お久しぶりです。
最近、完全に一月一本ペースでしか投稿出来てませんね、自分……
もっと筆を早くしたいなぁ……
「───
背筋にひやりと冷たい物が走る。
考える前に、身体を思い切り捻る。
そのまま地面を蹴り抜くように、必死に後ろへと跳び退いた。
……直後、数瞬前まで自分の上半身があった場所に、凄まじい速度で一本の
(……マトモに食らってたら絶対骨折じゃ済まねぇだろよ、コレ……!)
若干悪態をつくように内心『彼』にツッコミを入れつつ、強引に体勢を立て直す。
一方、その殺人的な蹴りを叩き込んで来た
「……ほう?今のを躱すか。どうやら
「っぐ……!あ、あのすいません!今の一撃、もう完全に俺の事
「あ?当然だろうが。
「きょ、極論が過ぎる……」
「
トントン、とブーツの爪先を軽く鳴らしながら、『彼』は
……まるで、
その姿には一切の隙がなく、到底此方から攻撃を仕掛けられるような様子じゃない。どうにか距離を取ろうとしても、ほんの僅かにその
先手を打つことも、回避に徹する事も不可能。
───ならば。
(……
己を鼓舞するように両頬を張り、
「ふぅぅぅぅ……!」
より深く、より下に。
どの道『彼』に懐に潜られたら、その時点で此方の敗北はほぼ確定する。こうなったら少しでも、その
……残り、
この『状態』で動ける内に、
「……それで良い。行くぞ、
「……っはい!お願いします、
互いに、間合いを測り合う。
呼吸を、一つ。
集中。
───
全てが自分の掌の中にあったような、あの
……ふわりと、一陣の風が吹き抜ける。
舞い上がった木の葉が数枚、ひらりひらりと踊るように落ちていき。
その内の、一枚が。
二人の間に、カサリと音を立てて落ちた───。
「───っ!」
「うぉおおおらぁああああ!!!」
ほぼ同時に、跳ぶ。
振り抜いた脚と拳が交差したその瞬間、僅かに彼我の視線が重なった。
……相変わらずの、仏頂面。
慣れてない頃は機嫌の良し悪しすら分かり
けれど、今。
こうして
───心なしか普段より、
……人類最強との『
続く攻撃を何とかいなしつつ、ジャンはこっそりと苦笑を浮かべるのだった。
× × × × × × × ×
───話は、少し前に遡る。
リヴァイ兵長による(地獄の)旧本部美化作業も何とか一段落を迎え、辺りを照らす陽の光の中に僅かな紅色が差し始めた頃。
日没までの間を自由に過ごして良いと仰せつかったジャンは、有り難くその時間を自身の『課題』へと充てることにした。
……無論、例の『アッカーマン化』について、だ。
あれから少しだけ、この力について分かった事がある。
一つは、その『発動条件』。
───どうやらこの力は、『
トロスト区で『仲間を助ける』ため、審議所で『攻撃を止める』ため。そうして何かしらの目的を持ちながら意識を集中させた時、
駐屯兵団の本部でさんざ休ませて貰っている間に、何とか力の『入』と『切』の感覚だけは掴む事が出来た。審議所への
そしてもう一つが、『発動の連続性と回復性』。
何度か検証を重ねた結果判明したのが、『発動の
……しかし、此処で幾つかの疑問が生じる。
例えば、この力を『三分』使ったとして。
また、仮にその内の『一分』
───と、まぁ。
この能力に関してはまだまだ不透明な部分が多い。
安定した実用に至るためには、ある程度の規則性と再現性が必要不可欠だ。
そこで。
研究と研鑽を兼ねて、ジャンは空いた時間を全て『力を使った状態での鍛練』へと打ち込む
最初は基礎的な運動から始めて、少しずつその強度を調整していき、可能な限りの情報をこの一月の間に掻き集めて揃えよう、と……。
……だが。
「───こ、れは……一体どういう事ですか、リヴァイ兵長……?」
鍛練に向かおうとする直前。
突然リヴァイに呼び止められ、そのまま何故か中庭のような場所まで連れて来られたかと思えば、其処に到着するや否やいきなり
「……制限時間は特に設けない。とにかくソイツを
「はい?」
「俺は丸腰、
「ちょ、ちょっと待って下さい!?全然話が見えて来ないんですが……!?」
掌を突き出し、大慌てで叫ぶ。
