ネクストデルタどこぉぉぉぉ!

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灰塗れの英雄

 結論から言えば、あの日同族たちに背を向けた時点で、俺の末路は決まっていた。

 

 だがそれも当然だろう。わざわざ反乱分子である人間たちに手を貸したのだ。裏切り行為と言われても仕方がない。本来、俺たち新人類であるオルフェノクが、旧人類である人間と歩み寄るなどあってはならないことなのだから。

 

 しかし俺は、それを理解した上で彼女の手を取り走った。

 一歩足を踏み出すごとに、頭の中で誰かが、『その女を殺せ』と叫んでいた。おそらく、オルフェノクとしての本能か何かだろう。それと同時に、頭皮をすり抜け、脳みそに直接何かが刺さるような痛みにも襲われた。痛かった、怖かった、苦しかった、だがそれでも足を止めることはしなかった。

 自分でも、なぜそんな事をしたのか分からない。いや、正確には分からなかった。オルフェノクに比べ人間は、弱く脆く、そして儚い存在だ。優れている部分など一つもない────そう思っていたのに。

 

「……最悪だ」

 

 死ぬ事に対して恐怖を抱くなど、今までの人生で一度もなかった。自分は強者だという自覚があった。そしてそれに見合うほどの力も持っていた。だが、別にそれは問題じゃない。

 俺は、今までただ惰性に任せて一瞬一瞬を生きてきた。

 

 人間の両親から生まれた突然変異型のオリジナル、その境遇故に昔から俺の周りには誰もいなかった。両親は無論殺され、貴重なサンプルとして、物心がつく頃には研究所でモルモット扱いの日々だった。

 村上さんが社長になってからは多少扱いも変わったが、毎日毎日実験の日々。安らぎというものを感じることも、これからそれに触れるも無いだろうと、その時はそう考えていた。でも、

 

「……本当に……最悪だ」

 

 出会ってしまった。

誰よりも夢を追い求めていた青年に

傷つきながらも理想を諦めなかった青年に

自分を笑顔で受け入れてくれた少女に

底なしの明るさで前を向いていた青年に

そしてあの日、自分がここに来ることになった原因となった少女に。

 

「初めてだな……こんなに死にたくないだなんて……思ったのは………」

 

 いや、正確には死ぬ事に対して恐怖を抱いている訳じゃない。明日を迎えることが出来ないのが、彼らと共に笑い合うことが二度と出来ないことが、怖いんだ。生きたい───本能が、そう叫んでいる。

 

 人間としてのそれか、あるいはオルフェノクとしてのそれかは分からない。だが今は、その叫びに従うだけだ。俺が人間だろうとオルフェノクだろうと関係ない。

 限りなく可能性は低い。だが今は、明日を掴む為に───俺の夢のために………!

 

 目の前に広がるのは、所々に火の手が広がっている廃墟。残った廃材にも燃え広がったのか、黒煙がその勢いを増している。ライダーズギア越しとはいえ、焦げ臭い不快な香りが鼻を刺激する。

 もう解放軍もスマートブレインの連中もほとんど残っていない。今この場にいるのは俺と、あいつらだけのようだ。

 

「相変わらず、恐ろしい戦闘力ですね」

「今からでも戻って来ない?君のような人材は大歓迎よ」

「………」

「早くやろうよー、他に邪魔者も居ないんたし」

 

 ラッキークローバー、スマートブレインの最高戦力を持つ集団だ。構成メンバーはたったの四人。だがその一人一人が、他のオルフェノクとは隔絶した力を持ち、彼らが一人でも戦場に舞い降りれば、文字通り一騎当千の武功を挙げることで、人間とオルフェノクを問わずにその名を轟かせている。

 

「………行くぞ」

 

 土砂が入り混じり、濁った液体を充満させている水たまりを踏みつけながら、彼らを迎え撃つ。飛び散った水しぶきが地面に落ちたときが、開戦の合図となった。

 

 空気を切り裂き、踊るように迫ってくるセンチピードオルフェノクのムチをかい潜り、接近したロブスターオルフェノクに狙いを定める。首を狙っての一突きを避けての右ジャブ、左でもう一発を喰らわせる。さらなる追撃を狙うが、後ろに気配を感じ、振り向きながら回避。

 見るとクロコダイルオルフェノクが、大きく袈裟切りを叩き込んでいた。しかし勢いがあまり過ぎたのか、剣が地面に突き刺さり、引き抜こうと腕を動かしている。その隙に後方へとバックステップし、一度距離を取る。

 

「やるねぇー」

 

