夕暮れになって軽音楽部前の廊下からようやくCD購入を目的とした生徒がいなくなり、この後の打ち上げパーティー用の資金も潤沢と言えるほどに手に入り、ホクホク顔で軽音楽部のメンバー+1人を連れて結束バンドとの待ち合わせ場所に集合する。
「おっ待たせぇ~!ごめんね~、この時間になるまでお客さんいなくならなくってさ~」
いや~自分達の人気があり過ぎて困ったわぁ~っとまるで困っていない顔で近づいてくるハルヒに、結束バンドのメンバー(ひとりを除く)は苦笑いで対応した。
そんな、あからさまに調子に乗っているハルヒの暴走を三浦とキョンがツッコミを入れて止めてくれた。(なお、ハルヒへのツッコミが同時だったことに三浦がキョンを睨みつけていたことだけは記しておく)
そんなこんなで軽音楽部と結束バンドの合同打ち上げが学生の味方であるサイゼリヤで始まった。
「諸君!今回の文化祭は大きな盛り上がりをみせたわ!!それもこれも、みんなの努力の成果というもの!っというわけで、あたしからみんなへの感謝を込めてカンパ~イ!!!」
「「「「「カンパ~イ!!!」」」」」
ハルヒの音頭に合わせて、各々がグラスを掲げてぶつけ合う。
その後は皆が好き勝手にメニューを注文し、グループ関係なく音楽やら個人の趣味やらを存分に語り合っていた。
その光景は、中学時代に夢見ていた友達との交流会そのもの。
同学年や先輩と一緒にワイワイと騒ぐこの場にひとりは満足していた。
「わ……ァ…」
「あっ、ひとりちゃんが泣いちゃった」
「お姉ちゃん、大丈夫?」
感極まって泣き出してしまったひとりに喜多ちゃんとふたりがそっと優しく介抱する。
背中をさすられたのと、妹に情けない姿を見られて落ち着きだしたひとりは一度深呼吸をして冷静さを取り戻す。
「……ありがとうございます」
「別にいいわよ!もう慣れたもんだし!」
「いつものお姉ちゃんだしね~」
喜多ちゃんとふたりがそう言ってひとりの手を握る。
折角の楽しい打ち上げパーティーなんだ、泣いて過ごすよりも笑って終える方がいいに決まっている。
「って、あれ?ふたりは……?」
「きゃ~、この子ひとりちゃんの妹ちゃん?か~わ~い~い~!!」
「わぁ~、ハルヒお姉ちゃんに捕まった~!!」
いつの間にかふたりは姉のひとりの元からハルヒの元へと移動しており、そっちでいきなりウリウリと可愛がられている。
この短時間でああもパーソナルスペースを詰めるだなんて、ふたり恐ろしい子!?
「あっ、みんな~!映像研から~、さっきの文化祭ライブの~、映像が届いたよ~!!」
パーティーの途中で長門のラインに一本の動画が届いた。
それは文化祭ライブ前にハルヒが依頼していたもので、演奏中の軽音楽部のライブ映像を録画し、編集したものだった。
映像研の部長と付き合いのある長門に直接ラインで送ってくれたのだろう。
送られた動画を再生すると、周りにいたみんなが集まってきた。
再生された映像は上手に撮影されており、1つの視点からだけでなく、複数の視点を音楽の盛り上がりごとに上手く編集されていた。
「おお!流石は私ね!!こうして客観的に見ても最高の演奏じゃない!!!」
「う~わぁ、自画自賛。でも、本当にそうだから言い返せない……」
「それにしても映像研の奴ら、この短時間でよくここまで編集できたな」
皆がスマホに再生された映像に釘付けになりながら、ハルヒ、三浦、キョンの3人がそれぞれの感想を口にする。
その後、動画が全て再生し終わった。そして起こるのは一喜一憂の反応だった。
凄いやら、これは売れるやら、映えますねやらと嬉しい声を上げてくれる。
ウチの部員である3人も似たような反応で、映像研から送られてきた動画に喜色の声を上げる。
あたしも早速その動画をラインで長門に送ってもらい、あたしのアカウントである『世界最強の歌姫』の最新動画としてアップした。
ああ、ちゃんとプライバシー保護の為にあたし以外のメンバーの顔にはモザイク変わりに可愛らしいお面を加工して貼り付けているわ。
これで個人情報の問題は多分大丈夫でしょう。制服から身元を特定はされないようにそこも加工編集してもらってるし、ウチの映像研って本当に優秀だわwww
ポチポチとスマホをイジって動画を投稿し終えると、今の動画をネタに更に盛り上がりに拍車をかける。
途中店員さんが騒ぎすぎだと注意されて怒られるなんてハプニングもあったが、概ねみんなから好評のまま打ち上げパーティーは終了した。
その帰り道、各々が帰路に着こうとしたタイミングでハルヒが唐突に前に躍り出て喋り始めた。
「いや~、今年の文化祭も大成功で終わって良かったわ~。来年からはみんな大学生だから、次からの文化祭を盛り上げてくのはあなた達に任せたわよ!」
結束バンドの面々を激励するように、ハルヒは彼女らの背を叩いていく。
「はい!任せてください、涼宮先輩!!」
「うむ、次はそっちに負けない演奏を披露してみせる!」
「勿論です!次の文化祭ではもっと上達したベースの腕を見ててくださいね!」
「あ…あの、涼宮先輩がま…満足すりゅようなえんしょうが出来るようにがんひゃりましゅ!!」
そんな結束バンドメンバーの返答に満足したのか、ハルヒは笑って「うん!期待している!!」と口にした。
それは他の軽音楽部のメンバーも同じで三浦、小森、長門もそれぞれ結束バンドのメンバーに気合いを込めた言葉を投げかけた。
「なら、来年の文化祭はOBとしてお前らが成長したか確かめに見に来るからな!」
「ふふ、頼もしい後輩がいて良かったわ」
「来年も~、楽しい文化祭に~してね~」
そんなこんなで別れを惜しみながらも、文化祭の打ち上げは終わりを告げた。
私はふたりの手を引きながら家へと帰る。
「「ただいまー」」
「あら、帰ってきたのね2人共……」
「お、おかえり……」
玄関を潜ると、何故か肌艶の良くなったお母さんと逆にミイラみたいに干乾びそうになったお父さんが同じ部屋から出てきて出迎えてくれた。
「お母さんとお父さんどうしたんだろね、お姉ちゃん?」
「さあ?」
かなり短めの内容ですが、これでこの作品は一応の完結となります。
もしかしたら続くかもしれませんが、とりあえずは終わりなので、ご愛読ありがとうございました。