【お前ら】俺の異聞帯がやばい【助けろ】 作:FGOネタ出し
「……何だったの、あれ」
「わかりません、先輩。ドクター、何かわかりましたか?」
マシュやイシュタルらの攻撃によって、その巨大な姿をあらわにしたティアマトを前に一時撤退をしようとしていた立花たちだが、後方で突如始まったティアマトや異形への攻撃を見て、それが観測できる位置で足を止めていた。
『いやこっちもさっぱりだ。霊基の反応も無い……』
『サーヴァントや神霊であれば何らかの反応が出てもおかしく無いんだけどねえ。何の反応もない、『ただの人と同じ反応でしか無い』のだから困ったものだ』
「でも凄い圧みたいなのは感じたんですけど」
観測を行っていたカルデアのメンバー達も、はっきりと何が起こっていたのかはつかめずにいる。『何もわからない』という初めての自体に、天才であるダ・ヴィンチも思わず冗談のようにこぼしてしまう。
『それなんだよねえ。あるいは考えられるのは分霊でも神霊でもない、本物の神がそのまま顕現したとしか言えないんだけど。それなら霊基が捉えられないのもわかるからね。でもその予兆や反応は無かったんだけどなあ』
「ラフムや黒い泥が消えていってたのはなんだったんでしょうか」
『それもわからないんだよね。腕を振っていたことから何らかの攻撃をしていたのはわかるんだが……。風が吹いていたな、そう言えば』
頭を抱えそうなダ・ヴィンチの発言に、彼女の天才具合を知る立花達は驚愕する。それだけ、あのティアマトを圧倒していた誰かは謎な存在なのだ。
「あっちの方に飛んでいきましたけど……」
「うん。……もしあの人がティアマトの敵なら……」
味方になってくれるかも知れない。
そう漏れそうになった諦めを、立花はなんとか飲み込んだ。それを言ってしまえば、それが言い訳となってしまう。突如湧いて出た希望にすがりたくなってしまう。それがどんなものかもわかっていないのに。
『時間の余裕があれば探してほしいところなんだけど』
『今は一刻も早く王宮へ戻って欲しい。あるかわからない希望のために、今ある可能性を失ってはいけないからね』
「うん、私もそう思う。行こうマシュ」
「はい先輩」
そうして、2人は、明日への希望を繋ぐために、ギルガメッシュのいる王宮へと走っていった。
******
その夜。翌日の決戦に備えて眠りにつこうとしていた立花だが、突如騒がしくなった王宮にあわてて飛び起きる。
『お──は偉大─る───ル!! ──に英雄──いて─きた!!』
叫び声の主は、王宮の正面から何事か叫んでいるらしい。慌てて飛び起きた立花は、マシュやケツァル・コアトルらと合流すると、すぐに王宮の正面、誰かが来たであろう方向へと向かう。
その足取りに、声に籠もる覇気への期待が無いと言えば嘘になる。ギルガメッシュやケツァル・コアトルら神霊ですら、その声はあくまで人の声と同質のものであり、声そのものが神のものである、などと断定が出来るわけではない。
だが、叫び声の主の声は、それがわかるのだ。何かが違う存在である、というその事実が、何より声から伝わってくる。
「何か凄いのが来たわね」
「イエース、凄いということしかわからない、そんな何かデスね」
「うん、でも怖い感じはしないよ」
神霊、分霊であるイシュタルやケツァル・コアトルは何か感じるところがあるようで、眉をしかめながらも正面へ急ぐ。
もはやまともな門番もいないそこに到着した立花達が見たのは、仁王立ちで腕を組んだまま叫んでいる偉丈夫と、その腕を引っ張る一人の男であった。
「なーもう帰ろって! これお前の物語じゃないから!」
『何を言うレイ! アッシリアは俺の国だぞ! それに英雄がいると言うなら、会わなければなるまい! そら、早速来たぞ!!』
「そういう意味で言ったんじゃねえから! まじで! 博士ぇ!! そろそろ戻ってきてえ!!」
この時代の防具に身を包んだ偉丈夫の腕を必死で引っ張っているのは、現代のフリースにジーパンという、明らかにこの場にそぐわない衣服を着用した男性だ。
「あなた達、何者?」
警戒しつつも問いかけたイシュタルに、現代人の男に腕を引っ張られながらも微動だにしない偉丈夫は笑いながら答える。
『俺は“偉大なる者”“最大の戦勝者にして揺るぎなき主、神々しきアッシュール”だ! 神よ! お前の名前は何だ?』
『アッシュールだって!? そんなバカな!?』
立花達にしか聞こえない通信から、ロマニの悲鳴混じりの声が聞こえる。
「ドクター、わかるの?」
警戒しつつも、イシュタルが名前を名乗って返している間に立花は小声でドクターに問いかける。
『アッシュールは神だよ。バビロニアの北方、アッシリアの最高神だ。なんでこんなところにいるのかはわからないが……何か事情がありそうだ。それに後ろの彼も』
