サブタイトルは「(狩猟できるとしたら)なんだこのクソモンス!?」
もうちょっと大〇典に寄せたかった……!
武器回りの話や子供たちの話は、意図して省いています。
怨虎竜マガイマガドの特殊個体たる『怨嗟響めくマガイマガド』。その中でも一等異様かつ奇妙な特性、生態を獲得した特殊個体。
ハンターズギルドより「最たる危険度を秘めたモンスター」と呼ばれた怨嗟響めくマガイマガドを遥かに上回る危険性と凶暴性、しかしそれに相反するような理性的な側面を併せ持つ。
ユクモ村~カムラの里、またカムラの里と交流のあるとある王国においては、恋愛成就や夫婦円満、一途な愛を象徴する存在として人気があり、本個体をモチーフにした絵巻や物語、絵画が作られている。
カムラの里の英雄的ハンター『猛き炎』が呼称した「黒い鎧の将軍様」から取られる形で呼び名が定着した。
『黒鎧将』の名の通り、全身を黒曜石のように黒く煌めく『黒曜殻』が覆っている。この甲殻は触れるもの全てを傷付け、攻撃を受けると砕け飛散し、攻勢防御を成す。
この黒曜殻は尋常ならざる龍属性と、マガイマガドの扱う鬼火が結晶化し混ざり合い、常に熱を帯びており、攻撃者に対し夥しい切り傷と龍属性やられ、鬼火やられを与える。
だが、一度黒曜殻が砕けると他のマガイマガドよりも脆い本来の甲殻が露出する他、もう一度纏う為には後述する大技を使用する必要がある。
腕刃は右の刃が特異な変化を遂げており、血を塗り固め、それを薄く研ぎ磨いたような『赫刃』を擁する。左の鋸刃と比較し、見た目通りの鋭い切れ味に富んだ刃は、ディアブロスやバサルモス等の強固な甲殻を容易く切断する。
この腕刃を用いた『一極鬼火状態』で放たれる鬼怨斬は、かの冥淵龍ガイアデルムの翼腕の一部を斬り落とす程の威力を誇ることが確認されている。
七つの刃を持つ槍の如き尾には、血垢の背中の結晶のようなものがこびり付いている。これは冥淵龍ガイアデルムがキュリアを捕食し体に蓄えたエネルギーと同質のものであることが究明され、後述する状態に移行する際、結晶から何らかの方法でエネルギーを取り出して利用していることも判明している。
頭に頂く角は酷く破損し、鬼火を吹き出し続け、実体のない角を形成している。この吹き出続ける鬼火と紫煙を利用し、引火、誘爆させる際には、爆竹のような多段爆撃を行い、目くらましと奇襲を両立している。
この角から吹き出る鬼火は細やかな制御が可能らしく、鬼火を“置く”ようにたなびかせ、敵対者の行動を阻害するように起爆させる行動も確認されている。また、隻眼の影響か嗅覚が発達しているようで、視界が奪われた状態であろうと鬼火の残り香が残る獲物は決して見逃さない。
緊急時、非戦闘時以外は鬼火を消すようである。
しかし、右目の眼孔からの鬼火は消せないようで、妖しい紫の鬼火が目に宿るようにも見える。
従来のマガイマガドの特殊個体には、鬼火を一極的に部位に集めることでその効力を極限に高める『一極鬼火状態』『二極鬼火状態』が確認されていたが、黒鎧将は更なる段階、カムラの里での俗称として『血鬼火纏い』なる状態に至ることが確認されている。
赤紫を超え、龍属性そのものとなった真紅の鬼火で体の形すら覆い隠してしまう。この状態に達した黒鎧将のありとあらゆる行動、攻撃に鬼火の爆発と龍属性が伴うことになり、その攻撃範囲と殺傷性をより高める。
この状態で戦闘を続けることで鬼火の出力を最大限に高めた後、マガイマガドの大技『大鬼火怨み返し』を放つのだが、黒鎧将はその締めの段として『独り百鬼夜行・空亡落とし』と呼ばれる行動を行う。威力、範囲共に桁違いであり、目撃者から『黒い太陽が落ちてきた』『古龍非ざる生き物が出していい出力ではない』と語られ、さる王国に所属する研究者の話では「破龍砲と大差ないか、上回っているように見える」とさえ称されるほど。
この時の熱量と龍属性エネルギーを利用し、黒曜殻を再度体に纏い始めるのだが、そもそもの血鬼火纏い自体が黒鎧将に掛ける負担が尋常ではない為、全身から立ち昇っていた鬼火は鳴りを潜め、疲弊した姿を隠しきれず、攻撃の手も消極的になる。この時、その地域自体からの撤退を選ぶ場合もある。
また前記した特異な生態、『傀異化したモンスターたちを執拗に狙い、喰らう』ことが確認されており、傀異化したモンスターが現れた地域に積極的に現れ、これを狩る。そのため傀異化したモンスターを討伐する際、本個体の狩り、戦闘に巻き込まれる危険性が極めて高く、厳重な警戒が必要となる。
同時に、本個体の狩猟はハンターズギルドから推奨されていない。これは極秘裏に行われた王国とカムラの里、ハンターズギルドとの議論、協議の結果、「深淵の悪魔事変*1の終結が果たされるまでは基本的に手出し無用」として結論付けられた為である。そもそも黒鎧将がハンターや人間を狙うことに消極的である、というのも理由の一つであるか。
本個体がこのような変異を遂げた理由として挙がっているのは「深淵の悪魔事変でお気に入りの番を失った」ことが切っ掛けの一つではないかとされている。
本来、角の折れた個体は雄としての魅力を喪失してしまう。だが、それでも尚その雄を愛する個体がいたのならば。そして、それを失ってしまう出来事に遭遇してしまったのなら。
また、本個体が発する龍属性は龍気と似た性質を有し、共鳴した研修員の言を真実とするのなら「キュリアに寄生され、暴走状態になったバルファルクと会敵し、これを討伐。捕食したことにより、膨大な龍属性エネルギーをその身に宿したのではないか」と考察されている。
気付いた方は気付いたかもしれませんが、血鬼火纏い状態は、疑似的な傀異克服に近いものです。バルファルクと、皮肉なことに、キュリアも由来です。
以上で、拙作「マガメスになった元ヒトが怨嗟を慰める話」は完全に完結となります。
ありがとうございました。