変態のフリーレン   作:ゼーリエ様が1番可愛い

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仲間を増やす方法

 

 勇者ヒンメルの死から29年後。

 北側諸国アルト森林。

 

 薬草を探していたフリーレンは、沼で半身浴をしている顎髭が特徴の男性を発見した。

 

「ずっと昔、冒険者に憧れていた。誰にだってあるくだらない夢だ」

 

 男は沼に浸かったまま、真剣な顔で話し始めた。

 長くなりそうだと判断したフリーレンはその場でしゃがみ込み聞く体勢を整えた。

 

「一緒に小さな冒険を沢山した親友がいたんだ。無鉄砲な体力馬鹿で、ゴリラみたいなやつだった」

「ゴリラか。そういえば久しく見てないね」

「とはいっても友達思いでいいゴリラだったよ」

「私はいいゴリラにはまだ出会ったことないかな」

「大人になってそんな夢も忘れかけた頃、そいつから一緒に冒険者にならないかと誘われたんだ」

「いいね。ゴリラと人間の異種族パーティーだ」

「……あの時あの手を取っていたら、何かが変わっていたんだろうな。10年も昔の話だ。今でも後悔しているよ」

「10年か。昔ってほどではないね」

 

 男が顔を上げる。

 物申したそうな視線を向けられ、フリーレンはこてんと首を傾げた。

 

「……なあ、いちいち合いの手入れるのやめてくれない? あと、ゴリラって呼んでるだけでそいつ人間だから」

「なんで私にこの話をしたの?」

 

 男の言葉を無視して、フリーレンは問い掛ける。

 

「……俺の村は収穫祭が近くてな。料理に使う野草を森で取ってくるように兄貴に頼まれた。そしたら底なし沼に嵌っちまった。俺はもうお終いだ」

 

 どうやら沼に浸かっていたのはわざとではなく不慮の事故によるものだったらしい。

 道理で服を着たままなわけである。

 

「でもお前がこの手を取ったら、何かが変わるかもしれないぜ」

「えー」

「ここまてきて躊躇う要素ある?」

「だって手が汚い。服が汚れたらフェルンに怒られちゃうし」

「服より人命の心配してほしいな……」

「あ、フェルンっていうのは私の旅の仲間でね」

「俺の話聞いて?」

 

 相手が昔話をしたからこちらもお返しに聞かせてあげようとしただけなのに、それを拒否するとは何と自分勝手な。フリーレンの1時間超え確実と思われる語りが1秒も話されることなく終わってしまった。

 

「分かった。助けてあげる。でももうちょっとだけ待って。今から頑張って『底なし沼から引っこ抜く魔法』を思い出すから」

「なるべく早くね」

 

 その後、フリーレンを探しにきたフェルンが合流してしばらく経ってからようやく魔法を思い出すことに成功し、男は底なし沼から無事に救出された。

 

 

 ****

 

 

 ところ変わって沼に嵌っていた男──ザインの住んでいる村。

 フェルンとシュタルクが必要なものを買い出しに行っている中で、フリーレンとザインは酒場にやって来ていた。

 

「ザイン、ちょうど僧侶の仲間が欲しいと思っていたところなんだ。私たちの仲間になってよ」

「俺に勝てたら考えてやるよ」

「その勝負受けて立つ」

 

 もちろん、勝負といっても正面からの戦闘ではない。

 行うのはテーブルゲーム。種目はポーカーだ。

 

「この場で行われるゲームは全てが賭け事だ。見たところ手ぶらのようだが、何か賭けられるものは持っているのか?」

「命の恩人からむしり取る気?」

「その節はどうもありがとう。だがそれとこれとは話が別だ。ゲームには俺たち以外の人間も参加するんだからな」

「冗談だよ。ザインも手ぶらみたいだけど、パーティー入り以外には何を賭けるの?」

「チップがない時は、身につけているものを順番に賭けていくのが基本だな」

「なら私もそれでいいよ」

 