答えるダ・ヴィンチちゃんが言っているのは、アッシュールと名乗った男の腕を必死で弾いていた、今は絶望とともに床に沈み込んでいる男性のことだろうか。
「とにかく、話があるなら入りなさい。変なことしたら叩き出すわよ」
『おお! 歓迎感謝するぞ!』
「もう、もう良いや……ここまで来たら原作とか無いでしょこれ……」
何やら絶望に沈んでいた男性が呟いていたが、離れていたのでよく聞こえなかった。
ともあれ。立花たちは、決戦前夜のこの大切なタイミングで、予期せぬ客人を向かえることになったのであった。
******
宮殿の内装に大はしゃぎするアッシュールをイシュタルとケツァル・コアトルに押し付けた俺は、カルデアの面々、今は藤丸立花とマシュ・キリエライトと机を挟んで向かい合っていた。
「……」
「……」
互いにどこから切り出したものか、無言が続く中、最初に話しだしたのはそこにいる誰でもなく、通信礼装で繋がっているダ・ヴィンチちゃんであった。
『さっきまで絶望に沈んでいた男性くん。君は、Aチームのメンバーだった天切零で間違い無いかい?』
「ほっ、ダ・ヴィンチちゃんからぶっ込んでくるの。まあ間違ってない、と思う。すまん、俺にもちょっとよくわかってないんだわ」
『なるほど。とりあえずそう自認している、ということで良いのかな』
俺とダ・ヴィンチちゃんの会話を聞いていた藤丸立花が、そこで首を傾げた。
「あれ? でもAグループの人って確か爆発で……」
「はい。今は冷凍保存されているはずです」
「いや、そう。色々、色々あるんだよこの先」
どこから説明したものか、と頭を抱える。型月世界って未来の改変とかどうだったっけ、とか、そもそもここで未来が変わったら未来の俺は消えるのでは、とか。色々と考えてしまう。
『それじゃああっちのアッシュールを名乗ってる神は?』
「神ってところは確定なのね。まあ間違いではないけど。あれは、そうだな。確かにアッシュールだ。それは間違いない。でもおそらく、この歴史の、つまり汎人類史のアッシュールではない。別の世界でこの世界のアッシュールと同じ役割だった何か、って扱いかね」
『つまり君たちは別の世界から来た、と』
やっぱりダ・ヴィンチちゃん相手は話しづらい。いや話しやすいんだけど。色々と考えていても悟られてしまうので、もう全部放り投げるのが楽に思えてしまう。なので先に釘を指しておこう。
「OK。何言ってもダ・ヴィンチちゃんには悟られそうだ。だから悟られないように先に説明しておく。俺たちは、この世界線か、あるいは並行世界かはわからないが、未来から来てる。だから俺やアッシュールから得られる情報ってのは、未来の情報だ。それをお前達が知り、それに関わる形で何か行動を起こそうとした時点でそれは未来改変になる。だから俺たちは、これ以上あんたらに情報を与えたくない。OK?」
「未来から来たんですか? そんなことが……カルデアなら出来るのかな」
『いや、出来ないだろうね。私たちがやっているのはあくまで特異点の修復だ。それをしている私たちは正常な歴史の存在である以上、そこに未来からアクセスしてくることは無いはず。あるいは、私たちも特異点の存在のようにカルデアスによって観測された過去の存在であればそうかもしれないけどね』
「そういうのを考えられると困るから考えないでくれって頼んでるの、こっちは」
藤丸立花とダ・ヴィンチちゃんはのんきに話しているが、こっちは割と真面目なのである。まあ異聞帯とかクリプター、人理漂白のことを知られて色々対策されるのが面倒くさいというのもあるのだが。
「ええと、天切さんは、今のバビロニアの状況を知ってますか?」
「知ってるよ。知識としてな」
「それなら、細かい説明は省きます。ウルクを守るために、私たちに力を貸してくれませんか」
これまでの人理修復の旅が彼女に度胸をつけたのか、まっすぐにこちらの眼を見つめながらそう頼み込んでくる。
「……これなに言っても駄目だろ。俺は何も言わん」
『ふむ、つまり──』
「それをやめろと言うとるんじゃ」
手伝うつもりは全くないが、手伝わないという時点で、俺たちが手伝わなくても第七特異点がどうにかなるということが確定してしまう。なのでその代わりに、同じように俺が言ってもどうしようもない相手について伝えておくことにした。
「まああいつが、アッシュールが手伝いたいらしい」
「神様、ですよね? なんでですか?」
「アッシリアは俺の国だから、だと。ちなみにウルク含めてバビロニアも歴史上はアッシリアが支配したことがあるからあいつの国らしい」
『こちらとしては、とてもありがたいねえ』
『どうやって顕現してるのかはわからないけど、神の応援ほど心強いものはないよ』
ダ・ヴィンチちゃんやロマニ、立花嬢は喜んでいるが、彼女らは知らないのだ。
神がいかにアホであるのかを。
「まあ、うん。うまいこと使ってやって」
『君はどうするんだい?』
