一般日本人が転生する話。   作:あうん

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後ろの正面だあれ。

トカゲは小さかったのですぐ終わった。

明日のお昼ご飯。これだけじゃ足りないと思う。

母は懐からトカゲを取り出した。チョキンと音がした。

 

「休憩も終わりです。さぁ頑張りましょう」

「……」

 

今のが休憩!?

 

チョキチョキと鳴る音だけがする。

傷口を手当てする。文字通り。手を当ててチャクラを込める。

切られるたびに効率的になっていく。治すのが早くなっていく気がした。

早く治すとその分、母がハサミを使うのも早くなった。

 

まるでゲームだった。

切って。治して。切って。治して。

段々タイミング良くなっていくもんだから。

音に合わせてボタンを押すかのような。

おかしくなって笑ってしまった。

 

トカゲが動かなくなったら捌いて。潰して。次のトカゲの尻尾を治す。

動かなくなったトカゲを見る。早く治していくごとに動かなくなるのも早くなっていった気がした。きっと気のせいだろう。

五匹捌いた。

 

「今日はこのぐらいにしておきましょう」

「もういいんですか」

「えぇ。イズナのチャクラが切れてしまいそうです」

 

ふぅ。と息を吐いた。

母に膝枕された。頭を撫でられる。

うーん疲れた。頭がぼんやりする。

 

「頑張りましたね。少し休んでいなさい」

「おやすみなさい〜」

「はい。おやすみなさい。イズナ」

 

 

揺さぶられる。もう起きる時間だった。

 

「イズナ。おはようございます」

「……おはようございます」

 

あくび。

いつもより調子が良かった。話せるぐらいには頭が回る。

 

「今日の献立は何ですか」

 

俺の嫌味をスルーする母。

 

「……マダラが迎えにきてくれましたよ」

 

マダラぁ?あいつがなんだってんだ。一緒に粥パでもすんの?やめたげてよ。

母の膝から身を起こした。抱きしめられる。

襖の前に運ばれた。

襖が開いて、押し込まれる。襖の先に出た。

外。

 

「イズナ。ではまた明日」

「……」

 

襖が閉じた。

 

は?

 

「イズナ……」

 

声。振り向く。マダラだ。

寝ぼけていたらしい。

今日の献立は粥ではない。

俺は笑った。

 

「兄さん。ご飯早く食べに行こ」

「……あぁ」

 

今日はタジマの夕飯が一緒だった。

よぎるヒョウロウガン。美味い飯が不味くなる!

俺は忘れることにした。

うん。今日のご飯も美味いな!

 

おやつ。

かりんとう。

やべー!めっちゃ美味しい。

甘みがたまらん。何より硬いのがいい。食感が最高だ。食べてるって感じがする。歯のありがたみ。

ほんと粥ばかり食べてると顎がさぁ……。顎の筋肉が終わる……。

苦肉の策で手を噛んでいたことを思い出した。

幼児らしく指をしゃぶる振りをして。

正気を保つのに一役買っていたんだった。

まあ、母にバレて監視の目が余計強くなってできなくなったんだけど。口の裏噛んでるのすらバレるとかヤバいだろ。

かりんとうを噛み砕いた。骨よりも脆いけどちょっぴり懐かしい気持ちになった。

 

「い、イズナ」

「?」

 

マダラが話しかけてきた。そういえばいつもおやつの時間に話を聞いていたな。

なんだね。聞いてやろうじゃないか。

 

「兄さん今日の修行ってずっとトカゲ探し?」

「いや……手裏剣の修行の続きをやった」

「へぇ〜」

 

うんうんと聞く。

手裏剣同士を当てて別の目標に当てるとか曲芸やってる?意味分かんなくて面白い。創作話としてはよくできてるんだよな〜。

ついついからかいたくなる。

 

「それ本当〜?」

「……昨日見せたろ」

「えっ」

 

マダラの顔が暗くなる。

や、やべ〜。そうだったっけ!?覚えてない!やばい。

俺は嘘をついた。

 

「あっ、あぁ〜!覚えてるよ!すごかった!兄さんめちゃくちゃすごかったやつね!」

「……」

「今日も修行したんだ!あんなに完璧な手裏剣さばき!もっとすごくなっちゃうの〜!?」

 

マダラが少し笑った。

 

「完璧じゃねえよ」

「いやいや!兄さんの手裏剣は世界一だから!」

「父上の方がすごいんだぞ」

 

タジマとか死ぬほどどうでもいい。

 

「父上が五歳の時と今の兄さんを比較したら絶対兄さんが上だから!大丈夫!」

「何が大丈夫なんですか」

「……」

 

タジマまだいたのか……。存在を忘れていた……。

 

「……言葉の綾ってやつです」

「全く口だけは達者ですね」

「えへへ」

「褒めていません」

 

ですよね〜。

タジマの冷ややかな視線。

俺は誤魔化した。

 

「実際父上って五歳の時どんな感じでした〜?」

「……」

 

タジマは俺をシカトした。こいつっ。

 

「兄さんも知りたくない〜!?」

「えっ」

「イズナ。マダラを唆かさないようにと言ったはずです」

 

釘を刺してくるタジマ。俺は糠になった。

 

「いやっ!でも、兄さんは気にならない!?」

「き、気になる……」

「マダラ……」

 

ヨシ!