 その言葉に、ザインが片眉を吊り上げる。

 

「……意味分かってるのか? 負けたら身ぐるみ剥がされるんだぞ?」

「むしろ望むところだよ」

「……そんな見た目だが、実は男だったりする?」

「私くらいになるとね、杖がなくても問題なく魔法が使えるんだよ」

「冗談だから魔力を練り上げるのをやめてくれ」

 

 そんなこんなで賭けポーカー……もとい脱衣ポーカーが幕を開けた。

 競技者はフリーレン、ザイン、村長の3人。

 ディーラーは酒場の店員が担当する。

 

「テキサスホールデムってルールは分かるか?」

「なにそれ。最近のポーカーって手札2枚しか貰えないの?」

「……ならファイブカードドローだな」

 

 フリーレンが最後にポーカーを行ったのなんて何十年も前のことだ。

 そのため現代の主流など知るわけもない。

 結果、最もシンプルで昔からあるルールが採用された。

 

「まずは様子見かな。レイズ」

「なんで様子見でレイズなんだよ。コール」

「コールです」

 

 1回目の勝負。

 役はフリーレンがワンペア。ザインがワンペア。村長がツーペアだ。

 村長の勝利だった。

 

「レイズしたから2枚脱げばいいの?」

「そうなるな」

「暑いと思っていたからちょうどいいや」

 

 フリーレンは首に巻いていたマフラーと、防寒対策バッチリのコートを脱いで横に置いた。

 

「さて、次の勝負といこうか」

「幸先悪いくせにノリノリだな」

「私はまだ本気を出していないからね」

 

 2回目の勝負。

 カードが配られた瞬間、フリーレンは満面の笑みを浮かべた。

 

「1枚チェンジで」

 

 そしてカードをチェンジした後には更にその笑みを深め、堪えきれないとでも言いたげに口に手を当てながらくつくつと肩を震わせた。

 

「これは勝ったかな。ベット」

「やけに自信ありげだな。フォールド」

「コールです」

 

 フリーレンが手札を晒す。

 それを見て、ザインは驚愕の表情を浮かべた。

 

「役無し、だと……!?」

「残念だったねザイン。ブラフだよ」

 

 ドヤ顔を浮かべるフリーレンの反対側で、村長も手札を晒す。

 

「ツーペアです」

「負けてんじゃねーか」

 

 ザインに読み勝ったところで村長に負けては意味がない。

 フリーレンは更に1枚の脱衣を強制された。

 

「靴は両方合わせて1つの衣服って判定?」

「そうだ」

 

 フリーレンは靴を脱いだ。

 黒いタイツの全容があらわになる。

 

「ベット」

「コール」

「コール」

 

 3戦目。勝ったのはザインだった。

 ザイン個人として初めての勝利であり、村長以外の初の勝利者でもあった。

 

「靴下もセットで1枚判定?」

「そうだ……いや、お前タイツじゃねぇか」

 

 基本的にタイツは2つに分かれていないため、どう頑張っても2枚判定にはならない。

 フリーレンは上着を脱いだ。

 

「なんでだよ。そこはタイツじゃないのかよ」

「知らないのザイン。タイツとか靴下とかストッキングとかは、残しておいた方がエッチなんだよ」

「それには同意するが……なに? サービス精神旺盛なの?」

「エンターテイナーとしての心構えは常に持っているつもりだよ」

 

 続く4戦目。勝ったのは村長だった。

 フリーレンがスカートに手を掛ける。

 

「……おい、ほんとに脱ぐのか? 嫌ならギブアップしてもいいんだぞ?」

「何言ってるのザイン。勝負はまだまだこれからでしょ?」

 

 フリーレンはスカートのベルトを外すと、わざわざ椅子から立ち上がった。

 ザインと村長に見せつけるように、スカートを押さえていた両手をパッと離す。スカートは重力に従ってストンと落下し、タイツに包まれた下半身があらわになった。

 タイツは防寒性に優れたもので、かなりの厚地だ。そのため内側が透けて見えるようなことはなかったが、しかし下着のラインはかなりくっきりと浮かび上がってしまっていた。

 

