剣路君の打突を手のひらで受け止める。
面、胴、小手、突き、剣道の技を次々と放って攻めるも左之助さんには届いていない。いえ、届いているけれど。直撃していません。
勝とう。当てよう。
そういう気配を感じ取って、左之助さんは避けることに徹しています。避ける。避ける。避ける。避ける。剣路君の顔は悔しさが滲み始める。
しとりは何も言わず、見ています。
「真面目にたたかえー!」
そうヤジが飛んだ瞬間、左之助さんが足を止めて、そのヤジのほうに向かって剣路君を放り投げてしまった。わざと、ではないですね。
普通に故意でなげました。
ゆっくりと闘技場に戻ってきた剣路君は顔の汗を拭い、左之助さんを見つめている。勝てないと割り切ったわけでも、勝てないと諦めたわけでもありませんね。
「しとりをおれにくれ!」
「やらん!!」
剣路君の言葉に左之助さんがキレた瞬間、すれ違うように面が直撃し、左之助さんが僅かにのけ反った。やり方はちょっとあれですけど。
まずは、一撃です。
「ん、ん!」
リボンがパタパタと耳のように動き、頬がほんのりと朱に染まったしとりの顔に私と薫さんは思わず、微笑んでしまいます。
ちゃんと、ふたりは両想いですね。
「左之助さん、本気ですね」
「ん、もう避けられない」
ウンウンとしとりは頷きつつ、ひとえの事を抱っこして、いつでもひとえを抱き締めることが出来るようになっている。
剣路君が前に飛び出す。
神谷活心流から飛天御剣流の流儀にチェンジし、どこか緋村剣心を連想させる軽やかさで駆け抜け、左之助さんに迫る。
ハンドポケットを解いて、左之助さんも竹刀を殴って太刀筋を無理やり変えて、荒々しく激しい攻防に観客席はざわめき、沸き立つ。
それほどまでに凄い攻防なのです。
「強いわね、左之助」
「まだ拳は使ってませんよ?」
「だからでござるよ。左之は、剣路が本当にしとり殿に見合うのかを確かめているのでござる。見極めるまで手出しは」
緋村剣心の予想を裏切って、左之助さんは打突へのカウンターで剣路君を殴り飛ばし、剣路君は地面を転がりながらも立ち上がって竹刀を構える。
勝てば認めてもらえるのです。
「ん、がんばれ」
「にーさま、がんばれー!」
しとりとひとえに「父ちゃんを応援しようなー!」と叫び返してきた左之助さんに苦笑を浮かべつつ、流石に嫌われてしまいますよと思う。
「左之助さん、ちゃんとですよ」
私の声が聞こえているのかは分かりませんけど。左之助さんも剣路君を認めているはずです。