やはり俺たちの本気は間違っていない   作:健康啓涼

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この度は当作品をお読みいただきまして、ありがとうございます。

前回のあらすじですが、
・材木座くんが現れました!

なお、本作の材木座くんは……少しだけ、原作とは違います。恐らく「少しだけ」だと思っています。

今後も細々と執筆してまいりますので、引き続き、私の妄想ごとにお付き合いいただければ幸いです。



青春ブタ野郎はフォロワー数の夢を見る(3)

先ほどまで盛り上がった空気はいつもの落ち着きを取り戻し、教室内は静かになる。

2人が着席し、俺の頭の中が整理できた。

まぁ、これで準備出来たわけだ。

 

「……で」

 

 

紙束を揃える音だけが、やけに大きく響いた。

向かいに座る材木座は、眼鏡を先ほどからカチャカチャとさせている。その横では、優木が静かに俺たち2人を見ている。

材木座のヤツ。カッコつけているのか。緊張しているのか。先ほどから優木と全く視線が合わせようとしない。

 

「率直に言っていいんだよな」

「うむ。構わぬ」

 

短く頷くのは、自信の表れか。俺に対しては無駄に堂々としている。

 

「じゃあ遠慮なく言う」

 

 

 

さて。材木座よ。いつから俺を仲間だと思っていた?

 

 

「はっきり言って、読みにくい。つまらん。苦痛以外の何物でもなかったぞ」

 

 

開口一番の攻撃。材木座は予想していなかったのか「ぐはっ」と精神ダメージを受け、のけぞった。

 

あとね、優木さん。苦笑いを浮かべながら「アハハ」って……。同意見なのね。

 

「大体なんだ? あのルビは。誤用が多すぎるわ。盛り込み過ぎだ。『ナイトメア』ってつけるなら悪夢を入れろ」

「技の解説も光るってありましたよね? てっきり、闇系統の技かと思いましたよ?」

「げふっ」

「異能バトルだからルビに拘るは分かる。だがな、百歩譲ってナイトなんだから技の解説に『騎士』か『夜』を入れろよ」

「それ思いました。剣術じゃなく格闘技っていうのも良く分かりませんでした」

「ひぎぃぃぃ~」

 

俺からのダメージを受け、戦う姿勢に戻った矢先に再び強烈な一撃が優木から入る。しかも俺よりも的確な口撃。眼鏡にひびが入らなくて良かったな。

「しかもなんだよ。バトル終わった瞬間、脈絡なく服を脱ぐ異世界転生した少女って。白けるわ」

「あれは絶対にいらないシーンでしたよ?」

「ボフォォ」

ちょっと顔を赤くしてお怒り気味の優木さん。そりゃー、女性から見たらそうだよな。

 

「読むたびに止まる。止まるたびに戻る。戻るたびに集中が切れる」

「あはは……それは中川さんも言ってましたよ?」

「ぶひぃぃぃー」

 

ついに耐え切れなくなった優木さん。中川の名前を出してきたか。

 

「テンポが潰れてる。無駄に長い呪文の詠唱じゃねーんだ。行間を開けろ」

「余裕があった方がいいですよね。場面転換が分かりにくくなっていますよね」

 

まぁ、結果として、読んでいても体験にならない。ただ文字を認識し、複数の単語を頭の中で組み合わせるだけ。それじゃあ、どんな表情でどんな心境なのかなかなか入ってこないしな。

 

 

「それと」

 

 

紙束を軽く叩いて少し間を空ける。ここだ。これが一番重要なのだ。

 

 

「やりたいことが多すぎる。バトル、日常、ラブコメ、シリアス……要素は分かるが、物語の筋が繋がっていない」

「それが比企谷くんのいう『苦痛』ということですか?」

「あぁ。そうだな。一つ一つの温度は高い。やりたいシーンも見える。でも、それが線になってない。だから、余計に苦痛に感じた」

 

 

……。返事がない。どうやら屍のようだ。

 

 

材木座の精神ライフは0を下回ったようで、椅子に座ったままガクンと頭は下がり、手はブランと力なく垂れさがり、真っ白になって、うなだれていた。

 

 

——材木座の小説は点の集合体。これが本質だ。

 

 

 

ただ、悔しいがこいつのやる気は伝わってきた。熱量は理解できてしまった。『ここを見てくれ』ってものが。恐らく、以前の俺ならば、どこか冷めた目で読み続けていたかと思う。

