【完結】機動戦士ガンダムSEED Revelation ~紅蓮のフレイ~   作:kayako

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part4 答え合わせ~キラとの接触~

 

 

 CE73.12.** (PHASE-16

 

 恐らく議長の、例の「ディスティニープラン」を知れば、アスランは議長と袂を分かつだろう。

 あの計画はプラントの未来を救う数少ない方法ではあるけれど、アスランがやすやすと承服するとは思えない。

 キラやラクス、アスハ代表がこの計画を受け入れれば話は別だけど、あの3人がこんな計画を呑むとは到底思えない。

 

 ……そう考えていくと。

 結局アスランの居場所というのは、キラ・ヤマトとラクス・クラインのもとなんだ。

 ナチュラルで唯一の理解者と思われたアスハ代表のところにも、彼の居場所はなかった。

 もっともあれは、オーブ代表としてのカガリ・ユラ・アスハを取り巻く環境の極悪さによるところも大きいけど。もし彼女が普通の民間の女の子だったなら、アスランは今でもオーブで平穏に暮らしていたかも知れないね。

 だからやはり、キラ・ヤマトの確保は最優先なんだ。僕にとっても。

 

 

 

 

 そういえば避難中少し、サイと話が出来た。

 彼はきっぱりと、僕たちにこう言った。

 フレイと共にいられる、話が出来る、触れ合えるだけで、どんなことにでも耐えられる──

 アスランは、そんな感情を僕たちに対して抱いているだろうか。

 そこまで思ってくれれば嬉しいけど、サイ──

 多分、アスランは君とは違う。

 

 君は優しい。姫は確実に、君に魅かれてる。

 その気持ちが、僕たちには理解出来てしまう。

 姫が望むなら、姫を君に委ねても構わないとさえ思うことがある。

 

 でもそれは、絶対叶わない願いだ。

 だから、君はもう何もするな。これ以上、姫の心に入っちゃいけないんだ。

 ハーモニクスシステムの要、その役目さえ果たしてくれればいい。

 

 

 

 ──でないと君は、消されることになる。

 

 

 

 

 CE73.12.**

 

 とりあえず、アスラン・ザラとシン・アスカを捕縛し、ちょうど救援にやってきたオギヤカと合流。

 ここまでは予想通りだったけど、オギヤカに御方様がいらっしゃったとは……

 やっぱり、彼らの二つのSEED。そしてナオト君という新たなSEEDがお気に召されたのだろうか。

 姫は御方様と謁見。

 案の定、姫の心は御方様には筒抜けのようだ。さすがは血縁というか何というべきか……

 アスランとシンの身体を調査した後、彼らは帰還させた。勿論、記憶は消去して。

 

 

 

 

 CE74.1.**

 

 アークエンジェルが動いた。ダーダネルス海峡での連合とザフトの戦闘に、介入を行なったらしい。

 オギヤカから離れた後、アークエンジェルを追って準備をしていたら、今度はディオキア基地にフリーダムが現れたとの報告が。

 全く、さすがはSEED保持者だ。こちらの予想を遥かに超える動きをしてくれる。

 サイとティーダを使い、フリーダムをおびき寄せる。

 そこで黙示録がうまく起動してキラを捕らえられれば御の字だけど、うまくいかなかったら──

 その時こそ、遂に僕らの「フレイ・アルスター」の出番だ。

 

 

 

 

 CE74.1.** (PHASE-17~)

 

 予想に反して、フリーダムは単独ではなく、アークエンジェルを伴ってやってきた。

 さすがに向こうも少しは自分たちのやっていることを自覚しているのか、多少の警戒はしているらしい。

 そして予想通りというか何と言うか、やっぱり黙示録はうまく起動しなかった。

 ……ナオト君が拒絶したとのことだ。

 

 姫はフリーダムの性能をひとしきり試し、SEEDの健在を確認後。

 怪我を偽装し、自らキラ・ヤマトの前に姿を現した。

 そして「フレイ・アルスター」を降ろし、キラに呼びかける――

 

 アークエンジェル、ドミニオン双方から回収されたフレイ・アルスターの音声データをこれでもかと分析した結果、用意できた台詞。

 今、この瞬間の為に準備してきた言葉。

 それを次から次へと、絶妙なタイミングで投げつける。

 戦闘ログを見返すだけでも怖い。僕なら絶対に相手にしたくはないね。

 

 結果──

 黙示録抜きで、完璧にフリーダムは無力となった。ティーダが妨害してきたけれど、姫はまるで気にしなかった。

 

 ――だけど。

 ここでまた、予想外のことが起きてしまった。

 僕たちも信じられなかった。多分映像を見なければ、世界中の誰も信じないだろう。

 サイが、衝突寸前のフリーダムとアフロディーテの間に、その身ひとつで立ちはだかったんだ。

 

 

 

 

 CE74.1.**

 

 ここからのアークエンジェルでのやりとりについては、僕は映像と音声データのみの記録しか見ていないので、全て伝聞という形になる。それでも、キラ・ヤマトとアークエンジェルに関しては十分すぎる記録だ。

