再び転生した元神は魔法科高校へ IFシリーズ 作:さすらいの旅人
2093年5月
(思っていた以上に酷いな、この学校は)
入学式に会った真由美や克人と同じクラスになり、一科生としての高校生活が始まるも、隆誠はもう既に疲れたように嘆息していた。
隆誠自身は至って問題はない。一条家長男として恥じぬよう勉学に励んでおり、(神の
今のところは順風満帆とも言えるスタートを切っているのだが、それとは別に、一高が抱える負の側面が余りに酷くて呆れていたのだ。
一つ目は教師が余りにも不足している。尤も、この問題は全国の魔法科高校に共通している為、すぐに対処出来る問題ではない。
二つ目は二科生の魔法実技の個別指導を受ける権利がない。教師が不足している関係があって、二科生は独力で学び、自力で結果を出すしかない。加えて二科生は教えられないことを前提としている事を覚悟で入学しなければならないから、そこは割り切るしかなかった。
此処まではすぐに対処出来ないのだが、次から隆誠が嘆いてしまう問題となる。
三つ目は二科生の差別扱い。教師不足で個別指導が出来ないのとは別に、一科生が二科生を蔑んでいるのだ。
以前に隆誠が調べた際、一高には格差を示す隠語があった。一科生の制服には八枚花弁のエンブレムが刺繍されている為に『
そんな大っぴらに蔑んだりはしないだろうと隆誠は大して気にしなかったが、入学して数日も経たず目にする事になった。一科生が何かある度、二科生を平然と見下している光景を。それは一年生だけでなく、二年生や三年生も含めて。
魔法科高校が才能主義や実力主義とは言え、あからさまに差別するのは人間性を疑ってしまうと隆誠は心底思った。若い内から差別主義な考えを持ったまま無事に高校卒業したところで、絶対碌な大人にならないと断言出来る程に。
(それに教師側も全く役に立たないと来た……)
普通なら一科生達の問題行動を教師達が諫めるべきなのだが、それをしないどころか静観の構えだった。
何故やらないのかと隆誠が一人の教師に訊ねるも――
『それはあくまで生徒同士の問題なので、私達が口出しする訳にはいかないのです』
――と言う、あからさまに責任逃れな回答をされてしまう。寧ろ、そんな事に関わりたくないと言う本音が含まれていた。
向こうにも相応の理由がある。教師達は毎年、多くの卒業生を魔法大学に進学させなければならない。少しでも魔法師を多く確保したい政府から、最早ノルマのような形で義務付けられている所為で、一科生を優先的に対応しなければならないのだ。
(だからと言って、一科生の問題行動を放置するのはどうかと思うが)
差別主義を持たせたまま卒業した後、もし大学の方で取り返しの付かない問題を起こせば、それこそ指導した高校側に原因があると非難されるかもしれない。そう言うリスクもある事を考慮しているのかは不明だが、どちらにしても、教師達は現状の問題を解決する気が無い事に変わりなかった。
隆誠が一条家の名前を出せば動く可能性はあるかもしれないが、それは悪手となってしまう。一高の校長である『
彼女も二科生の差別に嘆いており、卒業する前に一科生と二科生の
(俺も俺で、何か出来る事を考えておく必要があるな)
一科生の問題行動を一刻も早く解決したい隆誠だが、入学したばかりだから現時点で無理だった。加えて自身は優秀な一科生と称賛されている為、どんなに二科生を擁護したところで単なる十師族直系の突飛な行動と片付けられてしまう。
先ずは何かしらの実績を出さなければならない。傲慢な考えを持つ一科生だけでなく、教師側ですら一切文句が言えない実績を。
(何か良い方法は……)
「たかが『
「そうかい。優秀な『
校内を歩きながら考え事をしている最中、何処かで口論と思われる叫び声がした。
現在は放課後で、部活や生徒会に所属していない隆誠はこの後に帰宅する予定だった。本来なら真由美と同じく主席となっている彼も生徒会に入るよう勧誘されたのだが、(
それとは別に、叫び声が聞こえた方へ視線を向ける先には、人工森林として造られた野外演習場がある。木々に囲まれて人影は見えないが、口論と思われる叫び声は間違いなく其処から聞こえたのだ。
(嫌な予感がするな)
気になった隆誠は進行方向を変えようと、すぐに野外演習場の中に入る。
複数のオーラを探知して辿り着いた先には、一科生の男子生徒三人が、二科生の男子生徒を囲んでいた。
「今すぐこの場で土下座しろ。しなければお前を矯正してやる」
「何が矯正だ。俺の
「……どうやらお前も奴と同様に矯正しなければならないようだ」
一科生の男子生徒の言葉に、一緒にいる残りの二人もCADを持ち始めようとする。
対して二科生の男子生徒の方も何とか逃げようとするも、囲まれている為に動けない状態だった。もし動いた瞬間、奴等の魔法が発動する事が分かっている為に。
「クソがっ。それがテメエ等のやり方かよ、反吐が出るぜ……!」
「低能な貴様には理解出来まい。これが『
「随分と品の無い振舞いをしているじゃないか」
魔法を発動させようとする一科生男子達に、隆誠が割って入るように声を掛けた。
その瞬間、四人は一斉に彼の方へ振り向く。
「い、い、一条、隆誠……!」
不味い所を見られたと焦り始める一科生の男子生徒。
一条隆誠は生徒会や風紀委員、または部活連に入っていない為に取り締まる権限は持っていない。だが、十師族直系で『佐渡の英雄』と呼ばれる彼に見られてしまったのは非常に不味いのだ。下手をすれば一条家を敵に回してしまう事態になってしまう為に。
「ま、待って下さい、一条殿! これには理由がありまして……!」
「今の俺は少々機嫌が悪い。失せろ、三下共!」
『ひぃっ!』
殺気を込めるように睨みながら告げる隆誠に、一科生の男子生徒達は腰が抜けそうになりながらも、すぐに逃げ去って行く。
彼がその気になれば一瞬で気絶させてから風紀委員に連行する事も出来たが、そうしたところで無駄だと分かっている為、敢えて軽い殺気を叩きつけるだけに留めた。
同時に隆誠から罵られた筈なのに、一切否定する暇も無く逃げてしまった。『三下』と認めてしまった事実に気付かないまま。
「全く……。それより、危ないところだったな」
逃げた連中が如何でも良くなった隆誠は、二科生の男子に声を掛けた。
「え、あ……」
状況が呑み込めてないのか、彼は未だに放心したままだ。
後に二科生の男子生徒――
今回出た二科生の男子生徒はオリジナルキャラです。
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