【完結】機動戦士ガンダムSEED Revelation ~紅蓮のフレイ~   作:kayako

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part3 答え合わせ~『SEED』を追って~

 

 

 CE0073.**.**

 

 もし、キラ・ヤマトがフレイやサイたちを捨てて、ザフトへ投降していたら。

 当時のアスランは、それを望んでいたのかも知れない。フレイ・アルスターの行動によってキラの心が大きく支配されるより前にも、そのチャンスはあった。

 そうなれば恐らくアークエンジェルは撃沈され、サイたちの命もなかったかも知れない。

 だけど、キラは孤独から解放される。アスランやラクスと一緒に行動も出来る。その能力から考えて、ザフトでも重宝されただろう。

 ニコル・アマルフィも、命を落とすこともなかったはずだ。少なくともキラに殺されることは。

 ……となると当然、今の僕の存在もないわけだけど。

 

 

 

 キラが、親友であるアスランと一緒にいるよりも、ナチュラルの地獄を選んだのは何故だろう? 

 大気圏突入後なら、フレイがその身体で繋ぎとめたからと説明が可能だ。

 だけど、その前は? 

 もしサイやトール、ミリアリアという友人たちがいなければ。

 もしくは、彼らがキラを利用することしか考えない小心者であったなら、キラはとっくにザフトについていたに違いない。

 それをしなかったのは、彼らの善意によるところが大きかったと、姫は見ている。

 サイやトールといった連中が根っからの善人だったおかげで、キラは彼らを裏切ることが出来なかった。

 

 そりゃそうだろう──

 自分たちも一緒に戦うと言ってなし崩しに銃をとり、ラクス・クラインの脱出にまで手を貸してくれた。

 とどめに、キラはサイに「帰ってくるよな?」なんて念を押されてるんだ。裏切るなんて出来るわけがないね。

 おかげさまでキラのSEEDは見事開花し、多くのザフト兵が殺され、僕も殺されたわけだけど。

 

 

 

 アマミキョ・ハーモニクスシステムの要となりうる、サイ・アーガイルの善人っぷり。捻くれた人間からは、偽善とか呼ばれかねない類のもの。

 それは誰でも持ちうる能力だけど、優劣は天運によるところが大きい。

 しかも現時点のコーディネイト技術では、決して手に入らない。

 本人の努力で伸ばすことも可能だけど、資質によって限界があるし、SEEDと違って成長には時間と経験が必要だ。

 SEED同士が引き合う力とはまた別種のもので、ラクス・クラインの声がコーディネイターを魅了する能力とも違う。一昔前の言葉で言えば、「人たらし」というらしい。

 それが皮肉にも、最高のコーディネイターの能力を覚醒させるきっかけになった。

 

 サイはそんなこと全く知ったことではないだろうし、自分は凡人にすぎないと信じてる。

 自分の人の良さがキラを戦いに向かわせ、孤独に陥れたなんてこと、当時は想像もしなかったに違いない。

 フレイ・アルスターの事件が起こってから、キラはさらに孤独になり、サイは周囲の同情を集めた。サイはフレイには捨てられたかも知れないけど、キラほど孤独にはならなかったんだ。

 だからなのか──姫が、サイにキラの孤独を疑似体験させる必要があると言ったのは。

 その結果として、サイ・アーガイルは完全に、アマミキョ・ハーモニクスシステムの要となった。

 

 

 

 

 CE73.11.**

 

 ファントムペインの到着により、どうにかアマミキョは危機を逃れた。この前敵として戦ったネオ・ロアノークたちが、今度は味方としてやってきたというわけだ。

 ナオト君も帰ってきた。フレイ・アルスターが実は死んでいるという秘密を引っさげて。

 ──実に些細な問題だ。

 それより、貴重なSEED持ちが戻ってきてくれたんだ。早速準備をしなきゃならない。

 

 

 

 

 CE73.12.** (PHASE-13

 