急に何を言い出すのかと思えば、勝利条件だの徒手だのと不穏な単語ばかりが飛び出して来て、全身から血の気が引きそうになる。
まさか、とは思うが───。
「───
「何だ、随分と及び腰になりやがって……
「い、いえ冗談とかではなく!というか何故今、貴方と戦う必要が……!?」
「……そうだな。
「……と、言うと……?」
そう、恐る恐る尋ねた次の瞬間。
……彼の姿が、視界から消えた。
「ッ!?」
───嫌な予感がした。
本能的な危機感が、咄嗟に
目の前で両腕を交差させるように組み、
直後、腕に大きな衝撃が走ったかと思うと、そのまま
「ぐぅぅっ……!?」
たたらを踏みつつも、何とか倒れないよう必死に両脚で堪える。
そうしてギリギリの所で踏み留まり、腕に走る鈍い痛みに顔を顰めながら前方を睨みつけると、そこには
「い、きなり……何をなさるんですか……!」
「……やっぱり、か。どうやら
そう言って、己の目元を指先でトントンと指し示す。
「これはあくまで俺の推論だが……
「……!」
「どういう理屈かはさておき、少なくともお前はその力を任意で引き出せる。それも、あの一瞬で判断・発動に到れる程度には『自在』に操れるんだろう。だが
「っ……何故、そこまで強く確信を……」
「一撃打ち込みゃ、相手の抱えてる『弱点』なんざ大体すぐに分かる。てめぇと
ゆっくりと、此方に歩み寄ってくる。
警戒しながらその姿を凝視していると───。
「……
直後。
「う゛っ……!?」
首を傾け、紙一重でこれを回避する。
「動き自体は悪くねぇ……が、全体的に『粗さ』が目立つ。妙な感覚だが、
涼しい顔で蹴り抜いた足を即座に振り下ろし、二度三度と舞うような連撃を繰り出して来る。
防戦一方のまま次第に追い込まれて行き、弾くか躱すかを繰り返している内に、ほんの一瞬胸元に隙が生まれてしまった。
……そこを見逃して貰える筈もなく。
がしり、と胸倉を掴まれ、強引に地面へと押し込まれる。
「んがっ……!」
起き上がろうと必死に藻掻くが、上半身が地に縫い付けられたかのように全く動かない。
───ダメだ。
これ以上の抵抗は無駄だと諦め、両手をゆっくりと上に掲げる。
(……つっよ過ぎんだろ、マジで……!)
『付け焼き刃』程度でどうにかなるような相手じゃない。
速さも、重さも、正確さも。
何もかもが桁違いだ。
ナメていた。
決して、侮っていたつもりではなかったのだが。
ここに来て改めて、己の
そうだ。
目の前に立つこの男は。
……紛れもない、『人類最強』なのだ。
「───俺からの急襲を受けたにしちゃあ、よく
「い……一応お伺いしますが、何点満点での話で……?」
「無論、百点だ。落第は勘弁してやる……俺も
言いながらしかし、
そのまま彼は、ゆったりと『後ろ』に退がって行く。
「さて……『予行』はこんな所で良いだろう。次は
「え゛っ……ま、まだ終わってなかったんですか、コレ……?」
「当たり前だ。俺が知りたいのはお前の『実力』だと言っただろうが。それとも何か、お前は今のやり取りで本当に『限界まで本気を出し切れた』と言えるのか」
「!」
「そうでなければ意味がない。お前の、今持ち得る
「……分かり、ました」
立ち上がって、大きく深呼吸を一つ。
……コレは
『アッカーマン』……それも『人類最強』による
───この際だ、やってやれ。
全部使え。全部試せ。
今ここが『練習』であり、『本番』だ。
「……一つだけ。今、俺がこの状態で連続して戦えるのは
「!ほう……だから?」
興味深そうに目を吊り上げる彼に向かって。
勇気を出して
「……
ナイフを翳し、半身になって全力で駆け出す。
───圧倒的な『差』への畏れを、虚勢で誤魔化しながら。
× × × × × × × ×
「……お、終わった……」
ぐったりと壁に寄り掛かりながら、エレンが深々と溜め息をつく。
辺りを照らす陽の光にも徐々に紅色が差し始め、もう暫くもすれば日没になるかという所。
───あれから、何度もリヴァイ兵長に掃除のやり直しを命じられてしまった。
これまでの人生で、こんなにも長い間
