気にしようとしまいと、時間は止まらない。
裏も表もあるけれど、その刻は必ず訪れる。
生きている限り、絶対に。
こういうのが好きです。
気が付けばもう12月も一週間程になり、本格的に寒さが堪える時期。その中で俺は今日も、体育館を駆け回っていた。
バド部は年末も通常営業、特にクリスマスはイヴ含めて二日とも西田新部長の意向で終日練習の予定。……単に彼女いないから僻んでるんだ、って針生センパイは言ってるけど、まあ間違ってもいないかも知れない。しかしそうまでして欲しがったり僻んだりするもんかね、なんて思ったりもしてみたり。そのせいで花恋さんが文句いってるらしいけど、守屋マネの話じゃ予定が入ってるとか。練習のあとにデートでもするのかな。
そのお陰でバスケ部のウインターカップを観にはいけないけど、でもそれで良いんだ。俺よりも行くべき人がいるんだしそっちが優先、チケットも渡しちゃったし。後で調べたら結構な入手難度で、プレミアも付きかねないらしい。さすがに今からもう一枚、とは行くまい。
それに部活をサボってまで観に行ったりしたら、それこそ千夏先輩に顔向けできなくなってしまう。試合後の疲れを押して御説教しに来かねない、そんなのはさすがに辛いな。下手したら夢佳さんにも叱られてしまう。
俺は俺で頑張って、その上で応援しよう。あの人が好きだから、大切に思うから。
夏のインターハイ前に比べると、千夏先輩の雰囲気はずいぶん変わった。大きな試合を前にする緊張感よりも、バスケが出来る喜びを強く感じている風に見える。毎日練習に明け暮れるのは変わらないけど笑顔が増えて、ふとした瞬間に可愛さを感じてしまう。相手は歳上だから、若干失礼な話かも。でも本当に可愛いんだから、仕方がないよな。
以前は自分を追い込みギリギリまで精神を研ぎ澄ませていたのに、今はそうじゃない。それはきっと、良い変化なんだろう。どういう心境の変化があったのかは俺には分からない、分かるわけがない。でも千夏先輩にとって好ましい何かが起きている、というのは確かだ。
――もしかしたら、好きな人が出来たとか……かな。そうなると少しだけ複雑だけど、でも千夏先輩が幸福でいられるなら俺はそれで構わない。どうあろうと、俺の気持ちは変わらないし。
このまま夢佳さんと仲直りしてくれたら、もっと良いんだけどな。俺なんかが入り込める話じゃないし余計なお節介かもしれないけど、そう願ってしまう。まあ、チケットは渡したけど来てくれるとは限らない。それに顔を合わせて話したら、もっと拗れる可能性も無くはない。そう考えると俺は単に、いらん事しただけなのかもなあ。ま、良いけど。それで俺が責められるなら、甘んじて受け入れるさ。
「大喜もっ、来る? 明日みんなでカラオケ行くんだけど」
そう言われて、練習があるからと笑顔でやんわり断って暫し。そう言えば、と俺は一つ気が付いた。
あんな風に雛と話したのは、あれ以来初めてかもしれない。体育館で顔を合わせる事はあっても、挨拶一つマトモには出来なかった。仕方ないと諦めていた、――雛が選んだ事だから。今までの関係を壊してでも、俺へと気持ちを伝える道を選んでくれた。だからこそ俺は、それに正面から向き合わなければならなかったんだ。例えそれで、お互いが傷つこうとも。
だけどその傷も、少しずつ癒えていくんだ。今はもう島崎さんの言うように、雛にとって
「、――っ」
俺は拳を握り、知らず知らずに芽生えていた都合の良い妄言を振り払う。
そうじゃないだろ、俺。それじゃダメなんだ、そんなのは許されない。雛を傷付けておいて、日にち薬でどうにかなるなんて思っちゃいけない。
千夏先輩の事だってそうだ、このままズルズルと過ごして良いわけがないじゃないか。
――明日、千夏先輩が試合を終えて帰ってきたら。その時は、言わなければならない。
全ては明日だ、そこで何かが始まって何かが終わるんだ。
さぁ正念場だぞ、踏み出せ俺。