タイタニック号沈没事故で殉職したはずのワイルド航海士長が異世界に召喚された話。

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文才は浜で死にました()


笛、制帽、そして拳銃

ーー1912年4月15日。

 

 

処女航海の途上でタイタニックは氷山にぶつかり、船体が真っ二つに裂け沈没した。

そして氷点下の海では海に投げ出され、助けを待つ人たちが声をあげていた。

その中で一人、椅子の残骸に捕まりボートを戻すために笛を吹いている航海士長の制服を着た男ーーヘンリー・ティングル・ワイルドがいた。

Piーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!

Piーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!

「こっちだ!ボートを戻せ!!!!(Return the boats!!!!!)

piーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!

piーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!

しかしワイルドがいくら笛を吹いてもボートは来ない。

「ボートを…戻すんだ!……早く!!」

Pi,Piーーーーー

Pi…

...

笛の音は聞こえなくなった。

それは彼が寒さに耐え切れず、凍死してしまったことを示した。

 

 

ヘンリー・ティングル・ワイルド...享年39歳。

 

 

タイタニック号沈没事故で避難誘導を行ったり、四方に指示を飛ばしたりして最後まで職務を果たし殉職した...

 

 

 

ーー()()()()()

 

 

 

 

 

「おおッ!勇者様が召喚されたぞ!」

 

 

 

(なんだ...?)

千本のナイフが刺さったような痛みによって失わされた意識を、耳につんざく様な声を聞く事でワイルドは回復させる。

(俺の帽子が戻ってる⁉︎それに拳銃(Webley Mk. Ⅳ)もだ...)

すると彼はポケットに波に流れたはずの帽子と拳銃が仕舞ってある事に気が付いた。

こっそりとそれに弾が入ってるか確認したが、ちゃんと六発入っていた。

 

そして彼の周囲には中世ヨーロッパの司教帽を被った者達と

 

 

ズボンとスカートを履いて似た様な服装をした少年少女達が驚いた様子でこちらを見ていた。 

 

 

ワイルドはとりあえず近場にいた中でも位の高そうな司教帽を被った老人に話かける。

 

  

 

「そこのアンタ、ここは一体......」

 

 

「さぁ勇者様方!こちらへ来てください!先ずは王宮へご案内致します!」

 

 

「あっ、おい!」

 

 

 

 

 

話を遮られ、半ば無理矢理にワイルドは少年少女達と一緒に連れられていった、途中に動く足場に驚きながらも。 

 

 

(全く、なんなんだ此処は......)

 

 

道中でワイルドは驚くばかりだった。動く足場もそうだが、何より自分が見る景色に驚いていたのだ。

 

 

子供たちに読み聞かせた物語に出てきそうな鎧を纏った古めかしい姿の騎士達や一等客の人間達の様な上等な衣服を身に纏う者達、そして女の給仕達といった

 

 

1910年代のイギリス、ましてやタイタニック号でも中々見ない光景にただ圧倒されるばかりだった。

 

 

今のワイルドは食堂の様な場所で少年少女達から離れた場所に座って、給士係に頼んで持ってこさせたこの世界の本を読んでいた。理由としては少年少女達から離れたいからだ。現に...

 

 

 

「なにあの人、クラスメイトじゃないよね。軍人?」

 

 

「結構渋くてイケてない?天之河くんとはまた違った魅力あるよね〜」

 

 

「ハリウッドの役者かな?すげぇリアルだよな」

 

 

「無言で本を読む姿がかっこいい...!」

 

 

先程から此方をチラ見しながらそんな声がヒソヒソ聞こえて来るのだから、近場に居なくて正解だろう。

 

しかしそんな声を聞きながらワイルドはあることに気が付いた。

 

 

(こいつらは英語を話せるのか...?)

 

 

そう思って彼らの顔を見る、顔立ちからして少なくともイギリス人では無い事は分かる。恐らく日本人だろう。それにこんな少年少女が英語を流暢に話すとは考えにくい。

 

 

 

そうしていると少年少女達の中から一際背の低いピンクのジャケットを着た少女がこちらに向かってきた。

 

「ハ、ハロー....」

 

 

ぎこちない笑みとやや拙い発音で此方に挨拶をした少女に気付いたワイルドは本を閉じ、良く通る野太い声で挨拶を返す。

 

「どうもお嬢さん、俺に何か用か?」

 

挨拶を返したワイルドに驚いたのか、少女は目を丸くした。

 

 

「え...ッ!?に、日本語⁉あっ、あの〜これってドッキリか...イタズラかなんかですよね?そろそろネタバラシをお願いしたいんですけどぉ......」

 

 

「日本語?俺が喋っている言語は英語だぞ、お嬢さん。それとドッキリって何だ?あと俺はライトラーみたいにイタズラはしないぞ」

 

 

「えっ、えッ⁉︎じょ、冗談ですよね⁉︎何処かにテレビ局のクルーとかが隠れてるんですよね⁉︎ねッ⁉︎」

 

 

急にうるさく騒ぎ出した彼女にワイルドは顔を顰めながらこう返す。

 

 

「ったく、騒ぐなよ急に......俺はウソなんか言っちゃいないさ、それにテレビキョクのクルーってなんだ?通信士か何かか?」

 

 

そう言ったワイルドに、少女は絶句した様子で固まると、そこからカタカタと震えながら再び彼に話かける。

 

 

「失礼ながらその......差し支えなければ、貴方のお名前と生年月日、今が何年かを教えて頂いてもよろしいでしょうか......?」

 

 

急にそんな事を聞く彼女に対し、ワイルドは不思議そうな顔をしながらこう返す。

 

 

「ワイルド。ヘンリー・ティングル・ワイルドだ、1872年生まれ、歳は39歳。今は......1912年だろう?」

ワイルドはそういうと、また本を読みだした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えええぇぇぇ〜〜〜〜〜〜ッッッッッッ!!?」

 

 

食堂に少女の絶叫が響いた。




続けばいいなあ...

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