偉大なる大魔法使いハリー・ポッター   作:幽玄の鬼

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ハリー・ポッター、スリザリンに組み分けされる

「ハリー・ポッター」

 

 マクゴナガル教授が、ハリーの名前を読み上げた時、大広間の喧騒は一瞬にして静まり返った。

 

 ハリーが動くと、上級生だけでなく教授陣の視線までもが集まったのだが、ハリーは気にすることなく歩みを進めた。

 

 ハリーは、背筋を伸ばして、胸を張る。

 ハーマイオニーに向けて、パチリとウィンクをするとグリフィンドールのテーブルが少なくない黄色い悲鳴が上がった。

 ハリーは気分が良くなり、前髪を掻き上げ傷跡を披露する。

 

「あの子がハリー・ポッター? さっき、杖無しで魔法を使っていた?」

 

「ただの新入生なはずがないと思っていたけど、まさかハリー・ポッターだとは。てっきりどこかの純血だと思ったんだがな」

 

「あの子がハリー・ポッター」

 

 口々にハリーのことを囁く。

 

 ハリーは、有象無象のことなど気にも留めず、自信に満ち溢れた様子で、スツールに座った。

 帽子が被せられる。

 視界が真っ暗になり、そして帽子の声が聞こえてきた。

 

「ううむ。リリーとジェームズの子だね? なんとまあ、難しい。実に難しい。勇気に満ちて、決断力がある。知識に対して貪欲で、才能が溢れている。これまでたくさんの子どもたちを見てきたが、これほどまでに才能がある子は初めてだ。なんと! 力を試したいとワクワクしている。不安なんて抱くはずないね。偉大になれるとも思っている。あぁ、もちろん君なら偉大な魔法使いになれるとも」

 組分け帽子は、そこまで言うと一旦言葉を切り、今度はツラツラと未来図を語る。

「グリフィンドールに入れば、君はきっと英雄として歴史に名を残すだろう。レイブンクローに入れば君は誰にも成し遂げれなかった発見をすることができる。スリザリンに入れば、君は真の友を得、そして偉大な魔法使いの道を歩むだろう。君には全ての寮に相応しい素質がある。まあ、強いて言えば、ハッフルパフは向いていないだろう。これで、帽子の見解は以上だ。あとは、君の選択に委ねよう。君はどの道を選びたいのかね?」

 

「僕はパパとママを超える魔法使いになりたい。パパとママが天国で僕を産んで良かったって自慢に思える様な立派な魔法使いに。だから――スリザリンに入る」

 

「よろしい!

 

スリザリン!!!」

 

 組分け帽子が声を張り上げて叫ぶ。

 

 ハーマイオニーはある程度予想していたのか苦い顔で、ネビルは顔を真っ青に染め上げて、ロンはあぁ、やっぱりかーと言う顔だ。

 その反応が可笑しくて、ハリーはクスリと笑った。

 

 他の寮に至っては、誰もが唖然としていた。ミネルバ・マクゴナガル教授も他の教授陣も、身を乗り出して、まるで信じられない物を見た、というような顔で固まっている。

 ダンブルドアは、じっとハリーを見透かす様に見つめる。一瞬だけ目が合うが、ハリーは、ウィンクする。

 

 ハリーは、立ち上がると堂々とスリザリンのテーブルに歩いていく。スリザリンの生徒たちは、静かなそれでも熱気ある歓声と拍手喝采で、ハリーを歓迎する。

 

 魔法界の英雄、ハリー・ポッターがスリザリンに入寮した。これで、スリザリンの栄光と地位は盤石なものになる。

 

「ハリー・ポッター! 歓迎する!」

 監督生のバッジを付けた男と、固い握手を交わし、ハリーは、自身の席に誘われた。

 ハリーに案内された席。それは、奇しくも。

 

「「……あ」」

 

 ドラコ・マルフォイ。組分け前に、バチバチ火花を飛ばし合った少年の隣りだった。

 

