ストックが切れました。また溜めときます。
見切り発車で始めたとはいえまだまだ書きたい所があるので未完にならないように出来るだけ努力はします。
どうか次の更新は気長にお待ちください。
遠坂時臣は頭を抱えていた。
この第四次聖杯戦争は、本来なら魔術師が己の技量を披露し競い戦う崇高な物だと思っていた。
聖堂教会を味方につけ、超一級の英霊を召喚し、優秀な弟子もサポートしてくれている。
正に万全な状態な挑んだ。
時臣は内心で勝利を確信していた。
だが、現実は違った。
まずアーチャーのサーヴァント【ギルガメッシュ】は時臣の想像以上に難儀な性格をしており、英霊としての敬意を表し臣下として接する時臣の言葉を全く聞こうとしない。
強力な英霊である事に間違いはないのだが、いかんせん時臣には手が余る存在だった。
そして今もなお時臣の悩ませているのはセイバー陣営だ。
セイバーのマスターは分かっている。
セイバーと共にいたアインツベルンのホムンクルスは偽装だ。真のマスターは別にいる。
その真のマスターは時臣が最も唾棄すべき存在と思った衛宮切嗣だ。
魔術師でありながら外道の手段で数多の魔術師達を葬る『魔術師殺し』。
今となっては魔術師の天敵と呼ぶべき存在として魔術師の世界では有名な男だ。
この男の脅威は時計塔のカリキュラムに接近戦を追加すべきと考慮され、後に採用されるほど恐れられた男。
どのような手段を使っているのかは時臣には分からないが、衛宮切嗣は次々とマスター達を仕留めていった。
それに彼が使役しているセイバーのサーヴァントもまた強力だ。
「よもや魔術だけでなく銃も用いるサーヴァントがいるとはな…」
剣の腕もさることながら卓越した魔術のみならず銃も用いて戦うという古を生きた英霊とは思えない戦闘スタイル。
その戦闘能力はギルガメッシュすらも一目置かれるほどだ。
おまけに真名の手がかりも一切無い。
並大抵の方法では彼等を攻略できない。
幸いな事にセイバーを倒す事に関してはギルガメッシュは乗り気だ。
つまりセイバーは正面からギルガメッシュをぶつければ問題は無い。
問題はやはり衛宮切嗣だ。
あらゆる魔術師の裏をかきその命を刈り取る死神は未だに舞台から姿を見せない。
今もマスターを抹殺する為に準備を進めているのか、あるいは今も他のマスターを始末しているのか
奴はどんな方法でマスターを消しにかかるか時臣には見当もつかない。
「……さて、どうしたものか」
遠坂たる者、どんな時でも優雅たれ
時臣という人間を支えてきた遠坂の家訓を頭に思い出し時臣は自分を引き締める。
こんな時こそ焦ってはいけない。
焦り、戸惑っていては相手の思うツボだ。
どんな時でも優雅に事を運ぶべきだ。
だが、どんなに考えを巡らせても良い考えが浮かばない。
次第に焦り、家訓を思い出し自分を落ち着かせ、思考を巡らす。
そんな堂々巡りを時臣は繰り返していた。
その様子を見ていた者がいた。
それは遠坂時臣の弟子“言峰綺礼"
「…………」
時臣の様子を綺礼は哀れんだ。
お労しい師を見て心を痛める。
そんな師の苦しみを取り除くには自分はどうすればいいか?
思考を巡らせ、すぐに思いついた。
ならば、師を悩ます元凶を叩くのみ。
そう決めて綺礼はすぐに行動を開始する。
「何処へ行く?綺礼よ」
が、その前に黄金のサーヴァントが綺礼の前に立ちはだかった。
「無論、師の悩みのタネを討ちにいく」
別に秘密にする事ではないので綺礼は正直に打ち明けたが、アーチャーは不満そうだ。
「取り繕うな、正直に言うが良い。お前が師の為に動くのならばその笑みはなんだ?」
アーチャーの指摘に綺礼は咄嗟に口元を触ってしまう。
綺礼自身は気づいていなかったが、師の思い悩む様子を見てその口元は笑みを浮かべていた。
そして何よりもその心はとても弾んでおり、分かりやすく言えば今の綺礼はとてもイキイキとしていた。
その事実が綺礼自身を悩ませる。
ふざけるな。
悩む師を見て愉悦を感じるなど弟子としてあってはならない事だ。
笑みを消し、弾む心を無理矢理鎮ませて綺礼はアーチャーに向き直る。
「笑みなど浮かべてはいない。お前の見間違いだろう」
綺礼の返答に「はははは!」とアーチャーは上機嫌な笑う。その在り方が滑稽で興味深いと言わんばかりに。
「行き先はセイバー達の所か?」
「そうだ。アサシンによって調べはついている。奴等の拠点は把握した」
そう、綺礼のサーヴァントであるアサシンは生きていた。
アサシンの正体はハサン・サーバッハ。生前は「百貌のハサン」の異名を持っていた暗殺者だ。
多重人格者であり、それが宝具となった『妄想幻像』は、その無数に分かれた人格を別個体として分離出来る。
分かりやすく言えば自己を分裂する事ができるサーヴァントだ。
聖杯戦争の序盤でアーチャーに討伐されたアサシンも、ランサー戦後にセイバーによって銃撃されたアサシンもただの別個体だった。
一体の別人格を使い捨てにする事で他の陣営に「最初にアサシンが脱落した」という先入観を植え付けるデモンストレーションを演出できたのだ。
全ての分離した別人格を倒さない限りアサシンは討伐した事にならないのがアサシンの強みだ。
それに暗殺者というだけあってアサシンは諜報に長けているサーヴァントだ。
それによって綺礼は既に衛宮切嗣の拠点は掴んでいた。
「いいだろう。興が乗った、我も行こう」
「驚いたな、お前がか?」
何を思ったのかギルガメッシュは綺礼に同行する事を決める。
意図が分からないと言わんばかりの綺礼の顔を見てギルガメッシュは愉快そうに答える。
「なに、セイバーの奴に会いに行くだけだ。奴はこの我自らが消すと決めている。消す前に奴の本質を見定めたい」
この聖杯戦争でギルガメッシュが唯一興味を引いたのがセイバーだ。
興味を引いたのはその強さだが、強さだけでなくその在り方も見定めるのも王の務めだと思ったのだろう。
ギルガメッシュはセイバーに興味がある
綺礼はそのマスターである切嗣に執着している
両者の利害は一致した。ならば後は行動するのみ
「後で師への言い訳を考えておくとしよう…」
「必要あるまい。これはただの散歩だ」
ギルガメッシュがセイバーと相対するとなると何も無い事など絶対にありえない。
場合によっては大規模な戦闘になりかねない。
時臣にどう言い訳したものかと綺礼は頭を抱えた。
その道中、アインツベルン城に向かい酒盛りをしようとしていたライダー陣営とばったり鉢合わせになるのは遠坂邸を出て数分後の出来事だった。