実は更新していない間に、初めて投稿してから一年経ちました。
この歳になると、改めて時間が経つのが早いと感じます。恐ろしい。
もっと早く書かなきゃ。
話は変わりますが、パズドラとGA文庫がコラボしてますね。
ベルくんもリューさんもヘスティア様もしっかり強くて嬉しい。
ヴァレン某は出ません。
一般パズドラーの作者は大歓喜です。
ちらりと門からのぞいているのは聞き耳を立てるようにひょこひょこと動く金色の狐耳。その後ろに影が掛かる。
「あらあら、どこのどなたが覗き見しているのかと思えば……淫乱狐様ではありませんか」
「こんっ!?」
そんな風に不機嫌さと棘を含んだ声がかけられると同時に、両耳を鷲掴みにされる。そのまま少女をひっくり返すと小脇に抱えてズンズンと
「おいリオン、狐を捕まえた。今日は鍋だ」
「は、春姫を食べても美味しくなどありません!!」
「美味かろうが不味かろうが好き嫌いはいけないと教わらなかったか?」
「それとこれとは話が違うと思うのです!」
金色の耳をぱたぱたとさせながら身をよじって逃れようとする少女と、それを乱雑に横に抱えて鬱陶しそうにする黒髪の女。
「何をしてるんですか……」
リビングで本のページをめくっていたリオンは、途端に部屋が騒がしくなったことに小さくため息を吐くと席を立った。
「ひとまず輝夜、春姫さんを離してください」
「ふん」
「きゃん?! …………リオン様ありがとうございますぅ」
「いえ、災難でしたね。気にしないでください。こちらへどうぞ」
輝夜は無造作に春姫を放り投げる。リオンは難なくそれを受け止めると、優しく手を引いて先ほどまで自身が座っていた椅子の方へと案内して座らせた。輝夜はその位置から少し離れたソファに腰掛けた。
「粗茶ですが」
「ありがとうございます」
輝夜にも湯呑みを渡し、自分の分も淹れ直したところで一息をつく。
そのまましばらくは誰も話さず、ひとしきり湯呑みを摩っていた春姫だがようやく輝夜の方を向き口を開いた。
「あ、あの! 輝夜様!」
「………………」
「輝夜、無視をすることはないのではないですか?」
「…………なんだ。話すなら早く話せ」
どうせくだらない事なんだろう? と続けようとした輝夜。
「わたくし、夜切様と結婚することになりました!」
「は?」
なるほど。夜切が結婚。
つまりそれは、あくまで前に聞いた話が本当であるならばという前置きを挟むが、極東の風習に倣うならば彼と目の前の少女が男女の関係となっているわけで。
しかしこれまで春姫さんと夜切がそういう関係であると聞いた覚えもなければ、何かがあった雰囲気もないわけで。
普段のリオンなら何かを叫んでいたかもしれないが、しかし今回は違っていた。
ところで、冒険者にとって直感や危機察知能力というものは何よりも重要視されるものである。
「───私は用事を思い出しました。少し出掛けて」
「待て」
残念、リオン。
状況整理の時間が不要であった。一目散にこの場から逃げるべきだったのだ。
飛び出そうにも輝夜に襟を掴まれたことで動けないため、逃走を諦めて項垂れるのみ。
「はわ、はわわわ! 夜切様、私言ってしまいました〜!」
だんだんと首が締まっていく事実を感じ顔を青くしてばたつかせるリオン。白い肌を紅色に染め、頬に手を当てて尻尾を左右に振りながらくねくねと身をよじる春姫。感情が抜け落ち、まるで能面のような無表情を顔に貼り付け黙ったままの輝夜。
夜切がこの場にいたならば、間違いなく卒倒していた。ライラがここにいたら、爆笑していた。
「おい、女狐」
「それはただの暴言なんじゃ……すみません」
あまりにもな言いように静止をかけようとしたリオンだが、鬼気迫る輝夜の様子にあえなく撃沈して引き下がる。
すごすごと小さくなるリオンを尻目に輝夜は春姫に詰め寄っている。
「ひっじょ〜うにつまらない冗談だが、正直に話すなら許して───」
「ライラ様も結婚されると!!」
「ら、ライラも?! そんなはずはありません!!」
「あの鼠」
今度こそリオンは叫んだ。
まさか【ファミリア】の仲間と他の【ファミリア】の間で爛れた関係があったなどという事実は、最近になって随分と落ち着いてきたものの生来潔癖すぎる性を持ち合わせているリオンにはキャパシティオーバーの宣告だった。
ライラがこの場にいたならば卒倒していた。夜切がここにいたら道連れかできたことに喜んだ。
「そ、それは本当ですか?」
「わたくしこの目ではっきりと見ましたし、この耳でしっかり聞きましたから」
ここまできたらどうなでもなーれとばかりに聞き流そうとしていたリオンも反応せざるを得ない。
本人は気がついているのか、声の調子と表情から少しだけ嫉妬をのぞかせている春姫。