 ちょうどトミグスクの例の研究施設に、ナオト君の父親がいるという情報を手に入れたばかりだ。

 いけ好かない人物だけど、利用価値はあると思った。

 研究施設内部の人間と連絡を取り、手筈を説明した。

 内部でクーデターを起こさせ、ティーダと連合の部隊を向かわせる。

 そこで、ティーダにどう変化が起こるか。ナオト君のSEEDが覚醒するか。

 

 裏で僕たちが取引をしていたことは、カイキには話していない。

 彼にとっては刺激が強すぎるからね。彼はマユを守り、アマミキョとティーダの安全を確保してくれればそれでいい。

 

 ネオ・ロアノークは北チュウザンに連合のエクステンデッドの施設があることを訝しんでいたようだけど、ここは元々、連合の施設じゃない。

 南チュウザンが技術を提供した、北チュウザンと文具団合同の研究施設。

 もっと言えば、南チュウザンの強い要請に北チュウザンの弱腰政府が折れて、建設を許可したものだ。今ほど南北の対立が表面化していなかった頃だから出来たことだけど。

 

 文具団にとっても、ここの研究結果は欲しくないといったら嘘になるので、相当の資金を出している。SEEDの研究なんて、南チュウザン以外でそうそうやられているものじゃないし。

 そして、ここでの研究成果を連合にも提供することで、北チュウザンは疑似的な中立政策をどうにか許されていた。

 他にもこういった施設は多い──大半が、文具団の工場に偽装されてはいるけど。

 いずれにしろ連合、特に中立を許しがたいブルーコスモス派にとっては、不都合があれば消したい存在には違いない。

 

 

 

 

 それはともかく──

 ナオト君には可哀相なことをするけど、戦闘中に彼が父親を事故で失った結果SEEDが覚醒し、ティーダの進化をさらに促すことになるなら、好都合。

 最初の僕たちの計画はそうだった。

 

 

 だけどコトは、予想の遥か斜め上を行ってしまった。

 まさか、父親があんなことをするなんて……

 血液と精子の採取を便宜上命じはしたけれど、あんな形で実行されるなんて。

 あまりに酷すぎて、書く気にもなれない。

 妻に絶望し家族を捨て、あんな場所で長く研究に没頭するあまり、心が最高に狂ってしまったんだ。

 

 

 でもよく考えたら、僕らも似たような場所で生まれた。

 認めたくないけど、否定は出来ない。既に存在する人間を作り変えて生まれた僕らに、彼を非難する資格はあるだろうか。

 姫は勿論激昂したけれど、それ以上にマユの変化が著しかった。

 彼女が初めて、「怒り」の感情を見せたのだ。その結果──

 ナオト君のSEED覚醒こそなかったけれど、ティーダは確実に進化した。

 

 

 

 

 CE73.12.** (PHASE-14

 

 マユについては、とりあえず投薬量を増やしておいた。

 でも、覚えてしまった感情は、消すことは出来ない。痛みにしても、怒りにしても。

 

 

 

 姫はナオト君のメンタル回復の為、相当な荒療治をした。研究施設の件についてレポートをさせたのだ。

 それを見たサイが、またいきり立った。

 偶然にもあの現場に居合わせた彼は、ナオト君とSEEDのことについて知りたがった。しかもネオ・ロアノークまで連れて。

 

 その上サイは、フレイだけじゃなく僕たちのことも知っていた。

 僕たちが、本来とっくに死んでいるはずだと──ジュール隊から聞いたらしい。

 これ以上隠してはおけないと判断したのか、サイに嘘はつきたくないからなのか。

 姫は、SEEDのことをサイとネオに話してしまった。ラウ・ル・クルーゼの件まで含めて。

 

 ……ナオト君を汚したキメラの少女ごと、僕たちが実験体として南チュウザン本国に搬送したなんて知ったら、サイはどう思うだろう。

 御方様の命令だし、逆らえないから仕方がないけど。

 

