テリーに転生したので、ネタキャラ扱いされないよう強くなる   作:なー

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お久しぶりです。


第二十二話

 おいおい、なんて魔力だよ……!?

 

 わたぼうを中心に僅かな時間で魔力が際限なく膨張していく。

 暴力的なまでな量の魔力が周囲に迸る――、まさに魔力の暴走というに相応しい。常人ならこの魔力にあてられただけで気を失うだろう。

 

 やがて膨張した魔力がエネルギーに変換される。

 

 一瞬――、

 

 世界から音が消え、白い光一色に染められる。

 次の瞬間、大爆音と共に爆発が回避不可能な速度をもって目の前にいた二体の魔物に襲いかかる。

 

 うおおおおっ……っ!?

 なんて威力だよっ!?

 これが『マダンテ』。

 無茶苦茶だ、デスタムーアが恐れるわけだよ。

 ……いや、そもそもなんでこいつがマダンテ使えるんだよ?

 

 直接マダンテを食らったわけでもないのに、余波である爆風に飛ばされないようにその場に留まるのが精一杯。

 上級魔法など比較にならない(ベギラゴンしか見たことがないけど)。まさに究極の呪文だ。

 

 風が吹き荒れ、巨大なタイジュの樹が大きく揺れる。この世の終わりのようである。

 やがてマダンテが収まり、辺りを静寂が包んでいく。

 爆発によって巻き上がった煙も徐々に晴れ上がっていく中でまず近くにいたわたぼうの姿が見えてくる。

 

「……はぁ、はぁ」

 

 すべての魔力を解放した反動からかわたぼうは苦しそうに荒い息を吐いている。 

 

「おい、いきなりマダンテを放つやつがあるか! 近くには姉さんもいるんだぞ」

 

 俺が怒り気味にそう声を投げかける。

 しかし口ではそう言いつつ姉さんは無事であると分かっていた。

 それは姉さんが連れていた3体の魔物が守ってくれていると確信していたからだ。

 根拠は無い。不思議なことではあるが……。

 が、いきなりマダンテを間近で撃たれて吹き飛びそうになったことは事実。

 俺の言葉に反応したわたぼうはこちらを振り向いて来て叫ぶ。

 

「テリー! すぐにあいつらに追い打ちをかけて! ダメージは負っているはずだけどまだ倒れていない」

 

 わたぼうの顔は焦りでなのか酷く切迫したものであり、そのただならぬ様子に俺の意識もほぼ反射的に切り替わる。

 いくら大魔王といってもあの威力のマダンテを食らって生きているわけがない――、そう思っていた。しかし、わたぼうに言われて気付いた。

 

 ――いる。

 

 わたぼうが『りゅうおう』、『ゾーマ』と呼んだ二体の存在を感じる。

 とはいえ、その存在感は当初よりずいぶんと小さくなっている。マダンテによってダメージを負っているのだと理解する。

 

 確かに今がチャンス――。

 

 それと同時に俺は腰に帯びた剣の柄に素早く手を添える。

 未だ煙は晴れ上がりきっていない。それでも大魔王としての存在感が俺にその居場所を知らせてくれる。

 この距離なら、1秒もかからず詰められる。

 問題はどちらを狙うか。

 迷っている時間は無い。

 ……あいつだ。

 

 

 

 ――――標的は『ゾーマ』。

 

 

 

 『りゅうおう』に『ゾーマ』どちらもド級の魔物であることは間違いない。しかし、俺の直感が『ゾーマ』の方がやばいと警鐘を鳴らしている。あいつから確実に仕留める。

 

 渾身の一撃をたたきつけるべく全神経を集中させ、駆け出す。

 バトルマスターとなり、すばやさ、力ともに上昇した俺は目にも止まらぬ速度で煙の中に飛び込む。

 静かに剣を抜き去り、腕に渾身の力を込める。

 そのまま剣を振り抜こうとした、その瞬間。

 

 

 

 ――ゾクッ!

 

 

 

 左方から殺意を感じた。

 攻撃が来る。

 死が近づいてくることを直感で感じ取った全身が凍り付くような感覚に襲われる。

 俺は、ほぼ反射的にゾーマへの攻撃をキャンセルし、体勢を素早く整え左方から向けられる殺意目掛けて剣を力いっぱいに振り払う。

 

 

 

 キイインンンンッッ!!!!

 

 

  

 耳をつんざくような金属と金属が激しくぶつかり合つ音と共に、剣が何かに弾かれてしまう。あまりの衝撃に全身に電流が流れたような錯覚を覚える。吹き飛ばされそうになるのをぐっと堪える。

 

 一体何が――って!?

 

 何が起きたのかはすぐに分かった。

 目の前に大人の何倍もある巨大な真っ赤な手があったからだ。そしてその五本ある指のうちの二本の指先にある黒い爪の一部がひび割れている。

 どうもこの二つの巨大な爪によって攻撃されたらしい。もし反撃が間に合わなかったら俺は真っ二つになっていただろう。

 たまらず俺は大きく飛びのき、わたぼうの横まで後退する。

 

 ……おいおい、嘘だろ?