 

 サイについては、姫とマユが何とか護りきった。

 おかげで戦闘は停止したけれど、こちらの予定も狂ってしまった。

 本来は、フリーダムの機能停止後キラを捕縛、人質にした上でアークエンジェルごとアマミキョと合流、オギヤカに連絡……の予定だったんだけど。余計なミッションをやるハメになってしまった。

 

 とりあえず、曲がりなりにもアークエンジェルの潜入には成功した。

 まず、キラを姫と接触させる。やはり「フレイ」を降ろした状態で。

(サイにまた邪魔されたら厄介なので、マユを使って彼をキラから離しておいた)

 

 

 

 とはいえ、この時姫が降ろした「フレイ」は──

 数多く用意した彼女の性格パターンでは、最もエキセントリックなものだった。

 キラとの直接の接触において、姫がずっと温めておいたもの。

 

「キラを憎みきり、サイには何の関心も持たず、クルーゼに心酔する」パターン……

 

 キラに最大のダメージを与えうる、性格パターンだ。

 これをやった結果、興味深い事実が判明した。

 まず、サイが推測していた通り、フレイ・アルスターはキラに真実、魅かれつつあったこと。

 少なくとも、彼女が心からキラを理解しようとした兆候はあったこと。

 そして、今のキラ・ヤマトにとって、ラクス・クラインが絶対不可欠な存在であること。

 ラクスが居らず、フレイに攻撃されたことでキラの精神は非常に脆弱なものとなってしまった。ラクスが不在である限り、キラは行動の軸となるものを失ってしまう。

 

 さらにもう一つ。

 キラ・ヤマトは、極限まで進化してしまった自分に不安を抱いていること。

 ……これだけ判明すれば、もう十分だ。

 

 

 

 同時に、ティーダにも異変が発生した。遠隔操作モードで起動してしまったのだ。

 既にナオト君とマユに、ティーダはそこまで侵食していたのか。

 ナオト君の感情に何らかの強烈な刺激が入ったことによって、ティーダは動き出した。

 それは当然、フィードバックの影響を強く受けているマユにも伝播した。

 その証拠に──

 約12秒間だけ、「チグサ」が覚醒した形跡が見えた。

 

 

 

 サイについても、少し判ったことがある。

 姫が「フレイ」の憎しみをサイにも叩きつけてみた時、判ったそうだ。

 

 ――彼は、死にたがっていた。

 フレイ・アルスターと一緒に、死にたかったんだ。

 

 

 

 

 CE74.1.**

 

 ミッションはラストフェイズへ移行した。

 あらかじめ把握しておいたミリアリア・ハウの情報を、ザフトのディオキア基地へ流しておく。勿論、アークエンジェルと内通する者として。

 

 ザフトが彼女を拘束して、彼女を人質にアークエンジェルを脅せば、アークエンジェルは動かざるをえない。ザフトも防衛線を敷いている、激戦は必至だ。

 でもアークエンジェルとしては、ダーダネルスを前にして、出来る限り損失は最小限に抑えたい。

 

 となれば、ここで僕たちアマミキョの出番だ。

 あらかじめ用意しておいた監視装置をアークエンジェルに取り付けることを条件に、ティーダとアフロディーテ、アマクサ組が出動するというわけ。

 アークエンジェル側がこれを拒否する理由なんて、どこにもないはずだ。

 だって貴方たちは、悪いことは何もしてないんだろう? 

 少なくとも、悪いことをしているという自覚はないんだろう? だったら、監視装置の100や200ぐらい、我慢しないとね。

 

 僕たちは自覚がある。僕たちのやっていることが、許されるものではないという自覚が。

 だから、邪魔をするものは排除するし、不要なものは捨てるし、必要なものは奪取して利用する。

 最終的に、僕たちにも罰は下る──それもまた、チグサ計画の一環だから。

 

 

 

 拘束されていたミリアリアをミゲルが救出し、アフロディーテとカラミティに援護されつつティーダがかっ攫う。

 ミゲルの役回りは本来トール・ケーニヒであるべきだったんだけど、姫がまだトールの出動は早いというから、仕方ない。

 多分姫は、サイをこれ以上混乱させたくないんだろう。おかげさまで僕はまた、ミゲルの義手の用意をすることになったけど。

 録画された映像を見ると、まるで一昔前のB級映画みたいだった。お膳立てしたのは僕たちだけどね。

 最終的にヒロインを助け出したのは、サイだった。

 

 

 だけど──

 ミリアリアは、ヒーローの元には降りなかった。そのままアークエンジェルに搭乗してしまったのだ。

 別に大勢に何ら影響はないからいいのだけど、女性の心理というのは本当に判らない。

 ミゲルは、彼女は自分の無力を実感したからだと言っていたけど、だからといってそこまで、力のある者を欲するというのか。

 それも、今や国際的なテロリストでしかないアークエンジェルを。

 ティーダでの会話データを聞いていても思った──

 そこに君の正義はあるのかい、ミリアリア? 

