ランチラッシュのサイドキックは正義の味方 作:アイン_BD’sR
さて、前回の終わり方から察すると思いますが爆豪の話となります。……本当に難しい。爆豪との会話が短くなってしまう。合わせて文字数もかなり少ない……違和感ありましたら申し訳ございません!
「そんなっもんかよ……!」
「はあああ!!?」
煽る緑谷に激昂する爆豪。グラウンドβで争う2人の幼馴染。憧れから与えられた者と憧れを終わらせてしまった者。今までしてこなかった両者の想いを気持ちを心を本音でぶつけ合う深夜。
そんな中、緑谷は拭いきれない違和感を感じ戦い続けていた。
「うォらアッ!!」
「!……また。」
やけに牽制が多い。遠距離からの攻撃をしつつ攻め込む。弾と爆豪本人の攻撃の連携はまるで2人の爆豪を相手にしているような感覚になってしまう。
しかし、緑谷は考える。……一緒にオールマイトと相対した期末試験で見せるいつものかっちゃんの戦い方はかっちゃん自身の戦闘技術のセンスから生まれる隙の無い近距離から中距離の攻め。……今の戦い方は何か変だ。かっちゃんらしくない。遠距離を交えて近距離を適度な距離でせっかくのセンスが潰れてしまっている……でもその戦い方……どこかで……
「…………もしかして衛宮さんの……?」
深夜の暗いリビングにカタカタとPCを動かしていた衛宮の元へヌッと相澤が現れる。その黒い髪と服のせいか部屋の暗闇に同化していた。気付くことができなかった衛宮は暗闇に突然現れたPCの画面の光を反射する瞳に「うおっ!?」と驚きの声を上げてしまった。
「あ、相澤さん?こんな時間にどうしましたか?」
「……その様子だと本当に知らなかったようだな。コッチ来い。」
彼の手に握られた捕縛布が続いた先にはギリギリと体を巻かれた緑谷と爆豪の姿が現れる。先程までしっかりと絞られたのか緑谷は元より爆豪さえも俯き静かに従っていた。そしてその姿を見た衛宮は仰天する。それもそのはず寮の出入りの管理をしていた筈なのに、寮にいるはずの生徒が外からやって来たのだから。
「緑谷に爆豪!?どうして……?」
「この2人が寮から無断で抜け出してケンカしていた。」
「抜け出して……っ!?い、いつ……?」
「衛宮さんと凛さんが洗い物している時……です……」
「クソ髪と話していた隙を狙った。」
それを聞くと衛宮は苦い顔で頭を抱える。そう、洗い物と話に集中しており遠坂がいるという油断をしていたタイミングであったからだ。「あの時か……」と自らの不注意を反省し相澤へ深く頭を下げる。
「相澤さん。すみませんでした……」
「いや、こっちも寮の警備や管理だけではなく雑用も頼んでしまったからな。一人二人で抱えるには中々に難しい事は理解している。気にするな。」
そう言うと緑谷達に聞こえないよう衛宮に近づき「その為の監視ヒーローも別にいるからな」と小声でフォローをする。先程までの苦い顔から表情が緩んだ衛宮を見ると相澤は再び口を開く。
「既にオールマイトも含めて4人で話をした。結果として緑谷は3日、爆豪は4日の寮内謹慎とした。後でオールマイトからの連絡も来るだろう。」
「寮内謹慎……ですか。」
「あぁ、何もしないと言うわけじゃない。反省文の提出に加えて衛宮と凛さんの手伝いとする。問題ないか?」
「……ええ問題ないです。寧ろ助かります。」