「準備運動はこれくらいでいいかな」

「なんでこの状況でまだ強気なんだよ」

 

 それから5戦目。フリーレンは果敢にもレイズした。

 そしてレイズした上で呆気なく負けた。

 次に負けたら下着は確定という状況下で、まさかの同時披露を実現してみせていた。

 

「あーあ、負けたなら仕方ないよね。本当は恥ずかしくて堪らないけど、ルールだから脱がなくっちゃね」

「言葉の割にニヤケ面が抑えられてねぇよ。お前さてはあれだな? 脱ぎたがりだろ」

「よいしょっと」

「話聞けよ」

 

 フリーレンは豪快にシャツを脱ぎ捨てた後、一変して艶かしい仕草でタイツをゆっくりと下ろしていった。

 男の視線を引き寄せる技術は、1000年という膨大な時の中で洗礼され尽くしている。

 

 タイツを完全に脱ぎ終えると、フリーレンは上下共に下着だけしか身につけていない扇情的な格好になった。

 髪の色をそのまま再現したような、美しい純白の下着。とある人物の未来知識による技術が織り込まれており、フリルやレースが高級感を引き立てるようにあしらわれている。

 フリーレンが持っている中でもお気に入りの一品。いわゆる勝負下着というやつだった。

 

「うおおおおー!」

「いい脱ぎっぷりだな嬢ちゃん!」

「可愛い下着穿いてるなー!」

 

 フリーレンが脱衣を済ませると、辺りから野太い歓声が上がった。

 端正な顔立ちをした、世界的にも珍しい種族であるエルフの少女。店に入ってきた時から注目を集めていたが、そんな彼女が脱衣ポーカーをするという話を聞き、偶然その場に居合わせた者たちは密かに成り行きを見守っていた。

 ザインの好みからは外れているだけで、フリーレンに劣情を催す男は決して少なくない。ゲームが進みついには下着姿をお披露目してしまった今となっては、机を囲んでいる競技者3人+ディーラーの周りを更に囲むようにして人集りができているほどだった。

 

「まっ、その度胸だけは認めてやるよ。だが、悪いが勧誘は諦めてくれ」

「何を言ってるのザイン」

 

 下着姿になってなお、フリーレンは堂々とした佇まいのまま、自信に満ち溢れた表情で倒すべき敵を見つめていた。

 

「私はまだ負けてないよ」

「……まさか下着まで賭ける気か?」

「もちろん」

「いや、さすがにまずいだろ」

「大丈夫。勝てばいいんだよ」

 

 今まで全戦全敗の人間の口から出てくる言葉とは到底思えない。

 なぜここから逆転できると思っているのか。女の尊厳も賭かっているのにどうして尻込みしないのか。

 ザインには本気で分からなかった。

 

「いけー! ザイン! 素っ裸に剥いちまえー!」

「まさかビビってんのかー!?」

「ほら、みんなもこう言ってることだし……続き、しよ?」

「……どうなっても知らねぇからな」

 

 そして再開された6回戦目。勝ったのはザインだった。

 

「ひゅー! いいぞーザイン!」

「これで生チチ確定だー!」

「おっぱい! おっぱい!」

 

 フリーレンの敗北に、欲望に従順な観客の男共は大いに盛り上がった。

 

「惜しい。ストレートなら勝てると思ったのに、まさかフルハウスとはね」

「……本当に脱ぐのか? よく考えろ。まだ髪留めも残ってる。それでよくないか?」

「この髪型は私のアイデンティティだからね。譲れないよ」

「場の空気に流されてないか? 勢いに任せて後悔しないか?」

「……もう、いちいちうるさいなぁザインは」

 

 フリーレンはバッと勢いよくブラジャーを外した。

 発展途上にも見える小さな膨らみ。ツンとした桜色の頂点。それらを見せつけるように胸を張る。

 

