アリシアの日常
とあるお昼前のこと。
アルハザードにて日課の探検を行うものがいた。
「お邪魔しまーす」
建物に入る。
当然、中には誰もいない。
奥へと進んでいく。
行きついた先で容器を発見した。
人が入れるくらいの大きさである。
「んー?」
中では光が輝いていた。
光は三角の形をしていて、それがいくつも浮遊している。
「なんだろうこれ?」
アリシアがまじまじと見る。
「ヒドゥン、なにかわかる?」
──天使。
「え? 天使様!?」
アリシアが喜ぶ。
「お話しできるかな?」
──不明。
「こんにちは!」
返事はない。
「どこから来たの?」
反応もない。
「お昼寝中かな?」
アリシアが顔を近づける。
光は意思を持っているかのように動いていた。
顔の近くまで寄り、すぐに違う場所へと移動してしまう。
「ま、いっか」
アリシアが探検を再開する。
「そういえばヒドゥンはどこから来たの?」
──回答不可能。
「ふーん、なんでアルハザードにいたの?」
──抑止力の起動によるため。
「抑止力?」
──防衛機能。
「うーん、わかんないや」
アリシアが外に出る。
アルハザードは神の領域に触れていた。
時を戻す方法を見つけ出し、使用可能な段階まで実現していた。
それは世界の理を壊すものである。
これ以上の発展は許されなかったため、抑止力が働くこととなっていた。
時の呪法を見つけた罪に対して、時の神による裁きが下ることとなった。
そして同じ過ちが繰り返されないよう、ヒドゥンはそこに留まることとなった。
荒廃した世界とともに永劫の時を過ごす。
番人として、永遠にアルハザードへ縛られていた。
「ねえねえ」
アリシアがその場で楽しそうにクルっと回る。
その楽しい気持ちがヒドゥンにも共有される。
「時間を止められるなら、時間を戻すこともできるの?」
──可能。
「ほんと!?」
喜びが大きい声となる。
「じゃあさ、またママと会えたりする?」
──可能。
「すごい! 今すぐに戻せる?」
──不可能。
「どうして!?」
──魔力不足。
「どれくらい必要なの?」
──惑星の保有魔力と同程度と推測。
「いっぱい必要ってこと?」
──莫大な量が必要。
「そっか」
アリシアが空を見る。
「じゃあ星を手に入れないとだね」
空には月があった。
月には大量の魔力がある。
知っていて見ているのか、知らないで見ているのか。
いずれにしても、アリシアのやるべきことが定まった瞬間だった。
「できるかな?」
──不明。
「むー」
ほっぺたを膨らます。
「そういうときはできるよって言うの!」
────可能性あり。
「うん!」
笑顔で返事をする。
なぜ笑うのかはわからない。
ただ、その笑顔は何度見ても飽きなかった。
アリシアのお腹が鳴る。
たくさん歩いたせいだろう。
「パパのところに戻ろっか」
ジェイルのもとへと帰る。
今日も一日、アリシアはいつもと変わらない日常を過ごすのだった。