 

 

 

 

 それはともかく。

 サイのことについても、対応を変更する必要が出てきた。死にたがりに、アマミキョの中心になられては困るからね。

 船内の悪意はかなりおさまったとはいえ、まだサイに対するわだかまりはある。ハーモニクスの値は収束されてきたとはいえ、ベクトルはマイナス方向だ。

 ここで一気に、その偏見を180度ひっくり返してしまおう。幸い、ティーダのおかげでいい映像は揃った。

 というわけで、映像を編集して、ナオト君に公開してもらった。船内の反応は面白いほどに予想通り。

 そのかわり、サイにはティーダから離れてもらう。

 このままにしておけば、いずれ彼は命を落としてしまう。彼自身の望みどおりに。

 彼に死なれてはまだ困るんだ。今は、まだ。

 

 

 

 

 CE74.1.**

 

 キラ・ヤマトをどうするか。これがこのミッションにおいて、最大の問題だった。

 結論からいうと、キラをこのまま拘束するには時期尚早な上、危険極まりないというのが姫の判断だった。

 それに恐らく、僕個人の見立てだと、接触の過程のどこかでキラは気づいている──

 フレイ・アルスターの正体、つまり姫に。

 このまま監視しておいて、時期が来たら奪取するのが最善だと──それが、姫の意見。

 それに、このままどこまでキラ・ヤマトが突き進んでしまうか見てみたいという、姫の希望もある。

 こんな姫のやり方を放置したということは、御方様も恐らく、キラの行く末を見届けたいのだろう。

 究極のSEEDが、どこまで世界を壊していくかを。

 

 それはともかく――

 今逃したとして、今後どうやってキラを確保するか。

 ラクス・クラインが一緒になった時を狙うのがベストなのだけど、どうシナリオを書くか。

 今回のミリアリア・ハウの件で分かったように、アークエンジェルとその一派は外からの攻撃には無敵だけど、内側から突き崩すのはとても簡単なんだ。

 だから、いくらでも手は考えられる。ザフトも連合もオーブも、彼らを真正面から叩こうとするから失敗するんだよ。

 幸い今回の件で、アークエンジェルの情報はいくらでも手に入るようになった。

 もう彼らは、僕たちのものも同然だ。今後彼らがどんな突飛な真似をしたとしても、全ては僕たちの手の中。

 だって、ラクス・クライン自体が既に──御方様のものなのだから。

 

 

 

 

 CE74.1.** (PHASE-20

 

 姫は、僕たちを置いて私情には走らないと言ってくれた。

 別に僕たちは構わない。姫にとってみればこれは多分、初恋なんだから。だけど──

 御方様がどう捉えるか、これが問題だ。

 

 御方様は、キラもラクスもフレイも、自分のものにしたいんだ。

 ラクスはキラのもの。だけど、フレイもキラのもの。

「フレイ」から愛するキラを奪い、キラと「ラクス」は「フレイ」の前で愛を育む。

 それが御方様の、姫への愛であり憎しみなんだ。

 ──いや。もしかしたら、そんな感情すらないのかも知れない。

 

 

『やってみたいから、やる』

『出来るから、やる』

 それが、御方様の怖いところだから。

 

 

 そのシナリオを完成させる為には、姫のこの恋は明らかに邪魔だ。

 姫だって、分かっているはずなのに──

 でも、どうしたって止められないんだよね。生殖機能を最初から失っている僕には分からない種類の感情かも知れないけど。

 僕は姫が好きだけど、その「好き」の感情と、姫がサイに抱く「好き」の感情は明らかに違う。それぐらいは分かるつもりだ。

 それが、どんなに危険な感情かということも。

 

 

 

 

 なのにサイは、そんな姫の気持ちも知らずに、まだ姫が「フレイ」だと思って安心している。

 姫が命がけで自分を守ったから、まだ「フレイ」が姫の中にいると確信したみたいだ。

 

 断じて違うのに。

 今、サイを愛しているのは姫だ。フレイじゃない。

 全部バラしてやりたくもなったけど、そんなことをすれば姫に殺されるのは勿論、サイがハーモニクスシステムの要として機能しなくなる危険性もある。

 サイは自分で、正解にたどりつかないといけない。

 

 姫は言っていた。

 彼のデータがアマミキョの中で収束し、全ての感情を正しい方向へ導き、コアを熟成させ依代におさまるまでになるには、どうしても超えないといけない壁がある──と。

 

 それは確かに事実かも知れないけど、姫の本来の目的は多分違う。

 姫は、サイに自ら真実にたどりつき、自分を取り戻してほしいだけなんだ。

 自己を簡単に犠牲にするような破滅的な行動を繰り返してほしくない、それだけなんだ。

 

 ──そして、僕たちもそう。

 姫にこれ以上、サイに深入りしてほしくない。無駄だと分かっていても。

 だってこのまま行けば二人とも、破滅してしまうよ。

 

 

 

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