文化祭を楽しむ姿、皆さんもお楽しみください。
藤丸にとっては高校生活で、マシュと楊貴妃にとっては最初で最後の学園祭が始まった。
サーヴァントたちも現代風の私服や何時かの学園祭微小特異点で着た制服に身を包んで、3人の様子を伺いに訪れる。
「お兄さんに会いに来たつもりが、まさかのお姉さんでした」
「イプシロン、いきなり何を言っているのかしら」
「だってお姉ちゃん、落ち着いて考えるとスゴイなぁと思って」
テュフォン姉妹は自分たちに飲み物を持ってきたあと、此処まで連れて来てくれたマシュと楊貴妃と恋人同士の会話をする自分たちのマスター、藤丸のことを見ながらそんな話をする。
一目ではそうと分からないほど完璧な装いに低くても女性らしい声、少女のカタチをとっているテュフォンたちから見ても彼は完璧に女性に扮していた。
「確かにスゴイわね、大切に捕まえておいても良いくらい」
「ダーメ、お姉ちゃんに独り占めはさせないよ。それにマシュさんとユゥユゥさんを突破するのは、私たちでも大変でしょ」
そこで出来ないと言わないのは太祖竜としてのプライド故か、でもその2人は耳聡く聞き付けて自分達に視線を向けて来たので姉妹は揃って首を横に振る。
「マシュもユゥユゥもそんなに怖い顔しないの、テュフォンとイプシロンも誂わないように」
藤丸はそんな4人を嗜めるようにそう告げて、空気を変えるようにお代わりはどうかと尋ねる。
「結構よ、混んできたからここらで退散するわ」
「マシュさん、ユゥユゥさん、ご馳走様でした」
テュフォンの言うように、お昼時ということもあって教室内は徐々に人が増えている。
「それじゃあ2人とも、またね」
「えぇ」
「バイバーイ」
そんなわけでテュフォン姉妹を見送った藤丸だが、チラと時計を見ればそろそろシフト交代の時間である。
次のシフトに入るマシュたちにもそのことを伝えて次の1組分で終わりにしようと、テュフォンたちに出したカップを片付けていると来客があった。
「空いている席はありますか、
「2人分でお願いします」
気品のある涼やかな声と親しみのある元気な声、入り口から私を呼びかけた声の主は姉妹のようにそっくりな、しかし受ける印象は真逆の銀髪と金髪の2人だった。
「いらっしゃいませ
入り口で待っているのはモルガンとアルトリア・キャスター、何時かの学園祭微小特異点と同じ生徒会長と学生の制服を着た2人が私の本日最後のお客様のようだ。
「分かりました。それと、もうあなたの仕事も終わりでしょう? 私が払いますから席を共にするように」
果たしてどのようにしてか、私の行動すらも把握したモルガンはそう言って微笑んで見せた。
その程度のことはいつものことだし、シフトくらいなら遠見でもクラスメイトに訊いでも、幾らでも知ることができるだろう。
「かしこまりました、アルトリアもそれでいいかしら?」
「もちろん、立香と一緒なら大賛成!」
という訳でアルトリアの了解も得て、テーブルを片付けた私はさっと恭しく一礼してから2人の注文を尋ねる。
「レモンティーをホットでお願いします」
「私はホットミルクティーとクッキーで」
「かしこまりました、私はハニーレモンティーのホットをいただきますね」
2人とも紅茶なら私も紅茶のほうが手間を省けるので、少し違ったのをモルガンにご馳走してもらう。お湯を沸かしている間にカップを温めてシフトをマシュに引き継ぎ、サーブしたらそのまま抜けることを伝えた。
「では、先輩はそのままおふたりと学園祭を?」
「2人が良ければ、ね。1人だと色々と面倒そうだし」
さすがにナンパはないだろうけど、学生と一目で分からない格好のまま1人歩き回るよりは学生服を着た2人と一緒に回った方が楽しめそうだ。そんな考えもあって3人それぞれの紅茶を淹れた私は、少しだけ多めのクッキーを載せた皿も一緒に厨房から出て今日のシフトを終えた。
「おふたりともお待たせしました。ご注文のレモンティーとホットティー、クッキーです」
各々が注文した紅茶とクッキーとテーブルに並べ、モルガンとアルトリアとともに私も席に着く。
