異常者の俺でも冒険者になれば王様になれますか?   作:端午

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幕間4

 今日は久しぶりにお日様の光を浴びている。

 

 予言がされてから、日が経つにつれどんどんと緊張が高まっていった。我が家では数日前からに家に閉じこもるようになり、陰鬱な生活をしていた。

 

 それが幼い妹には耐えきれなかった。騒ぎ出す妹を盾にして、私は外に出た。世の中は人通りが少なくなりつつあるが、妹ともに来た公園には同様の理由からか普段以上に人気があった。

 

 妹の友達もいたようで、彼女らが遊ぶのを木陰から眺めている。ベンチにでも座りたかったが、子供が心配な保護者が多いようでベンチは完全に埋まってしまっている。

 

 見える子供たちは活気に溢れ、幸せそうで、こちらまで予言のことなど忘れてしまいそうだ。そんなふうに考えていると、

 

 

 警報が鳴り響いた。

 

 

 ベンチからは瞬く間に人がいなくなり、各々の子供を引き連れ公園から離れていく。私も妹の手をとる。

 

 だが、周囲を見るとまだ遊び続ける子供、大人たちの異様な行動に戸惑う子供、警報を理解し怯える子供。保護者のいない子供たちが取り残されていた。

 

 その全てを我が家に連れ帰るわけにはいかない。そんなに多くの備蓄などないからだ。けれど見捨てることなどできない。

 

 確か近くの公民館が避難所に指定されていたはずだ。

 

「みんな!お姉さんと一緒に公民館に行こう!」

 

 全員が私の声に応えてくれるわけじゃない。逃げ遅れていた女性に声をかけ、ともに子供たちを集めていく。

 

「君も一緒に行こう?」

「……お人好しだな」

「ほら、行くよ」

 

 半ば無理やり子供たちをかき集め、彼らを先導し公民館に向かう。その一歩目を踏み出した。

 

「きゃぁぁぁ!」

 

 慌てて振り返ると、そこには人型の狼モンスター、狼男がいた。いつのまにここまで近づかれたんだ。

 

 多くの子供たちは散り散りに逃げていく。けれどもそうできない子もいた。立ちすくむ子供、その場にうずくまる子供、倒れ死んだフリをする子供。

 

 狼男はたくましい腕を振りかぶる。その先には鋭い爪が備わっている。そして目の前には1人の男の子が立ち止まっている。

 

 私は咄嗟に妹の手を振り払い、駆け出した。男の子を押し倒し、覆い被さる。

 

 背中に痛みが走る。体から血が漏れ出していくのが見なくてもわかる。この傷なら私はもう長くないかもしれない。

 

 なら手段は選んでいられない。子供たちを怯えさせることになるかもしれないが、それ以外の道はない。

 

 私は懐から1枚のカードを取り出す。それは今日妹を見守るにあたり両親から託されたもの。

 背中から血を拭いカードに押し当てる。来て。

 

 目の前には1匹の狐が姿を表す。狐は周囲を確認し、狼男へと襲いかかった。

 

 私は男の子へと向き直り抱き起こしてやる。男の子は今も酷く怯えている。

 

「もう大丈夫。大丈夫だから」

 

 男の子は戸惑いながら目をつぶった。そして目を開けるともうそこに怯えている様子はなかった。

 

「あのモンスターを倒すだけじゃダメだ。耳をすましてみろ」

 

 男の子の言う通りにすれば、大きな足音の群や避難を呼びかける声が消えてくる。それがなんだと言うのか。

 

「叫び声が聞こえるのはこの公園だけだ。この付近にはまだ野生なモンスターは来ていない」

 

 この近くに迷宮はない。警報がなってから数分程度でモンスターが来るとは考えにくい。

 けれどもおかしい。私たちの目の前にはモンスターがいる。

 

 たしかに目の前で狼男と狐が戦闘を繰り広げている。……その狐は私が召喚した。なら、狼男も?一体誰が?

 

 犯人が何枚のカードを持っているか分からない。私たちは狼男を倒すだけでなく、犯人を取り押さえなければならない。男の子はそう言いたいわけだ。

 

 当たりを見渡しても、逃げ惑う子供、子供を抱え怯える母親、身動きの取れない子供。犯人を特定できるようなものはない。

 

「わからないなら逃げればいい。その怪我なら避難を急ぐべきだ」

 

 男の子の言い分はわかる。今も少しづつ意識が遠のいていく。

 誰が犯人か分からなくとも、襲われた私と彼は除外していいはずだ。なら2人で逃げてしまうのがもっとも安全だ。

 

 けれど、そんなことはどうでもいい。

 

 男の子の言い方からして、彼には犯人がわかっているようだ。なら、するべきことは一つだ。

 

「私の命なんてどうなったっていい。みんなを助けたい。そのために力を貸して」

「……」

「助けてあげたでしょ。その恩返しをしなさい」

 

 男の子は酷く困惑していた。けれども、その表情はすぐに変わった。覚悟を決めてくれたようだ。

 

 

 彼は子供を抱えた母親に向けて走り出す。そしてその勢いのまま飛び蹴りをかました。

 

 倒れ込む親から娘を奪い取り、その首元にハサミを突きつける。そしてその姿を親へと見せつけた。

 

「娘を返して!」

「動くな。お前は子供たちを助ける様子はなかった。けれども逃げることもない。モンスターが暴れるのを見たかったんだろ?」

「そんなの怖くて動けなかっただけ!」

 

 口論は始まった途端に終わってしまった。もしかしてそれだけだったのか?