 

 

 それから間もなく、ミネルバがオーブ海域を突破したとの知らせが入った。

 映像データを見る限り、シン・アスカのSEED覚醒は確実だ。これでまた状況は動く。

 ……と思っていたら、さらに驚くべき情報が入ってきた。

 遂に、キラ・ヤマトとラクス・クライン、そしてアークエンジェルが動いたのだ。

 

 

 

 

 CE73.12.** (PHASE-15

 

 アスハ代表をさらって行方不明となったアークエンジェルを追って、僕たちはアマミキョコアブロックを使って出発することになった。

 勿論、ハーモニクスの要としてもキラ・ヤマトへの接触材料としても重要なサイは、ブリッジに戻す。

 当然ティーダもマユも、ナオト君も連れて行く。

 今のキラ・ヤマトを止められるのは、「フレイ・アルスター」かティーダぐらいしかいない。

 たとえアスランでも無理だろう。

 

 ナオト君にSEED因子があることが確定し、彼はまたティーダに乗ることになった。

 代替パーツがあるからいつでも降ろすことは出来るけど、今のところ姫にそれをする気はないようだ。

 それ以上に気にしなくてはいけないのは、ミネルバ隊の動向だ。マラッカ海峡を抜けたらすぐにでも、アスラン・ザラと接触出来るかも知れない。

 僕の、「ニコル・アマルフィ」たる僕の存在意義が、試される時だ。

 

 

 

 

 CE73.12.**

 

 ミネルバとの戦闘が開始されてからすぐに、アスラン・ザラのセイバーがアマミキョへ直接、投降を呼びかけてきた。

 なるほど、そういう手で来たか。ならばこちらも、それなりの応戦をさせてもらいますよ、アスラン。

 

 ティーダの黙示録が発動した。

 ぎりぎりまで彼らを引きつけ、黙示録で叩き落とす。それが第一段階。

 しかしどうやら黙示録対策がなされていたのか、アスランたちのダメージはそれほどでもなかったようだ。そりゃ彼らだって、何度も同じ手を喰らうほど馬鹿じゃない。

 

 その間もアスランの、アマミキョ説得作戦は続いた。

 敵側であろうと、アマミキョは民間の船だ。だからいきなり撃つことはせず、説得を繰り返す……そのアスランの姿勢は正しいものなのだろう。

 かつての彼が、キラ・ヤマトを説得しようとしたように。

 

 だけどね、アスラン。貴方相当の口下手ですよね。

 僕たちは知ってるんです。貴方の説得が、うまくいった試しがほぼ皆無なことを。

 それが貴方の欠点でもあり、良さでもあるんだけど。

 

 

 そして第二段階開始。

 まずはミゲル先輩のお出ましだ。彼の一言だけで、アスランは明らかに動揺してしまった。

 僕を見た時のジュール隊と、全く同じ反応だった……可哀相なくらいに。

 同時にマユも、シン・アスカの前に現れた。インパルスがティーダに組みついた、素晴らしいタイミングで。

 ……ただ、マユがそのまま姿を晒すとは思わなかったな。声をちょっと聞かせるだけで十分だって言ったはずなのに。

 マユはまるで本当の再会をしているように、シンに語りかけていた。そしてシンを人質に、アスランを脅す。

 これで確実に、二つのSEEDは手に入った。あとは、二人の覚醒度合いを調べる。

 それから一番重要なことがある。僕たちの力になりうるか、どうか。

 

 

 

 ミゲルは面白いことをした。サイとアスランを鉢合わせさせたんだ。

 サイは船を守る為に、ブロックを切り離してミネルバに衝突させると同時に船を逃がすつもりでいた。その為に5番チューブ付近に潜り込んだ──

 ミゲルは、アスランをそこへ誘導したんだ。

 