それほど疲れるようなことは無かったけれども、半日接客をこなして緊張しっぱなしだった身体からはフッと力が抜けるのを感じた。
「お疲れさま立香、紅茶だけどまずは乾杯かな?」
「ふふ、先ほどまでの凛々しさがすっかり抜けていますよ」
深く椅子に腰かけて息を吐いた私に、アルトリアとモルガンがかけた労いの言葉に感謝しつつ紅茶を口にすると、その甘酸っぱさが思っていた以上に沁みる。ずっと立っていた脚も少し重くなり、身体の疲労は思っていた以上に溜まっていたらしい。
「朝からずっと働き通しだったからね、それに女装で変な気の張り方もしていたし」
だけど少しだけ女装は小休止、声も喋り方も普段と同じに戻して気楽に2人と会話しつつ紅茶とクッキーを楽しむ。
「クッキーもほろほろで美味しー、コレ手作り?」
「半分だけかな、買ってきた生地に工夫して食感や風味を変えてるから」
パンもそうだけど買ってきたまま、というのは味気がないのでバターやピール、チョコチップなどで少し手を加えている。
「紅茶はなかなかのものを使いましたね、淹れ方も良いです」
「そこは皆に叩き込まれたから、誰が相手でも手は抜かないよ」
コーヒーと紅茶は高級とまでいかずとも昨日専門店から仕入れたばかりのちゃんとしたもの、それに淹れ方で味と香りを引き出したお陰でモルガンからも及第点は貰えたようだ。
「それで2人に相談なんだけど、良ければ一緒に学園祭を回らない? この格好で1人っていうのはつまらないし、マシュもユゥユゥもこのあとはお店に入っちゃうから」
1人ずつではなく2人同時なことに申し訳なさを感じつつも、2人はあっさり首を縦に振って俺の誘いを受けてくれた。
「もともと今日はモルガン姉さんと2人で回ってたし、そこに立香が一緒に来てくれるのは問題ないよ。案内よろしくね」
「アルトリアに賛成するのは少し癪ですが、私も喜ばしいです。こういった場所とは、あまり縁がありませんでしたから」
「ありがとうアルトリア、モルガン」
快諾してくれた2人に感謝を述べて、いまは冷めないうちに紅茶を楽しみながら3人でどこを回ろうか話を弾ませる。
しばらく経って、藤丸たち3人はそろって教室から出ると先ず昼食にしようと外に出た。
こういったお祭りごとなら食べたくなるのが焼きソバとたこ焼き。藤丸がそう言ったとたんにアルトリアは目を輝かせ、モルガンはそういうものかと頷く。
「学生の作ったものだから味は普通でしょうけど、お祭りの空気で食べると美味しいのよね」
他クラスの出店で買った焼きそばとタコ焼きを手にして食堂で食べようと向かう道中、藤丸がそう言った。
「雰囲気で食べるもの、というのは確かにありますからね。このような催し物であれば手の込んだものより少々ジャンクなものが合うでしょう」
普段ならあまりこの手のものを好まないモルガンも心なしか楽しげに同意して、隣のアルトリアは焼けたソースの香ばしい匂いに顔をほころばせた。
「焼きそばとたこ焼き、どっちもソースだけどしょっぱいのと甘いので全然違うから楽しみ。ところで立香、立香は?」
言葉だけなら何を言っているのかまるで分らないアルトリアの質問だが、藤丸は女の子の自分のことだと理解した。
「誰かと一緒に回っているんじゃないのかしら? サーヴァントの皆が私を見たときびっくりするよう、パスや気配の大半を立香に預けていたから」
その目的もすでに幾人かを驚かせることに成功したので、藤丸は昼食後に立香と合流しようと決めた。
話すうちに到着した食堂はさすがに混んでいたが、3人はどうにか空いている席に着く。
「「「いただきます」」」
キャベツ多めお肉少なめの焼きそばと少し不格好なたこ焼きが今日の昼食だ。
モクモクと少しずつ食べる藤丸とモルガンに対して、アルトリアは豪快に啜っていく。
「くっ、私も普段ならアルトリアみたいに……!」
やはりソースの香りを一緒に吸い込むように啜るのは魅力的であるのだが、それでも今はレディに扮している最中。
仕込まれた作法が藤丸にそれを許さない。
「残念そうな立香の前でこうやるの気持ち良いかも」
「では立香、コレをどうぞ」
同じ物を目の前で一層美味しそうに食べてみせることに気を良くしたアルトリアだが、モルガンはそんな彼女を尻目に立香へたこ焼きを差し出す。
