絶対UFZに入りたくないバルタンVS絶対加入させたいゼロ   作:スターク(元:はぎほぎ)

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風邪でダウンしておりましたが、なんとか復活です。


戦火無双 - 中編 -

ブラキオンの首相は苛立ちの中に在った。

軍は半壊。ストラドがいつ活動再開するか分からない。USAの庇護には期待出来ない。なら、衛星落としによる牽制を一刻も早く成立させなければならない──のに、再度の開会を早められた臨時総会への出席により足止めされた形なのだ。早く祖国を、母星を守る為に帰りたい彼にとっては、この局面でのUSAの存在は寧ろ邪魔ですらあったと言える。

 

「まず停戦すべきだ!通信での返答が無いのなら使者を送り……」

「相手は我々を真正面から滅ぼし得る兵器を保持し、既に使用したのだぞ!?」

「いつ戦端が再び開かれるか分からん以上、機先を制さねば一網打尽だっ」

「しかしそれは絶滅戦を肯定する理由には……!」

「……潮時か」

 

会議は既に始まっていたが、喧々諤々を極め躍る有様だ。議題は勿論、ヤプールとの決戦を前にしたストラドの処遇について。

彼らをヤプールに騙された被害者と見るか、モネラと同様にヤプールと提携した賊国と見做すか。両方の可能性において交渉の余地はあるのか、無ければ……それを延々と話し合っている。

もう限界だ。我々は既にそのラインをとうに通り過ぎているのだから。

 

 

「首相、それでは」

「ああ」

「……!ブラキオン代表!!」

 

制止の声も聞かずに立ち上がる。この決別の後に待つ苦境を思えば、躊躇は無かったとは言わないが……後悔とは後にする物であって、先に立たす物ではない。

衛星落としにて、ストラドを陥落する。その未来を確定させようとした時。

 

「お待ち下さって、リオル首相」

 

俯いていた視界に、乙女が立ち塞がった。

 

「……エメラナ姫」

「遅れて申し訳ありません。しかしここは一つ、私の顔を立てて戴きたく」

 

…………気圧されるな。先の戦における功労者の1人、終戦演説も務め上げたとはいえ一端の小娘に過ぎない。見上げた所が無いとは言わないが、押されるほどの女傑ではない筈だ。

 

だが……だが、この覇気は。

 

「……良いだろう。貸し一つだ」

「快く。では──」

 

その瞳の鋭さに射抜かれ、渋々と席に戻れば、横を彼女が通り過ぎていく。エスメラルダの常任理事星としての立場を用い、壇上へ。後見人たるエスメラルダ王との打ち合わせは済ませてあるようで、彼は娘の所作に頷きで応じていた。

……しかし、この状況で何を宣う気だ?

 

(平和ボケした戯言をほざこうものなら……)

 

さぁ言ってみろ。蟻地獄だか何だか知らないが、蹴落とし合う坩堝を否定するロジックを示してみろ、それで我が星が救われる算段を提示してみろ。

エメラナ姫殿下、私は期待しているんだ。ならばそれが裏返れば、失望へと様変わりすると知れ。

 

そんな私の一方的な思念を受けながら、彼女は一つ大きく息を吸い──言い放った。

 

 

「我が国エスメラルダは、常任理事星としての決定権を行使。是の下に、()()()()()()()()()()()ストラド軍が引き起こす全戦闘状態のエスメラルダ軍の全面介入を宣言します」

 

 

「……は?」

 

え?

 

「「「はぁぁァァァッ!??!」」」

 

ちょ……待て待て待て!?全面介入だと?!!それもUSA連合軍ではなくエスメラルダ軍単独で!!?

 

「ぎぎぎ議長!当事者星として発言権を求めるッ」

「許可します」

「エメラナ姫!正気か!?」

「ええ。これは現エスメラルダ王および執政に就く臣下……彼らとの協議を経て打ち出された、惑星エスメラルダ政権の総意です」

 

その言葉に弾かれるように見れば、エスメラルダ王は飽くまで落ち着いた様子。つまり本気で、本気で……!

 

「ダメだ!!断固拒否する、これは我がブラキオンに対する深刻な主権侵害だ!!!」

「貴方がたの軍の代わりに、我々が全ての被害を引き受ける事になります。ブラキオン本星を守り抜く()()もあります。エスメラルダはこれによって出た損害、それに対する補償をブラキオンに要求する事はありません……それでも?」

「ああダメだ!!!何が目的だっ!?」

 

いよいよもって理由が掴めず困惑する。何が彼女を突き動かす?それに自国を、兵を、国民を費やす事さえ厭わなくする?

