「この後、暇かな?」
俺が話を聞くと、彼女は俺に膝枕をしてもらいたいらしい。

一話完結です。

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どうやらめぐり先輩は俺の膝枕をご所望のようです

「んっ」

 

 光沢のあるふっくらとした唇が緩くひらいて息を漏らす。彼女はうっすらと瞼を開けて俺を見た。

 彼女の内側、軟らかい肉の壁を俺は丁寧になぞっていく。かき回すように満遍なく壁をなぞりながら、徐々に奥へと侵入していく。

 これまでに味わったことの無い感触が身体の内側から伝わってきて彼女の肩が震えた。

 

「痛くないですか?」

「大丈夫、っ」

「動かないで下さい」

 

 俺は彼女の小さな入り口を覗き込みながら呟いた。

 

「う、うん」

「比企谷君、なんか、いやらしい」

「そうですか?」

 

 どうしてこうなったのか。時は少しさかのぼる。

 

◇ 

 

「比企谷君! この後、暇かな?」

「大丈夫ですけど」

「良かったぁ。あのさ、この後私と付き合わない?」

 

 目の前にいるポニーテールが良く似合う女性は両手を胸元で合わせて、ほんわかとした笑顔を浮かべる。えっと、どういう風の吹き回し? 顔でも貸されるの?

 

「どうしたんですか?」

「徹夜でレポート書いて寝不足なの。だから膝枕して」

「……はい?」

 

 貸されるのは膝でした。あまりにも唐突な申し出に、どこかの警部補みたいな返しをしてしまう。

 ここは大学のカフェテリア。目の前にいる女性は城廻めぐり。高校時代の先輩だ。

 俺とめぐり先輩は文化祭実行委員会で知り合い、奉仕部を通じて理解を深めた。文化祭での諸々で謝罪の言葉をかけられたり、連絡先の交換はしたりしたが、卒業したら会うこともなくなると思ったし、事実そうだった。大学で再会するまでは。

 

「比企谷君」

「……はい」

 

 それは素敵な笑顔で名前を呼ばれた。おさげがポニテに変わっていて、頼れるお姉さん感を醸し出してるかと思いきゃ、相変わらず可愛らしい先輩だ。

 

「少しだけでいいの、お願い」

 

 両手を合わせて、上目遣いでおねだりをしてくる。

「いいよね?」

 

 めぐり先輩はにっこりしながら圧をかけてくる。この後何回かループしたものの、押し切られて承諾した。それで現在、俺の家にいるというわけだ。

 

 

 俺は慎重にめぐり先輩の奥の部分に触れた。少し引っかかるような手応えがあり、そこを撫でるように指先を動かした。

 

「んっ」

 

 ほんの少しだけ強くこすられて疼くような快感が湧き上がる。

 

「ここですか」

「だめ、恥ずかしい」

「ま、誰だって溜まることはありますからね」

「言わないで……」

「……もうちょっと濡らした方がいいですね」

 

 そう言って俺は引き抜いていくと、めぐり先輩は切なげに息を漏らす。俺はそれを湿らせてめぐり先輩の中に沈めていった。 もう一度、さっき触れた部分を攻める。俺はその部分に濡れた棒の先で触れた。

 

「……んっ」

 

 めぐり先輩の反応を見ながら俺は慎重に動かしていく。たっぷりと湿らせて、擦り付けるとぬるっとした感触が伝わってきた。

 

「んっ、あっ……、はぁ……」

 俺は口元に笑みを浮かべながら、ゆっくりと引き抜いた。引き抜いた物を俺はしげしげと眺めてティッシュで拭った。めぐり先輩はその様子を視界の端で見ていた。

 

「そんなに、見ないで」

 

 そう言うめぐり先輩を尻目に、俺は入り口の周りのやわらかい肉に指をあてがって広げた。

 

「あっ……」

 

 思わず声が漏れる。そこは、まず人に触れられるような部分ではない。

 

「動かないで下さいね」

「……うん」

 

 俺はもう一度、奥へ、奥へと彼女の内側を探っていく。柔らかい壁に触れる様に撫でまわす。

 

「あ、んっ……」

 

 めぐり先輩は目を閉じて身体の内側を弄られる感覚を味わっていた。底知れない恐怖と快感に酔いしれる。まるで堕ちていく様な感覚に侵されて、その背徳感に理性を揺さぶられる。

 

「……ん、あっ」

 

 奥に触れていたモノが抜かれていく。奥から入り口へと擦り上がっていく、その感覚にめぐり先輩の唇はゆるく開き、溜息にも似た熱い息が漏れ出した。

 

「比企谷君、本当に上手なんだね。耳かき」

 

 めぐり先輩はゆっくりと身を起こす。

 

