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「俺は、女の子が好きだ!」
森山はいつもそういう。実際、彼は女の子が好きなんだと思う。
自分好みの女の子を見かけるたびに、声をかけ、ストレートに褒め、誘い、笑う。そして最後に小堀のところに泣きに来る。
「小堀ぃ」
今日はおんぶお化けみたいになって、ボールを磨く俺にのしかかってきた。そういえばさっき黄瀬のファンに声をかけていたなぁ、と思い出す。
「どうしたんだ?森山」
「聞いてくれよー。さっき、可愛い女の子がさー」
不思議なことに、森山は自分を振った女の子のことを悪く言わない。むしろ、あんな可愛い子に声をかけた自分が分不相応なように言う。
森山は卑屈な性格ではない、むしろ自分に自信があるからナンパにいくのではないのだろうか。
だけど、森山は必ず振られる。
これが、小堀が不思議だと思っている一つ目のこと。
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「ねー、森山くんいるー?」
ごくごくまれに、森山目当ての女の子が現れることがある。
当たって砕けまくる海常レギュラーのことは、流石に噂になっているらしい。
「モデルの彼女」になりたくて黄瀬を狙う女の子がいるなら、「海常レギュラーの彼女」になりたい女の子がいても不思議ではない。
「あ、田中ちゃん。やぁ、今日も綺麗だねー」
「やっだー、もう。サチで良いって言ってるじゃーん。ね、あっちで二人でお話ししよ?」
「ごめん、自主練があるんだ」
「じゃあ、帰るまで待っ」
「女の子を暗くなるまで待たせるのは申し訳ないからさ、ごめん、先に帰っててくれる?」
森山目当ての女子がいないわけではない。女嫌いの笠松より、真面目一辺倒の小堀より、森山は親しみやすく話しかけやすい。ついでに言うなら告白もしやすい。そして女好きな森山は、誰の告白であろうと必ず受ける。
だが、小堀は森山が彼女と一か月以上続いた話を聞いたことがない。
「笠松、俺今日最後まで残るから。鍵は任せてくれていいよー」
これが、小堀が不思議だと思っている二つ目のこと。
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「おー、可愛い子発見!見ろよ小堀、あの子すっげー可愛くね?頑張っておしゃれしました!って感じでさー、健気っぽい」
「声はかけないのか?」
「んー、今はいいや。あんだけそわそわしてんだ、きっと彼氏でも待ってるんだよ。声かけるのは野暮ってもんだろ」
小堀が不思議だと思っていること、三つ目。
森山は時々、ナンパをしないことがある。
「え、そんなことがあったんスか?森山先輩が?ナンパしない?」
信じられないッス、と頭を抱える黄瀬に首をかしげるが、他の皆も似たような反応をする。
「あいつ、女子がいると俺がいやだって言っても引っ張ってくぞ」
「にわかには信じられませんね」
「熱があったのかもし(れ)ないです!」
「お前ら、それは失礼だとは思わないのか!俺に対して!由孝クンちょー傷ついたんですけど!」
「それなら日頃の態度を反省しろよ。ほら、そろそろ休憩終わるぞ」
それは本当に稀なのだけれど。
小堀が気が付いたときに話題にしてみたところ、一斉に首を捻られた。さらに思い出してみると、どうやら小堀と二人でいるときにはナンパを控えているような気がする。
「……」
「な、なんでいきなり頭を撫でるんだよ小堀!」
「いや、なんとなく?」
そうだとしたら、森山は小堀に特別気を許しているんじゃないかという勘違いをしそうで。
それはほんの少し、気分が良かった。
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「森山先輩ー……」
「おー。どうした黄瀬?」
好奇心と疑念と不安が混ざったような表情の後輩の名前を呼ぶと、彼は声を潜めた。
「森山先輩、……ひょっとして、好きな人います?」
黄瀬が、意味ありげに視線を飛ばす。その先、十分離れた位置には、ボールを拾い集める小堀がいた。
森山はどんな表情をすべきかほんの少し迷って、それからヘラリ、と笑った。
「なあ、黄瀬」
「はいッス」
「『恋は求めるもの、愛は与えること』って言うよな」
どこかで耳にしたことがあるようなないような言葉に、黄瀬はあいまいに頷いた。
森山は、ちらりと、小堀を見る。
そして、笑う。
「だから俺は、恋はしないんだ」
2013年7月22日 pixivに掲載