タジマが睨んできた気がするが知らんふりである。

 

「ほらほら父上〜。教えてくださいよ〜!」

「……面白くもなんともないですよ」

「いいからいいから〜!」

「……はぁ……」

 

大きなため息をついたタジマ。

俺の暇つぶしのために犠牲になれ。

 

「五つの頃は、ずっと布団の中でしたね」

「布団?」

「冬は越せないだろうと言われていました」

「……」

 

タジマはお茶をすすった。

 

「確かに。マダラの方が大丈夫そうですね」

「?」

 

マダラはきょとりとしている。

意味が分かってないらしい。

俺も理解できないフリをしたかった。マダラが羨ましい。

タジマは俺の方を見て口角をあげた。

 

「イズナ。これで満足ですか」

「う……スミマセン」

 

俺は項垂れた。

タジマは席を立った。

 

「全くです」

 

俺の頭を二度、ぽんぽんと叩いて去って行った。

 

……。

 

頭を触る。

俺が病弱なのタジマのせいじゃないか?

……母に言ったらお叱りが飛んできそうだな。

 

「……イズナ」

「んー?」

「何が大丈夫なんだ?」

「……」

 

マダラは困惑といった表情。

 

「兄さんが健康的で嬉しいねってこと」

「?」

「ついでに言うなら、やっぱり兄さんの方が手裏剣は上手ってことだよ」

「本当か?」

「本当本当」

 

よく分からないなりに納得したらしい。マダラは表情を和らげた。

俺は笑った。

 

「歯磨きに行こっか!」

 

 

歯磨きへの道中。

ぬるりと俺の悪戯心が生えてきた。

タジマのせいで暇つぶしが台無しになった。

ここはマダラに責任をとってもらわないと……。

仕方ない。これは仕方ないのだ……。

 

しかし例の如く俺が先頭たって歩いているもんだから。マダラは背後にいる。

チャクラを練る。腹でぐるりと。

繋いだ手の反対側。左手から糸を出す。見えない薄さで。

それを後ろに回して。マダラの背中に触れさせた。当たったかな?分かんないけど何度でもチャレンジだ。

 

「……?」

 

マダラが一瞬立ち止まった。

かかった……!!

俺はマダラに背中を見せている。俺の表情は窺い知れないはず。

こんな顔しているのがバレたら。すぐ犯人が割れてしまう。

マダラは気のせいとでも思ったのか何も言わない。

もう一度だ。なんとなく背中越しの位置も分かった。今度は二回。とんとん。と。

 

「……なんだ?」

 

今度こそ立ち止まるマダラ。左手で口を押さえる。肩が震えそうになるのを必死に抑える。

 

「ど、うしたの?」

「いや、なんでもねぇ」

「ふ〜〜ん」

 

声までも震えそうだった。腹筋が戦慄いている。耐えねば……!

手を引っ張る。マダラの歩みが再開される。

繋いだ手から緊張が伝わってきた。汗ばみ始めている。いや、これは俺自身の……?

俺も、この緊張感にのまれてしまいそうだ。

みたび。三度目だ。

とんとんとん。と。

 

「っ!!なんなんだっ!?」

「フッ……にいさ、どしたのっ……?」

 

ちらりと振り向く。マダラは後ろを見ていた。横顔は。びびってる。びびってる!

マダラは焦った表情のまま。大真面目に。

 

「何か、いる……!!」

「ウグッ」

 

手で覆った口から呻き声が漏れる。

 

どうしよう!

もう笑い転げたくてたまらない!

でも。でも、まだ終わらせたくない……!

マダラが俺の手を強く握った。汗で滑る。俺も強く握り返した。

 

「なにか、って、なに?」

「わかんねぇ……でも、いる!」

「ふ、ふぅうん?」

 

辺りを見回しているマダラ。

 

「あ」

「っどうした?」

 

俺はマダラの背後を指差した。口の歪みを袖で隠した。

まるで怯えているかのように振る舞う。震えも良い方向に働いた。

 

「いる」

「な、何がだよ」

「お化け」

「は……冗談だろ……?」

「……」

 

俺は答えなかった。

マダラがまた。これまたゆっくりと振り返った。焦らすね。もう本当にダメだ。

振り返っても何もない。だろうね。

マダラは俺の方を向いて。

青ざめた表情。怯え。涙目。

ああおかしいおかしい!!

 

「イズナっ……。イズナ?」

「ううっ。ふ、ふっ。は、あははは!!」

 

決壊。廊下を転げ回った。

ゲラゲラと笑って。ひとしきり笑った。

木床を叩いた。笑い死んでしまう。腹が痛い。腹筋が破壊される。マダラのせいで!

 

マダラは俺にからかわれたことにやっと気付いたらしい。

鬼の形相で俺に掴みかかってきた。

 

「イズナ〜!!」

「ちょっ、ま!」

 

地べたを這いつくばっていた俺は簡単に捕まった。

脇に差し込まれる手。

やばい!!

弁解する隙すら与えられなかった。

俺はくたばった。

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