「お疲れ様。どう、結構大変だったでしょ?」
「ペトラさん……け、結構なんてもんじゃないですよ、これは……」
「あはは、まぁ最初はそうだよね。私も慣れるまで時間掛かったなぁ」
「……まさかこれ、毎度ですか?」
「ここまで大規模なのはそうそうないけど。でも宿舎やら何やら、普段使いする場所はこんな感じでいつもしっかりと手入れしてるよ」
「そ、それはまた……」
「大丈夫、そのうち自然と身体が覚えてくるから!」
「う……はい。頑張り、ます」
……これを覚え切った暁には、きっと自分の人格や性格に何らかの
少なくとも、今よりは遥かに『几帳面』な思考回路になっていそうだ。
「ま、今日はこれで大きな作業も終わりだし。後はご飯食べてゆっくり寝て、また明日の流れに備えよう、ね?」
「……ですね」
と言っても、明日は明日で今度は庭の掃除をしなくてはならないのだが……。
暫くは気が抜けないかと、エレンは半ば投げやり気味に窓の外へ視線を放った。
茜に染まりつつある空に向かって、鳥の群れが吸い込まれるように飛んで行く。
何処までも自由に、力強く、その翼を羽ばたかせて……。
『───飛べなくても、【翼】は背負うつもりですから』
……。
…………。
あの日から。
あの時の『彼』の言葉が、時折ふとエレンの頭を過る事がある。
「……翼……」
独りごちるように小さく呟き、ゆっくりと傍らに置いていた自らのジャケットに手を伸ばす。
白と紺の両翼が重なり合った、『自由の翼』。
幼い頃から憧れ続けた、人類の
「……」
───誰よりも。
誰よりも、この翼を背負う『覚悟』はしていた筈だった。
いかに他の能力で劣ろうと、この
己の意志の強さに対して、絶対の自信を持っていた。
だが、今。
その絶対の自信に、揺らぎが生じている。
……
あの瞬間、それを『真横』で見せ付けられたような気がしたから。
「…………ジャンのヤツ……いつの間に、あんな……」
「ジャン?ジャンがどうかした?」
「へっ?あ、ああ、いえ!すいません、此方の話で……」
「ふーん……?そういえばさ、二人はどういう関係なの?気の合う友達、って感じでもなさそうだったけど……」
「そう、ですね……仲は、
「『なかった』って事は……今は違うの?」
「……どうなんでしょう。自分でも、あまりよく分かってなくて」
頬を掻き、エレンは小さく苦笑する。
「アイツとは昔から、反りが合わなかったというか何というか……顔を突き合わせれば喧嘩や口論ばかりで、お互いにいがみ合ってました。せめて良い言い方をするなら、『
「……でも?」
「……いつの間にかアイツは、俺や他の同期達とは一線を画す存在になってたんです。兵士としても、人間としても、誰もが認める『強さ』を今のアイツは持ってる……。俺も張り合ってたつもりが、あっさりと置いてかれちゃいまして。喧嘩や口論も、最近は
「……」
「何がアイツを、そこまで急成長させたのかは分かりません……けど、コレだけは確実に言える。
自分で言ってて、悔しくなる。
───
子供の頃の憧憬を、よりにもよって『彼』の背に見てしまった。
その『事実』がもどかしくて、思わず拳を握り締める。
「……勿体ない、か。凄いわね……
「あ……し、失礼しました。俺みたいなのが分かったような口を……」
「大丈夫、そんな事ないよ。でも、そっか……やっぱり、『英雄』の名前は伊達じゃないって事ね。コレは私達もあんまりうかうかしてられないなぁ。何だか油断してたら、すぐに先を越されちゃいそう……んっ」
ぐぐっ、とペトラが伸びをする。
琥珀色の髪に、夕焼けの光が小さく煌めいて───。
「───
「……え?」
「あ、ううん、何でもない……あー、早く私もジャンと色々話してみたいよ。さっきはほんのちょっとしか絡めなかったから、次はせいぜい
そう冗談めかしながら、やれやれとペトラが軽く首を振った、その時。
「───〜……!」
「───ー!」
……ふと、扉の向こうから慌ただしい声が響く。
「……オルオ達?」
訝しげに扉を開き、ペトラが廊下を覗くと。
「───おいおい、マジかよオルオ……!」
