原初の竜でも友達が欲しい   作:伊つき

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Lv.12の男

 

「あ、あれ……?」

 

ルシアは飛び起きると地上にいた。

バベルの裏口に放置されていたルシア。

なぜここにいるのかまるで覚えがない。

頭が痛み、抑える。

70階層で力尽きたのは覚えてる。

そこから先が思い出せない。

何やら夢の中で精霊による干渉があって脳に刺激を浴びた気はするが。

 

「……っ」

 

千里眼が起動する。

ギルドに連行される【グウィネヴィア・ファミリア】を捉えた。

都市の中で騒動を起こした罰だろう。

マリウスもユウカも連れていかれた。

これでグィネヴィアの戦力は皆無。

彼女の手から離れたルシアとリョーカ、アリーゼのみ。

 

「……」

 

とぼとぼと歩き始めるルシア。

目の前のベンチにとりあえず座った。

もうマリウス達を助けようとする気すら起きない。

そんなことをしても、彼ら程度の戦力などもう不要だからだ。

アリーゼはアストレアの元に帰り、ヴィヴィアンとは契約が切れ、タレイアは無気力。

リョーカも行方不明。

そして、ルシア1人では迷宮攻略はできないことも証明された。

もう……打つ手がない。

 

「……っ」

 

ルシアは項垂れる。

万策は尽きた。

迷宮を攻略する術はない。

それはつまり【アストレア・ファミリア】を救う手立てはないということ。

彼女達を諦めるしかない。

そんなのは嫌だ……とは思うが、もうどうしようもない。

できることがあるとすれば自暴自棄になってダンジョンに挑み、犬死することくらいだ。

 

「……」

 

ルシアは顔を上げることができない。

そんな彼女に日陰が差す。

それは人の形をしていた。

ルシアが瞠目し、彼を見上げる。

 

「その身体、お前がルシアか」

「あ、貴方は……」

 

ルシアの前に現れたのはヒューマンの男だった。

彼はルシアを見下ろしている。

彼女を映すその瞳は神が力を行使する時の煌めきを宿している。

感じる。

彼は、【神威(しんい)】を発している。

 

「これは対神特攻【神殺し】のスキルの能力の一つだ。神を殺すことに特化してるからな。標的である神ができることは模倣できる」

「神……殺し……っ」

「そうだ。ヴィヴィアンから聞いてるだろ。俺がそのLv.12。ナガト・レンだ」

「……!?」

 

ルシアは思わず目を見開き、彼を見上げる。

男はレンと名乗った。

レンは恩恵(ファルナ)を極めた唯一の人類。

タレイアの唯一の眷属。

そして、神を食ったモンスターを、黒神竜を唯一殺せる者。

 

「黒竜が神竜になった時、結界を破る。奴の目的は迷宮攻略。自分の力を試したいとか抜かしてやがる。だから、必ずこのオラリオに現れる」

「……っ!」

「俺なら奴を殺せる。が、倒せはしない。ステイタスが効かないからな。Lv.12の力も奴の前じゃ飾りだ」

 

レンはルシアから視線を外して遠くを見る。

彼にとって最後の戦い。

完全敗北の黒竜戦を想起しているのだろう。

だが、それも過去の話。

彼はルシアに多少の期待を向ける。

 

「お前に協力を要請したい。アンタレスに攻撃が通ったように、怪物(モンスター)の力を持つお前なら黒竜に傷をつけることができる」

「ま、待ってください。ヴィヴィアン様との契約は破棄されたんじゃ……まだ生きてるんですか?」

「そうか。アイツは人間には当たり強いからな。優しさを知られてないのか」

「えっ」

 

ルシアが困惑する。

ヴィヴィアンが……優しい?

恫喝してるところしか見たことないが。

 

「アイツは意外と甘ちゃんだからな。お前のことも見捨てちゃいない。ただタレイアを潰す為に行動した結果、立場上お前との契約を維持できなくなったから、俺が代わりに継続させに来た」

「……っ!そ、それは……つまり」

 

ルシアが喉を鳴らす。

彼が目の前に現れたその時から期待してしまったことだ。

全て失ったルシアにとって、砂漠の中で降り注いだオアシス。

その希望の輝きは、都合のいい妄想ではないかもしれない。

彼がルシアと接触しに来た理由が本当に彼の言う継続の為ならば。

ルシアは、瞳を揺らし、垂れた前髪から覗かせる。

その欲望の眼差しを、レンは受け入れる。

 

「俺とお前とリョーカで奴が迷宮入りする前に、オラリオに来た時点で奴を倒して殺す」

「……っ」

 

ルシアの前に、手が差し出される。

それは、ルシアが喉から手が出るほど掴みたいものだ。

絶望と虚無から顔を上げる。

 

 

そして、彼は言った。

 

 

「手伝え、ルシア」

 

 

 

その手を迷いなく掴んだのは、竜の手。

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