「えっと……そのぉ。あぁ……」

 

 流石に、乱闘の一歩手前だったハリーは、気まずくて声にならない声を出す。それは、ドラコにとっても同じことだったようで、もともと青白かった顔が真っ白を通り越して陶器の様な土気色になっていた。

 ハリーは、謝ろうとも思っていたのだが、プライドが変に邪魔をして中々謝れない。口から出るのは、声にならない声だけ。目が右へ左へ、泳ぎまくる。

 先に折れたのはドラコだった。

 

「……すまなかった。両親を侮辱して。あぁ、その。同じスリザリンとしてさっきまでの互いの無礼は水に流して、お互い仲良くしようじゃないか」

 

 ドラコは見ていた。

 いな、目の当たりにさせられていたのだ。

 高レベルな魔法を習得していること、そして杖無しでも魔法を扱う魔法力を、見たあとなら分かる。

 ハリーに、ドラコは遠く及ばないことを。逃走は恥じではない。命を守る行為をスリザリンは尊ぶのだ。ネームバリューだけの英雄だと思って強気に言ったのに、すでに新入生レベルを逸脱している少年が相手とは聞いていない。

 

 それに、ドラコは敬愛する父から、ハリーとは極力仲良くするように、と仰せつかっていた。

 ハリー・ポッターは、ヴォルデモートを倒した魔法界の英雄。極論だが、彼の言葉と立つ側は正義となる。

 ハリーと友好的関係を結べば、マルフォイ家の地位はさらに安泰するだろう。ゆえの、父親からの指示なのだ。さっきは、慣れない否定につい喧嘩腰になってしまったが、今からでも仲良くなって遅くないはず。

 ドラコは手の平を返して、ハリーに下手に出た。ハリーの立ち振舞と、さっきの言動から、ハリーはすこぶるプライドが高く、それを優先するのだと理解したからだ。

 だからドラコはもう一度、手を差し伸べた。

 

 そんな打算に塗れたドラコに、ハリーは朗らかに笑ってドラコの手を取る。

 

「僕も、君に喧嘩腰だったしね。うん、いいよ。友達になろう」

 

 ハリーは、謝らなくてすんでほっとした。有耶無耶に流れたことに罪悪感があるが、友達が増えたことによる喜びが勝って、無邪気な笑みになる。

 それに、ハリーもドラコを利用する気満々だった。マルフォイ家のことをハリーは、よく知っていた。色んな本で、魔法界を調べる過程でマルフォイ家が由緒正しい純血であり、当主のルシウス・マルフォイ氏がホグワーツの理事を勤めていることを知り、さらに調べた。

 由緒正しい家柄や特権階級と良い付き合いをして損はないと、バーノンは言っていた。コネ作りは、出世への第一歩である。

 友達が増えたことが、ハリーには純粋に嬉しくてたまらないのだ。

 

「よろしく、頼むよ。ポッター」

 

「ハリーでいいよ。マルフォイ」

 

「なら、僕もドラコで構わないとも。ハリー」

 

 長い付き合いになりそうだと、ハリーは思った。

 

 と、2人が和解している間に、組み分けの儀式は終わっていたようだ。

 空だった食器には、いつの間にか豪華な御馳走が並べられていた。ハリーは、おいしそうな香りにごくりと喉を鳴らすと、ナプキンを首に付けて、ナイフとフォークを手に取った。フレンチ、イタリアン、割と国際色豊かなホグワーツに合わせて、バリエーションが豊富なディナー。

 ハリーは、美味しそうに御馳走を堪能する。

 

「なかなかやるじゃないか」

 ドラコは、ハリーを尻目にそう漏らす。

 ドラコの目から見て、ハリーの所作はまだ拙いが、十分に合格点をあげられる。

 