「……マジだって!中庭だ……やべぇ事になってる!!」
「な、何でそうなったんだ……一体どういう
「俺が知るか!現に
丁度そこに、急ぎ足で何処かに向かおうとするオルオとエルド、グンタの三人が通りがかった。
「……皆、どうしたの?そんなに慌てて……」
「うぉっ!?な、何だペトラか……」
「何だとは何よ、失敬ね。何があったか知らないけど、とりあえずアンタはいい加減喋りながら動くのをやめなさい、オルオ。今度こそその舌噛み切って死んでも知らないんだから」
「んっだとお前コラ!!」
「待て、その話は後にしろ……ペトラ、お前も来れるなら来てくれ!どうやら表の方で大変な事になってるらしい……!」
「な、何エルド、アンタまで血相変えて……」
只事ではない彼らの様子に、ペトラの表情も次第に強張っていく。
その異様な雰囲気は当然、後ろに居るエレンにも感じ取れていた。
何か、非常に良くない事が起こっているような……。
「……
階下の方を指差し、鬼気迫る表情でオルオが咆えた。
「何でか知らんがあの二人が今、外で
× × × × × × × ×
───急いで中庭に駆け付けてみれば。
そこには、異様な光景が広がっていた。
「……っだあぁぁ!!!」
「ふぅぅ……どうした、動きが
「ゼェ……ゼェ……まだ、だ!!ハァ……まだ、やれます!!」
……ジャンだ。
そして、その相手───リヴァイ兵長もまた、軽く呼吸を整えるようにして小さく息を吐く。
「ま、待って下さい兵長!!彼と何を───」
そう叫んだエルドの声は。
───
刹那。
目にも止まらぬ速さで、二つの人影がぶつかり合った。
……それは、まるで。
交わる殴打、重なる蹴撃。
凄まじい速度で繰り広げられる、純然たる『暴力』の応酬。
技や術の類は見えず、只管に拳と拳、脚と脚が荒々しく交錯し、混ざり合い、激突する。
しかしながら、その動きの一つ一つは恐ろしく研ぎ澄まされていて、何処か
まさに、『死闘』。
『ヒト』という
───自分達が入れる領域ではない。
呆然と彼らを見つめながら、エレンは直感的に悟った。
嘗て見た
それほどまでに、
「……がぁぁぁあああ!!」
ジャンが、咆える。
やはり
だがそれでも、必死の形相で彼は食らいつき、ナイフを振り翳しては相手の懐を狙い続けていた。
その姿は。
何処までも、『不屈』そのもので。
「……す、げぇ……」
思わず、エレンの口から感嘆の声が漏れ出る。
……すると、隣からも。
「……うん……凄い、ね……」
辿々しい、ペトラの呟きが聞こえた。
その表情は激しい驚愕と戦慄の色に染まっており、何処か
否、それは彼女だけじゃなく。
他の面々も同様に顔を引き攣らせ、二人の戦いを呆然とした様子で見つめていた。
「……なぁ、オルオ」
「……何だよ、グンタ」
「お前、
「うるせぇ……
唇を噛んでそう忌々しげに零すオルオの肩を軽く叩き、グンタが冷や汗混じりに小さく苦笑いを浮かべる。
「なぁ、エルドよ……アレ、止められそうか……?」
「……無理だ。俺達がどうにか出来るレベルの争いじゃない……それに恐らく、今の二人の集中具合から見て、俺達の事など
「あぁ……ホッとしたよ、お前と同じ意見で……」
エルドとグンタが、互いの顔を見合わせて頷いた。
「どういう状況なのかはさっぱり分からんが……とりあえず、二人の戦いに『決着』が付くまでは、こうして端から見守るしかない、か。……というかそれ以外に、
「……だな。もしどちらかが
「……何とも、情けない話だな。蚊帳の外に居るのが関の山とは」
「仕方ないさ。『上には上がいる』、『自分は自分の役割に徹するのが【大人】』……だろ、グンタ?」
「……ふ。オルオに説教出来るような立場じゃなかったな、俺も……」
「何、俺もさ……多分あと少しで、『決着』自体は付きそうに見える。もしその時、
「……勿論だ」
目配せを一つ交わし、二人は静かに正面へと視線を戻す。
……エルドの発言は、概ね的を射ていたようで。
それから程なくして、その『死闘』は終幕の時を迎えたのだった。
× × × × × × × ×
───あと、一分くらい……か?
