フェアリーテイルは陽キャの集まり

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執筆中小説が500を超えたら書けなくなることを最近知って、削除するのもあれなので投稿。

勘違い物を書いてみようと、2年くらい前に書いたものです。


陽キャは約束を覚えがち

 魔法のある世界。魔導士の居る世界。

 火を吐く魔導士だったり、氷で形作る魔導士だったり、鎧と剣を変えながら戦う魔導士だったり、まあ色々いるわけで。そんな魔導士たちが集まる妖精の尻尾(フェアリーテイル)っていうギルドが、ここ、マグノリアの街にあるわけだ。

 妖精の尻尾はそりゃあもう有名だ。有名すぎて評議員のお偉いさんたちの話題が尽きることはない。やれ『物を壊した』だとか、やれ『逆に依頼者をぶっ飛ばした』だとか、やれ『女の子をナンパした』とか。全く良からぬ噂ばかりが立つけれど、まあ、大体事実だ。風評被害甚だしいが、事実である以上は受け入れざるを得ない。妖精の尻尾の連中は暴力物で、人を口説くような奴ばかりで、沢山の行動と被害を生み出すような奴らばかりだ。

 

 そう、つまるところ妖精の尻尾っていうギルドは――陽キャ集団の集まりなのだ。

 

 まずマスターからしてやばい。この前なんて、ギルドに沢山始末書が届いてみんなにお説教かますかと思ったら、『評議員なんてクソ喰らえ! こんな始末書は燃やしてポイ! お前ら自由にやるぞおおおお!』みたいな感じで終わったからな。ヤバいだろ? その場に居合わせた新人も、その演説に目を輝かせてたからな。ボスも新人もそういう陽キャばかりだ。

 じゃあ俺はどうかっていう話をすると、そりゃあもう陰キャさ。陰キャも陰キャ。陰キャの中の陰キャ。クエストボードの前で仕事を探してる振りをしてるやつなんかとは比べ物にならないくらいの陰キャさ。昔の話だったら妖精の尻尾の一員に何を勘違いされたか、殺し合い(一方的に殺されかける)が起きたからな。いやいや、ちょっと待てと。俺も一応妖精の尻尾の一員なんですけど、と。いつか昔に遡れたらそう主張したい。けれど何を思ったかその時の俺は、『あれ? 実は俺って妖精の尻尾じゃない? もしかしてスタンプでマークしてもらっただけじゃ駄目な特別ルールとかあったの?』みたいな勘違いをしてしまった。いやいや、参ったね。参った参った。その事件の後に何食わぬ顔でギルドに入ってもやっぱり何も言われなかったから、俺も『ああ、ああ、まあ良いのかな?』って言う感じになったけどさ。陰キャの俺が思わずマスターに自分から聞いちゃったもんね。『マスター、俺ってこのギルドの一員で良いのかな?』って、そしたら『……もちろんじゃ!』とか、ちょっと驚いた顔をして、間を置かれて言われたから多分合ってるんだと思う。

 

 そうだね、そうだなあ。でも思うんだよね。俺ってこのギルドに在籍してる意味ってある? みたいな。真の陰キャの俺はもうほとんどギルドに立ち寄ったりしないようにしてるし、クエストとか受けっぱなしだよ。ずっと家でゴロゴロしてたらなんかいきなり特定の誰かが押しかけてきて『マルディスー、一緒にクエスト行こうぜー!』みたいに誘われるからね。だから俺に残された選択肢は陽キャと一緒に楽しいクエストに行くか、一人で黙々とクエストをこなしていくかの二択なんだ。もうほとんど家にも帰れてないよ、無駄に高い家賃を払ってる意味あるのかな? ないかも。そのせいで俺ってすごい仕事熱心な人みたいな感じになっちゃってるんだよ。正直別にどうでも良いんだけど、簡単な依頼ばかりこなしてると逆にギルドに立ち寄る数が多くなっちゃうから、できるだけ日数がかかりそうで人気のなさそうな(ここ重要)クエストばかり受けてるんどさ。人気のありそうな奴選ぶと、他の人に『あ、それ私が受けようとしたんだけどなー……』とか思われるのすごい嫌だから、渋々難しそうで無駄に日数がかかりそうで怠そうなクエストばかりを受けちゃってるんだよ。

