※このお話はpixivとのマルチ投稿作品です。
春は出逢いと別れの季節。今日は俺が、高度育成高等学校を去る日だ。仲間と共に3年間を戦い抜き、Aクラスでの卒業という目標は達成した。生徒会長としても成すべきことはやり遂げたし、南雲の件は頼れる後輩に託した。もはや思い残すことはない、と言いたいところなのだが・・・
歴代最高とまで称された俺にとって、唯一の懸案事項。それは妹の鈴音だ。この1年間でかなりの成長は見せたものの、いまだ殻を打ち破るには至っていない。
先日の謝恩会では、物言いたげに遠くで佇む妹を、敢えて俺は放置プレイ・・・ゲホゲホ!無視した。あの様子では、たとえ言葉を交わしても意味は無いと判断したからだ。結局、俺の在学中に和解することは叶わなかったな、鈴音。
さて、そろそろ行くとするか・・・
キャリーケースを引き、住み慣れた学生寮を後にする。
約束の10分前。校門に期待した人物の姿はなかった。代わりに居たのは、綾小路清隆。鈴音と同様、Dクラスに配属された不良品。だが、その瞳の奥に隠された恐るべき実力を俺は知っている。なんせ、暴力事件の審議会では、公衆の面前で鈴音の脇腹をこちょこちょするという、実に羨ま・・・けしからん暴挙に出たのだからな。それゆえ、やつに妹を託すことにしたのだ。男としての責任は取ってもらうぞ、綾小路。
しかし生徒会の持つ秘密情報網によれば、こいつを狙う
「あいにくと、あんたの妹はまだだ」
その言葉で我に返る。よし、ここは可愛い妹のために、兄として最後の置き土産をしていくとしよう。
「そうか・・・俺のことは義兄さんと呼んでくれても構わんぞ」
「・・・あんたはいったい何を言っているんだ?」
ふっ・・・さすがにこの程度でボロは出さんか。
「まあ、いい。一方的な願いになるが、鈴音のことはお前に任せた」
「これが橘の言っていたフラグ、というやつなのか?」
ほぅ・・・なかなかどうして、分かっているじゃないか。俺は右手を差し出しながら、渾身の一撃を繰り出した。
「次は鈴音の結婚式で会おう、綾小路」
「・・・なぜオレが、堀北の結婚式に出席する前提なんだ?」
困惑顔のあいつと握手を交わす。全く・・・この男、切れ者なのか
「綾小路、お前はどうして、自らの才能を隠すように過ごしている?」
もっと目立ってくれなければ、鈴音とは釣り合わんぞ。
「単純に、目立つのが好きじゃないからだろうな」
くっ・・・やはり手強い。
「だが、お前も何かを残すために、この学校に来たんじゃないのか?」
「何かを残す・・・?」
やつが初めて明確な反応を見せた。よし、もうひと押しだ。
「もし、学校に対して何も残すことが出来ないなら、
いかにこの男が
「・・・て言うか、ルビがおかしくないか?あと、それを言うなら甥か姪だろ?」
くっ!敵ながら良い返しだ。こいつ、何を習っていた?(ピアノと茶道)
「妹のこと、お前には感謝している。だが、その程度で終わる男じゃないことは理解できた。だからこそ」
敢えて一度言葉を切り、やつの注意を引く。とっくに卒業式も終わったと言うのに、さっきからいったい俺は何をしているのだろう??(いまさら)
「俺を失望させてくれるなよ、綾小路」
「・・・よく考えてみる」
鈴音、舞台は整えてやったぞ。あとはお前が
「それでいい。言質は取ったからな」
最後にもう一度釘を刺すと、俺は校門を出て階段を降りた。目の前に広がるのは、3年ぶりに見る外の世界。生徒会の仕事で何度か外出する機会はあったものの、やはり完全に自由行動できる感覚は新鮮だ・・・しかし早いものだな。入学式に向かうバスでの優先席を巡る
「兄さん!」
その時、背後で待ちわびた声がした。聞き覚えのある涼やかな声色。ふっ・・・やっと来たか・・・俺の気を引くためにわざと遅れて来るとは、健気なやつめ。(大間違い)だがこの程度では、まだまだ甘やかしてやる訳にはいかん。和解は2年後まで持ち越しだ。
瞬時にそう判断すると、別れを告げるために俺は振り向いた。さて、卒業記念に手厳しく拒絶してやるとしようか・・・(愉悦)
だがしかし。
「萌え~~~?!?」(心の叫び)
振り向いた俺は、思わず目を見開いた。舞い散る桜の下、視線の先にショートヘアの
「はぁはぁ・・・遅くなってしまって、済みません・・・」
全力で走って来たのか、少し喘ぎながら詫びる鈴音。頬は上気し、首筋にはうっすらと汗までかいている。実の妹ながら、非常にエロけしからん。いいぞもっとやれ!
