サタイサに至るまで 正夜未、良時前提 成長利守とイサミが親しくなった切欠の話
▼この話(https://syosetu.org/novel/341162/)と同設定
▼サタイサ村、なんでアニメ終わったのに焼かれてるん??
pixivより転載

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【腐レバン×結界】彼に強烈に惹かれて行くのを、僕は見つめ続けることしかできなかった

 防大に入った当初、特別なにかあったわけではない。

 ただ、騒がしさを嫌うイサミと、物静かな方のトシモリが親しくなる素地はあったと、トシモリはあとになって思った。

 偶々2人きりになったとき、特に話題が思いつかなかったトシモリの携帯端末に長兄からのメッセージが届いたのがすべての切欠だった。

「あ、マサ兄からだ」

「マサニイ?」

「僕の上の兄」

「――兄貴がいるんだな」

「そう。マサ兄とは12歳離れてる。間にもうひとりいる」

「詳しく聞かせてもらえるか」

 僕は「こいつも他人に興味が持つことがあるんだな」と失礼なことを思いつつ、乞われるがままに答えた。

 マサモリとヨシモリと言う兄がいること。

 下の兄とはそこそこ兄弟らしく育ったが、上の兄とはあまり交流がないこと。

 それでも上の兄の人間臭さは幼いながらにもわかっていたこと。

 自分は、恐らくそんな兄たちに庇われるように育ったこと……。

 大体のことを語り終えたとき、イサミは問うた。

「それで、どっちも元気なのか?」

「元気も元気。結婚して子どももいるしね」

「――そうか」

 イサミは、どこかホッとした顔で言った。

「それなら、よかった」

 ――その言葉の意味を知るのは、1年後のこと。

 イサミの口から、彼の年の離れた兄が死んでいることを知った。

 

 ……ぼんやりと、影が差す。その影が長兄のそれに似ている気がして、トシモリは煩げに振り払う。

「マサ兄もう少し寝かせてよ……」

 その肩を、ぽんと叩く音がした。

「スミムラ三尉」

「はい? ――えっ?」

 がばりと起き上がる。そこは居酒屋の座敷席だった。にぎわっているそこはダイダラ中隊の酒の席だったと、トシモリは急速に記憶を再生していく。自分は酒精でローテーブルに突っ伏していたようだった。

 そして隣で彼を起こしたのは、誰あろう、サタケ二佐だった。

 トシモリはサタケを長兄と間違えたのだ。

「も、申し訳ありません隊長。寝ぼけてました」

「マサニイとは誰だ?」

 詰問、というには穏やかなそれに、トシモリは肩の力を抜く。

「は……上の兄でして……」

「お前の兄だったら俺より年下じゃないか?」

「12歳離れてるんです。丁度隊長と同じぐらいの年ですね」

「なるほど」

 そう答えて、サタケはちらりと視線を送る。

 ――その先にいたのは、ヒビキの隣で飲んでいるイサミの姿だった。

 それを見て、あぁ、とトシモリは悟る。

 彼もまた、イサミの兄の話を知っているのだろう。

 それだけイサミは、――彼の心の傷について、サタケに話せたのだろう。トシモリは思う。

 防大時代に、教官としてやってきたサタケにイサミが強烈に惹かれて行く様を、トシモリは横で見ていた。憧れ、慕い、そのくせ演習では命令違反ばかり。そんなイサミを「手のかかる子ほどかわいい」と言わんばかりに、叱りつつも優しかったサタケ。トシモリはそのおこぼれに与っていた。プライベートでも親しくなっていたのも、トシモリは知っている。何せ、イサミの友人なのだ。そう言う話はイサミ本人から聞いていた。トシモリならばほかに漏らすことはないだろうと信頼されてのことだろう。

 しかし、トシモリは思う。これは果たして健全な仲なのだろうかと。

 14歳も年の離れた、同性の上官と部下。それも、恐らくイサミはサタケに兄の面影を見ている。

 いいのだろうか、と思う。

 トシモリはわかっている。イサミは年齢より幼いところがある。その判断能力は果たしてちゃんと成人男性のそれだろうか、と思う。

 ……サタケとイサミの仲がどこまで進展しているかは、さすがに知らない。恐らく何かあったら自分に相談するだろうとは思っているから、恐らく交際にまでは至っていないだろうとトシモリは推測している。

 そして、願っている。――サタケが、自分に兄の面影を見ている、実年齢より判断能力の幼い青年を、頭からぱくりと食べるような男ではないと。

 トシモリは手元にあった焼き鳥を頬張りながら、ぼそりと言った。

「隊長。イサミに不用意に手を出したら、僕、許しませんからね」

 自分でも意識しなかったほど低い声が出た。

 それに対し、サタケは薄く笑った。

「善処する」

「それじゃ駄目なんだよなァ~~」

「それよりお前のそのマサニイとやらはどんな男なんだ」

「話をはぐらかす……まぁ顔は良いですね。隊長とは別方向に。あ、失礼しました」

「顔を褒められるのはいつものことだから構わん」

「はぁ……。あぁ、隊長と違うところありました。兄は老け顔です」

「暗に俺を童顔と言うな」

「いや本当に兄と隊長を並べたら兄が年上だと判断されますね」

「そろそろ頭グリグリするぞ」

「パワハラ! パワハラ!!」

「あ、隊長とトシモリ楽しそ~」

 

 人を失うことは、人の方向性を強烈に決定づける。僕たちはそれを身を以て知っていた。

 

 

 

 

 

End.


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