 

 

……つーか、なんで悔しんだよ。自分にもよくわからん。何の心境の変化だよ。とはいえ、理解できない感情の出所は何となく察しはつく。

 

 

どっかの誰かさんに感化された……のだろう。

 

 

……ほんの少しだけだが。

 

 

***

 

そんな誰かさんに視線を向けると「うーん……」と少し俯いて考えている。どうやら、ここは意見の相違があるようだな。

 

 

先ほどから俺の意見に概ね相槌を打つっていた彼女が、ここではそれをしない。俺が苦痛と感じたが、優木は違った感想を持ったのだろう。

 

「比企谷くんの意見は私も概ね同意見ですが……」

 

 

ここで優木が初めて自分から意見を伝える。

 

 

「私はこの小説を読んで苦痛は感じませんでしたよ」

「おぉ! そうであるか」

「はい! 筆者……材木座くんの大好きは伝わってきました」

 

材木座よ……。元気になったからと、急に立ち上がるな。そんなことしたら優木まで立ち上がるなだろ?

 

ほらぁ……言わんこっちゃない。本日2度目の目視です。

 

「一進一退のバトルシーンでは思わず胸が熱くなり始めました」

 

そう言うと優木は他の付箋よりも大きいものを張ったページを開く。チラッとだけ見えた1文でどこのシーンかは検討が付く。

 

「格上の相手にも関わらず、立ち向かう姿。得意技で押しても、中盤では劣勢に立たされた主人公がサポート役と考えた作戦で切り札を使う場面は素直に驚きました。比企谷くんもそう思いませんでしたか?」

「……まぁな」

「そうですよねっ!」

 

急に話を振られて、思わずカッコつけてしまった。誰目線だよ。恥ずかしっ!

 

……まぁ、確かにその通りなんだが。

 

「魅せるシーンでは倒置法を使って、技の発動にインパクトが増していました」

「そうかそうか。分かるではないか。優木嬢」

「それに敢えて誤字と見せかけて、必殺技を2段構えのところは次の技はどんなものがでるのかとワクワクしましたよ」

「おぉっ! それは有難い言葉よな」

 

……そうなんだよな。「文章だけ」はえげつないほど、引き込まれた。引き込まれるからこそ、内容が酷過ぎるところをとルビを無視さえすれば、意外にまともな部分もあったのは事実。

 

その後もキラキラと目を輝かせて楽しそうに話す優木の姿を見ていて改めて思う。

 

コイツは「カリスマ属性」持ちであり「表現者」なのだと。

 

優木の言葉には「説得力」がある。だから不思議と彼女に視線が向く。

言葉だけじゃ足りないと判断したのか、今度は一歩踏み出して身振りを加える。それを見ると、自然と頭の中で場面が再生されている。

 

……俺には100年たっても無理だな。

 

どうやら、優木のパフォーマンスに酔いしれた材木座もノリノリで舞台に上がり、助演するのだが、それでもこの場は優木の独壇場だ。

 

……観客1人ってのが寂しいがな。

 

その後も繰り広げられる劇は、優木が小説内の一部をノリノリで 実演しては原作者から演技指導が入る。その演技指導も熱が入ると、材木座が実際に撮影しては「ここは〇〇の方が良いと思う」やら「ここはもっと熱を入れて欲しいところでござる」といちゃもんをつけ始めやがった。優木も優木で「ここは△△ですから間を取った方が」やら「クールな方が良いと思いますよ?」と意見しちゃうし。

 

で、それらを実演した優木を材木座が撮影して2人で喜んでるし。

 

……一体何を見せられているんだ。俺は。

 

いや、それ以前の問題か。いつの間にか観客席に追いやられている。しかも最前列。逃げ場なし。

 

……これ、もう俺いらなくね?

 

改めて俺がこの小説を読んだ意味があったのかと、当初の疑問に立ち返ったところで、2人は満足したのか、タオルを首に巻いて席に座ってクールダウン。

 

そういやぁ、この前のフェスで借りたタオルを返してなかったわ。……新しいタオルを買って返すか。

 

***

 

「ところで、材木座くん。今回、執筆した理由は何かあったのですか?」

 

……今度はヒーローインタビュー?優木さん。貴方は一体何役ですか?

