・設定資料集未所持
・独自解釈と多分の捏造
・時系列混在
・話の繋がり無し
ハンターよりその世界に生きるNPCの視点をメインに書いていきますが、何よりナカゴさんが好きなので多分ナカゴさんがメインになります。
モンハンでこんなに狂うことになるとは思わなかったオタクの妄想置き場です。
ハンターはナカゴからとある話を聞くことになる。
「そうだなぁ。猛き炎と呼ばれる貴方なら「霞隠し」って知ってますよね」
五分の酒が注がれている猪口を片手に、隣の男は尋ねた。自分だって曲がりなりにもカムラの里の人間だ。聞いたことはあると一つ頷きをして続きを促す。
「僕も幼い頃に一度だけ遭ったことがあるんです。当時はなにがなんだかサッパリだったけど、間違いなくそうだなって……」
バチバチと焚べた薪が燃える音だけが部屋を満たす。そうして彼は飲み干したものを畳に置き、ぽつり、またひとつぽつりと話し始めた。
それはこの里の鍛冶屋であるハモンが腕を認めた弟子の一人であり、集会所で加工屋を任されている男__ナカゴが少年だった頃の話だ。未知への好奇心と、考えるより先に動いてしまう手や脚。それらに抗う手段をもたないこの時期の男児を子にもつ母は、みな口を揃えて「手がつけられない」という。
そんな里の宝を守る為、度々用いられてきた「霞隠し」という言葉。体を縮こませて震え上がる子もあれば、なんのそのとひとつだってきく素振りを見せぬ子も居るわけで。かくいうナカゴもその手がつけられない少年の一人だった。
鉱石と常日頃から触れてきた影響か、はたまた無垢な少年がその成り立ちにロマンを見出してか……ある時は村付近にあるお社の跡へ、ある時は露が滴る草木の多き林へ、危険なんぞは顧みずに友とよく出歩いたものだった。
両手で数え切れるほどの齢の者がそんなことをしているのだ、ついにその日はやってくる。
__はぐれた。
互いに目標を決めて別行動をするようなこともあったために、どちらかが遅れてくるなんてことはざらだったが、大抵そういった場合は三十分もしないうちにひょっこりと顔を覗かせた。
しかし今回はわけが違う。見知った地、見知った友といつものごとく散策していたのだ。たった今、ようやく足元に見つけた鉄鉱石の欠片を見せようと振り返る前までは。
確かに傍に居たというのに、突然姿を消すなんて。まさか、と、やっとおかしなことに気付いて周囲を見渡すが、先程まで目にしていた覚えのないところに、自分だけがぽつんと佇んでいた。
鳥の鳴き声に清流のせせらぎ、落ち着きさえする葉擦れの音だって、何一つない。モンスターを惹きつけるエンエンクさえ姿を消す始末だ。
幸か不幸か土地勘はあるため取り乱しはしなかった。合流したら見せようとひとまず欠片を拾い上げて巾着にしまいこむと、霞みはじめた視界なぞは気にも留めず、道を引き返すことにした。
きょろきょろと周辺を見回しながら、木漏れ日のさす獣道を随分と歩いた気がする。小さな歩幅で地を踏みしめて、ゆっくり、ゆっくりと。
「おぉーい」と小さな肺から出来る限りの声で叫んでみるが、やはり返事はない。ここは一度帰って大人の手を借りるべきかと思いもしたが、友になにかあってはいけないと不安が勝り、捜索の続行を決意した。
しかし自然は時として無慈悲である。奮い立った無垢な少年の希望を簡単に砕いてしまうほどに。
「あれ……?」
息は切れ、小さな体が到底耐えきれるはずがない疲労が襲う。不思議なことに痛みは襲ってこなかった。心做しか頭もぼんやりと__否、既に白けていたのだ。視界が、思考が、認識を阻害し続けてきた眼の前の神仙によって。
子供ながらに死を覚悟した。ぺたりとその場に座り込んだら、そこからはもう体の震えが止まらなかった。ああ、でもこれを持っていけるなら、なんて。自分よりもうんと大きな体躯で警戒気味に首を傾げたり、目を拡縮させたりとこちらをうかがっている相手を前に呑気なことを考えられたものだ。
震える指先が巾着をつまむと、とうとう舌が目にも止まらぬ勢いで伸びてきた。と、同時。高らかと聞き馴染みのある若い男の声が近づき、二本の剣がモンスターの舌を切りつけた。
「気炎万丈!」
ハンター数年目にして里長から信頼をされているこの男の名はウツシ。かなり爽やかな好青年であり、老若にかかわらず里の女性は熱い眼差しを、男性は尊敬の眼差しを向けるほどだった。
「大丈夫だったかい、少年……いや、話は後だ。まずはこの場から離れるぞ!」
そう言うと彼は鞘に刀身をしまい、軽々と少年をおぶって逃走の準備を始めた。どうやら先程の一撃に怯んだらしいモンスター。そいつが動じている間に移動するようで、ぱしゅんと音が鳴ったかと思えば、今度はぐわんと体が前方へ引っ張られた。翔蟲を使ったようだ。
「初めてかい、少年」
逃げているとは到底思えぬほどとても愉しそうな声で問いかける。上手く返答ができないまま、ただ本能のまましがみついていると、彼も察したらしい。
「……君が生きていてくれてよかった。里の宝を守れて、本当によかったよ」
その言葉に緊張が解けて……
「その日のことはそれ以降覚えてないんですよね」
彼は後頭部を掻きながらわらった。翌日周囲から聞かされたのは、二時間も行方を晦ませていたことと、出会ったモンスターが霞龍オオナズチであったこと、更にソレの毒にあてられていたことだという。
「一度集中すると周りが見えないのはナカゴの悪い癖ニャ」
徳利の中身を最後の一滴までナカゴの猪口に注いだコジリは、じとりと彼を見つめた。かくいう自分も、ウツシ教官には更に頭が下がる思いだ。
「ですから……ヤツの毒には、どうかお気をつけて」
加工屋としてではなく、里の一人として向けられた眼差しに、勿論だと深く頷いた。明日の狩猟も気を引き締めねば。
里を守るために。