【完結】機動戦士ガンダムSEED Revelation ~紅蓮のフレイ~   作:kayako

271 / 436
part6 答え合わせ~『黙示録』が始まる日~

 

 

 CE74.3.** (PHASE-27~28)

 

 サイとナオト君への罪悪感からなのか──

 姫は、アマミキョがティーダの為の実験船だということまで、サイに明かした。

 マユの限界も近い。今回の事件で、彼女はナオト君と共鳴を深めた結果、また新しい感情を覚えてしまった。

 もう彼女は普通の感情を持った、普通の女の子と同じだ。カイキには悪いけど、認めざるをえない。

 彼女の身体に合わせてアマミキョ衛護の契約をしていたけど、それもあと1ヵ月半。

 

 

 

 

 CE74.4.**

 

 ナオト君が何とか回復し、アマクサ組がティーダと一緒にアマミキョを離れるということが公表された。

 あと、残り3週間。

 そして今日、姫がサイを呼んだ──こんなことは、とても珍しい。

 無礼だと分かってはいるけれど、モニターで二人の様子を見ていた。

 そうしたら……

 

 

 

 すごく迷った。

 こんなことをする姫は見たくない。

 サイだって、こんなことは望んでいない。

 いくら運命が決まっているからといっても、そのやり方は刹那的にすぎる! 

 アマミキョからデータを抜き取るのと同じに、サイから……姫は……

 それしか、サイの証を残す方法はないからか。

 だけどこれじゃ、ナオト君の父親と一緒じゃないか。やってることが!! 

 

 

 

 僕は思わず部屋に向かい、姫を止めた。

 とはいっても、扉を開けたらいきなりこの事態を目撃して焦った、というふりはしておいた。

 ──そう。間違って扉を開けてしまっただけですよ、僕は。

 

 

 

 おかげで何とか、姫を止めることが出来た。

 でも、その後サイは……

 姫をゆっくり、諭してくれた。

 何も知らないながらも、姫の告白を受け止め、優しく姫を抱きしめた。

 サイは、姫を――

「フレイ」ではなく、姫を、受け入れた。

 否、「フレイ」となった姫ごと、彼女を受け入れたんだ。

 

 

 

 いいのかい、サイ。

 僕たちは今後、貴方に何をするか分からない。

 貴方が姫を受け入れるということがどういうことか、姫からも何度も警告されたはずだ。

 

 

 

 

 CE74.4.**

 

 あれからサイは、アマミキョをとりまとめつつ、姫と共に過ごしている。

 姫の心に奇跡を起こさせた人物。それを、簡単に消してしまっていいのか。

 僕たちは迷っていた。迷ったけど、仕方がない。

 チグサ計画の前には――御方様の前では、仕方がないんだ。

 御方様から、いずれ指示が来るだろう。それまでは動かない。

 

 

 

 

 僕らの姫に、もう少しだけ平穏を。

 こんなに平穏だったことは、姫の人生で、これまでなかったのだから。

 

 

 

 

 CE74.5.**

 

 ハーモニクスシステムのデータ抜き出しが完了してすぐ、御方様から正式な指令が下った。

 僕たちアマクサ組はティーダと共に、アマミキョを離れる。

 ティーダ覚醒のキーとなるナオト君は連れていくことになるが、サイは勿論、連れてはいけない。連れて行けたとしても、彼自身が拒んだだろうけど。

 

 何となくこの時点で、御方様の目論見が分かった──

 御方様は、()()()()()()、サイを殺させるつもりだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 CE74.5.**

 

 僕たちがアマミキョを離れる、最後の夜。

 姫はまた、サイに嘘をついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 CE74.5.** (PHASE-29~30)

 

 住み慣れた船から離れて、僕たちアマクサ組はシネリキョへ来た。

 まずはマユとチグサの分離処置を、姫と一緒に行なうことになる。

 マユを麻酔で眠らせて、シネリキョのメイン・コントロールルームへ運ぶ。

 カイキはそれ以上、ついては来られない。マユから目を背ける彼の姿は、見ているだけで痛ましかった。

 眠っているこの娘は、もう同じ魂として二度と目覚めることはないのだから。

 

 

 

 

 CE74.5.**

 

 ナオト君がいなくなった。

 例によって位置は特定しているからいいんだけど、連合の山神隊と一緒だった。

 以前から探られているのは勘付いてはいたけど、ここまで入り込まれると、ちょっと厄介だ。

 カイキにマユの様子を観察させているのも、もうそろそろ限界だ。

 やっぱり彼は、マユの魂の消失に耐えられない。

 