「……気持ち良かったよ。反対側ね」

 

 彼女が反対向きに横になったのを確認してから耳かきを始める。気付いた時には、めぐり先輩は穏やかな表情で寝息を立てていた。

 それにしても、その艶っぽさはまるで芸術作品だ。驚きの鑑定結果は……。

 

「……あれ、私、寝てた?」

 

 いつの間にか目を覚ましていた彼女が蕩ける目で俺を見た。俺の足は痺れて立ちにくかったけれど、まさに至福の時である。

 

「今度は私が耳かきするよ」

 

 めぐり先輩のありがたい申し出に、俺は何度か話の脱線を試みたが即座に修正されて、耳かきをされる体勢になっていた。俺はベッドで仰向けの状態になり、めぐり先輩の膝の上に頭を乗せる。こういう体勢だからか、めぐり先輩の顔がとても大人っぽく感じられる。

 

「どうかな、比企谷君」

「……凄く気持ちいいです。めぐり先輩の太ももが温かいし、匂いも」

「あはっ、変態だね。でも、こうして膝枕しながら耳かきをやりたいって思っていたの」

 

 満面の笑みで答える。無邪気に抉ってくる。色々と。

 

「男の子の頭を乗せるとこういう感じなんだ」

「光栄です」

「良かった。じゃあ、これからは定期的に比企谷君に耳かきしてもらおっと~」

「俺、勘違いしますよ」

「いいよ、それで」

 

 彼女は俺の頭を優しく撫でてくる。凄く幸せな気分になる。

 

「一つ訊きたいことがあるんだけど」

「何ですか?」

「……胸とか触ってない?」

 

 頬を赤くしながらそう問いかけてくるめぐり先輩。

 

「……触れませんよ」

 

 喋りづらいので必死に頷く。すると、めぐり先輩の笑い声が聞こえてきた。だが、めぐり先輩がなかなか立ち上がろうとしない。

 

「もしかして、足、痺れたんですか?」

「……ねぇ、比企谷君、どんな感じで動かせば良いかな?」

 

 めぐり先輩が頬を赤らめながら言う。

 

「えっと、左足をちょっと手前にすれば……」

「私の体を触って良いから教えて?」

 

 めぐり先輩が近づく。なに言っちゃってるんですか。誘っているんですか。こんな妄想する俺、馬鹿なの?

 

「……セクハラって言いませんか?」

「言わないから!!」

 

 その後、俺の手はポーズを取っている彼女に伸びる。触れる肌と肌。近づく体と体。

 

「はい、これでOK」

 

 俺は先輩を立たせると肩を離した。

 

「もっと、いろいろ触れても良かったのに」

 

 そうつぶやいたのを、俺は知らない。

 

「耳かきのお礼に料理作りましょうか」

「悪いよ」

 

 いつの間にかポニーテールに纏め、エプロン姿をしためぐり先輩が立っていた。

 

「動けなかったでしょ。座っていて下さい」

 

 俺がそう言うと、めぐり先輩は名残惜しそうにテーブルの前に座る。コップに水を入れて彼女に渡す。

 改めて冷蔵庫を開けて目につくのは、スーパーで安売りしていた大量のじゃがいもや安売り時に買った特大のマヨネーズ。これだけを見ると、ポテトサラダが思い浮ぶ。

 

「でもそれじゃ面白くないな」

 

 ならばちょっとくらい遊び心があっても良いのでは。だが、これでは由比ヶ浜のクッキー作りを笑えない。あいつ元気にやってるかな。

 そう考え視線を巡らせていると、いつしか隣にいためぐり先輩が声をかける。

 

「もしかして、何か考え事?」

 

 めぐり先輩が覗き込む。吸い込まれそうな眼をしている。

 

「サラダの材料を考えていたんですよ」

「……まぁ、そういうことにしておいてあげる」

 

 エスパーですか。そして、置かれていた南瓜に目が止まる。表面にはシール状の値札が乱雑に貼られたままだった。それを手に取ると、まな板の上に置き包丁を刺し入れる。

 

「なにそれ、南瓜?」

「ええ」

 

 俺は真っ二つに割り、適当な大きさの角切りにしていく。じゃがいもも皮を剥いて同程度の角切りにする。

 新品のビニール袋に両方を入れ、レンジへと放り込み数分待つ。その間にボウルを用意してバターを一欠け入れる。

 

「レタス入ってたらもっと良かったかな」

「無かったんですよ」

「我儘言ってごめんね」

 