 うーわ、うーわ、俺、すごい気遣えるじゃん。とか、自分で思っちゃってるけど、でもその通りだよね。埃被りそうなクエストを俺が率先して受けてこなしていくわけ、そしたら後々になって誰かが『おいおい、嫌なクエストばっかり残っちまってんな。前はそんなことなかったんだけどなー……そういえばアイツ――マルディスが居なくなってからだなー!』とか、俺が辞めた後に言われるの、そしたら俺の日頃の無駄な努力が報われた気がして良い気分になるんだけどなあ(願望)。うん、まあ、そろそろギルド抜けちゃおっかなーとか、そういうことばかり最近考えちゃうよね。だって別に俺陽キャじゃないし。なんかたまに気遣われると逆に自分がいたたまれなくなるっていうかさー、なんかー、うん。あー、俺、駄目かなあってなっちゃうんだよね。

 

 だから、今日こそ言っちゃおうかなあって思って、珍しく酒場兼食堂兼駄弁り場兼ギルドに居るわけだけど、まあ、中々言い出せずにチビリチビリとドリンクを飲むんだよ。いやー、喉潤わねー。周りの喧騒とかすごい喧しいけど、ここで俺がこっそりマスターに『俺、辞めまーす』って言ったら静まり返っちゃったりするのかな、そしたらもう俺どうにかなっちゃうよ。ベストは『あ、そうなん? 辞めなあ』って即答で受け入れられることなんだけど、ワンチャンあるかなあ? ワンチャンとか、うわっ、俺今すごい陽キャっぽいワード使っちゃったよ。

 

「珍しいわね。ここに居るだなんて」

 

 ワンドリンクで一時間くらい粘ってたせいか、水色がかった白髪で、前髪だけを上に束ねた優しそうなギルドの受付嬢になってるミラジェーン・ストラウス(通称はミラ)から、『さっさと出てけ』という催促を受けてしまった。まずいな。ミラジェーンは今でこそこんな穏やかだが、ギルド最強女魔導士の名をエルザと競い合っていた悪魔だ。気を損ねれば即死亡の恐れあり、殺されかけた記憶あり、うっ頭が……。

 

「たまには、良い」

「ふふっ、そうね」

 

 セーフだったらしい。プレイヤー俺、審判ミラジェーン。間違えたらドカーンだ。何年も居る俺もさすがに学んで、選択肢選びが上手くなってる。

 

「別に毎日でも良いのよ」

「え、嫌だよ。怖いし」

「…………」

「アッ」

 

 やべ、本音出た。

 

「――って、昔の俺だったら、そんなことを言ったのかもなあ……」

 

 必殺、たとえ話。思わせぶりなことを言って実は例え話という、後出しじゃんけんで自分のプライドを保てる陰キャの必殺技だ。今回の場合は自分の身を守る必殺技になったが、その効力は計り知れない。なぜなら陽キャは笑い話に弱い。よってビックリした? 実は例え話だったんだよね、でも笑えるからセーフ!wってなるのだ。

 

「……ふふっ、そうね」

 

 本当にセーフか? 若干圧がある。だがここで下手に口を開いてフォローするのは陽キャのすること、真の陰キャはここで口を閉じる。そのままもう何も喋らないでくれとただ目の前の受付嬢に願う。

 

「でも、久しぶりね。こうして話すの」

 

 どうする、一度ボロが出たらボロを出し続けるのが陰キャだ。俺が何かを返せば恐らくドカーンだ。かといって沈黙もそれこそドカーンだ。まずいな、詰んだ。クリア方法が明記されてる分SS級クエストを受けた方がマシかもしれない。とりあえずドリンクを飲む振りをして時間を稼いで、木製のマグカップを置いた。冷汗が背中に一つ垂れる中、俺はもう一つの秘技を出すことにした。

 

「別に毎日でも良いんだけどな」

 

 秘技、言葉返し(ワードカウンター)。陽キャの言うことに間違いはない性質を利用した技だ、陰キャの俺が必死に絞り出した答えよりも、陽キャが一秒で出した答えを返した方が良いことがあるのに気が付いた俺は、一週間に一回きりの限定技としてこれを習得した。一週間という制限があるのはさすがにこの技ばかりを使うのはくどいと自分でも分かるからだ。これを一度使ってしまったら向こう一週間は封印しなければならない秘技をここで披露したと言えば、俺の覚悟が分かることだろう。勝った! 第一部完!