 流石、と言うべきか。ロクに連携が取れていないとはいえ、全員の一つ一つの行動に凄まじい殺意が乗っている。これまでの相手達とは、比べものにならないほどのものが。一人ずつ相手にするのならば、まだ勝機はある。だが、そのような状況を作り出せそうな隙も余裕もこちらにはない。

 

「今度は僕だよ!」

 

 他の三人を差し置いて、ドラゴンオルフェノクが前に出てくる。迎え撃とうと一歩前に踏み出した途端、奴の姿が消えた。

 

「────遅いよ」

「!?」

 

  瞬間、背中に衝撃が走った。

気付けば体は宙を舞っており、地面と空が反対に瞳に映る。雲で染められた大空、表面が剥き出しになった大地、そしてその中に一つの黒い影を捉えた。

 

 灰色の外殻を脱ぎ捨て、龍の骨のようなフォルムへと変化したドラゴンオルフェノク龍人体、情報はレジスタンス伝いで耳に入っている。重装備である鎧を脱ぎ捨て、高速移動を得意とする形態。通常の人間やオルフェノクでは、その姿を捉えることすら出来ないほどのスピードを発揮することが出来ると。

 

 だがこんな状況では、そんな事を思い出していても意味がない。瞬く間もなく俺の眼前にまで迫ってきたドラゴンオルフェノクは、電撃を纏った腕で腹に一撃を打ち込んだ。そのまま勢いが増加され、瓦礫に衝突しながら、背中から廃墟の中に叩き込まれる。

 

「はぁー………」

 

 胸部、そして腹部装甲に激しくダメージが加わったが、ライダーズギアの保護機能により、肉体への直接的な損害はない。だが、ダメージが無いだけで、衝撃までもを全てゼロにすることは出来ない。このままのペースで行けば、五分持てばいい方だろう。そう、このままならの話だが。

 

 身体中についたホコリを払い、片足をついて立ち上がる。室内に光を届けている方を見ると、先ほどの攻撃で半壊した壁面の外から、四つの灰の影が近付いてきた。再び外殻を見に纏い、魔神態に姿を戻したドラゴンオルフェノクを先頭に、その後ろから四人が近づいてきてきている。

 

 右腰部分に装着したデルタフォンを抜き取り、顔にマイクを近づけキーワードを囁いた。

 

3821(スリーエイトトゥーワン)

 

『Jet Sliger Come Closer』

 

 電子音が終了すると同時、空中から轟音が降り注いでくる。ラッキークローバーの連中達が、それに気を取られ上空に目を向けた瞬間、無数のミサイルが天空から降り注いできた。支援機ジェットスライガーによるミサイル砲撃だ。

 本体にはあらかじめプログラムを仕掛けており、俺のいる場所以外の全てを目標に設定してある。

 

 立ち上がる土煙と共に、撒き散る炎と鉄片。さらに狙いを外れた無数の弾頭が、半壊状態だった廃墟群に追い討ちを掛けていく。

 しばらく続いた轟音のうち、次第に煙が上がっていく。そして徐々に徐々に、外の様子が明らかになってきた。先程まで何とか原型を保っていた建造物は跡形もなく消え去り、薄い煙の向こう側に、四つの影の輪郭が確認出来た。

 

 まだ全員体の原型を保ってはいるが、遮蔽物も無しに直接アレを喰らったんだ。消耗は半端じゃないだろう。

 

「ファイヤ!」

 

『Burst Mode』

 

 デルタフォンをデルタムーバーに接続し、ブラスターモードへと変形。右手で引き金を押しながら、ドラゴンオルフェノクに肉薄する。片手での射撃では、照準が中々定まらない。発射された光弾は狙いを外れ、手前の大地や、虚空の彼方へと吸い込まれていく。だがそれでも数打ちゃ当たるというもので、しばらく引き金を引き続けると、右足と左胸に一発ずつ命中した。

 

「……ちっ……!」

 

「ハアッ!」

 

 膝をついたドラゴンオルフェノクの体を掴み、地面に転がす。その拍子で泥を被った彼の体に馬乗りになると、ゼロ距離でブラスターモードの弾丸を撃ち込んでいく。

 

「あああああ!」

 

 泥に塗れた口から響き渡る悲鳴を他所に、続けて顔面に何度も拳をめり込ませる。よほど消耗しているのか、反撃をするどころか、防御すらする様子を見せない。そのまま銃床の部分を叩きつけようと、デルタフォンを大きく振りかぶったその時、

 

「離……れろ!」

 

 クロコダイルオルフェノクが後方から剣を振りかざしてきた。装甲が火花を散らし、衝撃が背中に伝わってくる。さらに返す刀で二撃目をくらい、よろめいたで肩を掴まれ、今度は俺が地面に叩きつけられる。