 

 先ほど俺がいた場所、そこには対峙するのはもっと先だと思っていたある魔物がいた。

 

「あちゃあ……、『デスタムーア』に邪魔されちゃったか。まあ、ゾーマとりゅうおうの二体だけなわけないよね。これはうかうかしてられないね……ゴクゴク……」

 

 目の前の魔物の正体をわたぼうが答えてくれた。

 やはり間違いない。

 

「……やっぱりデスタムーアなのか。しかも『最終』だし。どうなっているんだ畜生」

 

 それは本来俺達が最後の決戦時に対峙するはずの大魔王。その最終形態だ。

 巨大な顔と両手が宙に浮いたその特徴的な姿は見間違いようが無い。

 ムドーと戦うつもりだったのにデスタムーアが出てくるとか、こんな展開誰が予想できるんだよ。

 そしてデスタムーアからも、ゾーマやりゅうおうと同様に大魔王としてのオーラをヒシヒシと感じるわけだが。

 

 ……ゾーマやりゅうおうよりも強そうだぞ。

 

 そのデスタムーアはゾーマとりゅうおう、そして俺とわたぼうの中間地点に陣取り、俺の反撃によってひび割れた爪を観察している。

 そしてその視線をゆっくりと俺に向けてくる。

 視線を向けられただけというのに、全身に鋭い緊張が走る。不快な脂汗が全身から噴き出してくる。

 こんなやつに勝てるのか?

 

「ゴクゴク……」

 

 俺が戦慄している一方、わたぼうはひたすら何かを飲み続けている。

 デスタムーアに注意を払いながらわたぼうへ視線を向ける。

 わたぼうは見たことの無い瓶に入った透明な液体を飲んでいる。その液体からは強い魔力を感じる。そして驚いたことに魔力を使い果たしたはずのわたぼうの魔力がどんどん回復していく。これ魔力、全快しているんじゃないか? なんだそのチートアイテムは。

 

「……ぷはぁ、やっぱり君はデスタムーアを知っているんだね」

 

 謎のチート液体を飲み干したわたぼうがそんな質問を投げてくる。

 

「知っているが……」

 

「やっぱり。じゃあデスタムーア以外の大魔王はどうだい? 知っているかい?」

 

「……知らない」

 

「……そうか、じゃあ君はデスタムーアをとても強い存在だと思っている……違うかい?」

 

 わたぼうは一息置いて続けてそんなことを聞いて来る。しかし質問と言うよりは確認に近い聞き方だ。わたぼうは俺がどう答えるのか分かっているのだろう。

 わたぼうが何を考えているのか分からない。

 

「……まあ、そうだな。強いと思っている。少なくとも俺一人では敵わない程度には」

 

 俺が独力では突破不可能と考えているのは、デスタムーアとダークドレアムの二体のみ。最大四回行動してくる最終形態なんか下手したら1、2ターンでお陀仏だろう。俺がカダブウみたいに二回行動できたら話は別だろうが。

 

「やっぱりそうか……。不思議だったんだよね。強い大魔王はたくさんいるのに、どうして無数の配合の末、行きついた先がデスタムーアだったのか。……君のデスタムーアに対する畏怖がそうさせたんだろうね」

 

 わたぼうが色々いっているがその意味を俺はあまり理解できない。わたぼうも俺に説明するというよりは自身を納得させる独り言を呟いているように見える。

 

 

 

「デスタムーア、『ベホマズン』だ」

 

 

 

 唐突に、この場には似つかない幼い子供の声が響き渡った。

 俺がその声に違和感を覚える前に、デスタムーアが命令通りベホマズンを唱えた。

 ここに来てようやく煙は完全に晴れ上がっており、最上位回復魔法によって全快したりゅうおうとゾーマが視界に入る。

 

 大魔王がベホマズンを使ったことや、折角ダメージを与えた二体が復活してしまったこと、そもそも大魔王たる存在が何者かの命令を聞いたことへの疑問なんて吹き飛んだ。

 

 俺の視線はある一点に固定されていた。

 鼓動が早まる。

 俺はようやく本編では語られなかった真実を目にしているのだから。

 わたぼうから聞いていたはずなのにその姿を見た瞬間、俺の思考が停止した。

 

 

 

 ……これが夢の世界のテリー。

 

 

 

 そこには子供の俺――テリーがいた。

 グランマーズが見たテリーはこのテリーだったんだ。

 その様相は俺の幼少の頃と全く同じ。

 子供テリーは、柔和な笑みを浮かべながら子供とは思えない落ち着いた様子で悠々とこちらに歩いて来てデスタムーアの横で立ち止まる。

 子供のテリーの視線は俺に向けられている。

 

「はじめまして、テリー。ふふ、君に会えるのを楽しみにしていたよ」

 

 俺がいることへの驚きはなく、寧ろ会うことが分かっていたようだ。これはわたぼうとは異なる反応だ。

 

「……お前は俺と出会うことが分かっていたのか? いや、そもそも俺がいることを知っていたのか?」

 