 

 

 チグサ復活の為とはいえ、カイキは2年間ずっとマユのそばにいたんだ。そりゃ情も移るよ。

 彼自身、薬ではもたなくなってきてる。きっと、自分の運命にも気づいてる。

 チグサに会うまで、自分の精神はもたないことも。

 

 だから姫はカイキをマユから離し、彼にナオト君の確保を命じた。

 予想より前倒しになってしまったけど、計画が先送りになるよりはいい。

 途中でナオト君を負傷させてしまったのは計算外だったけど、どうにか『子宮(ユテルス)』まで彼を運ぶことが出来た。

 マユのかわりにやっと目覚めたチグサを、ストライクフリーダム・ルージュに乗せてセレブレイト・ウェイヴ発振装置への適応を見る。

 同時にナオト君がティーダの遠隔操作に成功したら、もう発振装置のテストは完了したも同然だ。

 

 どうやってナオト君に色々と説明してティーダに乗せるかが問題だったけど、幸い、向こうから勝手に乗ってきてくれた。

 説明はとりあえず後回し。しかも遠隔起動にまで成功している。

 姫はSEEDの覚醒状況を試すため、ティーダに戦闘実験をしかけた。

 

 そして──

 マスミ・シライシの死によって、ナオト君のSEEDもここで発動してしまった。

 カイキが、それによって犠牲になってしまったけど……

 どちらにせよ、もうもたない命だった。

 

 

 

 

 カイキの死亡によってか、チグサ・マナベは完璧に目覚めた。これ以上を望めないくらい良い状態で。

 目覚めた途端に拒絶反応で暴れ出してそのまま死亡というケースは山ほどあったから、周到に『子宮』で目覚めさせて良かったんだ。

 マユ、君の犠牲は無駄じゃないよ。チグサは君から命をもらったんだ。

 

 ティーダの黙示録を発動させて、発振装置の起動テストは終了のはずだった。

 ところが、また邪魔が入った──連合の山神隊が、ナオト君を『子宮』から脱出させてしまった。

 おかげで装置は一部誘爆を起こし、第3サブコントロールシステムが破損。

 ティーダはナオト君ごと、行方不明になってしまった。

 

 

 

 

 CE74.5.** (PHASE-31~33)

 

 ザフトと南チュウザン軍の進撃に合わせて、僕たちも動いた。

 僕にはもう一つ指示があった。ドール・システムの実験だ。

 あれ、実験の後三日間はろくに動けず飲食も出来なくなるから、イヤなんだけどな。

 

 僕が下半身を最初から奪われていた理由は、ニコルの死亡時の状況を分かりやすく再現する目的もあったけど。

 本来は、このシステムの為だ。

 下半身をコントロールするはずだった脳の部分を使って、モビルスーツを操る為──

 

 但し、そのモビルスーツは無人じゃない。ちゃんと人が乗っている。

 ──あれを人と呼んでいいのか疑問だけど、僕たちも最初は()()()だった。文句は言えないよ。

 特定の人物データを上書きする為だけに作られ、培養されている、生物学上ならば「人間」と定義出来るものたち。

 今、南チュウザンに15000体はいるその「人間」を、まっさらな状態のまま機体に乗せる。

 その脳は量子通信によって僕とつながり、それを僕が遠隔操作する。

 それが、ドール・システム──

 誰も死なない、誰の心も痛まない、理想的な戦闘だ。

 

 僕が一度に正確に操作できるのは70機が限界だったけど、少しテストしてみたら150機まではいけることが判った。

 これもティーダのセレブレイトウェイヴのおかげで、大脳の開発が進んだおかげだと姫は言っていたけど、大丈夫だろうか。

 だけど、仕方ない。僕たちが手を抜いたなんて少しでも御方様に思われたら、姫がどういうことになるか。

 これだけのダガーLを動員すれば、何とか御方様にも納得いただけるだろう。

 

 

 

 キラもストライクフリーダムを、ラクスもインフィニットジャスティスを受領した。

 インフィニットジャスティスの方はおそらく、アスランの為の機体だ。

 彼らも動いている──僕らも、迷いは断たねば。

 

 

 

 

 CE74.5.**

 

 結局、姫は迷いを断ち切ることが出来なかった。

 ミッション中に、どうしてもサイに手を下す決断が出来なかったんだ。

 どういうことか判らないけど、アマミキョで内乱が発生し、サイは傷を負っていたらしい。

 その負傷が姫にもフィードバックされ――

 