 

「終わり………!」

 

 大きく振りかぶっての袈裟切り。軌道から考えて、今度の狙いはドライバーだろう。振り下ろされる刃、その曇りのない輝きが、仮面越しに伝わってくる。近づいてくるその光、だがそれが、頭より少し上の高さまで落ちてきたとき、ブラスターモードを腹部目掛けて発射した。

 

「ノォッ!」

 

 怯んたところで右足をクロコダイルオルフェノクの足元に滑り込ませ、転倒させる。そしてその隙に立ち上がり、ブラスターモードを向けたとき、右手に何かが巻き付いた。黒い鎖のようにガッチリと腕を固定したソレ。その根本を辿っていくと、センチピードオルフェノクが両足でその片先を、必死に引っ張っていた。

 

「冴子さん、今です!」

 

 その声に応じるかのように、俺の目の前に西洋剣の剣先が現れた。まだ自由の効く左手でそれを防ぐが、続いて高速で放たれた二突目、そして三突目は防ぎ切れず、後方に吹き飛ばされる。

 

「くっ………!」

「舐めるなよ……裏切り者がぁ!」

 

 着地点に既に向かっていたドラゴンオルフェノクに、首根っこを掴まれ、雨で沼のようになった地面に叩きつけられた。ぐちゃぐちゃとした気分の悪い感触が背中に伝わってくる。腕や足を使い立ちあがろうにも、足場が安定せず、戸惑った間に大きな隙が出来た。

 

「まだまだぁ!」

 

 鳩尾に蹴りが突き刺さり、回転しながらも泥の上で何とかもがく。そのとき、ふと空中で爆発音が聞こえた。

 

 何事かと空を見上げてみれば、先ほど呼び出したジェットスライガーが、黒煙を上げながら、地面へと堕ちていく一部始終があった。地面と接吻を交わしたスライガーは爆音ともに、大きな爆発を起こし、激しい火柱を作り出す。

 

「これで、終わりだ……!」

 

 スライガーが墜落した場所を一瞥したドラゴンオルフェノクは、ゆっくりと俺に向かって近づいてきた。その胸の怒りを隠そうともせずに、俺へと殺意を向けてくる。

 にしても、裏切り者ねぇ。その半端もんにやられて相当頭に来ているらしい。ラッキークローバー最強とも噂される男が、こんなにも子供のような態度だと知られたら、レジスタンスでは一生の笑いもんにされるだろう。

 

「うっ、はぁっ!」

 

 泥がこびりつき、左半分の視界が見えなくなった仮面の下で、ドラゴンオルフェノクを睨み付ける。自分でもまだここまで動ける力が残っていたとは驚きだ。

しかし足元はふらつき、視界もお世辞にも安定している状態とは言い難い。

 

 だがそれでも、まだ立ち上がれる力があるのなら、まだ奴らに立ち向かう勇気があるのなら、俺はこんなところで、諦めるわけにはいかない。未来を……明日をこの手に掴む為に。

 

「38……2……1!」

 

『Jet Sliger Come Closer』

 

 空中より飛来した二機目のジェットスライガーが、ミサイルを振り撒きながら、俺の目の前に舞い落ちる。

 

「チッ、逃げる気───」

 

 ドラゴンオルフェノクはその機影を捉えた瞬間、再び龍人態へと変化しようとする。おそらく高速移動で、あの巨大を破壊するつもりだろう。だがこちらはあいにく、逃げるつもりも、コイツを壊されるのを黙って見ているだけのつもりもさらさらない。

 

 ブラスターモードを構えた俺は、目の前でドリフトを繰り出したスライガーの()()()()()()を撃ち抜いた。

 

「何?」

 

 困惑しているドラゴンオルフェノクの事など置き去りにするようにして、その横を通り過ぎるジェットスライガー。エンジン部を爆発させたことにより、元の推進力とも合わさって、文字通りの爆発的な加速力で、グングンと空気を切り裂いていく。この暴走車両のゴールに待っているのは………二つの影。

 

「冴子さん!あれは……!」

「まずいわね………!」

 

 そうセンチピードオルフェノク、そしてロブスターオルフェノクだ。二人に向かって突撃したスライガーは、そのまま二人を下敷きにしながら、なおも前方へと突き進む。そして仲間がとどめを刺される状況で、どうするべきか逡巡するドラゴンオルフェノクと、クロコダイルオルフェノク。俺は後者に目掛けて、泥沼を踏み切った

 

 ドライバーからミッションメモリーを抜き取り、デルタムーバーにセットする。

 

『Ready』

 

「チェック!」

 