 そもそもなんでハサミ持ち歩いてるの。この子ちょっと頭おかしい?

 

「大人は子供よりもマシだと思ってたんだけどな」

「ひぃ!ママ助けて!」

 

 母親の騒ぎ声は娘の声で収まる。ハサミは先程よりも強く押し付けられていた。

 娘の声は次第に大きく、そして言葉から悲鳴へと変わっていく。男の子と親は睨み合い続ける。

 

「……狼男、下がって」

 

 親はカードを取り出し狼男を戻した。そのまま、そのカードを投げ捨てる。

 

「これでいいでしょ。娘を離して」

 

 男の子は娘を離す。娘は親の元へ駆け出し、2人は抱き合う。そして娘の後ろから男の子はハサミを振り下ろす。

 

「待って!」

 

 私はなけなしの元気で声を振り絞る。その甲斐あってハサミの刃は2人の頭上で止まった。

 

「所有権を、放棄して、ください」

 

 親は指示に従い所有権を放棄した。そのカードは男の子に渡る。男の子は狼男を召喚する。

 

「ごめん……あとは、お願い」

 

 私の意識はそこまでだった。

 

 

 

 

 目を開けると天井がある。避難所まで来れたようだ。横で狐が寝ている。

 私は背中を確認するとあったはずの傷がなくなっている。

 私が目覚めたことに気がついたようで数人の大人が駆け寄ってきた。

 

「早速で悪いが外のモンスターと戦ってもらえるかな?」

「そのためにポーションまで使ったんです。拒否などしないでくださいね」

 

 私は狐とともに外に出る。数人のマスターが防衛のために戦っていた。そこに男の子の姿はない。

 

 

 けれども再会は早かった。彼はみんなを助けるためにモンスターと戦い続けていた。変わり果てた姿でアンゴルモアが終わるまで戦い続けていた。




使用カード


【種族】葛の葉狐(リリ)
【戦闘力】540
・変化がないため省略

【種族】ロキ(結菜)
【戦闘力】1200
・変化がないため省略

【種族】トロール
【戦闘力】380
【先天技能】
・人喰い巨人
・トロールのいたずら
・怪力
【後天技能】
・生命の泉
・ウォークライ
・清掃
・剣術
・弱点無効
・直感
・生還の心得
・閉じられた心→(LOST!)
・狂化

 
【種族】付喪神(アヤカ)
【戦闘力】520
【先天技能】
・物々交換
・食を喰らわば器物
・良工はまずその刀を利くす
【後天技能】
・零落せし存在
・静かな心
・気配察知
・料理
・武術
・精密動作


【種族】トランペッター
【戦闘力】800
【先天技能】
・災いを告げるラッパ:演奏に合わせて周囲に攻撃が発生する。(中等魔法使い、演奏を内包する)
・7人の天使たち:他のトランペッターに続いて演奏した場合、人数に応じて効果上昇、また追加効果が発動する。4人以上では敵全体デバフ付与、5人以上では敵の眷属召喚を封じる、6人以上では眷属である騎兵の召喚、7人以上では七つの金の鉢を召喚する。
・集団行動
【後天技能】
・魔力強化
・魔力回復
・詠唱短縮
・見切り
・高等補助魔法(NEW!)


【種族】トランペッター
【戦闘力】800
【先天技能】
・上に同じ
【後天技能】
・魔力消費削減
・掃除
・従順
・詠唱短縮(NEW!)


【種族】トランペッター
【戦闘力】400
【先天技能】
・上に同じ
【後天技能】
・算術
・秘書
・礼儀作法


【種族】トランペッター
【戦闘力】800
【先天技能】
・上に同じ
【後天技能】
・精密動作
・裁縫
・直感
・詠唱短縮(NEW!)


【種族】トランペッター
【戦闘力】400
【先天技能】
・上に同じ
【後天技能】
・怪力
・育児
・教導


【種族】トランペッター
【戦闘力】800
【先天技能】
・上に同じ
【後天技能】
・話術
・虚偽察知
・弓術
・詠唱短縮(NEW!)
・戦術(NEW!)

【種族】トランペッター
【戦闘力】400
【先天技能】
・上に同じ
【後天技能】
・秘書
・武術
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