨拶しているのよ。恭しく従順に、かつ早急に返事を口にするのがマナーではないかしら?」

「…………これは失礼しました、私は美鈴と申します。東の国からの単なる旅人ですよ。よろしければ、貴女の名前をお尋ねしても?」

「まだ駄目よ。西の事情に疎いアナタは私の名前を聞いたところで、その重みが理解できないでしょう。それなら、まず私のチカラを見せた方が話も早そうだから」

「それはどういう意味でしょうか」

 

 

夜風に転がる鈴の音のごとく。

その少女の声は穏やかに鼓膜を揺らし、知らぬ間に警戒を緩めてしまうほどで心地良いものであった。恐らくは『魅了』の力を宿しているのだろう。この娘は相手を油断させて喰らう妖怪なのだと拳を固く握りしめる。それを見て、魔性の主は愉快そうに顔を歪めていった。

 

 

「そうね、それでいいわ。この程度の術中にまんまと囚われるようなら『要らない』もの。そして、魅了に気づいたからといって性急に反撃してくるわけでもない。ええ、アナタは合格よ」

「どうも、それでは帰ってもらえると…………」

「だから私の下僕になりなさい」

「………え?」

 

 

この言葉は流石に予想していなかった。

過ごしてきた時間が時間だけに、罵倒を投げかけられたことは数あれど軍門に下れと言われたのは初めてのパターンである。いや、目の間の少女にとってはそもそも相手を貶しめるつもりもないのだろう。他者が己にかしずくのは当たり前のことであって、支配者として命令を下しただけのこと。別にこれくらいで怒りを覚えるような己ではないのだが、少なくとも会ったばかりの相手に従属せよなどという類のモノを了承できるはずもない。

 

 

「謹んでお断りします。私は誰かの配下となることも、誰かを傘下にすることも永劫ありません。根無しの草こそ我が生き様、故に私が私である限りは貴女の提案を受け入れることはありえない」

「根を張らず、葉を広げぬ植物が花を咲かせることはないわ。東方からの旅路は心躍るものだったのでしょう。であれば、その思い出を糧として、そろそろ腰を落ち着かせてなさい。私の傍でね」

「っ、来ますか!」

 

 

大気を焦げつかせていく紅い魔力。

その全ての威圧感は美鈴一人に向けられており、教会の周囲には殆ど漏れ出していない。はっきりと可視化するほどに凝縮されたチカラの波は、幼い少女から放たれているとは思えぬほど異質なまでに精錬されていた。『気を使う程度の能力』を持つ自分であっても、これと同じ大きさの妖力をここまで完璧に制御することは果たして可能だろうか。

強大なチカラを持ち、それを正しく運用する敵。久方ぶりの格上の種族との戦い、どこか高鳴る胸の鼓動に気づかないふりをして己は地面を蹴る。

 

そして次の瞬間には、美鈴は銀髪の少女を拳の間合いへと捉えていた。

 

狙うは一撃致命、気を足裏と大地に集中させて弾くようにして身体を押し出す技法。故郷にて身につけた武術の一つ、届かぬはずの距離を縮めて己を相手の懐に潜り込ませる。その名を『縮地』という絶技が夜の王の隙を突き穿つ。僅かに目を見開いた少女の顔が見えた、この好機を逃すつもりはない。

 

 

「『螺光歩』!!」

 

 

全力で振り抜いた拳。

直線の移動に伴う速度を、余すことなく乗せた一撃。完全に虚を突いたであろう剛拳は少女の胸元へと吸い込まれるように引き寄せられ、そしてーーー。

 

 

「ーーー終わりです」

 

 

その肉体を貫いていた。

全霊を乗せた掌打は少女の皮膚を容易く引き裂き、肉を抉り取り、骨を打ち砕く。吹き出す冷たい血液が腕を伝い、赤い美鈴の衣服を紅く染め上げていく。衝撃波が背中から通り過ぎ、少女の後ろにあるガラス窓が弾け飛んでいた。

狙ったのは、大抵の妖怪でも致命傷となる心臓だ。そして己の拳は確実にソレを破壊している。相手が手の内を晒す前にケリをつけるというのは、定石通りの戦法なのだが上手くいったらしい。小さく安堵のため息をつき、ゆっくりと少女の身体から腕を引き抜こうとした。

 

 

「ーーーへぇ、ここまで肉体を損壊させられたのは初めてよ」

「な、ぁ!?」

 

 

愉快そうに歪められた少女の口元。

致命傷を与えたはずの相手が平然と言葉を発した事実に戦慄する。己の右腕は尚も少女の心臓を貫いており、今も割れた水風船のように冷え切った血液が傷口から流れ出ているのだ。これは幻影でもなければ妖術でもない、それなのに大穴が空いたまま目の前の存在は動いている。腕を引き抜き、すばやく少女から距離を取るために後ろへと跳躍した。

