俺は今所謂賢者タイムに突入している。その理由はやりたいことができて満足したから。この前の戦いで時の加速で完膚なきまでに敵を制圧できた。
「前回の出来事も含めてどんどん時を操る制度は上がってきている。前世では止めることしかかなわないと思っていたが加速させることも、戻すことも、飛ばすことも可能となった今、次は何を目指す」
これこそ今俺が抱えている問題でもある。今までは時間停止から始まり、時を操ることを目標としてやってきた。だがそれも今では実用性があるところまで来た。必要以上に操れる時間を増やしたところで宝の持ち腐れでしかない。
正直、俺は2回目の人生にもう満足してしまった。シャドウガーデン、主に七陰だったり、敵であるディアボロス教団の壊滅だったりと心残りはあるがこの場で死ぬと告げられたとしても俺はそれを受け入れる。
それほどまでに俺はこの人生に満足してしまった。
そんなことを考えてい居ると、窓からある人物が勢い良く入ってくる。そんなことをするのは1人しか思いつかない。
「なんだよ、シド」
「トキ、僕は決めたよ。アルファたちを裏切ることにする」
こいつは・・・・何を言ってるんだ?
「アルファたちはやりすぎたんだよ。ここまで同業者から恨まれればミツゴシの未来はないと言ってもいい。だからこそ僕は全てを破壊して一から作り直すつもりなんだ。そもそも僕たちの知識を使ってやりすぎてるって思わないトキ?」
「残念ながら思わないな」
こいつ、ついに自分が仲間外れにされていると思ってこんな暴挙に出るとは。アルファたちの苦労も知らないで。しかも毎回思うがお前のあのふわふわした説明からここまで再現したのは凄いことだっていうのを認識して欲しい。
と言いたいがいったところで止まるとは思えん。それにどっかでぼろが出て失敗に終わるに決まってる。
「トキはどうする?僕と一緒にやる?」
「俺はパスで。流石にアルファたちが可哀想だから」
「僕の計画では新しく作った商会にアルファたちを幹部として招くつもりなんだけど」
アルファたちが死に物狂いで築き上げたものを壊して新しいものを提供する。それは彼女たちの努力を否定するものだ。
本来ならぶん殴って止めるべきなのだがシドだからな。もう一度言うがどうせどっかでぼろが出るにきまってるさ。
「それでもやらんよ。俺は前から言っていた温泉を掘りに行くから」
「いいね。温泉。すべてが終わった後の祝勝会は温泉でやろうか。じゃあトキ温泉の方は任せるね」
「任せておけとっておきの温泉スポットを掘っておくから」
♢♢♢♢
温泉を掘り当てる道具なんてありもしないので頑張ってスライムで作ったつるはしで掘っていくしかない。ある程度掘ったら時を戻し元通りにするその繰り返し。
食料はあらかじめ持ち込んでいるから王都には戻っていないがどうなっているのだろうか。シドのたくらみが上手く言っているとは思えないが万が一ということもある。しばらくしたら様子を見に帰るか。
それにしても冬の山は冷えるな。魔力で俺の周りの気温を維持しているがもともとがかなり冷えていてなおかつ長時間維持しているので魔力がまだ余裕があるとはいえ消耗が激しい。あと1週間このままだと間違いなく枯渇する。それまでに掘り当てないとな。
「温泉、温泉、早く湧け湧けおんせーん」
そうやって自分でも分からない謎の歌を歌っている時だった。つるはしに手ごたえを感じた。
「おぉ、ついに!」
さらに力を込めてつるはしを地面にたたきつけると地面から勢いよくお湯が飛び出してきた。
かなりの勢いがあるが巻き込まれなくてよかった。爽快に噴き出すお湯を見ながらどことなく違和感を覚える。
「なんだ?噴出したお湯がなんか形作っているような。まるで巨人みたいな」