 

「へぇっ!?」

 

 目を見開いて、顔を真っ赤に染めて驚かれた。アウトだったらしい。

 秘技はこうして破れ、俺は何時でも席を立てるように腰を浮かして身構えた。手を後ろに組んでモジモジして、我慢できずに赤くなった顔を両手で押さえるミラジェーンを見届けて、ドリンクを飲み切った。何か言われる前に帰ることにした。

 

「あ! 居たのかマルディス!! テメエ俺と勝負しろおおおおおおお!」

 

 陽 キ ャ に 絡 ま れ た。

 

 1、逃げる。

 

「また今度……」

「そう言って7ヵ月経っただろうが! 今度は逃がさねえぞ!」

 

 し か し 回 り 込 ま れ て し ま っ た。

 

「マルディスさんって……私初めて?」

 

 近くに居た最近の新人、素手でゴリラを丸刈りにしたと噂の金髪長髪陽キャのルーシィがそう呟いた。

 

「あい! 一応ルーシィが初めて来た時にも居たみたいだけど、ほとんどみんな気づかなかったです! はい!」

 

 余計なことを言う、空飛ぶ青色の喋る猫にそうバラされると、陽キャの中の陽キャ、ナツ・ドラグニルが叫んだ。

 

「あにぃ! 今度会ったら俺と勝負するって約束してただろうが! なんで無視すんだよ!」

 

 肩も腹も出してる癖にマフラーをしている桜色の髪をした短髪の陽キャは、7ヵ月前に交わした約束事を持ち出してきた。その約束事も俺的には『ああ、行けたら行くわ!』みたいな感じで言ったんだけど、陽キャはそれを許さない。約束事や大事なことはちゃんと覚えているのが陽キャだった。それが例え7ヵ月前のことで、当の本人がすっかり忘れていたとしても、だ。いや、まあ、今日の朝には思い出してたけどね。陽キャが忘れてたら良いなあとは思ってた。

 そしてナツが叫んだせいで、俺が居たことに周りの面々が気づいてしまった。『あれ、そういえばアイツマルディスじゃね? ギルド来てたんだ珍しい』『私一年ぶりに見たかも』『漢漢漢ーーーー!』、うん、最後のは関係ないな。まずいな、陰キャは注目に弱い。注目されるとなんかしなくちゃいけないのかと思わせられる。『勝負? おいおい、久しぶりにマルディスが戦うところ見れんのか』とか、ギャラリーの内の誰かが言うけど、言うほど俺の戦うところが見たいだろうか、俺は見たくないねー! だって別に面白くないもん! 『さあ賭けだ! ナツVSマルディス! 張った張ったー!』。あーあーあーあーあー、もう逃げ場無くなった。賭け事開催されたらもうここで逃げたらただの空気読めないやつになっちゃうもんね、周りから嫌悪感抱かれたらもう俺みたいな陰キャは終わりだもん。最悪死ぬ。

 

「無視するつもりはなかったんだけど、ごめん。忙しそうだったから」

 

 言外に『貴方を気遣ってあげたんですよ』と伝えた。別に忙しそうに見えなかったけど、そう見えたことにした。約束事覚えてなかったけど、あの時みんなと喧嘩してたからもう俺とは良いんじゃないかなとは思う。なんか『イグニール街中に居なかったじゃねえかー!』とかいう街中に竜が居るはずない理不尽な突っ込みが街に行ってから情報提供した人に返ってきたんだよな。ナツって基本は馬鹿だけど、イグニールっていう火竜のことになるともっと馬鹿になる。

 

「まあ、良いよ。勝負ね、勝負。でも、ほら、勝負って切りがないしさ、この勝負やったら五ね……一年は勝負なしとか、良いと思うんだよねえ」

 

 仕方がなく今の注目を諦めて、一年の安寧を求めることにした。五年とかだったらさすがに文句飛ぶと思ったから、一年は俺なりの譲歩だ。いや、駄目って言われたらそれに言い返す材料は俺にはないんだけども。陰キャは陽キャとの交渉に弱い。

 だが期待通りにナツは掌に自らの拳を当てて、好戦的な表情を浮かべながらも俺の要求を全面的に呑んで返してくれた。

 