あいつら……と幽鬼のような低い声で小さく呟かれた言葉に寒気を感じる。加えて輝夜を見てしまった春姫が、ひぇっ! と悲鳴を上げたことでリオンは輝夜の顔は絶対に見ないと心に決めた。
「いいか貴様、よく聞け。それを無闇に広めるんじゃないぞ」
「わ、わわわかりましたぁ!」
「広まっていたらどうなるか……わかるな?」
腰を抜かしてコクコクと、いやもはやブンブンと首を縦に振って頷く春姫。それを柄の悪い輩のような姿勢で脅しをかける輝夜。
本当にここが
誰だって命は惜しいのだ。
何より夜切とライラが戻ってくれば全て丸く収まるのだから、わざわざ危険を犯す必要はない。輝夜と春姫のやり取りも旧知の仲故に行われる友人同士のやり取りだろうと自分を納得させた。
「
「春姫さん」
「リオン様……」
「送りますよ」
「ありがとうございます」
にこにこと微笑む輝夜の見送りを背に、リオンは縮こまる春姫をすぐそこまで送って行った。
春姫を見送った後、アスフィ───正確には【ヘルメス・ファミリア】ならば夜切とライラの動向について知っているかもしれないと言われたリオンは、渋々ながら【ヘルメス・ファミリア】を訪れていた。
手分けをして情報を集めればいいと思うものの、絶対にここだと確信があるのか輝夜もついてきた。
「こんにちは、アスフィ」
ノックをして声をかけても返事がない。【ヘルメス・ファミリア】の団員から、彼女は部屋に居ると聞いたのだが……留守にしているのだろうか。
Lv 4の彼女を団員に気づかれる事なく害する事はないだろうとは思うものの、少し心配になりノブをひねれば簡単に開いた。
「アスフィ?」
扉を開けた先には、髪を乱して机に伏せたアスフィの姿があった。
「アスフィ、大丈夫で───」
「今度は何ですか!?」
肩をゆすろうととした瞬間叫ばれた事で、反射的に数歩後退りする。
その拍子に後ろにあった車椅子にぶつかり音を立てた。
「…………ああ、リオンでしたか。少し、ええ本当に少しだけですが気が立っていまして」
その音でようやく事態を把握したのか、失礼しましたと外されていた眼鏡をかけ直したアスフィ。
既にリオンは帰りたかった。こんな状態の友人に、これ以上苦行を強いるのか? しかしリオンのすぐ後門にはあれから一言も喋らず黙っている鬼がいるのだ。引くに引けない。
意を決してここへ来た理由を話し始める。
「あの……夜切とライラが昨晩ここへ来たというのは本当ですか?」
「昨晩? ……ああ、
「す、すみません」
なんで私が夜切とライラの代わりに謝っているのか? そんな疑問がよぎるが、かぶりを振って思い直す。
ライラはもちろん夜切も身内の人間である。ならば彼女らの不始末は自分、ひいては【アストレア・ファミリア】の不始末と言っても過言ではないのだ。
「なんなんですかあの人?!」
突然正面から聞こえた涙混じりの叫び声にリオンは肩を跳ね上げる。輝夜は微動だにしない。
「せっかく今日と明日は休みだったのに!!!」
「なんで私なんですかぁ?! 確かに、確かねぇ?! 恩はありますよ? 命を助けてもらったんですからそりゃねえ?! でも! それを! 八年も引っ張る事ってありますか?! ないでしょ?!」
「これまで何度私たちが───!!!」
「なぁにが『頼れる人が貴方しかいないんです』だー?! 何度その言葉に私が要求を飲まされてきた事か……リオンにはわからないでしょうね!」
「すみません……?」
これただの飛び火ではないか。
後ろからはアスフィが『頼れる人が貴方しかいないんです』と言ったあたりからいっそう強い圧を感じる。しかし拳を打ち付けて嘆く彼女は感じ取れていないようだ。
「その、ならもう終わりにしないかと言ってみればいいのでは?」
「…………」
「私もアリーゼ達に振り回されている側なので、気持ちはよくわかります」
「リオン」
「一人で言いづらいならば、私も一緒に夜切に話しますから」
「リオン」
「ええ、ええ! そんな義理や温情を利用する不敵な輩には
「昨日……いえ、今日はっきりそれを伝えました」
「なるほど……なら問題ないのでは?」
「それを伝えたらあの人なんて言ったと思いますか?」
「そんな! とかでしょうか?」
何か答えなければ進まなそうな予感がしたので、適当な相槌を打つ。
「『え? そんなことありましたっけ?』ですよ」
「強請っていたつもりすらなかった」
「最悪だ」
「私は結局夜切さんの都合のいい女だったんですよぉ!」
「最低だ」
「あいつ……信じられん」
語弊を生む言い方はやめてください! と叫ぶ声が聞こえた気がするが……きっと気のせいだろう。
「落ち着きましたか?」
「すみません、リオン。少し取り乱しました」
「……気にしないでください。私も振り回されたときはそんな気分になります」
少々? と思ったリオンだが口には出さない。わざわざ口にする必要のない言葉もある。