 そして、僕がそこに現れる。

 水の上を静かに滑りながら、闇から現れる車椅子の亡霊――

 演出としては、まぁ及第点かな。

 アークエンジェルから収集した音声データを元に用意した言葉で、僕はアスランを追いつめてみる。

 僕たちザフトや僕の両親、自分の父親までも裏切り、キラのもとで戦ったアスラン。

 彼の本音を、直接会って確かめたい。それはずっと思っていたけれど――

 

 

 失望した。

 あれほど自分が失望するとは思わなかったというレベルに。

 結局、ニコル・アマルフィ――僕の存在はアスランにとっては、あんな程度だった。

 君はあれだけアスランを想っていたのにね。

 

 

 

 ……あとは、ハラジョウの音声データの通り。

 僕の落胆は思ったよりも酷くて、自分でも驚いた。

 いくらチグサ計画の為に他に用途があると言われても、やっぱり僕の存在価値はアスラン・ザラの確保にあるから。

 ミゲルやラスティよりも僕はアスランへの執着心は強いかも知れないけど、それだけアスランのことを深く調べている。自覚がある。

 

 ――だから、分かってしまった。

 明らかにアスランは、誰かから吹き込まれたように喋っていたことに。

 

 その言葉には、あまりにも説得力がなかった。

 やはり、デュランダル議長に言われたままの言葉だったのか。

 

 僕は、たとえ裏切られてはいても、2年前にキラやアスハ代表、ラクス・クラインと共に戦っていた頃のアスランが一番好きだったのに。

 その頃はまだSEEDも十分覚醒していて、確保する価値もあった。

 今はSEEDも枯れ、意志まで枯れてしまっている。

 アスランの為に、僕は生まれたのに――

 初めて出会った彼はまるで、悟った顔をして心を閉ざし、心だけ老けこんだ若者だった。

 何をしたいか、自分でもわかっていない。戦争の根を絶ちたいなんて……

 貴方一人で、何が出来るっていうんだ。

 

 多分アスランの中には、自分の確固たる正義がある。その正義を貫くことが出来ると確信した場所で、アスランは力をふるうことが出来る。

 それが今のザフトであり、かつての「歌姫の騎士団」だったんだろう。

 だけど──

 正義を貫くことの出来る場所って、どこにあるんだ? 

 そもそも、アスランの中の「正義」って、何だ? 

 

 それはアスラン自身、多分、わかっていない。

 だからこそ、アスランは何度も陣営を変更せざるを得ないんだろう。傍目から見れば、当然「裏切り」だ。

 アスランの正義を貫ける場所に、僕たちはなれるんだろうか。

 今は無理だろう。今の時点では、確保の価値はゼロだ。

 

 

 

 

 SEED保持者を物理的に捕まえるだけなら、そりゃ楽だ。僕たちがいる必要もない。

 だけど、SEEDの能力を生かすには本人の意思が必要だ。それも、断固として方向性が定まっている意思が。

 その意思を引き出す為に、その能力を推し量る為に、その能力を引き入れる為に、僕たちは存在している。

 フレイも、ミゲルも、ラスティも、マユも。

 SEED発動のきっかけとなった可能性が高い人物として、僕たちは生まれている。

 だから、肝心の保持者当人が今のアスランのようだと、僕たちはとても失望してしまう。

 ミゲルやラスティはまだ大人だった。僕なんか思わず、感情を露にしてしまったんだから。

 アスランを口汚く罵倒し、その直後に子供みたいに避難を楽しんでしまった。

 自分の中の失望を、隠したくて。

 ニコル。君だったら、絶対にあんな言葉を彼に投げつけるなんてこと、ありえなかっただろうにね。

 

 

 だけど……

 アスランが繰り返し、僕に叫んでくれた言葉。

 二度と、僕らのような犠牲を出したくないという言葉。

 これだけは、本心のような気がした。

 そのおかげで、僕は何とか自分を保てたのかも知れない。

 

 

 

 

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