「はん! 良いぜ! どうせ俺が勝つからな。そっちこそリベンジを一年も持ち越して良いのかよ」

「今回もナツの7ヵ月ぶりのリベンジです、はい」

「今回もって……負けたの? ナツが?」

「ボロボロでした!」

 

 土を掘り進む化物みたいなメイドを全員冥途送りにしたと噂の新人ルーシィが顔を引きつらせてこちらを見てきた。俺も顔を引きつらせそうになったが、視線を逸らして難を逃れた。

 

「今回は先手必勝だ! 火竜の――」

「ちょ、ナツ! ここギルド内ぃ!」

「――鉄拳!」

 

 炎をその右拳に集めた、文字通り火力を上げた拳。陰キャの俺が陽キャの拳を喰らったら一たまりもないので、ギルドの外に逃げ出した。後ろでテーブルが粉砕された音が聞こえるが、一応テーブルっていう家具は人一人座っても平気なくらい丈夫に作られてるはずなんだけどなあ。

 外に出たら、注目は集まらない。できるならこのままどこか遠くに逃げてしまおうかなと考えをよぎったが、観客が追いかけてくる前にナツが追いかけてきた。

 

「だー! 逃がすかああああああ!」

 

 なぜ隙があったら逃げようという考えを見抜かれたのだろう。前に姿を見られてる状態で逃げたら永遠に追いかけ続けられたから、切りがないのは良く分かってる。ここで勝負を決めてしまった方がお互い(主に俺)に良いことははっきりしてる。

 だけども俺は迷うのだ。思うのだ。勝負勝負と陽キャは言うが、そもそも勝負なんてものは利益を生むのかと。陰キャの俺は無駄な努力なんてしない、汗を流す連中を嘲笑する。立派な努力なんてできないし、人の笑顔のためにボランティアなんてできないし、人々を導くような才能に恵まれなければ人と絆を構築できる能力が欠如している。それが俺たち――陰キャだ。勝負なんてする前に、すでに勝ち負けは決まっているじゃないか。

 

「ナツ、はい火玉(ファイアボール)

 

 俺がいい加減に振りかぶって投げたへろへろ~っとやる気のない火の玉が、ゆーっくりとナツの方に向かった。もしもナツに避けられてしまったらギルドの中に直撃してしまうから、あえてゆっくりナツが反応できるように、だ。べ、別に本気で投げたらノーコンになっちゃうわけじゃないんだからね! 陰キャは運動が得意なんだからっ!

 

「火は俺には効かねえよ!」

 

 ナツは俺の投げた火の玉を大口を開けて食べた(・・・)。そう、ナツは何を隠そう火の滅龍魔法を扱う滅龍魔導士(ドラゴンスレイヤー)なのだ。だからこそ火竜との戦いでは勝てるように、火をその体内に取り込むようにできている。仕組みは分からんが、そういう風になっている。俺がいくら丹精込めた魔力で火を投げてもパクっと食べられてしまう。火を使う系の魔導士に対しては相手が火竜でもない限りナツは無敵だ。陽キャはズルい才能を持ちがち。

 

「へっ! ご馳走さま………………っだあああああああああああああああ!!」

 

 したり顔で口を拭った後に、真顔の表情に移り変わって、汗が噴き出して、白目でギルド内に吹き飛んだ。追いかけてこようとした観客たちが慌てて左右に割れて避けて、ナツが喉を押さえながらギルドの中で足をジタバタして身悶える。

 

「か、かかかか、か」

「ナツ! おいどうした!」

「かれえええええええええええええええええええええええええええええええええええ!?!?」

 

 ギルドの中でナツが火を噴いた。

 ドラゴンズ・ブレス・チリというタバスコの2000倍くらいは辛いって言われるものを火と一緒に入れてたから、それごと食べたナツは一たまりもないだろう。陽キャは食いしん坊なので人からの食べ物も簡単に食べる性質を利用したのだ。名前がナツ向きだからお土産に持ってきてただけだったんだけど、反応を見る限りお土産として渡さなくて良かったみたいだ。あぶねー、陽キャにこんなものをお土産と称して渡してたら殺されるところだった。

 

「あ……ガクッ」

「ナツううううううううう!」

 

 力尽きたのを見て、思ったよりヤバい物を食べさせてしまったなあと思った。まあ、陽キャは無敵なので大丈夫だろう。




最近フェアリーテイルがyoutubeで一挙放送してますね。アニメのオリジナル話も面白いのでおすすめ!

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