「勝った側はふんぞり返っていればいいんだよ。村長を見てみなよ。勝負に勝つこと以外、微塵も考えていない真剣な顔をしているよ」

「眼福眼福」

「いや、下心にまみれているようにしか見えないが」

 

 芸術品のような幼い肉体美を、村長は手を合わせながら拝んでいた。

 

「さあ、最後の勝負をしよう。オールインだ」

「オールインって……賭けられるもの1つしか残ってないだろ」

「ザインだって残ってるのはシャツとパンツだけ。次に私が勝ったら逆転もありえるよ?」

「……ハッ、勝ってから言え」

 

 ボルテージが最高潮の中で始まった第7戦目。

 お互いが真剣に手札とにらめっこし、慎重に交換するカードを選び、そして──。

 

「フラッシュです」

 

 勝ったのは村長だった。

 

「なんでワンペアで勝負しようと思ったんだよ」

「ザインだってツーペアでしょ」

 

 これで、フリーレンとザインの脱衣が決定した。

 しかしザインが脱ぐ姿など誰も興味はない。

 その場にいる者たちの関心は、全てがフリーレンの身につけている最後の1枚へと向いていた。

 

「はいみんな、ちゅーもーく!」

 

 フリーレンは机の上に立ち、わざわざ視線を集めるように声を張り上げた。

 そんなことをしなくても、すでに酒場にいる人間は全員がフリーレンしか見ていない。つまりただの雰囲気作りだ。

 

「パンツを賭けて負けちゃったので、最後の1枚も脱がせていただきまーす!」

「ヒューヒュー!」

「いいぞー!」

「やれやれー!」

 

 フリーレンがショーツに手を掛けると、場は一転して静寂に包まれた。

 己に向けられたいくつもの熱い視線。肌に直接伝わってくる性欲を具現化したような熱気の波。

 それらを受けてフリーレンもまた興奮していた。

 ゆっくりと、焦らすように、純白の逆三角形の布を下ろしていく。

 

「うおおおおおー!」

「すっぽんぽんだー!」

「ロリさいこー!」

「つるつるさいこー!」

 

 生まれたままの姿となったフリーレンは、頭の後ろで腕を組み、その場でゆっくりと一回転した。

 観客に対してのサービス精神は忘れない。ただ見せたいだけという理由もあるが、それと同時に敗者としての責務でもあった。

 

「さあ、ザイン、本当のラストゲームを始めようか」

「いや、もう賭けられるもん残ってねぇだろ」

「ザイン、忘れてない? 私にはまだ見せてない部分があるんだよ」

「まさか……」

 

 フリーレンは全裸土下座を披露しながら、ザインに泣きの1回を頼み込んだ。

 

「次負けたらおっぴろげて中まで見せるから、どうかもうひと勝負してくれませ──」

 

 フリーレンは酒場を出禁になった。

 

 

 

 ****

 

 

 

「身ぐるみ剥がされてる……」

 

 その後、ザインの実の兄である司祭も協力してくれたことで、無事フリーレン一行に新たな仲間が加わることになった。

 

「フリーレン様、お金がなくて、下着だけは買い戻せませんでした」

「えぇ!? あれお気に入りだったのに……」

 

 そんな大事なものを賭けたのか、と呆れるフェルン。

 膝をついて落ち込んでいたフリーレンは、しかし何でも言うことを聞いてくれる手駒の中に糸を操れる人物がいたことを思い出した。

 

 

「アウラ、私の下着を作るように、ドラートに頼んでおいて」

「……まさかそれだけのために呼び出したわけじゃないでしょうね」

 

 アウラが蚕の魔物を支配下に置き、ドラートが絹糸を操って衣服を制作する。

 なぜ今までこの発想が出てこなかったのだろう。

 完璧な生産ラインの確立に、フリーレンは内心で狂喜乱舞した。

 

 





とんでもないパーティーに入っちゃった常識人
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