段々と酸素が回らなくなって来た頭で、必死に思考を巡らせる。
体感的にも、そろそろ肉体が限界に近いと分かる。筋肉の痛みや骨の軋み、そして何よりも疲労感が
(この打ち合いが、最後の『狙い目』だな……)
リヴァイの攻撃を既の所で躱しながら、ジャンは意識を研ぎ澄ませる。
全部、出し尽くした。
持てる力、放てる攻撃。
言われた通り、今の時分が持ち得る『全て』を曝け出した。
……それでも。
まだ、
あれから一度も、ナイフを彼の身体に当てるどころか、
反面、此方はどうにか
───勝てない。
心の内に居る
(……)
それはそうだ。
元から胸を借りるつもりで挑んでいたのだから。
練度も、経験も、何もかもがまるで違う。
そんな男に、どうやって
(…………)
『付け焼き刃』の自分ごときが。
『最強』に、勝とうなどと……。
(……………………)
……。
(……でも俺、さっき
そう。
自分は既に一度、彼に敗北を喫している。
(負けっぱなしっつーのも、なんだかなぁ……)
故に、心の奥底で。
(なんか、悔しいよなぁ……!)
嘗てエレンと意地を張り合ってた、『負けず嫌い』の自分と。
(例え、兵長が相手でもよ……!!)
(そうだろ、俺!!!)
研ぎ澄ませた意識を、爆発させる。
「……っ!!」
その時。
ジャンの体勢が、僅かに
「……」
ほんの一瞬。
ジャンはリヴァイの顔が、
そして、その直後。
───鈍い音が、自分の身体から響き渡る。
「っう゛ぐ!!……ぐっ……う、が……」
痛みに耐えながら、視線を下ろすと。
自分の腹に、彼の拳が鋭く打ち込まれているのが見えた。
……
遠のきそうになる意識の中で、ふと在りし日の記憶が頭の中を過る。
「……よく、戦った」
リヴァイがそう、小さく呟いた。
「……な、にを……」
「
「……だか、ら……な、に……」
「いや……もういい。コレで……」
「……いいえ、違い、ますよ……俺が、言いたい、のは……!!」
がしり、と。
「なに、『油断』……してんすかって……
───そう。
『コレ』を狙っていた。
己の身を犠牲にして、彼の動きを止めた。
この一時に限り、自分達の間に力量の差は無い。
驚いたように目を見開くリヴァイに向かって、気力を振り絞って
……その先には当然、訓練用のナイフを握り締めながら。
「貴方、が、俺を……落とし切るのが、先か……俺が、貴方に
「……成程、そういう腹だったか。大したクソ度胸だ……」
そう応えた彼の口元は。
微かに、
「……悪くねぇ」
時が、止まる。
世界が、止まる。
そして、互いの『始動』の瞬間が
───しかして、終わりはあっけなかった。
此方のナイフと、彼の蹴り。
一瞬の交差の末に、それらは同時に振り抜かれ。
……結果、その一撃の『成否』の行方は。
「が……は……っ」
胴に、膝を叩き込まれながら。
ジャンは
視界が、明滅する。
身体に力が入らず、膝から崩れ落ちそうになってしまう。
続けざまの衝撃で酷い目眩がして来るし、吐き気だって止まらない。
だが、それでも。
……
「───お前の『全力』、確かに見させて貰った」
そう言って、リヴァイが一歩
重々しく、しかし何処か
「いつ以来だろうな……『避け切れねぇ』って思ったのは……」
その頬には。
「『俺の負け』……そして、『
親指でその血雫を弾きながら、彼は静かに言い放った。
それを聞き届け、糸が切れたようにバタリと地面に倒れ込む。
ジャンの手から力なく滑り落ちたナイフの先には、確かに。
(……ったく、アホだな……俺も……)
エレンの事を散々『死に急ぎ野郎』だの『猪野郎』だのと誂っておいて、自分も変な所で
もう少し自分は、
(ま、そこは……『今の俺が居る』時点で、お察し……か……)
そういう、
確かな『誇り』を持って、ここまで歩んできたのだから。
「……お手……合わせ……ありがと……ござ……ま…………」
気を失う寸前で、振り絞るように言葉を紡ぐ。
大変な時間だったが、同時に少しだけ嬉しかった。
また彼の、
自分の声が、果たして彼に届いたのかどうかは分からない。
だが、此方を見下ろす彼の目は。
……いつもより少しだけ、
遠くから、
ジャンの意識は、徐々に暗闇へ落ちて行くのだった。
龍が如くのOST、どれも大好きです。
今回のタイトルは7からでした。
それと、先に一つだけネタバレしておきます。
これから先もまだまだ話は続くと思いますが、ジャンが今後どれだけ力を付けようとも、『リヴァイを越す』事だけは絶対にありません。
リヴァイは『最強』であるが故にリヴァイであり、最強は『リヴァイ』であるが故に最強なのです。
そこだけは自分の中で譲れない物として、これからも話を組んでいきたいと思ってます。
期待されてた方もいらっしゃるかもしれませんが、どうかその一点だけはご了承下さい……。