 

「うむ。実は我の支援者たちからの要望があったのだ」

 

お前の支援者って誰だよ?エア友達のトモちゃんと同類か?

 

「支援者ですか。応援してくれる人がいるっていいですよね」

「そうなのだ。我の後ろには約3000人の私兵がおるのだ」

「私兵ってなんだよ」

 

そもそも支援者じゃねーのかよ。私兵に変わってるじゃねーか。そもそも3000人ってどこから出た数字なんだよ。見栄を張るなら、もっと5000人やら1万人と大きな数字にすればいいのものを。なんかこだわりでもあるのかよ。

 

材木座はどこか納得していないのか、鞄からスマホを取り出すと、なにやら操作を始めた。

 

「見よ! これが我が臣下たち!」

「えぇっ!?」

 

胸を張り、腰に手を当てて自分を大きく見せた材木座は黄門様の印籠のごとくスマホの画面を優木に見せつけると、優木はちゃんと驚きの演技をする。その上で、優木もスマホを操作するあたり、妙にリアルじゃんか。

 

……いつの間に私兵が臣下になってんだよ。

 

「……まさかのご本人でした」

「ぬ? まさか優木嬢」

「はい……。どうやら、私も私兵の1人のようです」

 

急に2人の動きが止まると、静かになる。

……3秒以上の沈黙は放送事故だぞ?

 

仕方ない。俺も確認するか。

 

席を立ち、材木座の掲げるスマホの画面を確認する。そこにはときどき見かけるSNSのホーム画面。妙に凝った自撮り写真(後ろ姿)のアイコンが目に入ると、その隣にはアカウント名「剣豪将軍-SwordMaster SHOGUN-」とある。

 

……相変わらずだな。材木座。

 

「で? それで何がご本人なんだ?」

「な……なんだとっ! 良く見ぬか!?」

「見たっつーの。剣豪将軍ってお前だろ? それがどうした」

「お主の目は節穴か! 良く見よ! フォロワー数を」

「はぁ……」

 

……フォロワー数、ね。

正直よく分からんが、多いか少ないかくらいはなんとなくだが判断できる。

 

仕方ないので、材木座のスマホをもう一度見てはアカウント数を確認する。

 

まさか……な?

 

その瞬間、俺も優木と同様、言葉を失う。もちろん。俺はSNSなんてやっていないから、フォローとかはしていない。が、材木座のアカウントには確かに「3000フォロワー」と記載されていた。

 

 

……マジかよ。意外にいるじゃねーか。

 

 

「お前、サブアカウントを3000個も作ったのか?」

「愚か者めっ! そのような真似をして何になるというのだ!」

 

……確かにそうだな。つーか、優木がフォローしてるから正確には2999個か。

 

材木座は「どうしてこの凄さが分からんのか」と若干憤慨している様子。まぁ。別にこいつにどう思われようと何も感じないのだが。

 

「比企谷くん。フォロワー3000人と聞いても、ピンと来ていませんよね?」

「……まぁな」

 

優木がいつものようにホワイドボードの前に立つとお馴染みの「ポンッ」という音と「キュー」という音がし始める。流れるように動くペンを見つめると、時折「カタッ」という音がしたと思ったら、あっという間に目の前が白と黒、そこに赤や青、緑までが混ざって鮮やかになる。

 

……分かりやすさのために図解や矢印などまで描いてくれて……。流石は生徒副会長。

 

「大雑把な説明になりますが聞いてもらえますか。材木座くんも聞いていて、修正や補足があればその都度、仰ってください」

「任されたっ!」

 

……なんで、肩で風を切って歩いては俺の隣に来るんだよ?暑苦しいっつーの。

 

「まず、フォロワー数が3000人というのは有名人の100万人に比べると少ないと感じます。ですが、この数は『特定の専門分野では名の知れた著名人』とはいえます」

「……そんな大層なものを名乗っていいのか?」

「はい。先日のフェスをイメージしてください。あのステージはMAXのキャパが200人でしたよね?」

「あぁ。そうだったな」

「ということは、材木座くんが1回投稿すると、あの会場規模で15会場分の人数を集めたことになります。そう考えると、凄くありませんか?」

「……そうだな」

 

おい。隣のヤツ。何を偉そうに腕を組んで胸を張ってるんだよ。

とはいえ、優木の説明で何となく隣のウザいヤツの凄さは分かった。とはいえ、ニッチな界隈だけだろうがな。

 