少しの思考は遠坂がなんと言うかを考えていたのであろう。問題ないと考えた衛宮は優しい笑みで緑谷と爆豪へ視線を向ける。
「2日後に用事があって出払う事になるからその日は2人だけになるけどよろしくな。」
「は、はい!」
「あぁ……」
衛宮の了承が取れた事を確認すると相澤は2人の捕縛布を外し玄関扉を開く。寮を出る瞬間、置き土産のように口角を上げて口を開いた。
「言っとくが共有スペースの清掃だけなんて甘い考えは捨てた方がいいぞ。こう見えて衛宮と凛さんはかなりの仕事量をこなしている。反省文の書く時間を取る事を忘れないようにするんだな。」
その言葉を言い放った相澤の笑顔は悪魔のように緑谷は感じていた。
『ねぇかっちゃん。昨日の戦い方……もしかして』
『……うるせぇ。んなこたァ俺にもわかってる。』
「……ッチ。」
昼間、衛宮凛の指示に従い緑谷と共に掃除をしていた爆豪。シュートスタイルの感想を聞かれたりと間が多く、口数が少なかったが会話をしていた。そして予想はしていたのであろうが、爆豪自身の戦い方に口を出された事を思い出し舌打ちをする。
既に指示された家事を終わらせ反省文を書く時間として与えられた就寝前の時間。もしかしたらもう1人の謹慎処分者はおそらく既に床に就いているだろうと爆豪は考える。
忌々しいあの日……時代の節目となったあの日。AFOと相対し話をする衛宮とオールマイトを見て爆豪は知り得なかった世界の事実に気が付いた。
「もしかしたら……その力を俺のモンにできりゃ……なんて考えるべきじゃなかったか……」
「……魔術……か……」
そうポツリと呟いた爆豪は寮の階段を降りていき薄暗い中に光る小さな灯りを目指し共有ルームへと向かう。
「どうしたんだ?爆豪。こんな時間に」
「腹減った。キッチン借りるぞ。」
「夜食か……俺も欲しいから一緒に……」
そこまで言いかけて衛宮はハッとなり止まる。以前の食堂でのトラブルに緑谷から聞いた期末試験での言動……明らかに嫌われている側の人間である自分がラフに接しすぎたと考える。しかし爆豪は強く拒否する事なく「アァ……」と了承の声を上げるのであった。
仮免許に一人だけ落ち、非常に荒れると考えていた衛宮はその様子に驚きつつも少し安心し共にキッチンへ向かい冷蔵庫を開き爆豪を見る。
「希望あるか?辛いものとか。」
「簡単なモンでいい。」
「そうか。それならこれを使うか。」
まずは調味料を混ぜておく。酒と砂糖、醤油に鶏ガラスープの素、そして白すりごまをボウルに入れよく混ぜる。そして具材のチンゲン菜とネギを切っておく。チンゲン菜は一口大に、ネギはみじん切りと白髪ネギになるように切る。
「おお、包丁の扱い上手いな。」
「包丁に上手いも下手もねェだろが。」
鍋に水を張り沸騰するまで加熱したら中華麺を入れ表記の通りに茹でる。その間にフライパンで豚挽肉を炒め、みじん切りにしたネギと豆板醤、甜麺醤を入れて炒め合わせたらそこに無調製豆乳と混ぜておいた調味料を入れ煮る。
よく洗ったチンゲン菜を芯から湯に入れ、しんなりするまで茹でる。その後、冷水で冷まして水気を切っておく。茹でてる最中の麺と共に茹でたら必要な鍋が減るので片付けもしやすくおすすめ。
麺が茹で上がったら湯を切って器に盛り、スープを入れチンゲン菜を乗せる。最後にラー油を回しかけ白髪ネギを乗せ完成!