 もっとも、御馳走を食べるのに夢中なハリーに、ドラコのつぶやきは届きやしない。 

 マナーに口うるさいペチュニアが、魔法界のディナーの所作を、本を片手に叩き込んだ結果である。夢中になっても、所作が実践できるくらいに徹底的に訓練させられた。

 普段、ダーズリー家の中では、魔法を使って食事にがっつくのだが、そんな無様を晒さずについたのは幸運だった。

 

 ハリーの蛇カルロスは、ローブから腕を伝いテーブルに降り立つ。そこでハリーは誰も手を付けていない鳥胸肉を切り分けると自分の皿に乗せて、フォークで鶏胸肉を2度叩いた。すると、鶏胸肉に切れ込みが入り細切れになって、それからフォークを手にしたまま2度程振るうと、鶏胸肉に仕込まれた香辛料やら油やら滲み出てきて鶏胸肉がただ焼いたたけのプレーンな状態となる。 

 目が合うハリーとカルロス。ハリーがウィンクをすれば、カルロスはチロチロと舌を出すと

 パクリ。

 カルロスは大口を開けて、鶏胸肉を飲み込んだ。

「シューシュー(サンキュー、相棒。美味かったぜ)

 普段滅多に口を開かない寡黙な伊達蛇カルロスが、美味かったと告げるのに対してハリーはまたもやウィンクで返す。

 

 その様子を遠巻きに見ていたマルフォイを含むスリザリンの生徒たちは、やはりハリーが杖無し呪文に慣れ親しんだ新入生らしからぬ熟達した魔法使いレベルの生徒なのだと認識を改めていた。

 そんな中、ドラコが先陣を切って話し掛けた。

 

「その子、ハリーのペットかい?」

「そう。僕の可愛い頼れる相棒」

 ハリーは、カルロスの下顎を擽る。カルロスは気持ちよさそうに、目を細めた。

「ビルマニシキヘビで名前はカルロス。ブラジルをルーツに持つ、ウィットに富んだ洒落の利く賢い蛇なんだ。僕が昔、マグルに見世物にされていたところを、……あー、ちょいと失敬(・・)した。カッコいい蛇だろう?」

 

 ハリーの紹介を受け、カルロスはドラコにウィンクを披露する。

 なるほど、確かに賢そうな蛇だ。それはともかく、ハリーは一体どうやってマグルの面前で蛇を失敬(・・)したのだろう? 

 

「まさか魔法でかい?」

 

 いささか都合の悪い質問に、ハリーは取り合うことなくジュースの入ったゴブレットを無言で飲んだ。

 図星だったらしい。ドラゴンの鼻を擽って無駄な怒りを買いたくないドラコは、それ以上の追及を止めた。代わりに、一人の女の子がハリーに話し掛ける。

 

「その子、カルロスって言うの?」

 素敵な名前ね、と無理やり割り込んできた少女は言う。

 見事なプラチナブロンドの魔女。彼女も新入生だ。気の強そうな顔をしている。

「あーっと、君は誰?」

「私はダフネ・グリーングラス。聖28族の一人。由緒正しい純血の魔女よ。よろしく」

 綺麗なクイーンズ・イングリッシュ。

 気品高く、優秀そうに見える。ハリーは、心の中でこっそりとチェックを付けた。

「どうも。ミス・グリーングラス。スペイン語から取ったんだ。自由な男、それから神の恵みを意味している、とても冴えてると思わない?」

「とても冴えてると思うわ。それは置いておいて。ねぇ、ポッター。どうして、ウィーズリーのネズミが動物もどき(アニメーガス)だと気付いたの? 普通、見分けなんかつかないはずなのに」

「ハリーでいいよ、ミス・グリーングラス。えっと、カルロスはネズミが大の大好物で食べることを生きがいにしてるのに、ピーターを見ても反応しなかったんだ。それでおかしいと思って、触って確かめたら、とても高度な魔法で覆われていた。君たちも魔法の痕跡くらい触ればわかるだろう?」