 姫は遂に、サイを殺せなかった。

 アマミキョのデータは完全に移行させたはずなのに、ティーダもないはずなのに、どうしてだろう。

 まさか、二人の意思がアマミキョを通じ、共鳴を始めていたというのか。

 念のため安定剤も服用していたはずなのに、姫には効かなかった。

 

 ──それでも結果的に、サイは死んだんだけどね。

 姫の、ではなくザフトの攻撃で。しかもおそらく誤射で。

 戦闘中において、あれほど恐ろしいものはないね。弾が何処へ飛ぶか、撃ってる本人ですら分からないんだから。

 あのラッキーがなければ、姫はおそらくサイを助け出してしまい……

 その後は、姫もサイも、死ぬより恐ろしいことになってしまっていただろう。

 

 

 

 

 システムの性質上、本来他のクルーも殺さないといけないはずなのに、姫はそれもしなかった。

 そこまでして、サイとの約束は破りたくなかったのか。サイに銃を向けることになった今でも。

 ミゲルもラスティも姫に従った。だから僕も従いたかったけど……

 あれだけのダガーLに細かい操作を命じるのは、さすがに僕も不可能だ。

 ブリッジとクルーを出来る限り避けて攻撃させることが手一杯だった。撤退を命じたりしたら、御方様に僕が消されてしまうし。

 

 

 

 

 サイが死んだ後の姫の痛ましさは、見ていられなかった。

 アマミキョを潰した、それだけで任務は終了したはずなのに──

 姫はミネルバ隊に襲いかかったんだ。多分そうしなければ、姫自身、心の収拾がつかなかったから。

 

 結果──

 姫を守り、シン・アスカをテストするため、ラスティ・マッケンジーが命を落とした。

 僕と同じ、アスラン・ザラの為に生み出された存在が、SEEDに対して何も出来ないまま消えてしまったんだ。

 シン・アスカとデスティニーのデータは確かに取れたかも知れない。だけど、ラスティが命をかけてまですることじゃない。

 彼の命はアスランの為のものだ。それは彼自身もわかっていたはず。

 なのに、どうして……

 

 そしてラスティの死を見た姫は、自分も──デスティニーに特攻した。

 サイと初めて出会った時に奪取したモビルスーツ、ストライク・アフロディーテを爆散させて。

 本人は否定しているけれど、あれはどう考えても、自殺だった。

 サイを殺され心の平衡を失い、ラスティの死を見て、決断してしまった。

 

 御方様に踊らされ、名前を捨てさせられ、自分の意思を全て操作され。

 初めて見つけたはずの愛すら、自らの手で壊さざるをえなかった、僕らの姫。

 もう、嫌だったのかも知れない。踊らされるのは──

 脱出装置は一応動いてはいたけど、死ねるなら死にたい。そんな気持ちだったのかも知れない。

 

 

 

 でも、駄目だ。

 それは駄目だよ、姫。

 

 

 

 姫にはまだ、必要とする人がいる。

 レイラがいるし、僕たちもまだ生きてる。

 南チュウザンの為に、みんなの為に、姫にはまだ生きていてもらわないといけないんだ。

 

 だからミゲルは、海に落ちた姫を助けた。

 僕も出来る限りの力を総動員して、姫を救出したグフの周囲から、連合とザフトを追い払った。

 その結果──僕は戦闘終了直後、意識を失った。

 

 

 

 トールの話によれば、僕は血の泡を吹いてぶっ倒れて1週間気絶していたらしい。

 挙句、左の指が全部、2か月ほど麻痺状態になってしまった。

 

 

 

 そして今。

 姫は、再び僕たちと共にいる。

 僕とミゲル、そしてトール・ケーニヒと共に。

 サイが死ななければならなかった世界を――

 初めて見つけた『奇跡』を消さなければならなかった、そんな世界を変革する為に、姫は今を生きている。

 御方様に対しては、その意思を巧みに隠して。

 その為には、姫は何もかもを犠牲にするつもりだ。

 恐らく、僕たちをも。

 

 

 

 でも――僕はもう、迷わない。

 もうすぐ、トールが迎えに来る。次のミッションを終えたら、恐らく僕は、この記録すらつけられなくなってしまうだろう。

 姫もミゲルもトールも……レイラまでが必死で、僕を止めてきたけれど。

 姫がその意思を貫くつもりなら、僕も魂が尽きるまで、姫を支えるまでだ。

 それがきっと、僕――ニコル・アマルフィの、生きた意味だから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。