ありえない、と心の奥底で驚愕する。

 

 

「ーーーああ、さっきの拳打はひょっとして『毒手』だったのかしら? ダメージと同時に傷口へ気を流し込んで、受け手の肉体再生を阻害するとかいう東方の戦闘技法。ふぅん、それなら穴が塞がらないのも道理ね」

 

 

敵を内部から破壊する気功の極意。

基本的に多少の傷ならば回復してしまう妖怪に対して、美鈴が使用している対処法。相手の損壊箇所に気を叩き込むことで、妖力の流れを乱して回復を阻害することが可能となる。故に心臓やその周辺に喰らわせたなら、大抵の敵は倒すか行動不能にできるはずなのだ。

だが、まさか『傷を治すことなく』行動してくる敵がいるとは思わなかった。次の一手を考える美鈴へと、血塗れの怪物が笑いかけてくる。

 

 

「少しだけ待ちなさい、流石にこの状態で決闘を続けるのは優雅じゃないわ」

 

 

ズルリと少女の傷口を紅い魔力が覆っていく。

治すことは諦めて、とりあえず塞ぐことにしたらしい。出血は即座に止まり、衣服を濡らしていた紅色もまた抜け落ちるようにして地面へと流れ落ちていく。そして数秒も経たぬうちに外見は美鈴からの一撃を受ける前まで巻き戻されていた。その胸に空いた衣服と身体の穴を除けば、であるが。

教会に飾られた天使の宗教画、そこに朽ちたステンドグラスから月光が零れている。神の福音を聖なる預言者に告げに来た瞬間とされる絵画であるが、気のせいか描かれている天使たちが怯えているように見えた。呼吸をするごとに、教会に満ちた闇夜の気配が濃くなるのを感じる。やがて、ぞっとするほどの魔力が大気と余すことなく混ざり合い、遂に幼き姿の怪異は口を開く。

 

 

「『スピア・ザ・グングニル』」

 

 

夜の月が、吸血鬼へと微笑みかけていた。

少女が指を鳴らすと先ほど地面を染めた血液が渦を巻き、月光を帯びてその手に集まっていく。収束する血と魔力は意思を持っているかのように、武器の形へと変化していく。やがて幼き少女には巨大過ぎるほどの紅槍が姿を現していた。

 

 

「さてと、美鈴……。こんなにも月が紅いのだから、本気で相手をしてあげる。せっかくだし、私をもう少しだけ楽しませてみなさい。私が名前を名乗りたくなるくらいにね」

 

 

顔を引き攣らせた己へと下された絶対命令。

黒い翼を広げて、吸血鬼の少女は戯れるように迫りくる。必殺の槍たるグングニルは、ただ通過するだけで触れてすらいない教会の壁を崩落させていく。速力も腕力も、妖力さえ遥かに上回る。おまけにこちらの攻撃は不死の肉体に阻まれるという八方塞がり。後にも先にも、本気で逃げ出したいと美鈴に思わせた戦いはコレだけであった。

 

 

満天の星空が輝く下、こうして紅魔の主と門番は主従関係を結ぶことになる。

 

 

◇◇◇

 

 

「ーーーというのが、私とレミリアお嬢様との出会いです。この後、ボコボコにされた私が当時の紅魔館に引きずられて行きまして、そのまま部下になった感じですねぇ」

「いや、何て言うか。聞いているだけでも凄まじい出来事ね。単なる殺し合いからの誘拐じゃない、ソレ」

 

 

紅魔館のテラスにて、門番の昔話に苦笑いを返す白い少女。

今日はレミリアとの会合があったので、そのついでに美鈴と話をしていたところ昔話に花が咲いた。二人の掛ける木製のテーブルの上には、大陸の名産品である茶葉を使った紅茶が何種類も置かれている。庭師も兼任している美鈴が丹精に育てた西方の草花が咲き誇る花壇で採れたお茶の香りは、時間が経つのを忘れてしまいそうだ。

まあ、話の後半が血生臭すぎて、すっかり現実に引き戻されてしまったわけなのだが。

そんな刑香を見つめながら、いつもの笑顔で美鈴は話を続ける。

 

 

「いやー、あの時のお嬢様は今より戦い馴れてなかったので酷い目に会いました。逆に言えば、本気に近い状態のお嬢様と戦えたわけなので得をしたとも言えますけどね」

「つまり、戦闘経験があまり無かったレミリアが手加減の仕方が分からなかったってこと?」

「そういうことですね。グングニルで四肢の二つを持っていかれましたし、蹴られて内臓やら骨も次々と潰されましたよ。刑香さんもいないのに、あの状態でよく生き長らえたものです」