『Exceed Charge』

 

 ドライバー本体から供給されたフォトンブラッドが、右腕伝いにデルタムーバーにチャージされる。銃口をクロコダイルオルフェノクに向け、その引き金を引いた。

 

「ウオォォォ!」

 

 発射されたポインターは、クロコダイルオルフェノクに命中。円錐状のエネルギー体を形成した。地面を蹴り、空中で右足を前に突き出す。

デルタのエクシードチャージにより繰り出される、ルシファーズハンマー。それが今、敵の肉体を穿つ。

 

「おりゃぁ!」

 

 高濃度のフォトンブラッドによる攻撃、通常のオルフェノクならば今頃死に体になっている頃だろう。だが、奴は倒れない。最後の意地とばかりに、ルシファーズハンマーの猛攻を耐え抜こうとしている。

 それはラッキークローバーとしての意地か、それともオルフェノクとしての本能か。どちらにしても凄まじい執念だ。だがそれでも、限界は来た。

 

「まだぁー!」

 

 珍しく声を荒げた奴は最後の足掻きとばかりに、右腕を払い俺の左目側に剣先をぶつけた。その衝撃で、仮面の一部にヒビが入る。しかしそれでも、俺は止まらない。

 

 奴の体を貫通し、Δの紋章が空中に浮かび上がる。そして蒼炎が奴を包み込むんだと思うと、次の瞬間、クロコダイルオルフェノクの形をした灰像が出来上がった。

 

 それと同時に後方で広がった爆炎と二つの悲鳴。これで残る敵は、奴ただ一人。ならばもう、出し惜しみは無しだ。

 

「……オーバー」

 

『Limiter Cut Trial Phase』

 

 全身に流れるフォトンブラッドの色が、淡い青から薄白い紫へと変質していく。

 トライアルフェイズ、デルタに搭載された裏コード。試作段階で作られた最大出力モードだ。凶暴化のリスクは最大限まで跳ね上がるが、その分出力は、通常モードとは桁違いの数値を叩き出せる。

 

 奴も俺も満身創痍。ならばこの一撃で、決着をつける。

 

 土水を蹴り、水しぶきが上がる。割れた仮面から、冷たい空気が入り込む。そして近づいてくる死の足音、バシャバシャバシャと一歩進むたびに、その音が鮮明になっていく。

 

 交差する拳と拳。奴の持つその灰色の爪が………俺の体を貫いた。

 

「僕の勝ち………だね」

 

 デルタの装甲越しに俺の体は抉り抜かれ、風穴から灰化した肉体が溢れ始める。それを見て、勝ち誇ったように笑うドラゴンオルフェノク。勝負は決まった、俺の負けだ。だが、

 

「俺も………勝った……さ」

「………何?」

 

 油断していた奴の体を引き寄せた俺は、両腕を奴の背中に回すと、強く握りしめるように、指を絡ませてそのまま体をホールドした。

 

「どういうつもりかな?」

「こういう……つもりさぁ!」

 

 瞬間、フォトンブラッドの体を駆け巡る速度が上がり始める。あまりの早さに、一部装甲が剥がれ落ち紫の粒子が、あたり一面に漂い始めた。

 

「離………せ!」

 

 突き刺さった腕を引き抜こうと、奴が足搔く。だが、この程度では………!

 

「どけよ!裏切り者がぁ!」

「無理……だな……!」

 

 視界から色味が消え去り、安定しなくなってくる。もう限界はすぐそこらしい。だが、いや、だからこそ……この手を離すことは出来ない。

 

「生きてもらいたい………人達が、いるんだ。そいつらが……安心して、笑って……前を向けるようにぃ!」

「やめろ……やめろぉー!」

 

 泣き叫ぶように声を荒げたドラゴンオルフェノク。それと同時、ドライバーからまばゆい閃光が漏れ始めた。

 そして息を呑んだ瞬間。

 

 俺の体は吹き飛んだ。

 

 体は灰状になり、爆地点を中心に人型の形が崩れ始める。最後に視界に映ったのは、爆炎の中でもがいているドラゴンオルフェノク。

 

 即死させることは出来なかったが、あの様子では長くは持たないだろう。

 

………長いようで短かったな、この十八年は。でも、後悔はない。

 

 いや、一つたった一つだけ。最後に、彼らに………

 

 

 

 

 


 

 

 

 

「素晴らしいね。正に最高傑作だ」

 

 

 

死んだと思ったら、謎の覆面スーツ男に話しかけられたんだが………




パラロス世界で死んた元人間系オルフェノクが、ヒロアカ世界でヒーローやる(かもしれない)話

反響が良ければ書きます。

 

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