「いや、俺もいま来たところだ」
「え??に、兄さん?」
し、しまった・・・!俺としたことが、妹があまりに可憐なので、ついデートのテンプレ問答集を口走ってしまった。(汗)
「変われたようだな・・・いや、あの頃のお前に戻れたのか?鈴音」
ふぅ、危ない危ない・・・華麗にスルーして話題を戻すと、学校前の歩道で俺は鈴音と向き合った。互いに、手を伸ばせば触れられるほどの至近距離である。こんなに近付いて会話をするのは、何年ぶりだろうか?
「1年・・・いえ、何年もかかってしまいました」
俺の元まで駆け降りてきた鈴音は、羞恥に頬を染め、やや俯きがちに話し始めた。なんだこの可愛らしい生き物は?!(語彙力喪失)
「私はこれからクラスメートのために、自らが前を歩いて行けたらと思っています。そして・・・」
鈴音は何やら真剣な表情で決意を述べているが、もはや全然頭に入ってこない。俺はお兄ちゃんだけど愛さえあれば関係ないよねっ?お似合い。(即時放送打ち切り)
「やっと本当に、昔のお前に戻ったということだな」
いますぐ彼女にメイド服を着せたい。いや、スク水や体操着、巫女服なんかも外せんな。(暴走)
「あの・・・兄さん?そんなにじっと見詰められたら、その、恥ずかしいです・・・」
はっ?!い、いかん!いつの間にか、実の妹を
「俺がお前を突き放したいちばんの理由が何だか、わかるか?」
「いえ・・・」
まさか言えない。ヤンデレ化したお前を見たかったから、なんて。だが、いまのデレデレ化したお前も控え目に言って最高だ。俺の妹がこんなに可愛いわけが・・・あるな。(確信)それなのに、2年後まで会えないとは・・・こうなったらもう、一刻も早く帰宅して鈴音のベッドにダイブするしかない。いや、着替えの入ったクローゼットを漁るのが先か?(通報)
はっ?!そ、そうか!いまからAクラス特権を使って、来年度以降も学校に残れるよう理事長と交渉すれば・・・(留年)そして鈴音のクラスに編入するのだ。つまり、実の妹と同級生・・・愚腐腐。あとは鈴音の部屋に監視カメラを設置しようが、毎日大量の手紙を送り付けようが俺の自由。いや待てよ?家族なのだから同居するのもありだな。学生寮に帰れば、エプロン姿も初々しい鈴音が出迎えてくれる毎日・・・
~ 脳内妄想劇場開始 ~
「お帰りなさい、兄さん。ご飯にしますか?お風呂にしますか?それとも、わ、私に・・・」
「うむ、ならば3つ目で頼もうか」
「はい!兄さん・・・ 」
敢えて言おう、カスであると!!(自己紹介)
~ 脳内妄想劇場終了 ~
「お前は俺という幻影に囚われた。それが許せなかった」
「兄さん・・・」
内面の動揺などおくびにも出さず、自然な流れで会話を繋ぐ。鈴音の前では、あくまでも厳格な兄を演じ続けなくてはならないのだ。兄貴はつらいよ。
生真面目な口調を心がけつつ、どさくさ紛れに彼女の華奢な両肩へ手を置く。これぞ兄得。どうだ綾小路!羨ましいだろう?本音を言えば、もう少し下の方の膨らみにタッチしたいのだが。(ダメ!絶対!)
突然のスキンシップに驚いたのか、ビクリと小さく跳ねて耳まで赤くなる鈴音。む?異性に触られただけにしては、些か大げさだな。しかもなぜか、両足を擦り合わせてもじもじしているではないか?!
