タルタロスからのオール・フォー・ワン脱獄。それを機に壊滅状態へとなった日本。雄英高校を中退してオール・フォー・ワンを探していた僕、緑谷出久はA組のみんなに説得されて母校へと戻った。そんな僕を待ち受けていたのは――。
さくっと読めるので暇つぶしになれば幸いです。

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雄英高校の避難民を説得しようとしたのが峰田君だったら

 タルタロスから逃亡したオール・フォー・ワンを見つけ出すために雄英高校を中退した僕、緑谷出久。ヴィランとの連戦に疲労困憊した僕の前に現れたのはA組の仲間たちだった。仲間たちに説得されて母校へ帰ってきた僕だったが、そこで待ち受けていたのは罵声をぶつけてくる避難民たちだった。

 

「その少年がいるとオール・フォー・ワンがここへやってくるんでしょ?」

「あんたらを信用してここへ避難してきたんだ! それを裏切るのか!?」

「そいつをここへ入れるんじゃねえ!! さっさと追い出せよ!!」

 

 彼らの不安も当然だ。家族で非難してきた人たちもいる。妻のため。夫のため。我が子のために必死で危険因子を排除しようとしている。そして自分自身の命を守りたいという思いを誰が責められようか。

 だが、明確な敵意を向けられ僕はひるんでいた。やはり帰ってくるべきではなかったのだ。そう思い知らされたその時、一人の人物が大空へと飛び立ち校舎の屋上へ立った。

 

「みんな聞いてくれ!!!」

 

 峰田君は拡声器を手に避難民へ向けて叫んだ。

 

「この中でセックスをさせてくれる人はいませんか!? 僕とセックスをしてくれる人はいませんか!?」

 

 先ほどまでの喧騒が嘘のように静まり返り、雨音だけが周囲を包んだ。しばらくの沈黙の後、峰田君は意を決したように口を開いた。

 

「僕は童貞です!!」

 

 みながただただ呆然と屋上の峰田君を見上げている。峰田君はさらに続けた。

 

「僕は童貞であることを恥ずかしいと思った事はありません。何故なら僕はまだ高校生だからです。高校生で童貞は別に珍しくもありません。クラスメイトの男子も全員童貞です。だから今まで無理に童貞を捨てようとは思いませんでした。それに、オナニーで満足していました」

 

 そして峰田君は少し俯いて声を震わせた。

 

「だけど世界が変わってしまいました。オール・フォー・ワンによって日本は壊滅状態で、今まで信じていたヒーローたちは次々に離職し、もう誰を頼っていいのか分からない状況です。いつ死んでもおかしくない・・・・・・」

 

 そして峰田君は顔を上げた。

 

「だから!! 死ぬ前に!! セックスがしたい!! どうしても!!!」

 

 そして彼は再び俯いて寂しそうにつぶやいた。

 

「そうクラスメイトの女子に頼んだんです・・・・・・。ヤオモモに・・・麗日に・・・芦戸に・・・蛙吹に・・・。それ以外のクラスの女子にも頼んだんですけど、全員に断られました・・・・・・」

 

「私、頼まれてない・・・・・・」と隣に立つ耳郎さんがポツリといった。

 

 峰田君は拡声器を握りなおして大きく口を開いた。

 

「ひどくないですか!? 死を前にした人間の心からの訴えを無下にするなんて許されることなんでしょうか!? 困った人を救うのがヒーローでしょう!? それなのに自分が嫌だからという理由でセックスさせないなんてありえません!! 自分を犠牲に出来ない人間がヒーローになれるのでしょうか!! なれません!! 絶対に!!」

 

 峰田君は深呼吸してなんとか怒りを抑えているようだった。そして避難民の女性たちに向けて必死で訴えかけた。

 

「この中の美人のお姉さん!! セックスさせてください!! 貯金が2万円あります!! そのお金はあなたのものです!! だから!! お願いですから!! 僕とセックス・・・・・・」

 

 そう言いかけた峰田君が急に黙り込み、避難民の中の一人の女性を見つめてつぶやいた。

 

「お母さん・・・・・・」

 

 ワン・フォー・オール・フルカウル――。

 

 地面を思い切り蹴った僕は校舎の屋上に着地し、峰田君を抱えて大空へと飛び立った。雄英の校舎があっという間に遠ざかっていく。

 

「ありがとう・・・・・・緑谷」

 

 僕の胸の中で峰田君は泣いていた。

 

「いいんだ。僕たち友達だろう?」

 

 そう。彼はどうしようもないゲス野郎だけど僕の大事な友達なのだ。これから彼と二人でオール・フォー・ワンに立ち向かっていこう。

 

―完―


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