タレイアの次の狙いは闇派閥。
彼女にとって、正義の派閥だろうが闇の派閥だろうが関係ない。
力がある者は、全てレンの餌だ。
1つ誤算があるとすれば。
タレイアは結構計算が甘い。
「くっ……まさかオシリスの眷属があれほど強いとは……!」
テシレアに抱えられてレンと共に戦線離脱するタレイア。
正直舐めていた。
オシリスの眷属はLv.7の団長がLv.6やLv.5を大量に従えている。
強い派閥としか認識していなかったタレイアはレン一人で喰えると判断したが、大誤算だった。
そして、この敗走で、レンにはまた新たな出会いがある。
「タレイアちゅあ~ん!会いたかったでちゅよー!んー、よしよし」
「チッ」
キャンプ地でゼウスに撫でくりまわされ、しれっと足を触られているタレイア。
オシリスの追っ手から逃げきれなかった。
そこをゼウスとヘラのファミリアに匿われたのだ。
そうしてレンが出会ったのが、マキシムや【女帝】。
そして、アルフィアとザルドだ。
「よく逃げ切ったな」
「大した小僧だ。生きてるのが奇跡と言える」
「あ、あぁ」
レンは返答に困った。
Lv.8相当のテシレアを一瞥するが、彼女が怪人とは言えない。
彼女はゼウス達が現れたと同時に隠れた。
「タレイアちゃ~ん。今夜……俺のところに来いよ」
「……」
タレイアの顔は死んでいた。
久々に出会った愛人にゼウスは上機嫌だ。
まさか彼女が娘だとはまだ気づいていない。
タレイアはゼウスにガッチリ肩を捕まれ逃げられない。
彼女は今夜、ゼウスに奉仕する。
屈辱で死にそうだろうが、夜になれば愛する父に嫌われないよう、必死に気持ちいいフリをするだろう。
そして、彼の股間に顔を埋めるのだ。
それを求められ、それしか価値がないと判断されているから。
いつか見返してやると心に誓いながら、やる。
そして、翌日。
「……レン。まだLv.12にならないのか。悠長にしてる時間はない。まだLv.6なんだ。Lv.7への偉業如きで手こずるな。オシリスの眷属なんてさっさと殺せ」
「落ち着けよ……」
おもくそ機嫌の悪いタレイアは、手を組んで顎を乗せている。
その目つきは凶悪。
とにかく一刻も早く、闇派閥を喰ってほしいらしい。
「マキシム達の闇派閥討伐作戦に参加させてもらう約束は取り付けた。もうすぐだ」
「オシリスのLv.7は必ず君が倒せ。いいな?」
「……わかってるよ」
その後、作戦は決行され、レンは命令通り【オシリス・ファミリア】の団長にトドメを刺した。
とはいえ彼は特別なスキルは早熟だけで、魔法もない無能。
ただお零れを貰っただけだが、【
ナガト・レン Lv.7。
「レン。ダンジョンに行こう。バロールを単独で撃破するんだ。それでLv.8だ」
「わかった」
二つ返事で挑んだレン。
だが、簡単ではなかった。
いつの日かスキルの補正でLv.8相当の力を発揮するオッタルが同じことに挑む。
しかし、彼はバロールを倒しきれなかった。
ということは特別なスキルを持たないただのLv.7のレンでは達成できない偉業だ。
しかし、これをレンは力業で解決。
タレイアにLv.8になるまで戻ってくるなと言われたレンは、帰るに帰れず数ヶ月ダンジョンに住み込み、長い時間をかけてバロールを討伐した。
その結果、彼のランクはLv.8。
ダンジョンから帰ってきたレンはタレイアに提案する。
「暫くはマキシム達と一緒に行動しないか?闇派閥はまだ利用できる」
「……【ゼウス・ファミリア】と共に。それはつまり、僕に奉仕し続けろと?」
「す、すまん。けど【オシリス・ファミリア】の残党は【アパテー・ファミリア】に吸収されて残ってるし、【アレクト・ファミリア】も含めて叩けばLv.9も見えてくる」
「わかってるさ。はいはい。やればいいだろ?ただし、やるからには必ず達成するんだ」
「わかってる」
【ゼウス・ファミリア】、【ヘラ・ファミリア】と行動するレン。
【ロキ・ファミリア】の
これでレンはLv.9。
多くの仲間も失ったが、彼らは大きなことを達成した。
その祝勝会の夜だった。
レンはタレイアに連れられて宴の外で彼女と話す。
「レン。もう闇派閥に協力な勢力はいない。つまり君のランクアップに彼らはもう貢献できないということだ」
「あ、あぁ。そうだな。次はどこへ行くんだ?」
「…………ここだ」
「は?」
レンは真下を指さすタレイアに困惑した。
しかし、彼女は至って真剣。
レンはここで再び人の心を捨てることになる。
仲間と触れ合い、復活していた彼の心が壊れる。
また神化を目指す人形に戻る時が来たのだ。
「もう旨い餌は彼らと三大クエストしかない。君は今夜、彼らを襲うんだ。ゼウスとヘラの眷属を全て倒し、Lv.10となれ」
「は!?いや……正気か!あいつらは仲間だろ!」
レンが叫ぶ。
その言葉を聞いてタレイアは表情を歪め、彼の胸倉を掴んだ。
「勘違いするな。君に仲間などいない。裏切られた屈辱をもう忘れたのか?」
「……っ!そ、それは」
「それともあれか?女に裏切られ、その傷をエルフの女に癒してもらって解決したのかい?女、女、女、女女女女!性欲だけで満たされる燃費のいい生命体だな、君は!!」
「何の話だよ!なんでここでリヴェリアが出てくる!?」
「ハッ。所詮君は無能な生物だと言ってるんだ。そんな君が彼女に選ばれるはずがない」
「……っ!」
「ゼウスとヘラの眷属を倒せ。君が昇華し、価値を生むには神化しかない。女への未練は捨てろ。どうせ振り向かない。君は1人でも完全な存在になるんだ」
タレイアの凄みは迫力があった。
彼女の紡ぐ言葉はいつもレンを追い込む。
レンは表情を苦しくして……楽しんでいるみんなを見た。
マキシム。
アルフィア。
ザルド。
そして、メーテリア。
「わ、わかった。けど、メーテリアだけは勘弁してくれ。あいつは今、恋をしている。いつかはあの男と子供も生む。幸せな未来を奪いたくないんだ……」
「ふん。まあいいだろう。あんな雑魚、大して経験値にならない」
吐き捨てたタレイアはやっとレンを解放した。
そして、彼を鼻で笑う。
「これだけは忘れるな。君に仲間などできない。誰にも価値を見出されず、捨てられる。だから、裏切られた。君は無能で無価値な生物なんだ。それが嫌なら脱却しろ。そして、その方法は神化しかない」
「……わかってる」
レンは木に背中を預けてそのまま崩れ落ちた。
前髪を掴み、項垂れる。
でも、やるしかない。
タレイアは身を隠した。
今から戦闘が激化すると分かっているから。
そして、この後すぐ。
楽しい宴は地獄の内紛と化した。
勝者は、ナガト・レン。
マキシムと【女帝】、アルフィアもザルドも下し。
彼のランクは。
Lv.10。