トレセン学園であった怖い話   作:塩化プラス

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【第三話】エアシャカール/C3~C4orNEXT

「オーケー。じゃ、開けるぜ」

 

こういう雰囲気でなければロマンチックにも思えるような、きしり、という錠の開く音がした。

緩やかに開け放たれていくドア。

こういうの、見回りの設備にバレないのかしら。

降って湧いた疑念に首を傾げつつ、私はみんなへ問いかけた。

 

「まず最初に模型から確認する……?」

 

私はおずおずと訊ねた。

そうするとシャカールは鷹揚に頷いた。

 

「そうすッか。ありきたりなところからチェックすンのがベターだわな」

 

第三理科室はそこまで大きな教室じゃない。

だから目的の模型の前にはものの十数秒で辿り着いた。

誰かがライトの光を模型に当てる。

チープな怖がらせ方だけど、顎の下にライトを当てて陰影をつける手法……的なもの。あれって何も怖くないというか、むしろバカにされてるのかと今までは思っていた。

異質な場所で、異様なものへ。じわりじわりと光を当てていく行為には、純粋な恐怖を感じていた。

 

そして、照らし出されるのは。

当然、気味の悪い人体模型に他ならない。

私の背後で何やらひぃーだのギャーッだの声が上がる。

事前知識等が無ければ私も声を上げていたかも知れない。そうほっと胸を撫でおろそうとした、次の瞬間。

 

「なんだか……怖いけど、普通だね」

「ひゃああっ!」

「あ……ご、ごめんね、スズカさん……」

「だ、大丈夫……私こそごめんなさい……」

「オ、オイ……コントやってねェで見ろ!」

 

シャカールの声で正気に戻った。

慌てて前方方向へ視線を戻す。

すると、なんだ。

人体模型が、動いている……?!

 

「ひぇ~っ!?」

「なっ、何?!」

 

オイルの注されていない錆びた機械のように、ぎしぎしと軋む動かないはずの腕を動かして。模型はある一点を指して動きを止めた。

腕の先にあるのは……薬品棚だった。

何かあるということなのかしら。だったら探してみなければ。

 

「ちょっ、スズカさん?!」

「思い切りが良すぎだろッ……!」

 

訝しがりながらも私は棚へと近づいていく。

うん。腕が指していたのはこの棚に間違いない。

 

瓶をずらして棚の奥にライトを当ててみる。

すると、棚の一部分に奇妙なところを見つけた。

なんというか、同じ材質ではあるのだけど、嵌め込み式のプレートのようになっているというか、単純に外せそうな感じがした。

 

「ここ、もしかして外せたりしないかしら」

 

覗き込んでくるみんな。

私はそのプレートの切れ込みに爪をかけ。カッと上方向へプレートらしきものを弾いた。

棚部分の配色には似合わない、金属的な輝きが現れた。

 

「えっ、何これ……?」

「あら~、ボタンですのね。どうしますの?」

 

私は……

 

1・押す

2・押さない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……やめときましょう」

 

何となく、これ以上立ち入ってはいけない。そんな直感を覚えた。

 

「君は賢いねぇ」

 

どこかから声がした。いやに鮮明な女性の声だ。

 

「ねえ、今誰か喋った……?」

 

私の問いかけにみんなは困ったような声を上げる。

というより、誰もあの声を聴いていないような素振りだった。

 

「ごめん、忘れて……ねえシャカール、そろそろ戻りましょう……?」

「あ、あア。そうするか。少なくとも動く人体模型については確認出来たしな。悪くねェ成果だ」

「じゃあ戻りましょう、なるべく早く……」

「あっ、オイ!」

 

それだけを伝えて、私は足早に理科室を去った。

駆け足で寄ってくるみんな。

理由は分からないけれど、私は心底ほっとしていた。

私たちはすんでのところで禁忌に触れるのを避けることが出来たのかも知れない。そんな気持ちに何故か襲われていたから。

あの理科室への疑念は消えないけれど、触らぬ神に祟りなしと割り切って。

とにかく今は、難しいことなんて何も考えず。

この場を去ってあの部屋へ戻って、次の話を聞こう。

夜も随分と深まってしまっているのだし……

 

 




休憩しますか?

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