「多分、攻撃は本気だったけど戦闘自体は死なない程度で止めたんでしょうね。なんとなくだけど、そんな気がするわ」

「あー、そう言われると死ぬ一歩手前でしたね」

 

 

ヘラヘラとした美鈴はまったく気にしていないようだし、レミリアにも考えはあったのだろう。しかし、それにしても今の二人しか知らない自分には信じられない話である。恐らくは、レミリアの胸をぶち抜いた頃の美鈴は今ほど相手に手心を加える妖怪ではなかったのだろう。そして、レミリアもまた戦闘において相手に合わせて加減が出来るほど器用でもなかったのだ。つくづく、吸血鬼異変で戦ったのが今の二人で良かったと思う。『死を遠ざける程度の能力』があるので、自分は致命傷を貰うことはないものの手足の一本くらいは跳ね飛ばされていたかもしれない。

やれやれと思いながら、刑香は空になったカップを机に置いた。

 

 

「………ところで、その子もひょっとして攫ってきたのかしら?」

 

 

赤髪の門番が座る席の後ろ側。

気配を殺して控えていたのは、銀髪碧眼のメイド少女。見た目は幼い人間の童女だが、どことなく研がれたばかりの刀身を思わせる鋭利な雰囲気がある。子供ながらに妖怪退治屋のようなことを生業としてきたのかもしれない、もしくはもっと『血生臭いモノ』だろう。吸血鬼異変にはいなかった新顔であり、その後に紅魔館の一員にしたとレミリアが以前に語っていたはずだ。吸血鬼と魔法使い、妖怪に妖精しかいない屋敷で唯一人の人間というのはあまりにも異質である。

 

 

「ーーー咲夜は拾ってあげたの、私から攫いに行ったわけではないわ。むしろ、そういうのは天狗の領分なんじゃないかしら。ねぇ、大天狗さん?」

「残念ながら幻想郷で人攫いはご法度よ、紅魔の主さま?」

 

 

頭上から掛けられたのは、悪戯心を込めた幼い声色。

すると咲夜と呼ばれた少女はふわりとスカートを摘み上げ、二階のバルコニーから庭先へ降り立ってきた己の主へと軽く一礼した。次の瞬間には刑香の隣に椅子が一つ増えており、ご丁寧にティーカップとクッキーまでもが用意されていた。まるで魔法でも使ったかのような出来事であるが、この少女にとっては当たり前のこと。『時間を操る程度の能力』を持つ紅魔の新たな一員、十六夜咲夜の動きを捉えることは不可能に近い。そんな従者の姿を一瞥してから、レミリア・スカーレットは上機嫌な様子で席へと腰掛けた。

 

 

「美鈴から始めて、これでようやく何百年も思い描いていた盤面が整ったわ。前回の異変では咲夜がいなかったし、クイーンがお転婆過ぎてゲームどころじゃなかったもの」

「アンタが王で、美鈴が騎士、パチュリーが僧侶、フランドールが女王だったかしら。チェスのルールに従うなら、咲夜は……」

「ルーク、つまりは塔もしくは城よ。王と女王に次ぐ価値を持つ大駒、チェスにおいて最後まで王を護る側近。私がこの子に期待する役目はそんなところね。ふふん、次の異変が楽しみだわ」

「別に起こすのは構わないけど、程々でお願いしたいところね……。あまり人里や御山に被害が出たら、その埋め合わせが大変なのよ」

 

 

それも面白そうだとレミリアは笑う。

どうやら自重を求めるのは望み薄のようである。しかし、この吸血鬼の場合は引き起こす出来事に大抵は何らかの意味がある。悪戯に異変を勃発させることはないだろうと刑香は思う。チラリと美鈴へと視線を送ると、こちらの考えを見透かしたように笑顔で頷いていた。

さらりと紅色の髪が風に踊る。かつては大陸中を放浪していたという色鮮やかな門番。どこまでも広がる荒涼とした世界を旅した過去は遠い時間の向こう、今は紅魔館を囲む庭園を歩き回るのが日課であるらしい。

 

軽い気持ちで刑香が尋ねてみたのが始まり。

しかし、そこは何百年と生きてきた妖怪の身の上話。彼女が紅魔館に招かれるまでの歩んだ道程はとても興味深いものだった。それは縄張りを持つ妖怪であるが故に、あまり山から離れたことのない己にとっては得難いモノでもある。また機会があれば、他の顔見知りにも同じ話を持ちかけてもいいかもしれない。もちろん、相手が快く了承してくれればであるが。

すっかり冷めてしまった紅茶を、澄んだ空色の瞳で眺めながら刑香はそんなことを考えていた。

 

 

これは、紅魔のお人好しな門番が白い天狗少女に話してくれた遠い遠い思い出話。

 

 

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