緋村剣心と石動雷十太の仕合は技巧の応酬と言えるものでした。そして、次の仕合はこの「天挑五輪大武會」における、最も危険な仕合です。
剣路君はしとりと夫婦になるために乗り越えないといけない最大の難所であり、くじ引きの運の無さは親譲りにも思える彼の対戦者は、左之助さんです。
あの壮絶な戦いを見て、ものすごく滾っている左之助さんに果たして剣路君は勝つことが出来るのでしょうかと悩みつつ、左之助さんは大人なので大丈夫と思う。
「ん、次はけんちゃんの仕合!」
「にーさま、勝つのー?」
「うっ、勝つ……勝ちたい、よ」
チラチラと左之助さんに視線を向ける剣路君。
その視線は警戒心と緊張感ですね。ここで勝てば左之助さんに認めてもらえますし、しとりも安心して戦えるようになります。
ですが、左之助さんなんですよね。
「二度と手出しできないように殴るか」
そう三人に聞こえないように呟き、ニヤリと笑う彼に「しとりとひとえに嫌われますよ」と言ってみるものの。あまり響いているようには見えませんね。
「左之助さん、ダメですよ?」
「大丈夫だ」
「本当に分かっていますか?」
「分かってるよ」
「私怨はダメですよ?」
「私怨はねえよ。怨嗟だ」
「それは……ダメなのでは?」
思わず、そう呟いてしまう。
左之助さんがよく分からないことを言うのは慣れていますが、こんなにも酷いことになるなんて予想外です。剣路君、死んだりしませんよね。
不安になってきました……。
私も心配させることは多いですけど。まさか左之助さんで、こんなにも心配することになるなんて、予想外を通り越して想定外というヤツです。
左之助さんは、もうちょっと自分の強さと影響力について知ったほうが良いと思いますし。いえ、わりと本当に心配です。
「左之助さん、分かっていますよね」
「あんまりしつこいと動けなくするぞ?」
「座敷牢は慣れて……はいませんが、それでも子供の命が掛かっているのに黙って見過ごす事は一人の母親として見過ごせません」
「いや、此方だ」
親指を立て、ピコピコする左之助さんに顔が熱くなって視線を逸らす。すると、薫さんと操さんが「あらぁ~」とニヤニヤと笑っていました。
くっ、うぅ、辱しめを受けています。
そういうのは、よろしくないです。
破廉恥です、エッチなのはダメなのですよ。
「ん、けんちゃんと父様の仕合。父様はあんまりけんちゃんを虐めちゃダメだよ?」
「おう」
「しとり、おれは虐められないぞ」
「でも、けんちゃんは弱いよ?」
「っ、左之助に勝ってやる!!」
これは、一波乱どころではありませんね。