「ふぅ……ふぅ……。はい、あーん」
ただのたこ焼きもモルガンの手にかかれば妙な色香の漂うアイテムに早変わり。息を吹いて冷ます仕草や自分の口元に運ぶのに、藤丸は妙にドキドキしてしまう。
「あ、あーん、あふっ……。でも、おいひぃ」
それでも恥ずかしさに負けじとたこ焼きを咥えた藤丸は、口のなかでハフハフと冷ましながら呑み込む。
「では今度はアナタから」
「ちょっと待ったモルガン! 今度は私があーんするから、お返しはその後! という訳で立香、あーん」
当然アルトリアがモルガンの独走を許すはずもなく、2人の間にたこ焼きを差し込んで自分もしようとするが、それはどう見ても熱々だった。
だが、ここで逃げるという選択肢は藤丸に用意されていない。
「ふぅ……ふぅ……ふぅ……」
アルトリアを拗ねさせないように冷ました上で、意を決してたこ焼きを一口に咥える。
「あーんっ、あっふ、おいひいけど、あふい」
もちろん食べられる程度の熱さだが、それでも口から湯気が出るほどには熱い。ほっ、ほっ、と息を吐きながら食べるその様子に慌てるアルトリアだが、手振りで制止した藤丸はどうにか飲み込んだ。
「大丈夫よアルトリア、ヤケドとかそういうのは無いもの」
「良かったぁ〜。でもちゃんと冷ませば良かったね、そこは反省」
今度は『あつものに懲りてなますを吹く』ことにならないかと思う藤丸だが、それを言うと拗ねそうなので黙っておく。
「では我が妻、今度はアナタから」
「もちろん私もね」
そして忘れていないとばかりにモルガンが、それに便乗してアルトリアも強請るのに覚悟を決めた藤丸は応えて、あーんとする。
周囲からはそんな光景に多数の視線がちらちら注がれるが、無視して昼食を食べ進める3人に近付く人物が1人。
「1個も〜らい!」
モルガンとアルトリアと同じ制服を来た彼女は傍まで来てすぐ何の断りもなく、たこ焼きを1つ、ヒョイと口に運んだ。
「う〜ん、口直しのたこ焼き美味しい……。甘い物だらけだったから、この少し甘いソースとマヨの酸味がまた……」
「どうしたのですか我が妻? いきなりたこ焼きを摘むなど」
モルガンに妻と呼ばれた彼女、朝から分裂して学園祭を回っていた女の藤丸立香は2つ目のたこ焼きを楊枝で突きながら、その質問に答える。
「さっきまでサリエリ先生と屋台を回っててね」
「なるほど」
甘い物尽くしの屋台回りだったのだと、甘党のサリエリと一緒だったというだけで3人はすぐさま理解した。
さぞかし塩っぱいものが恋しかったのか、焼きそばに付いていた紅ショウガにも立香は手を出す。
「よぉし、口直し完了。それで藤丸、お店の方はどうだったの?」
「上々よ、シフト終わりのお昼は結構お客さんも来ていたし、もちろん皆も顔を見せてくれたわ」
具体的に誰かを、特に一番客であったアルトリア・オルタのことを言うと、モルガンもアルトリア・キャスターも機嫌を悪くしそうなので触れずに藤丸は答える。
「そっか、ならマシュとユゥユゥは今頃忙しいかな。行くのはもう少し後にしとこ」
「あっ、居た居た。藤丸……さん!」
そんな他愛もない会話をしていると、藤丸を探していた様子のクラスメイトが名前を呼びながら近付いてくる。
「どうしたのかしら? それに、どうして此処に居るって?」
「金髪と銀髪の他校生と一緒にいる黒髪の高身長美女とか、見た人に訊けば1発だよ。それで、イキナリで悪いんけどミスコンにエントリーしておいたから」
「……なんて?」
文化祭編、もうちょっとだけ続きます。
今年の水着もなかなかの盛り上がりでしたね、Wプロテアは予想外でしたが嬉しい物でした。
そして今年もハロウィン、ナウクラテ―やアルキメデスや候補に出ていますが、どなたが犠牲になるでしょうか? 地味に水着やコスプレっぽいサーヴァントが特攻に居るのが仮想的な意味でハロウィンらしいなと思ったり。
よろしければ感想・コメントお待ちしております。
感想・評価送るのはハードル高いですかね?
-
メッチャ高い、無理
-
高い、勇気がいる
-
少し、何書けばいい?
-
興味がない
-
高くない