触らぬ神に祟りなし、とは極東の諺だ。
しかしこちらが触れようが触れまいが関係などなく神の機嫌で否が応でも正面衝突することがあるのがオラリオであると、八年ほど前の地獄を思い出しながら摩っていたアスフィの背から手を離す。
「それで、少し聞きたいことがあるのですが……いいですか?」
「ええ、リオンの頼みですし断る理由もありません」
「夜切とライラの事なんですけど、今日明日とどこにいるのか知りませんか?」
リオンの質問にアスフィは、首を傾げながらも口を挟むことなく答える。
「今日どこにいるのかはは知りませんが、明日はカジノに向かうと言ってましたよ」
「カジノ、ですか?」
「ええ。聞いていませんか? 今日はドレスとスーツを用意するとか。面倒ごとは私に押し付けて二人は服選びです。いい御身分ですよね」
「ドレスとスーツ…………」
反芻したリオンの言葉に頷くアスフィ。それをよそに、嫌な想像が広がる。
春姫曰く、彼女と夜切、それにライラは婚姻関係にあるとか。彼女の言葉を信じるのなら、明日夜切とライラがカジノに行くのはいわゆる新婚旅行というやつではないか?
もちろんなんの根拠もない推論で突拍子もないことを言っていると理解しているが、二人ともオラリオを長く開けることはしないだろうし、遠出が好きだという話は聞いたことがない。
新婚旅行でそんなところに行くなと思うが、ライラと夜切の悪ノリと、ろくでもなさを考えるとあり得ないことではないかもしれない。
「ありがとう、アスフィ」
暗澹たる気分でリオンは礼をする。
最早状況証拠的に、ライラと夜切の関係は間違いないと見ていいだろう。よく知る二人のただならぬ関係をこう言った形では知りたくなかった。
リオンがそんなことを思っている間に、輝夜はひとついいかとアスフィに尋ねる。
「カジノは招待制だろう? 用意したのは【ヘルメス・ファミリア】か?」
「ええ……まあ、そうですね。ひっじょーに不本意ですが。あれだけはっきりと証拠を見せられては私たちも動かざるを得ないと言いますか……とはいえ公正な取引の上です」
その話を聞きながら部屋の様子を詳しく見ていた輝夜は合点がいったようで、なるほどと小さく頷いた。
「おい、リオン」
「なんですか、輝夜。夜切さんに振られたからって私に八つ当たりするのはやめてくだい」
「違う」
「じゃあなんですか」
「私たちもカジノに行くぞ」
「………………は?」
「私は行くところができた。後は頼んだぞ」
意味がわからず首を傾げるだけのリオンを放って、アスフィに礼を言うと少し急ぐようにして部屋を出ていく。
「行くって……どこに行くんですか?」
「さあ……?」
出て行ってしまった輝夜をいつまでも気にしているわけにもいかないと、リオンは思い直す。
「それでですね……」
「どうしました? リオン」
「その……怒らないで聞いてほしいのですが」
「私とリオンの仲でしょう? 怒りませんよ」
「ほ、本当ですか?」
「もちろん」
「…………まださっきの話は本題ではないのです」
「もう! もったいぶらないでいいですから」
自分のことを信頼して言ってくれていることがすごく伝わってくるからこそ、用件を伝えるのがとても心苦しい。
だが彼女も言ってくれと言っているから……と情けない言い訳をして自分を納得させる。
眼鏡を外してキョトンとした顔で見つめてくるアスフィに向き直り、意を決して言葉をかける。
「仕事を頼みたいのです」
眼鏡が落ちる音だけが、静かになった室内に響いた。
───一方その頃夜切とライラ
「……もう私、これやめてもいいですか?」
「ダメに決まってんだろぉ~?」
「私いなくてもどうとでもなりそうじゃないですか…………」
「じゃあ、お前はあたし一人にゲームを任せて『助けに来ましたよ』っていうのかよ?」
くそダサいぞ、と机に伏せる私の頭をぺしぺしと叩きながら鼻で笑うライラさん。
なんで私の真似がうまいんだ。
「というか私は別にかっこよさとか求めてませんから」
勘違いするのはやめてください、と釘を刺しておく。
アンナさんが助かるのなら、それがどれだけ無様でも何も気にすることはない。彼女の命に比べれば私の名誉などたいしたことではないのだ。
だからこれは決して負け惜しみだとか、ライラさんに完膚なきまでに負かされて悔しいとかそういうことではないのだ。ないったらない。決してない。
私は正直者である。
ヘルメス様の前でなら誓える。
エレンの前でも誓える。
その程度には本当。
「あたしは助けに来た男が女に頼り切りとか嫌だけどな」
「適材適所というやつですよ」
「考えてみろよ? お前だって輝夜とフィンが助けに来たとき、せっかくなら輝夜に助けてもらいたいだろうが」
「いやぁ、まぁ…………そうですかねぇ?」
だけどそれはかっこいいかっこ悪いにあまり関係ないんじゃ……?