でも、そうじゃない。

 

「でも、3000人全員見た場合の数だよな? そんな毎回見るものなのか?」

「仰る通りです。実際にただ投稿しただけでは、その1割ぐらいしか見ていないという統計データもあります」

「……やっぱそんなものなのか」

「ですが、材木座くんの凄いところは『拡散力』が強いところなんです」

 

ここで優木は準備していたホワイトボードの図解と赤ペンを使って説明を始まると、相も変わらず分かりやすいもので。

 

「材木座くんの投稿は「いいね」が集まりやすく、投稿が埋没しないところか、フォローしてない人にまで見てもらいやすいのです。リアタイで感想を述べた投稿や、IFでのワンシーンを投稿していますよね」

「うむ。その通りである。アニメのリアタイ視聴は紳士のたしなみである」

「……どこがだよ」

 

確かにリアルタイムの視聴に拘る人はいるわな。俺もニチアサはリアル視聴をするし。

それだけ思い入れがあるものに対し、他人もまた自分と同じような好印象を持つと、一気に距離感が縮まり親近感を覚える。そうやって仲間が増えて行くものだ。それが、リアルタイムに行われているとなると、より親近感が沸くので応援したくもなる。

 

……なるほどな。確かに理にかなっている。

 

「さらに『リポスト』が多いために、ポストした内容が半強制的に他者の目に届くので、3000人もいれば1回の投稿で10万人程度の目に留まる。ということになるのです」

「うおっぉふぉっん」

 

うぜぇ……。

 

「……で。昨日の投稿のインプレッション数だったか? 1万人にも見てもらったというわけか」

「はい。これでも割と少ない方ですね」

「仕方ないのだ。海外勢はまだ放送時間を迎えておらんのだからな」

「ほーん……」

 

っと、あぶねっ!一瞬頷きかけたが、そうじゃないだろ。

 

確かに理屈は分かるが、それに材木座の投稿が当てはまるかは別だ。さっき見た投稿を見ると、中二病丸出しのものだった。確かに、該当シーンの文章だけをしっかり読めば、伝わる人間には伝わるのかもしれない。ただ、それだけで果たして3000人もフォロワーが集まるものなのか。

 

「つーか、材木座の投稿って何でそんなに人気なんだ?」

「はい。それは一言で言えば材木座くんの語彙力ですね」

「……は?」

「これは実際に見てもらった方が早いですね」

 

優木はスマホを机の上に置く。その画面に表示されていたのは材木座……もとい剣豪将軍の投稿内容だった。

 

……いやいや。嘘だろ?

 

「……これ。マジでお前がやってるのか?」

「うむ。英語だけではござらん。フランス語と中国語もできるぞ」

「なんでそんなバイリンガルなんだよ……」

 

材木座の投稿は日本語以外に英語やフランス語にしたものまで投稿しているのだ。そのような投稿をコンスタントに行っている。独特の言いまわしを同時通訳やちょっとした解説を加えることで、海外勢からは「日本文化」に触れることもできるわけか。

 

「見たか! 八幡。これが我の力である」

 

おい。急に立ち上がるなよ。

 

「あぁ。短文『だけ』はまともな文章を書けることが分かった」

「ブフォォ……」

 

油断大敵だ。材木座。あくまでこの場はお前の小説を評価する場であって、いくらSNSが凄かろうと、それは加点対象にならんのだ。

 

「あはは……。そうですよね。小説となると、またかわってきますからね」

「ヌフォォオォオ」

 

……綺麗にオーバーキルが決まったようで、材木座はそのまま背中から倒れると頭を抱えながら床の上をのたうち回っている。その動きはまるで木から落ちた虫がのたうち回る姿にそっくりで、なんかキモいな。

 

そんな材木座を優木が「まぁまぁ」と介抱している。

 

……トドメを指したの、優木だからね。材木座を持ち上げた優木も主題を忘れていなかったけどさ、そのマッチポンプな優しさはどうかと思うよ?