 

 自信満々に説明をするハリー。だけれど、痕跡云々になると、ドラコとダフネはそろって首を傾げるのである。

 

「ちょっと待って。痕跡ってなに? そんなもの私知らないわ。ドラコはどう?」

「……僕も初めて聞いた。あれか? 強力な闇の呪文が残すとかいう」

 ダフネは知らないと言って。ドラコは、当たらずとも遠からず。無難なことを言う。

 どうやら、触って魔法を感じるのは、ハリーたち同年代の間では一般的ではない様だ。

「ふ~ん。と、に、か、く。……ただのネズミとは思えないくらい魔力と魔法に包まれていたんだ。だから、暴露呪文を使った」 

 

 触っても痕跡が分からない二人のことはどうでも良さそうにハリーは話を続ける。

 

 知らないことを知らないまま。

 

 気になることを、気になるままでいられない性格のハリーは、だから無性に真実を知りたくなって。だから、暴露呪文を使うことを決意した。ハリーはとてつもない自信家なのである。

 結果。ハリーの暴露呪文と、ニワトコの杖は遺憾なく魔力を発揮し、杖の助けを得たハリーの呪文は、動物もどき(アニメーガス)の化けの皮を剥がし、みごとにピーター・ペテグリューなる殺人鬼を白日の下に晒すことに成功した。そして、ハリーは、自分の魔法が大人の魔法使いにも充分に通用することを知った。

 

「杖無しで魔法を使いこなしてるし、ハリーが学年で最高の魔法使いなんじゃないかしら?」

 ハリーが自尊心の化身であることを見抜いたダフネがハリーを褒める。

 

 魔法大戦の時、中立だったグリーングラス家の立場を良くするため。ホグワーツで過ごす七年間での自分の地位を盤石にするための布石である。ダフネもまた、ハリーの名声を利用する気満々だ。だが、ハリーの鮮やかな魔法を見て、尊敬の念を抱いてもいる。

 根っからのおべっかじゃないからこそ、本心からの言葉。ハリーは気を良くして、ダフネの手を取る。

 

「ダフネ・グリーングラス。君はとても聡明な魔女だ」

 

 そして、ダフネの手の甲に唇を落とした。ダフネは、顔を朱色に染め上げ、小さく息を飲み、ダフネとドラコとハリーのやり取りに聞き耳を立てていたスリザリンの女子生徒たちは黄色い悲鳴を上げる。

 

「なんだか君とは長い付き合いに成る予感がするよ」

 

 ダフネは、胸に手を当て、ふぅーっと息を吐き出すと。

「いい? 私は寛容だからとやかく言わないけれど、他の魔女に同じ様なことを見境なくしていたら、頬を打たれると思いなさい」

 

「失礼な。僕は君だから手の甲にキスしたんだ。誰彼かまわずするもんか」

 

「もう! お黙り!」

 

 ハリーたちは、友誼を深める。

 

 ホグワーツ校長アルバス・ダンブルドアが立ち上がった。髭と髪は真っ白で、足下に届きそうなまでに伸ばしている。二度折れ曲がった鼻の上に掛けている半月メガネから覗く瞳は理知的で、生徒たちを優しく見守る好々爺だ。

 ダンブルドア校長は、優雅に立ち上がる。

 

 すると、お皿の上にあった食事が、すべて消えてしまった。

 

「さて、みなよく食べてよく飲んだじゃろうから、お腹が膨れて眠くなる前にもう2,3言注意事項を述べさせてもらおうかの。まず一年生のみなに連絡じゃが、校内にある『禁じられた森』に入ってはいけませんぞ、許可なくの。そして、これは何人かの上級生にも当てはまることじゃ」

 

 そこでダンブルドアは一度言葉を切って、グリフィンドールに座る何人かの上級生をちらりと見た。

 

