【書籍化決定】馬乗りされて体力がなくなるまでやられる悪役〜今度は主人公の好感度を上げまくっていたら全員に惚れられた件〜   作:陽波ゆうい

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第98話 王子様はまだ付き合ってほしい

 屋上でまひろと話している間に、生徒たちはほとんど帰ったようで……。

 

 良くない噂がある俺と王子様系女子として人気のまひろという異様なコンビで歩いていても、誰かに見られて騒がれることはなかった。

 

 俺たちはこれから2人っきりで遊ぶ……わけではない。

 

『笠島くん。私と……結斗のお見舞いに行こうじゃないか』

 

 まひろの誘いで……いや、俺も結斗のお見舞いには行きたかったから、お許しが出たと言った方がいいのかな?

 

 というわけで、結斗の家に行くために一緒に行動しているだけなのだ。

 

 決して、ラブコメイベントや甘酸っぱい展開とかそういうのじゃない。

 まひろは結斗LOVEだからなぁ。絶対にありえない。

 

「てか、結斗に何か買わなくてもいいのか?」

「ああ、それはいいんだ。先に済ませているし」

「? そうか。ならいいな」

 

 昨日、まひろだけが結斗のお見舞いに行ったから、その時に差し入れでもしたんだろう。 

 俺が立て続けに持っていっても、結斗1人じゃ食べきれなくて困るか。

 

 つか、昨日も行って今日も行くとか……さすがは想いが重いヒロイン。

 

「ちなみに、結斗のご両親は海外出張で家には不在のことが多いんだ」

「へ、へぇー。そうなんだなー」

「だから、より私たちで元気づけないとね」

「そ、そうだな」

 

 まひろは初出し情報みたいな口調で言うが……俺は知っているのだ。

 

 そりゃ、知ってますよ。 

 エロゲ主人公特有の家庭環境だからな。

 

 結斗は実質、1人暮らし状態。

 だからこそ、りいなが結斗の分の弁当を作ったり、姉妹が気軽に家に遊びに行けたり。

 

 こうして、俺たちも遠慮なく訪ねられるわけだ。

 とはいえ、結斗にはまひろが事前に連絡してくれているだろうけど。

 

 数分後。

 ゲームでも何度も見た、白を基調とした2階建ての建物。結斗の家に着いた。

 

 まひろがいつも通りといった感じで、インターホンを鳴らす。

 少しの間を置いて、扉が開いた。

 

「まひろちゃん、いらっしゃい。今日もありがとうね。と……えっ!」

 

 結斗が俺の方を見て、大きく目を見開いた。

 

「ゆ、雄二くんっ!?」

「お、おう。結斗。久しぶりだな」

「雄二くんもお見舞い来てくれたの!」

「ああ、まあな。当然だろ?」

 

 俺がそう返すと、結斗の表情がパァァと明るくなった。

 

 って、この反応……。

 

「まひろさん? 結斗の反応から察するに、俺も一緒に行くことは伝えてないの?」

「伝えていないさ。昨日のように私が誘っても、笠島くんは用事があるかもしれないからね?」

「な、なるほど……」

 

 これについては俺が連絡すれば良かったな。

 結斗の連絡先は持っているわけだし。

 

『笠島くん。私と……結斗のお見舞いに行こうじゃないか』

 

 つか、あれ……まひろなりの誘いなんだ。

 雰囲気からして、強制かと思ったわ。

 

「俺は事前に連絡なしで来て悪いな。俺も一緒にいてもいいかな……?」

「もちろんだよ、雄二くんっ」

 

 話の続きは結斗の部屋ということで、移動。

 

 結斗の部屋も見るのは初めてじゃない。

 ゲーム画面で何度も見たし、姉妹ともイチャイチャしていた場所だし……。

 

「へ、へぇー。綺麗にしているんだな。なんか、結斗らしい部屋だな」

 

 けど、初めて来た感じのフリをしたのであった。

 

「改めて……久しぶりだな、結斗。体調どうだ?」

「うんっ。もう元気だよ!」

 

 結斗は大きく頷いてから、ふにゃっとした笑みを浮かべた。

 

 ……ああ、この感じも久しぶりだなぁ。

 見てるだけで癒やされるというか。

 

 結斗は、本当にいい奴なんだよなー。

 モテるのが納得の主人公だと、実際に接してみてしみじみと思う。

 

「雄二くん雄二くん!」

「うん? どうした結斗?」

「明日は、学校行くからねっ」

「おう、待ってるぞ」

「お昼も一緒に食べようねっ」

「おう、食べよう」

「放課後は寄り道して美味しいもの食べようっ」

「おっ、いいな」

「あとはね、あとはねっ」

 

 熱から復活したからか。今まで1人で寝込んでいた寂しさもあってか。

 結斗はすごく上機嫌に次から次へと話題を広げる。

 

 その様子が微笑ましくて、俺も相槌を打ちながら言葉を返すのであった。

 

◆◆

 

 気づけば、日も落ちそうな時間帯になっていた。

 

「また明日な、結斗」

「うんっ。また明日ね、雄二くん! まひろちゃんも今日もありがとうね!」

「結斗のためだからね。明日はいつも通り、りいなと迎えに来るからね」

「うん」

 

 そんなやり取りをして、俺たちは結斗の家を後にした。

 

「結斗、すっかり元気になって明日は学校に来れそうだな。良かったな、まひろさん」

「ああ、うん……」

「……うん?」

 

 まひろの言葉……妙に歯切れが悪い気がした。

 

 そういえば、俺と結斗が話している間はまひろは見守ってくれていたものの……眉間にシワを寄せていたなぁ。

 

 結斗が俺とばかり話していたから、嫉妬していたんだな、ははは……。

 

 そんな予想をして苦笑を浮かべている時……まひろが急に足を止めた。

 

「私、こっちの道だから」

「お、おう。そうか。俺はこのまま真っ直ぐだから……気をつけて帰ってな」

「うん、気をつけないとね。もう暗くなるし……笠島くんに家まで送ってもらおうかな?」

「……へっ?」

 

 まひろの言葉に、つい間の抜けた声が漏れる。

 

 いや、俺の耳がおかしかったのかも。

 家に送ってほしいみたいなラブコメイベントをまひろが俺なんかに言うはずが……。

 

「ま、まひろさん……?」

「なんだい、笠島くん? 私がナンパや襲われてもいいと?」

「そんなことは一言も言っていないけど……」

 

 容姿の良いまひろなら、あり得ることけどさぁ……。

  

 前なら絶対に関わりたくないと避けていて、一緒にいる時も少し気まずい沈黙とかもあったけど……今はもう、変わっているわけで。

 

 ここで断る方が不自然だよなぁー。

 

「……分かったよ。これも、まひろさんからの誘いということだからな。それに、まひろさんに何かあったんじゃ、結斗も悲しむし、俺も今夜は熟睡できないしな」

「ありがとうね、笠島くん」

 

 まひろは希望通りの返事が聞けて満足したのか、歩くのを再開した。

 

 ゲームの原作であれば、姉妹を家に送り届けるのは結斗もとい主人公の役目。

 

 それが悪役の俺に変わったとて……変なことにはならないはず。

 家に送った後は、さっさと帰れるに決まっている。

 

『それと、雄二様。用事が終わって帰る際には今から帰る、という連絡を……いえ。電話をもらえませんか?』

 

 雲雀の言葉を思い返しながら、ポケットに入っているスマホに触れる。

 

 雲雀との約束までは……あともう少しだな。




お待たせいたしました。

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