 後ろから手元を覗き込むめぐり先輩に言葉を返しながら作業を続ける。

 溶けたバターと少々の塩が入ったボウルへ、レンジで蒸し上がったメークインとバターを移し、形を崩さぬよう馴染ませていく。

 マヨネーズを少なめに混ぜる。ただ、これだけでは寂しいかと、黒コショウのミルを手に取る。それを多めに潰し入れ、風味付けにスパイスを少々。仕上げに焼いた厚切りベーコンを一口大に切ってサラダに添える。

 

「皿は棚に入っていますから持ってきて下さい」

「小さいのでいい?」

 

 混ぜていたヘラで、ボウルの縁で軽く叩く。音がすると同時に、鼻先を黒コショウの香りがくすぐった。

 めぐり先輩がいそいそと取り出した小皿へサラダを移す。揃って小さな卓の前に座り、手を合わせると、お箸で角切り状のサラダを掬い口へ運んだ。

 

「甘いね」

 

 一口食べると、その穏やかな甘さに息を吐いた。めぐり先輩も蕩けた顔をしている。良かった。

 まず真っ先に感じるのは、バターの食感。四角く切ったそれが噛まずとも舌の上で崩れ、熱したことによって強まった甘みがより色濃く感じられる。

 加えてマヨネーズが持つ酸味も、良い具合に甘さと馴染んでいる気がする。ベーコンもちょうどよいアクセントだ。

 

「なんか優しい感じ。まるで比企谷君みたい」

 

 突然の一言に、出来立てのサラダみたいに頬が熱くなる。温度上げすぎたか?

 

「お言葉ですが、優しくはないですよ、俺」

 

 そっとめぐり先輩の顔を見ると、なんかにこにこしている。

 

「ううん、比企谷君は優しいよ。でも不器用なんだよねぇ」

「まぁ、気を付けてはいるつもりですよ」

「はいダウト! さっき私を膝枕した後、足痺れていたでしょ」

 

 めぐり先輩は足元を見ながら言う。気恥ずかしさが先だったのか俺は何も返さない。

 

「君さ、自分のことになるとなかなか弱音吐かないよね」

「まぁそれは昔からですし」

「それでも、私が痺れていた時はすぐに手を差し伸べてくれた。しかも料理も作ってくれた」

 

 そして、一息ついてから、彼女は真面目な顔になって語り掛ける。

 

「ずっと全力で生きてたら、いつか潰れちゃうよ」

「そんなこと……」

 

 俺がそう言うも人差し指で俺の口に触れる。

 

「それが出来る人もいるけど、比企谷君は違うと思うな」

 

 いつの間にか俺の左隣に移動するなり寄りかかり、少しだけクッションが沈んだ。左腕から彼女の温かみが伝わってくる。

 

「高校の時も、大学入ってからもそんな感じ。頼りがいを感じちゃうから尚更そうなっちゃうのかもね」

 

 そんな俺を見ながら、めぐり先輩は目を細める。ヒグラシの合唱に合わせ、コップの中で重なった氷が溶けて存在を主張する。一呼吸置いてから続ける。

 

「私ね、君と一緒にいるとつい甘えたくなっちゃうんだ」

 

 めぐり先輩は少しだけ右に寄ると俺の肩を触り、撫でる。

 

「……肩、大きいね」

 

 めぐり先輩は俺の肩の上から下に手を滑らせながら語り掛ける。さっきとは打って変わって慈愛に満ちた表情で微笑んでいる。

 

「君も甘えていいからね。だから、良かったら私にも甘えさせてね」

「……善処します」

「あ~、それ、やらない人の言うことだぁ」

 

 頬を動かして大笑いしている仕草も可愛いらしい。

 

「なんだか気恥ずかしいです。ほら、サラダも冷めますし」

「……そうだね。私は気に入ったよコレ」

 

 目の前でお箸を口に運んだめぐり先輩は、頬を緩ませる。

 俺も再び口へサラダを運ぶと、鼻から強く抜けていく黒コショウの香りが漂う。淡白な芋とほんのり甘い南瓜、温かいサラダのおかげか、徐々に眠気を覚えるような感覚になる。

 

「お粗末様でした。ホント、おいしかったよ」

「まぁ、色々あって簡単な料理なら作れるようになりましたし」

「なんかもう、このまま寝てしまいたい気分」

 

 めぐり先輩が俺の肩に身を委ねる。彼女の温もりが伝わってくる。いつしか熱に浮かされたようにぼんやりとしてしまう。

 

「ほら、明日も早いでしょ。そんな態度していると勘違いしちゃいますよ」

「……ばか」

 

 めぐり先輩は一言俺を罵倒してから部屋を離れて行った。月明りに照らされて頬が赤く照らされている。

 沈黙と夏の宵闇が部屋を満たす中、いつもと違う香りが、周囲を違う空気に塗り替えていった。




いかがだったでしょうか。

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