「では次の注意事項じゃが、管理人のフィルチさんから授業の合間で魔法を使わないようにと注意があった。悪戯グッズについても同様じゃ、廊下で決して使わんようにの。持ち込み禁止リストがフィルチさんの事務所に貼っておるので目を通すとよろしい。ああ、それと二週間後にはクィディッチの予選があるから、寮のチームに参加したい人はマダム・フーチに連絡するのじゃ。よいな?」

 

 1年生はクィディッチに出られないことを知っている。なるほど、ハリーはマダム・フーチとやらに交渉すればよいのか。

 

「――では最後にじゃが、とても痛い死に方をしたくない人は、今年いっぱい四階の右側の廊下に入ってはいけません。そこには恐ろしい苦しみと死がまっておる。以上じゃ」

 

「ダンブルドア校長は、頭が少しぶっ飛んでるね」

「正直、君が言うなよとは思うけど同意するよ」

 二人は、こそこそを顔を寄せて囁いた。

 

「さーて、みなもそろそろ眠くなった頃じゃと思うが、ふかふかのベッドに飛び込む前に校歌を歌いましょうぞ!」

 ダンブルドアは立ち上がると声を張り上げる。

 そして、杖を細かく振るうと杖の先から金の光のリボンが飛び出して、くねくね空中を這うと文字になる。

「思うがままに歌うが宜しい、メロディもリズムも自由じゃ。――では、()くぞ。いちにのさんはい!」

 

 生徒だけでなく、教授陣も――大広間の全員が立ち上がると一斉に歌い始めた。

 

ホグワーツ ホグワーツ♬

 ホグホグ ワツワツ ホグワーツ

 教えて どうぞ 僕たちに

 老いても ハゲても 青二才でも

 頭にゃ何とか詰め込める

 おもしろいものを詰め込める

 今はからっぽ 空気詰め

 死んだハエやら がらくた詰め

 教えて 価値のあるものを

 教えて 忘れてしまったものを

 ベストをつくせば あとはお任せ

 学べよ脳みそ 腐るまで♪

 

 

 飛び切り遅いのは、グリフィンドールの赤毛の双子でさながら行進曲が如く。ドラコは伝統的なイングランド民謡風に歌っていた。

 かくいうハリーは、自由に歌えとのことなので現代風に歌い終える。

 赤毛ツインズブラザーズがとにかく遅く、ダンブルドアは二人が歌うのに合わせて指揮を執った。

 二人が歌い終えるとダンブルドアは、はちきれんばかりの拍手をした。

「音楽じゃ」ダンブルドアの瞳から涙がこぼれる。

「音楽、まさに何ものにも勝る魔法じゃ。素晴らしい……おっと、歌っとる間に眠る時間になってしもうた。そ~れ、駆け足じゃ! ほれほれ」

 

 スリザリンの監督生が立ち上がると声を張った。

 雪原のような銀髪の魔法使いで、背が高い。

 深く落ち着いた声で、騒がしくなった大広間でも彼の声は良く響いた。

「栄えある新たなスリザリンの諸君! 我らが(スリザリン)の談話室まで案内する、ついて来たまえ」

 女性の監督生と共に一年生を先導する。

 レイブンクロー生やグリフィンドール生が階段を登るなか、彼は一年生に注意を促した。

「間違えて階段を上がらないように。スリザリンの談話室は地下にある。ついでに言うが、ホグワーツの階段はじっとしていない、下手に登ると大変だぞ。さぁ、こっちだ」

 そう言うと、コロントは階段を降りていく。

 

 

「純血に栄光あれ」

 コロントがそう唱えると、何もなかった壁が動いて、中から蛇が彫刻された扉が出てきた。

 扉の中に入ると、荘厳な地下室がスリザリンたちを出迎える。

 

 天井や壁に窓があり、窓ガラスの向こうには湖の中が広がっていた。

 天井を見ると、丁度オオイカが通り過ぎるところだった。

 

