トレセン学園であった怖い話   作:塩化プラス

11 / 39
【第二話】タイキシャトル/Q2~分岐orOUT

ワッツ?!

なんでもってどれでもオッケーってことデスカ?!

スズカ、ワタシが言うのもナンデスガ……テキトーな気持ちじゃこのゴーストストーリーをエンジョイできマセンヨ!?

マジメに向かい合ってこそ怖さも引き立つッテモノなのデハっ?!

もう一度だけ聞いてアゲマース!

ホントーにもう一回だけデスヨ!

セイ、スズカ!

アナタは、どこでのお話が気になりマスカ!?

 

1・チアリーディング部

2・やっぱりなんでもいい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オゥ…………。

フゥン……なんだか強情デスネ、スズカ。

………………ウン。

デシタラ……ワタシはもうなんにも喋りマセーン!

お次のカタ、ドウゾ!

フーン!

 

「ちょっ……タイキ?! お話は?!」

 

ああっ、やってしまった。

どうしてこんなに意固地になってしまったんだろう。

聞き手らしくないことばかりを口にしていたから、タイキが拗ねてしまった。

タイキは頑固親父のように腕組みし頬を膨らませ、そっぽを向いたままだ。

みんなタイキをなだめようとしてくれているが、タイキは一向に機嫌を直してはくれない。

 

「タイキ、ごめんなさい……」

 

謝罪を口にしながら私は考える。

勿論、この一連の流れ自体は当然の結果だと思っている。

けれど、なんだか少しだけおかしいような気もしていたのだ。

だって、いまひとつ、腑に落ちない。

この一連の流れに何かこう……不穏さがある。

 

いくら私の言に怒りを募らせたって、これはあまりにタイキらしくない行動だ。この子はこういう不安定な状況を作ることを望む子じゃない。それぐらいは私にだって分かる。つまるところ、みんなも分かっているはずだ。

だから、何か。察したんじゃないか。

本当に危ういものを呼び込む前に終わらせよう、と。

言うなれば、動物的な勘……そういうもので。

 

そこまで考えが至ったとき。私の首元にひやりとした、まるで指のようなものの感触があった。いや、指なのかは分からない。肌にまとわりつく指らしき触感は、万年氷のようにひどく冷たかったから。

窓も開けていない夜に迫る、クーラーの風とは似ても似つかない、冷たいなにか。マネキンの物とはまるで違う、わずかな柔らかみを持った、やけに生き物としての主張を感じるなにか。それが一本、二本とひたり、添う。

 

背筋に怖気が走った。だけど、身体はてんで動かせなかった。

この状況で心中穏やかなまま居られるのはきっと異常者だけだ。オカルトにさして関心を抱いていないような私にすら、深い恐怖心を抱かせる異常さは依然として続く。

 

誰かが何かを喋っている、なのに声が上手く聞き取れない。

体感で得た特質の恐怖は時間という概念を薄れさせる。

本当に長い、長い時間だった。

三本目が完全に寄り添うまで、何秒かかったろう。

四本目が首に這ってくるまで、何分あったのだろう。

しかしそれも実際には一瞬……だったらしい。

 

五本目に至ることもなく。驚く間なども当然なく。肌に感じ続けていたその冷たさは消えた。時間感覚が分からな過ぎて、布団の上に置かれたスマホに目を落とした。

 

嘘でしょ、こんなの。

思わずそう口にしてしまいそうだった。

タイキが怒ってからまだ数分とも経っていなかった。

 

もしかして……これは。

私の思い込みだったのだろうか?

触れられていた場所を自分の指先で確かめる。

やはり、何もない。

嫌な汗をかいてしまって、じっとりと湿った首筋だけがそこにあった。

 

いや、でも。あの感触は確かにあったものだ。

だとしたら……誰かの悪戯?

 

慌てたくなる心と身体を深呼吸もせず必死に抑えて、ちらちらと前方付近を見回す。

気づけないまま私の首筋に触れるような子なんて誰もいなかった。

このお泊り会に呼ばれたみんな、私ではなくタイキの周りにいるのだから当然だ。

誰も、いない。

なら、あれは一体なに?

 

ほっと胸をなでおろすと同時に、ある予想が浮かんでくる。

あの時にはいたけど、今はもういなかった。

だから、この場にはもういないってだけなのでは?

 

そうだ。もう、いないんだ。

大丈夫、安心していいんだ。

気配からして、いなかったはずなのに。

恐る恐る振り向いた、その先に。

 

「ひっ!」

 

眼だ。薄暗い中でもはっきりと分かる異常が、振り向いた先に存在していた。

眼と認識できる部分だけを持った、眼のような無数の何かが私をじっと見つめていた。

血走った眼球たちは、私以外の誰にも気づかれないまま、群れ浮かんでいる。

眼の思惑はつかめない。目蓋の存在しない、白と黒と赤からは不気味さしか感じ取れない。

 

そもそも、眼なのに。なんで指の感触があったのか。

分からない。考えてもなお、分からない。

ただ、恐ろしい。飛びのきたいのに動かない体が憎らしい。

 

 

これから一体、何が起きるんだろう。

頭は当たり前のように思考を繰り返す。

けれど眼たちは、私の驚く声に満足したかのように。

何事もなかったようにふっと消えた。

 

「どうしたんです、スズカさん?」

「な、なんでも……ないわ」

 

眼が居なくなった瞬間、身体の自由が戻ってきた。

本当になんだったんだろう、今の。

私の……錯覚?

いや、そう割り切れるだけの材料がない。

意味が全然分からない。

ひたすらに、恐怖心だけが煽られた。

 

「今、何か……いなかった?」

 

私は目の前に居た子にそう訊ねてみた。

けれどその子は不思議そうに首をかしげた。

 

ダメだ、やっぱり全然分からない。

超常現象って言葉だけで片付けたくはないけれど、あれはやっぱり、何か良くないものが来ていたということ……なんだろうか。

そうなると、ここで終わってしまうのもある種……正解だったのではないか。これ以上足を踏み入れれば、どうなるかわからない。そんな警告だったのでは……

 

「いえ……」

 

今更ね、そんなこと……

もう何もかも後の祭りだから。

ここで話が終わってしまう以上、心霊現象がこの後本当に起きるのかどうかなんて。

最早誰にも確かめようがないのだから……

 

 

 

 

 

そして全ては終わった……

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。