「だが、お前はもう大丈夫だ。それをいま、確信した」
なおも猿芝居を続けながら、目の前の妹をつぶさに観察する。この反応、まさか夜な夜な・・・オカズは誰だ?!誰なんだ?!やはり
「俺も、謝罪しなければならない」
ふぅ・・・落ち着け堀北学。まだまだ俺のターンだ。
「昔、長い髪が好きだと言ったのは嘘だ」
「え?」
小さくぽかんと口を開けた顔もまた、実に愛らしい。人目がなければ、いますぐR-18タグを付けたいところである。
「短い髪型を好んでいたお前が真に受けるかどうか、確かめるために嘘をついてしまったんだ。許せ」
もちろん、これも嘘である。単に、黒髪ロングの鈴音も見てみたかっただけのこと。そう、俺は欲望のために己を変えるのではなく、まず妹を変えたのだ。結局、ショートもロングも甲乙つけ難い素晴らしさだったが。(眼福)兄さん、次は薄いブラウスと短いスカートが好きだな。(変態)
迸る
「許します、兄さん・・・その嘘のお陰で、きっといまがあると思いますから・・・」
俺の抱擁を受け、静かに涙を溢すと泣き笑いの表情になり、ギュッと抱き付いてくる鈴音。あああああっ!!守りたい!お持ち帰りしたい!この笑顔!!
と、何かに気付いたように鈴音が顔を上げた。
「どうした?」
「いえ・・・何だかとっても硬くてピクピク震えるものが、私のお腹に当たっているのですが・・・?」
「・・・気にするな。それはポケットに入れたバイブ設定のスマートフォンだ」(超早口)
ええい!鎮まれ、鎮まれ・・・ボソッ
「鈴音、俺はお前を大切に想っている」(唐突な話題転換)
「兄さん・・・」
「2年後、正門の外でお前を待っている。(俺好みに)成長したお前を見せてくれ」
「はい!精一杯、最後の最後まで戦い、
・・・て言うか、読点の位置がおかしくないか?(
「また会おう」
ふぅ・・・ここでカメラが上空へ縦パンすれば、完璧なエンディングだな。よし、やっぱりこのまま鈴音を実家に連れ帰るとするか。(だからダメ!絶対!)
寄り添う俺たちの傍らを、桜の花びらが静かに舞い散っていった・・・
おわり(仮)
「なあ堀北。素朴な質問なんだが、お前はどうやってこの窮地を切り抜けるつもりなんだ?」
不意に、俺と鈴音だけの世界へ異物が割り込んできた。見れば、校門の向こうで綾小路が所在なげに佇んでいる。ちっ!まだ居たのか。空気の読めない無粋なやつめ。そこはタイミングを見計らって立ち去るのがセオリーだろう!いまさらしゃしゃり出てきたところで、妹は渡さんぞ!(方針転換)
「窮地、だと?貴様・・・虚言を弄して俺と鈴音の邪魔をする気か?」
「綾小路くん。いくらあなたでも、私と兄さんの邪魔をするようなら、ただじゃ置かないわよ?」
鈴音とふたり、目障りな闖入者を睨み付ける。兄妹だけに息もぴったりだ。だが我が妹よ、その大型コンパスはどこから出した?(恐怖)
「いや、別にあんたらの仲を裂くようなつもりはないんだが・・・」
「な、仲を裂くですって?!」
にわかに赤面し、両手を頬に当ててくねくねと身を捩る鈴音。あまりの可愛らしさに、こっちまでくねくねしたくなってしまう。(需要なし)だが、対する綾小路は全くの無反応。鈴音を異性として意識している素振りすらない。この先、俺は本当に孫の顔を見ることが出来るのだろうか・・・
「何を勘違いしているのかは知らないが」
そして、相変わらず感情の読めない顔のまま、やつは静かに告げた。
「堀北・・・お前、学校の敷地から出ているぞ?」
「「なっ?!」」
愕然として固まる俺たち兄妹の背後では、いつしか第1期OPテーマ『カーストルーム』が流れ始めていた・・・
おわり
◎付帯資料
【東京都高度育成高等学校 校則】
{第1条 第3項}
在学中に許可なく本校の敷地から出た者は、理由の如何に関わらず即座に退学処分とする。