 沈没した船の中にいるような、幻想的な落ち着いた品のある空間。

 緑色のランプが、談話室の闇を照らしている。

「見ての通り、ここは湖の地下だ。時折、水中人(マーピープル)や大イカの泳ぐ姿が見える。あそこにある棚に、偉大なる先輩方が我らの為に残した知恵がある。スリザリンの誇りを穢さぬように、勉学に励みなさい。……さて、もう夜遅い。荷物はもう寝室に届いているから――もう寝なさい。良い夢を」 

 

 割り振られた寝室は、二人部屋であったが、とても広く調度品も立派で高級ホテルの様な内装だった。

 ハリーとドラコは、同じタイミングでベッドに飛び込んだ。

 ベッドはとても柔らかく、雲の上はこんな感じだろうと想像させる程ふかふかで体を優しく包み込む。

 

「おやすみドラコ」

「おやすみハリー」

 

 初日から色々あったハリー。ハリーは案外あっさりと眠りに落ちた。

 

 

 

 

 

―――――

 

 

 

 

 翌朝、目が覚めたハリーはドラコらと共に大広間に向かう。

 

 朝食を食べるため既にたくさんの生徒たちが席についていた。グリフィンドールのテーブルに露骨に視線を向けるハリー。それに気づいたドラコが何度も話題を振ってハリーの視線を奪おうとするが効果はなく、ハリーは目敏く目当ての生徒たちを見つけると、ドラコに断りグリフィンドールの方へと歩いて行った。

 グリフィンドールに近付くハリーを見て、大広間に小さなどよめきが走る。

 が当の本人はまるで気にせず、堂々と歩くのだ。

 

「おはようロン! 良い朝だね!」

「や……おはよう、ハリー」

 

 ロンは苦笑いしつつもハリーに挨拶を返した。

 

「どうしたんだロン。そんな反応して」

「だって君はスリザリンに組み分けされたんだよ? まぁ、やっぱりって感じで驚きはしたけどある意味納得する組み分けだったけどね? その、ほら。グリフィンドールとスリザリンの確執……ハリーも知ってるだろ?」

「知るもんか。僕は僕だ。僕の交友関係に誰も指図させやしないさ」

 

 あくまで自分を貫くハリーに、ロンは降参とも言う様に両手を上げる。

 そして同室で仲良くなった男子に話し掛けた。

 

「な? ハリーはこういう奴なんだ。ちょっと気難しいけど、優しいいい奴なのさ」

「僕はシェーマス。よろしくハリー」

「よろしく」

 

 ハリーは握手に応じる。と、そこで、ハーマイオニーを見かけて声をかけた。

 

「あ、ハーマイオニー。おはよう! よく眠れた?」

「あらおはようハリー。実は授業が楽しみ過ぎてあまり眠れなかったの。ハリーはどう?」

「僕も同じさハーマイオニー。僕が偉大な魔法使いになる最初の一歩が今日なんだ。期待とワクワク、ほんのわずかな不安で胸が張り裂けそうだよ。またねみんな!」

 

 ぶんぶん手を振りながらハリーはスリザリンのテーブルに戻った。

 

「おまたせ」

「……ハリー。昨日も忠告したが、あまり家格の――」

「その話は昨日したけど。いくら友人とはいえ、僕の交流関係を指図される謂れはないぞドラコ」

 

 ハリーはドラコの目をじっと見てそう言った。睨んでいる訳ではないのに、得体の知れない迫力がハリーから滲み出ている。

 底知れない迫力に当てられてドラコは、ああ、とハリーに返事を返すだけで精いっぱいだった。

 

「さ、はやくご飯食べて今日の授業に備えようよ。僕、ずっと今日という日が待ち遠しくてたまらなかったんだ!」

 

 

 グリフィンドールとも交流を持つ異色のスリザリン。

 

 いずれ今世紀最強の魔法使いと呼ばれるハリーの学生生活が今始まった。

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