何度でも立ち上がる、いつまでもこれからも。
やるべき事は分かっている、進むべき道も見えている。
必要なのは、覚悟だけ。それを胸に、ただ前を見据えて歩く。
人を好きになるのは、楽しくて幸せだ。だからこそ、その終わりはあまりにも辛い。でももう、終わらせるしかない。私は大喜が好きで、でも大喜は私を好きになってはくれないのだから。
最初から分かっていた事だ、大喜が好きなのは千夏先輩だけ。私に向ける気持ちは、どこまでいっても「友達」で止まってしまう。嫌いではないけどそれだけ、好きなわけじゃない。そこで留まっていられればまだ良かったのかもしれないんだけど、そこまで器用なら悩んでないんだ。
張り裂けそうな胸の奥で、抑え込めない想いが渦を巻いている。
千夏先輩を押し退けて大喜の隣に立ちたい、とまで思ってしまう。あの人を大喜から引き離す事自体は不可能じゃないけど、でもそれをしてしまえばもう終わりだ。私へ向けられる気持ちは厭悪に変わり、この先もう二度と覆らないだろう。それは死ぬよりも尚苦しい、地獄に等しい状態。
それに千夏先輩の事だって、嫌いにはなれない。誰よりも懸命に道を往くその姿を見ていると、大喜が好きになった理由も分かるというもの。あんなにも眩しく輝く人に、私が勝てるわけがない。負けてもそれが清々しい、それに千夏先輩を好きになってから大喜もまたどんどん素敵になっていってるし。
千夏先輩がいなかったら私は大喜を好きにならなかったかもしれない、でも千夏先輩がいるから私は大喜と結ばれない。
まったく、これじゃどうしようもないな。打つ手も上げる手も無い、と来たもんだ。
私はきっと、大喜を忘れたり嫌いになったりはしない。初恋を捨てることは出来ないし、大喜はこの先も大喜だ。人が変わることなんか有り得ない、優しくて良いやつで居続ける。あのバカは死ぬまでああだろう、バカだし。
――にしても未練だな、私。あそこまで綺麗にフラれておいて、まだこのザマなんだから。面と向かって「好きになれない」と言われても、諦めきれていない。
もうちょっと頭が良かったら、少しは綺麗に引き下がれるのかな。他に好きな人を作って、そっちに集中したり。そう言えば伊藤くんがなんか私を好きっぽいし、乗り換えるとかもあったのかも。いや、でもなあ。そんな保留枠みたいな事するのは失礼か。人を好きになるって、そう簡単な事じゃない。
大喜を好きになって、私はずっと幸せな夢の中にいた。出来るならここに留まりたい、だけどそれは大喜に無理を強いるだけ。私はアイツの笑顔が好き、幸福を願う。そしてその為には私じゃなく、千夏先輩が傍にいてあげなければならない。
少しだけ悔しいけど、涙を拭いて前を向く。何時かは他の誰かを好きになるかもしれない、でも今はまだ誇らしい片想いを貫こう。
報われなくて良い、振り向いてくれなくて良い。私を――忘れてくれても構わない。
それでも私は、この気持ちを捨てたくない。恋より特別な関係でいよう、それで良い。
季節は冬を迎え、体育館は今日も騒々しい。バスケ部のウインターカップが近いからか、全体がピリピリと張り詰めている。大きな大会を控えた部活があると、いつもこうだ。伝播する緊張感は心地よく、なかなかに刺激的。
ここにいるのが辛い、と思った事もある。けど今はもう、そうじゃない。
私はここで止まっていられない、するべき事は山ほどある。新体操部は大会こそ無いけど、だからこそ基礎力の強化に忙しい。不調を引き摺っていられる程、暇じゃないんだ。
全力を以て自分を研き、耀かなければ。時が過ぎて思い出になってから、笑って振り返る為に。私が私でいる為に、何よりも胸を張って生き続ける為に。
さあ、戦え私。負けたからって負けっぱなしではいられない、蝶野雛を甘く見て貰っちゃ困る。
人生はここからだ、お楽しみはこれからだ。