 

しかしまぁ……

 

材木座の「SNS投稿に関する技術力」の高さには驚いた。まぁ、確かに面白い「ワンシーン」を見せられたら、その前後も気になるってところだろうな。

 

バイリンガルな部分もそうだが、短文だけなら認めてやってもいい……かもしれない。まぁ、実際にコイツの投稿を世界中で1万人も見ているいるわけだからな。

 

「グォオォエオォエオエオォ……」

「……大丈夫ですか? 材木座くん」

 

って、うるさいな。お前はもうすぐお迎えがくるセミか?どんな鳴き声だよ。全く……。さては、本気で心配してくれる優木に甘えてるんじゃねーだろな?ここはそんな如何わしい店じゃねーぞ。

 

余りにもみっともない材木座の姿を視野に入れたくないため、視線を上げるとふと時計が視界に入った途端、ため息が出る。

 

気が付けば最終下校時刻5分前。本来、部活動は最終下校時刻15分前には帰宅を開始しなきゃならん決まりだよな?マジでこの同好会入ってから定時で帰ったことないんですけど……。

 

はぁ……。仕方ない。小説を読んでやったのだ。これぐらいは貸し借りのうちだよな?

 

「おい。材木座。さっき撮影した動画をよこせ」

「……ふぉ?」

「いいから早くしろ。で、優木。材木座からもらった動画を同好会のアカウントで投稿して今日の活動は終了だ」

「……は、はい。でも、急にどうしたのです?」

 

まぁ……そうね。急に張り切ってごめんね。

この状況をどう収集させるか。それを考えただけ。

 

材木座の小説は点の集合体。その「点」を外に投げて、つなぎ方を他人に決めさせればいい。どうせ内側でこねくり回しても線にはならない。だったら最初から外の視点で補強させた方が早い。そこから材木座が何をどう学び取るかは知らん。だが、俺らができるのはそこまでだ。

 

こんなことを考えたところで所詮は素人の浅知恵でしかない。なら、『ただ、なんとくなく』――敢えて言葉にするなら、それが一番しっくりくる気がする。

 

「簡単に言えば、アンケートだ。あの動画の続きはどういうのが良いか希望を聞いたら、次のイメージが沸いてくるんじゃねーの」

「なるほど。確かに、材木座くんの小説の大きな課題は解決されそうですねっ! でも、どうして、同好会のアカウントで?」

「……材木座のアカウントじゃ意味が薄いんだよ」

「え?」

「フォロワーってのはあいつの『ファン』だろ? あいつが何出しても、ある程度は肯定する」

 

俺の視線を受けた優木と材木座は「続けてください」と言わんばかりに大きく頷く。

 

「でも、同好会のアカウントは違う。少なくとも『材木座個人』じゃなくて『同好会のコンテンツ』として見られる。つまり――純粋な反応が取れるってわけだ」

「純粋な反応……であるか」

 

素人がそれっぽく見せるための言葉遊びに過ぎない。だが、2人は真剣な表情で俺の意見に耳を傾けている。

 

……なんか、圧がすげぇな。

 

「受けるか滑るか。続きがみたいかどうか。そのまま数字とコメントで出る。言い訳も補正も効かねぇ。お前の『点』が他人にどう見えているか。それを知るにはちょうどいいだろ」

「お、おぉ……!」

「それに――」

 

……まぁ、せいぜい実験台になってもらうさ。今の自分がそれなりに深く考えて出した結果だった。

 

「もし当たれば、こちらにもメリットはある。同好会活動として続けていけばいいんじゃねーの」

「なるほど……。材木座くんには解決策を。私達にはSNSで発信するコンテンツになる。確かに双方にメリットがありますね」

「まぁな。とはいえ、こればっかしは材木座の許可もいるがな」

「我はそれでも構わんぞ。我の創作したワンシーンを演じて貰えたのは光栄だからな」

 

材木座は調子を取り戻したのか、ゆっくりと立ち上がり、決めポーズをとるや否や、優木とスマホでやり取りを始める。

 

……いきなり仕切るな。お前が。

 

「じゃあ、さっさと投稿して帰ろうぜ」

「……もしかして、それが本当の狙いですか?」

「……ちげーよ」

 

なぜだが、自然と左頬に指がのびると、かゆくもなのに少しだけ掻く。

優木は揶揄うように俺に話しかけるのだが、それが、どこかこそばゆい感じがした。

 

……これもまたアイドルとしてのテクニックってところか?

 

まあ、いい。今はそれよりも。

 

どうせ明日になれば、全部分かる。良くも悪くも。

 

――それが、どんな結果をつれてくるのかは。

 

まだ、誰も知らなかった。

 

 

 

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