必ず“利潤”がある筈だ。というか、()()()()()()()()のだ。国家を動かす者として、民の命を賭け金にするというのなら!

 

「平和です」

 

──違う。

彼女は、この女は、狂っている……!

 

「かつて連合軍が貴方がたブラキオンを打ち破りストラド以下300星を解放した時、その中核は我が国エスメラルダでした。以降、今日に至るまでストラドの問題を解決出来なかったのならば、その1000年間に渡り銀河の中心に座し続けた我が国にこそ責任があると言えます──その責任を、今こそ果たしましょう」

「そのやり方のどこに、平和があると言うんだ。我々が衛星落としで掴もうとする未来と何が違う」

 

自国民をブラキオンの盾として、見返りも無くストラドの侵攻を打破・否定する。彼女はそう言ったのだ。その行いで自分達が掲げた理念を否定すると。

それだけでも傲慢だというのに、手法もまた強引。大量破壊兵器さえ使われなければそれで良いとでも?

 

言外の疑問に、エメラナ姫が返したのは……強張りを解くような微笑みで。

 

「……失礼、リオル首相。順番が前後しましたが、我々がこの介入を行うのは“一定条件該当時”と言ったのを思い出して下さい」

「何……だ?その条件は」

「再度、ストラドが侵攻意思を見せる事です」

 

そう、告げた。

 

「再攻撃の声明、軍の行動開始、もしくは例の新兵器──バレットの呼称に準え、“ELS”。これらの内いずれかが動くその時まで、この戦火の是非はエスメラルダが預かります」

「……横暴だ」

 

絵に描いたような“大国の暴走”。連合の中核国家である事を笠に着た強権執行は、時代を逆行するようで。

 

……分かっている。USAではなくエスメラルダ単体でこの暴挙に及んだ理由、それは我々を含む全ての同盟国の手を汚させない為だと。もっとも国力のあるエスメラルダが咎を、責を、汚点を引き受ける為なのだと。

 

だから、不可解で、()()()()

 

(国民を巻き込んでまでする事か……!?)

 

罪を背負ってきたブラキオンの生まれだからこそ分かる。生まれながらの加害者という業を、これから産み落とされる子らに押し付けるつもりか!!その辛さが分かっているのか?!!

 

「ご安心を。ストラドと手を取り合えれば、何の憂いも残りません」

「は?」

 

その疑念を見透かすように、彼女は言う。彼女の理想を、思想を、夢を。

 

「戦闘予想宙域に我がエスメラルダ艦隊で絶対防衛線を敷いた後、使節団を改めてストラドへ送ります。門前払いにされようと、何度でも……対話意思を示し続けます。そうすれば、きっと──拓けますから。争わずに済む道が」

「世迷いごとをッ!!」

 

もはや限界だ。最初は強硬論かと思いきや今度は聞くに耐えない理想論、温度差について行けない。その希望を信じた結果こそがこの有様だと分からないのか。

立ち上がり踵を返す。これで終わりだと示そうとして、しかし。

 

「なら何故、今も貴方の星は()()()()()()()んですか?」

 

その言葉に、足を縫い止められた。

 

「もし今のストラドが、これまでと同様にアンチ・ブラキオンの方針を貫いていたなら……最初の戦いでゼロ達とUSA艦隊の制止を強引にでも突破し、ELSを母星へ殺到させていた筈です」

「……」

「でもそうはならなかった。ならなかったんですよ、リオル首相──

 

──ここに私は、彼らの“躊躇”を見出したんです」

 

それは……確かに、以前なら考えられない事だったから。

あのストラドが。他者からの干渉ありきとはいえ、ブラキオンへの攻勢を緩めるなど。

 

「確証はありません。しかし敢えてエメラナ・ルル・エスメラルダの名の下に断言します、ストラドは“止まりたがっている”……これはブラキオン-ストラド間にて、平和への欲求を一つとし、手を取り合う唯一無二の機会であると」

「何故……そこまで信じられる……?」

()()()()から。この答えでは不満ですか?」

 

そう語る彼女の瞳には光が映っていた。ただの議場を照らす灯火ではない、これは……ああそうだ。

ウルトラの光、か。

 

「皆さんご存知のはずです。我々が自分の意思で歩く事、それを期待してくれる超人達の存在を」

「ウルトラマン……」

「ゼロ……バレット……」

「既に聞き及んでいる筈です。その立ち上がった先の未来を、ストラドの戦禍の中でなお響かせた少女の歌声を」

「木漏れ日の、エール……」

 

心からの言葉が、各々が知り得る共通の認識を介して伝播していく。この議場を、銀河を統べるもの達の間で広まっていく……私ですら例外ではなく。

 