「見守ってるよ。アッシュールがいたらどうにでもなるでしょ」
「そんなにすごいの?」
「あんなでも神だぞ。それも分霊とか神霊じゃない、現代まで揺らぐこと無く顕現し続けた神だ」
『いったい、どういう世界から来たんだい? 現代に神が存在できるなんて』
「知らん」
だからそれは答えられないと言うておるに。
『それじゃあどうやって来た、とかは?』
便乗するようにロマニも尋ねてくるので、俺がここに来ることになったトンチキの起こした大事故を教えてやる。
「現代のメソポタミアに行くはずだったんだよ。それが何を間違えたか、時空をぶち抜いて別の世界につなぎやがったんだあのバカは」
『そんなことが、あるのかい?』
『神々の真の力は、神代の去った現代では知りようが無いからね』
神代でも測れないとは思う。神代がどの程度だったか知らないが、SCP世界のアッシュールはアッシュールで頭おかしい。もっとやばいのが普通にいるのがSCP世界の怖いところだが
「ええと、それじゃあアッシュールさんがさっき戦ってたのはどうやってたのかとか、わかりますか? 明日のために打ち合わせしておきたいので」
「あれと打ち合わせしてくれば?」
「いや、話し通じ無さそうなので天切さんとが良いです」
やはり主人公、毒を吐いているのに屈託のない笑みが似合う似合う。まあ俺でもそうするから普通にわかるけど。
「アッシュールの権能とかこのメソポタミアにおける立場とかそういう色々が合わさって、敵を風に変えてたみたいだ」
「風に変える、ですか?」
「そ。ちょっと意味分からないだろ? 敵を、風に変えてたんだ。まじでそれ以上説明出来ない。風でふっ飛ばしたとか切り裂いたとかじゃない。敵そのものを風に変換する。あいつの出した風に触れた敵とか制限はあるかも知れんけど」
外から見ていただけなので、具体的に何がどうなっていたのかわからないが、あれは風で敵を攻撃していたんじゃない。風による捕食、あるいは吸収。そういうのが適当だろう。
「それってティアマトにも」
「効くのは効くだろ。今日上半身ふっ飛ばしてたし」
『そうなると、戦略にも幅が出てくるねえ』
『びっくりしたよあれは』
もともとこの第七特異点の正史において、ティアマトの侵攻を完全に止めることは一度として出来ていない。複数の神霊が存在をかけて足止めが精一杯。それだけの戦力差があるからこそあれ程に全てが輝きを放っていたとも言える。
その点アッシュールは特殊だ。この第七特異点という舞台を破壊するデウス・エクス・マキナ。単体でティアマトを相手取りボコってしまう。彼女らがすがりたくなるのもわかる。
「言っておくが、本来の俺の予定だと君らには君らで頑張ってもらう予定だったの。その辺忘れないでよ」
「それは、でも……」
「でも戦力が足りてないんです。ティアマトは強大です。それを抑え込めるなら、確実に犠牲を減らせます」
「うぬぬ……」
その犠牲自体が、彼女らという主役たちを先に進ませるステップになる、と言ったらどう思うのだろうか。
そんな考えが浮かぶが、それ以前に1つだけ言っておかなければならないことがある。
「メインはお前ら、アッシュールはサポート。これは譲れない」
『それは何故だい?』
流石に言葉に詰まるが、もう言えるところまで言ってしまう。
「あんね、あれ、見ればわかると思うけどとんでもないアホなの」
「すごく、陽気な方ですよね」
「そういうレベルじゃないんだよなあ。あいつの場合、気持ちよくティアマトをふっ飛ばしてたら、気がついたら聖杯が消滅してました、とか全然ありえるレベルなのよ」
「ならそれを先に言っておけば」
「先に言っててわかるならアホって言ってないでしょうが!」
思わず声が大きくなってしまうが、それ以上にケツァル・コアトルと騒いでいるアッシュールの声でかき消される。
『君も、苦労してるんだねえ』
「いや、ほんと……だから細かい指示無しでうまく使えるように考えてやって? ユニットとしての戦力は最高だと思うから」
わずか数日の付き合いにも関わらず、もう長年付き合ってきたかのような切実な雰囲気が出てしまう。ああ、俺苦労してるんだなって思ってしまった。
「……わかりました。でも、やっぱりアッシュールさんの力もお借りします。犠牲を、少しでも減らすために」
そう決意を表明する主人公ちゃんを前に、俺はうなずいて机に突伏すことしか出来なかった。
FGO未履修で原作キャラ書くのまじで難しいですね……。今後どうしよ。
SCP-3740 in 絶対魔獣戦線バビロニアはこの話で終わり、ティアマトとの戦闘はカットします。アッシュール無双になるか原作とほぼ変わらないかの二択なので。
後日談的な感じで、掲示板で最後の戦いを振り返りながらスレ民が話してるのを一話投稿して完全にこのルートは終わりになります。
掲示板の後日談は適当に待っていてください。