 俺の質問に子供テリーは嬉しそうに顔をほころばせる。

 

「勿論さ。見えずとも君の強くなりたいという想いを感じていたからね。僕も同じ想いを持っていたけど、その想いは僕のものと合わさりより強くなっていった。君のおかげで僕はここまでモンスターマスターとしての力を手に入れることができたんだ……」

 

 ……あぁ。

 

 そういうことだったのか……。

 今の言葉と子供テリーの瞳を見て理解した。

 俺の中で際限なく湧き上がってくる強さへの渇望の理由を。

 子供テリーの瞳にはどこまでも力を欲する闇が広がっている。

 俺自身を見ているようだった。

 

「……でもね。まだ足りないんだよ。……あぁ、このタイミングで君に会えたことはまさに運命だよ」

 

 子供テリーは語る。

 欲しかったおもちゃを目の前にした時のようにその顔を赤く紅潮させている。

 

「僕に足りないものは二つある……。一つは『わたぼう』。魔物の最終到達地点であるデスタムーアと大魔王と同等の力を持ち精霊でもあるわたぼうを配合した時……最強の存在が生まれる。でもそれじゃあ不完全だと気付いた。だって僕自身が不完全なんだから。そう、僕は半身に過ぎない。だから二つ目に君が必要だったんだ……。本当は君の世界へこちらから出向く予定だったんだけどね。……さあ、一緒になろう。僕達が一つになった時、何人たりとも逆らえぬ最強の力が手に入る。僕なら分かるでしょう?」

 

 子供テリーは、これから起こる未来を想像しながら恍惚とした表情を浮かべて俺へ手をさし出してくる。

 その手を取ってくれると信じて疑わない様子で。

 

 

 

「断る」

 

 

 

 半身の俺の誘いを俺は迷いなく断った。

 力を求める欲求は今も俺の中に根強く渦巻いている。

 しかし、それ以上に……。

 

「悪いが、俺の世界ではまさに今からムドーと戦うところなんだ。お前に付き合っている暇は無いんだ」

 

 本当は一つになるのが正解なのだろう。事実他のキャラは一つになっているし。でも今、俺と子供テリーが一つになるのはとても危険な気がする。一つになるとしても今ではない。

 俺の回答にテリーはキョトンとした表情を浮かべる。俺が言っている意味が分からない、と言うように。

 そして、不機嫌そうにその表情をどんどんと歪めていく。

 

「……どうして断るの? 君なら賛同してくれると思ったのに。姉さんもわたぼうもモンジイもプリオも皆分かってくれない。……それにムドー? あんな雑魚のほうを優先するなんて……」

 

 ブツブツとそんなことを呟いた後、その顔に殺意を浮かべ俺を見据える。

 たまに力を求めている時の俺のことを怖いとバーバラが言っていたがその意味が少し分かった気がする。

 今度からは気を付けないとな。

 

「……なら、力づくだね。ある意味こっちのほうが僕らしいかもね。力があれば全てが思い通りになるんだ。ふふ、こんなことならシドー達をマルタの国に行かすんじゃなかったよ、まあ十分だね……。さあ! 君がどれほどの力を持っているか僕に見せてよ!」

 

 子供テリーの叫びに呼応するように、ゾーマ、りゅうおう、デスタムーアが前に進み出てくる。

 そう、俺とわたぼうは今からこの三体と戦うことになるわけだ。

 ……そう、つまり二対三だ。

 大魔王三体を相手に……。

 

「……おい、わたぼう。これ、勝てるのか?」

 

 俺の額から冷たい汗が頬を伝い落ちていく。

 

「いやー……どうだろうね。初手で仕留めきれなかったのが痛かった。せめてモンジイがいてくれたらなぁ……。仕方ない。僕がゾーマとりゅうおうを引き受けるから君はデスタムーアを頼む。君のさっきの反応速度を見る限り何とか勝負はできるだろう」

 

 …………まじか。

 デスタムーアと一騎打ちか。

 どんな縛りプレイだよ。

 まあ二体を相手にするわたぼうよりはましなのか……?

 ……まあ、なんとかしなくちゃいけないんだな。

 やってやろうじゃないか……。

 ……頼むから強制睡眠だけはしないでくれよ。あれやられたら詰みだ。

 

「……了解だ。あんな手と顔の奴、俺が一瞬で倒してやる」

 

「お、言うねえ……。期待しているよ……」

 

「お前こそ二体を相手にいけるのか?」

 

「ふ、馬鹿にしないでくれよ。僕はわたぼう、そのへんの魔王となんて比べ物にならない最高クラスの存在だよ? 二体を相手にするなんて余裕さ」

 

 半分は虚勢だが半分は真実のように聞こえた。そんなわたぼうに頼もしさを感じた。初めて精霊らしいと思ったよ。

 俺は静かに剣を抜き去り構える。

 三体の大魔王を前にしているだけでこの圧力。

 一瞬でも気を抜けば終わる。

 

 

 

 そして戦いが始まった。

 

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