王の器とともにハロウネストを探検し、彼が王となる瞬間を見届けて以降、のんびりと過ごしていた。しかし、ふと気がつけば見知らぬ洞窟でゴブリンに襲われかけていた。
ちなみに釘師(サツマスタイル)である。
彼女はハロウネストの
彼女は幾年月ほど
だが、ふと気が付けば見知らぬ洞窟に彼女はいた。そこにいるのはムシではなく緑色の肌をした子供くらいの大きさしかない生き物───。いわゆるゴブリンと云うモンスターが歩き回っている。
「GOBUAAAA!!」
一匹のゴブリンが彼女に気付き、雄叫びを上げる。その様子に彼女は驚くようなそぶりは見せず、すいっと背中に背負っていた釘を抜いてゴブリンに斬りかかり、ほとんどのゴブリンを一撃で倒す。
ゴブリン、思ってたより弱い。と、彼女は釘に付着した血を払い落としながら骨で組み上げた椅子の裏側を見る。そこには小さなゴブリンがいた。彼女は躊躇なく小さなゴブリンを斬った。
トタトタと洞窟の中を歩いていると彼女は角付き兜を被った大きな人間の男の人と遭遇し、ようやく此処が異世界という事に気が付いた。けれど。彼女は「なんとかなるかなあ?」と楽観的に考える。
「ゴブリンか?」
そう角付き兜の男は問う。
彼女は首を横に振って「自分はゴブリンじゃない」と答えながら全身を隠す大きいマントから片手を出して、もう死んでいるゴブリンを指差す。すると、角付き兜の男はゴブリンの死骸に中途半端な剣を突き立て、数を数え始める。
ムッと彼女は顔を歪める。
しかし、襲い掛かったり。
釘を抜いて抗議する事はしない。
彼女はもう釘を振るうのではなく、筆を振るうと決めているのだ。まあ、先程のゴブリンは襲ってきたため正当防衛(ただの斬殺)しているけれども。
「二十一。被害は無いようだが」
角付き兜の男はそう呟き、血まみれの中途半端な剣を革鞘に納める。彼女はちゃんと手入れすればいいのに。なんて思っていると「お前は何者だ?」と言わんばかりに角付き兜の男に見られていた。
しかし、彼女は喋らない。
王の器と違って彼女は普通に喋ることは出来るけれど。あまり良い声とは言えないのであまり喋りたくないのだ。その事を知らない。むしろ知らなくて当然ではあるが。角付き兜の男も黙り込んだ。
暫しの沈黙────。
やがて角付き兜の男は「お前も来るか?」と彼女に問う。彼女はこくりと頷いて松明を片手に携えた彼の後ろに着いていく。どこか懐かしい気持ちになりながらハロウネストの放浪者は彼を追う。
◆辺境の街◆
彼女は辺境の町にやって来た。
今まで見たことのない多種多様な種族に驚き、そそくさと彼女は角付き兜の男の背中を追い掛ける。怖いわけではないけれど。やっぱり獣は苦手なので、あまり近寄りたくない。
そんなことを考えていると角付き兜の男は大きな建物に入っていく。彼女も彼を追って大きな建物に入ると物珍しそうにこっちを見る目に首を傾げつつ、ぴったりと彼の背中に張り付く。
さながらセミのようだ。
「えと、どういったご依頼は?」
「……既に終わっていた」
「あ、そうなんですね。……そちらは?」
「これがゴブリンは皆殺しにした」
角付き兜の男の言葉に受付嬢は息を飲む。
おおよそ130cmにも満たない仮面をつけた小さな子供?がゴブリンを殺した。到底信じられる内容ではないものの。彼はウソをつく人間じゃないというのを受付嬢は知っている。
そんな受付嬢に彼女はまた首を傾げる。ずっと分からないことばかりで彼女も困っているのだ。とは言え。彼女は喋って説明するつもりはない。
なんか良いようになれ。彼女はそう思いながら角付き兜の男の背中に張り付き、なんだか楽しげに身体を揺らしている。
〈角付き兜の冒険者〉
のちのゴブスレさん
まだ駆け出しの冒険者。ゴブリン対策のスペシャリストになるために頑張っている。とにかくゴブリンはブチ殺して、ゴブリンをブッ殺す事を考えている。とっても真面目な対ゴブリン殺人鬼さん。
〈元・失敗作の王の器ちゃん〉
釘師の放浪者(サツマスタイル)
王の器くんと一緒にハロウネストを探検して、彼の最後を見届け、のんびりと過ごしていたら知らないところにいた。とりあえず、ゴブリンはキモいのでぜんぶ斬っておいた。