「我々が安易な力の道を選んだ時、失うのは英雄の希望なのです。悪魔(ヤプール)が付け入り踏み躙り、それによって私達が最初に踏み潰してしまうのはあの歌声なのです!」

「ッ……!」

「だからこそ我々は!最後まで、勇気ある和平の道を諦めてはなりませんっ!!」

 

ああ

嗚呼。

彼女は、優しさから始まる物語(あした)を貫くつもりなのだ。

そうなのだと、理解させられてしまった。魅せられてしまった。

 

「その未来への水先案内人は、我らエスメラルダが引き受けます!誰もが他者を踏み躙らずに済む、砂の坩堝で蹴落とし合う地獄から脱する未来を…………私に、賭けて下さいっ!!」

 

年端も行かない生娘は、しかしその実、戦乙女と見紛う覇気を身につけて叫んでいた。悲鳴でも絶叫でもない、これは最早勝鬨に近い。

未来を担う覚悟を孕んだ咆哮。それは確と、私の胸に響いたのだった。

 

 

だからこそ、残念で仕方がない。

 

忌まわしくて物悲しい。

 

「報告します!!」

 

この直後に舞い込んだ凶報、その存在その物が。

 

「自律型増殖金属群、ELSがストラドより大量発進!目標はブラキオン本星です!!」

 

 


 

 

……見事な演説だった。贔屓目を除いてもそう思う。

エメラナ姫、貴女は本当によくやった。貴女の出来るベストを尽くした。司令として、貴女より長らく権力闘争に身を置いた私が保証しよう。

 

しかし現実は、残酷だ。

 

「なんだとぉ!?」

「到達予測時刻は!」

「ワープ精度にもよりますが、恐らく2時間後!!」

「そんな……ブラキオンの宇宙艦はもう……!」

 

このタイミングでのELS始動。私の予想ではまず間違いなく、臨時総会を傍受していたヤプールによる一手だろうが……そんな事は攻められる側にとっては関係が無い。重要なのは“ストラドの兵力がブラキオンに再び差し向けられた”と言う事実だけなのだから。

 

部下へ目配せ。既に予測していたパターンの一つ、それに即応するよう兵力を動かす。さぁエメラナ姫、貴女はどうする?

 

「っ──、父上!!」

 

……瞑目(動揺)は一瞬。及第点でしょうが、しかし遅れましたな。

 

宣言通りにエスメラルダ軍を動かすより先に、彼が動いた。

 

「衛星落としを発動せよ!」

 

ブラキオン代表。貴方はその手を打つか。

 

「リオル首相……!?」

「許せエメラナ姫。罪は我らのみの物だ」

「そんな!!」

 

エスメラルダに任せるより、自国の実績ある破壊手段に頼ったか。或いは彼女の覚悟に、寧ろ巻き込む事が惜しくなったか……いずれにせよ、ブラキオンの罪はブラキオンで背負うと、彼はそう告げる。

 

私?私はそうだな、ここまで他人事のように語っていたが……()()()()()()()()()()()、と言うべきだろう。

別ルートで部下から伝えられてきた情報、それを脳内で整理するのに忙しなかったのでね。だがそれも終わりだ。

 

「お待ち下され、ブラキオン代表」

「何がだ!もうこの場に留まっている暇は、」

「UFZが動きました」

 

瞬間。

議場に投影されたスクリーンの中を、二筋の流星が駆けて征く。

 

一つは黄色。行方不明となっていた……鏡の星の虎の子だ。

 

「ミラーナイト!!」

 

エメラナ姫がその名を呼べば、各国首脳陣の間でどよめきが走った。

UFZが動いたという事は、今回の侵攻は確実にヤプールの手が入った陰謀(モノ)である事が確定したという事だ。実際その情報によって、ブラキオン首相は急遽、衛星落とし中止の指示を出している。

 

そしてもう一つは()()光。その軌跡を描き、宇宙を染め上げんとする銀一色に立ちはだからんとするその姿は──白。

赤い粒子を纏う白いロボット。ジャンボットよりも遥かに体躯は小さく、だが頭部のV字アンテナは角にも思えた。

 

「何だ、アレは」

「白い……悪魔?」

 

分からない。正体不明、バレットから提供されたデータにも存在しな……いや。

 

かつて、彼と語らった展望がある。人々が自衛に足る力を持ち、巨大戦力に頼る事なく怪獣から平和を守る理念を。

その助けとして、バレットが例えに挙げた機動兵器……その名前は。

 

ガンダム

 

もしあの輝きが()()ならば。

その力は、未来を切り開くに足るのだろうか。

 

意図せず希望の色が混じった私の視界に、ガンダムの双眼が煌めきを放った。今からそれを示すのだと、そう言い放つように。

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