そもそも輝夜は女である。
女に助けられる方が男としては情けない気持ちになると思う。恩恵などという神の奇跡があるが故、男女間の力や筋力の差などあってないようなものではあるのだが。それはそれ、これはこれというやつである。
とはいえ恩恵の有無で強者弱者を分け
「あたしが言いたいのは、男見せろよってことだ」
「なんだか言いくるめられた気がしますが、わかりました。詰め込めるだけ詰め込みましょう」
「じゃああたし、これから本気でやるから」
え?
「おいリオン、何をぐずぐずしている。とっとと降りて私の手を取れ」
「なんで私が輝夜の夫役など……」
「文句があるのか?」
そもそも私は女だ。
そう思うもしかし口答えはせず、代わりに小さく嘆息する。普段ならば文句の一つや二つ言ってやろうかと思ったが、今回のこれはライラと夜切の関係をはっきりさせるための尾行だ。流石に輝夜が哀れに思えて口に出すことは憚られた。
リオンのそんな内心を知って知らずか輝夜は不機嫌そうに鼻を鳴らした。
リオンは先に馬車から降りると、奥へ向かって手を差し出し輝夜をエスコートする。
「どうぞ、手を」
「ええ、ありがとう。貴方」
寒気がした。
輝夜が私に向かってまるで好意があるかのように微笑んで、さらに礼を言うなんて。仮令これが演技だと分かっていても気持ちが悪い。
明日は槍の雨でも降るのだろうか。
「ぐっ?!」
「あらアリュード様? どうかしましたか? もしかして体調が優れないのかしら……」
「い、いえ、気にしないでください、ニュイ。私は平気ですから」
そうかしら? 心配ねぇと、不安そうな表情をして頬に手を当てている輝夜だが、この女一切の素振りなくLv 6の握力で握り潰そうとしてきた。
既にリオンは疲れ切っていた。
「では行きましょう…………」
「とても楽しみね」
「待ってください。
「ねえ、
「どうかしたかい?」
「私、こんなにたくさんの人に醜い姿を見られてしまうのは恥ずかしいわ……」
「そんな不躾な視線なんて気にしなくていい。僕は君の可憐なところはよく知っているよ、
カラカラと車輪が回る音が、カジノのエントランスに響く。
車椅子に座るのはエルフの女。それを押すのは同じくエルフの男だ。
「……貴方がそう言ってくれるなら」
「ああ、安心して。僕は何があっても君を守るよ」
美しいエルフの男女が愛を囁き合う構図はとても美しく、まるで物語のワンシーンののようですらあ───
「ぶっふ!!」
「…………笑うことないじゃないですか」
…………。
「笑ってなどいません! その……少し照れてしまっただけですから」
「くふっ!」
「おい」
…………隠す気があるのかないのかわからないふざけた二人組は、リオンと輝夜に随分と遅れて人の欲望渦巻く魔窟へと足を踏み入れた。
「「「「アンドロメダがやってくれました」」」」
ライラ おい、夜切!ゲームしようぜ?悪いようにはしねえからさ!
夜切 ゲームをするときはライラさんを誘うのはやめておきます。
リオン えっちなのはダメっ!
輝夜
アンドロメダ 情報を握っているのは貴方だけじゃないんですよ夜切さん!
正義失墜の視点
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夜切
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リュー
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輝夜
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その他