「担々麺だ。辛さはラー油で調節してくれ。」
「花椒あるか。」
「ああ、好きなだけ使っていいぞ。」
手渡された花椒とラー油を荒々しく手に取ると担々麺にかける。ラー油をひと回しふた回し……さん回し……よん回し……花椒もパッパと振りかけ……パッパとパッパとパッパと……
「……かけ過ぎじゃ」
「今の気分はこんくらいなんだよ。口出しすんな。」
思わず顔を青ざめてしまう衛宮を無視し、満足いくまでかけ終わったのかスープを少し混ぜ麺を持ち上げる。勢いよく啜ると「フン……」と満足いく辛さなのか続いてスープを飲む。
対する衛宮はラー油をひと回ししたのみでスープを混ぜる。豆乳の優しい香りと胡麻の香ばしい香りが広がると麺とチンゲン菜を持ち上げ啜る。
「うん、美味い。シャキシャキなチンゲン菜とちぢれ麺が濃厚なスープに絡んでいい味を出してるな。」
これくらいの辛さでよかったと爆豪の器を見ながら衛宮は考えスープを飲む。ピリ辛な刺激にそれを包み込む豆乳の優しさと豆板醤甜麺醤のコクのある旨味。そして肉と胡麻のしっかりとした味わいを感じられる。
ある程度食べ進めた頃衛宮は爆豪を見ると先程から頭にあった疑問を口にする。
「それで?なんで突然料理なんて?」
「……ヒーローアーチャー。テメェがデクの野郎と似ているからだ。」
「緑谷と……?」
ケンカの経緯を相澤とオールマイトから共有されていたからか、似ていたから何かではなく緑谷と似ていると言われた事に疑問を持つ。その様子に爆豪は目を逸らし話を続ける。
テメェは覚えていないだろうな。何せ一瞬の事だ。去年……デクの野郎がコソコソと何かしている時、俺は連んでた奴らと下校していた。
『…………』
『爆豪……』
もっともあの日……俺が
そんなある日たまたま道端の小石に躓き、たまたま小さな用水路の蓋が開いてた所に足を突っ込んだ。泥に沈む俺の足を見て思い出したのはデクの野郎がイかれてると思ったあの日。
『ッ……!』
『大丈夫かよ爆豪』
あの日と同じだった。連れの奴らは傍観しているだけだった。俺が1人で立てるとわかっているから。そして違うのはデクがいない。だから俺はなんて事なく立ちあがろうとした。
『大丈夫か?』
『なッ……!?』
手が伸びた。俺の目の前に。あの日と同じように。顔を上げるとそこには心配そうな顔で俺を見る赤銅色の髪をしたヒーローだった。
「その時重なった。テメェの姿がデクの姿と。そして想像しちまった。デクがもしもヒーローとなったなら……」
「そうか……」
衛宮はようやく理解した。食堂での突然な傍若無人な様子。そして緑谷から聞いたオールマイトからの指摘。衛宮は自分自身が爆豪にとって見たくない姿であると理解した。……しかし
「爆豪。一つ言わせて欲しい。」
「なんだ。」
「俺と緑谷は違うぞ。」
「わってるわそんな事ォ!!」
誰にでも分かりきっている事を指摘されてついついキレてしまう爆豪だったが、その言葉に首を振る衛宮の姿を見ると再び静かになる。
「緑谷ほど俺は凄くない。俺はただある人の姿に憧れた。その人のように……正義の味方になりたいと思っていた。」
「それでも俺の目指した正義の味方は誰かの敵になる事だった。誰かを守るには誰かの敵にならなきゃいけないと知ったんだ。」
かつての縁側で話をした正義の味方になれなかった男。その表情は優しくも儚く、諦めの感情を含ませていた。会いたくとも会えない者を考えてなのか……その答えを衛宮は持っていなかった。しかしそれはとても強く彼の心に残る表情だった。
「でも緑谷は違った。あいつは誰であろうとその心に見える善意を見つけたら手を差し伸べる。敵味方関係なく。きっとあいつの理想がそうなんだろうな。」
「どんなに理不尽でも、どんなに泥をかけられようと、どんなに辛い事を言われても手を繋ごうとする。それをお前は誰よりも知っているはずだろ?」
『大丈夫?立てる?』
『君が救けを求める顔してた』
そんな言葉が爆豪の頭を過ぎる。誰にでもできる事じゃない。そんな事爆豪はとっくに理解していた。
「緑谷の一番の強さは個性の超パワーじゃない。他の個性の分析や癖を見抜く洞察力でもない。あいつの強さは勧善懲悪の心とそれを貫き通す芯の強さだ。」
そうかよとぶっきらぼうに返す爆豪。しかし心なしか納得したように食事を続ける。表情を見せないようお椀を持ち上げスープを飲む様子を見せながら声を出す。
「……たまに台所借りるぞ。」
「ああ。その時は言ってくれ。俺も食べたいから。」
「……フン」
静かなフロアに誰も知らない取引が行われていた。そんな静寂に衛宮の携帯から振動音が響く。メールが届いている画面は明るく光り件名を表示していた。
『件名Re: Re: レディ・ナガンとの面会について』
最後まで読んでいただきありがとうございます!!
やけに爆豪が衛宮を敵対していた理由をようやく書けました……!非常に難産でしたよ今回の話……!
そして最後にまだまだ出番が先な人の名前が出てきましたね。次回はどうなる事やら……
感想、ここすきがとても励みになってます!どんどん書いてくれると私とっても喜ぶので是非お願いします!