噴出したお湯は頭部のようなものから生成され始め次に胴体、足はないものの下半身と生成されていった。例えるなら体を持った巨大スライムといったところか。
「まじか。化け物が生まれたよ」
「ウォォォォォォォ!!!!!!」
長年の封印が解けたみたいに咆哮を上げ、その巨大な腕を使い襲ってくる。水本来のしなやかさを生かしてからなのか早い。あと一歩避けるのが遅ければ間違いなくダメージを受けていた。しかもその威力も圧倒的な水の質量で殴られた地面は巨大なクレータができている。
「なかなかの威力だなこれ。まともに受けたら骨の何本かは持って行かれるな」
早いとこけりをつけるべく、スライムつるはしを剣に変形させあいつ、そうだなスパにかけてスパルデントと名付けよう!スパルデントの巨大な腕を切りに行く。
雪山で足場が悪いと言ったらこの上ないが、そんなこと言っていられない。雪のせいでいまいち地面を踏ん張れず跳躍が思うようにいかない。それでも何とか腕をスライムソードで切り付けた。
「!?」
水だから当然と言えば当然なのだが斬撃は通用せずそのまますり抜けてしまった。それだけならまだ問題ないのだがこいつは温泉ということもあり信じられないほどの高温であるのだ。俺だからこそ体制はあるものの一般人がここにいたら動くことすらままならない。水は100℃で沸騰するのが物理界の常識だがこいつはなぜか100℃は優に超えている。
だがそれは俺にとってメリットもある。この場所は雪が積もり足場が不安定だったがこいつの高温で徐々に雪が解けつつありあと数分もすれば完全に溶けきる。
こいつを攻略する方法は液体から個体にするしかない。蒸発しない水ということで個体にならない可能性はあり得るがそれでもやるしかない。普通にやっても抵抗されて0度まで持って行くのは時間がかかる。
「ザ・ワールド」
抵抗されないために時を止めて確実に凍らせていく。まずは腕からもともとの温度が高くなかなか凍り付かなかったが何とかまずは腕だけ凍らせることだできた。
そして個体となったことでダメージが通るので腕を切り落とした。
「まずはこんなものか。時は動き出す」
これがどれほどの効果を生み出すのかを見るべく時を動かした。
その答えは正解だったのか、切り落とされた凍り付いた腕は再び個体から液体に戻りスパルデントの体にくっついた。もし、全身を凍らせて細かく砕いたところで同じ結論になっていただろう。その無駄な労力を割かなくていいと分かったのは一つ進展だ。
「アニメやゲームだとこういう敵には核があるものだよな」
少し準備がいるので攻撃を避けながらやっているわけなのだが攻撃範囲が広いからなのか避けるだけに労力がかなり割かれている。それに心なしか最初よりも巨大化しているように感じる。
俺が掘り出した原潜の方を見ると温泉は今もなお放出されておりそれが巨大化させる要因となっている。
おそらくあるだろう核を破壊すればすべて終わるはずだ。
「これで終わらせよう。エクスプロージョン!」
そう唱えた瞬間、スパルデントの体は一瞬にしてはじけ飛んだ。
「上手くいったか」
原理としては水蒸気爆発だ。限界まで熱したスライムをやつの体内に飛ばすことで内部で水蒸気爆発が起ころあの巨体を一瞬にしてはじけ飛ばした。
だが、肝心の核が見当たらなかった。水蒸気爆発に巻き込まれ崩壊した可能性も一瞬よぎった。しかし、吹き飛ばしたはずの体が俺の右斜め前で既に再生が始まっているのだ。
「まじかよ。まさか弱点がないときたか」
最悪、universeを使いここら一体を吹き飛ばすこともできるがせっかく見つけた源泉なのだからなるべくしたくない。何とか突破口を探さなくては。
だが、思考しながらよけ続けるのには限界があった。むろん、時を止めたり時を飛ばしたりしながら攻撃を避けているのだが圧倒的な攻撃範囲、スピードの前には限界があった。
「くっ!」
絶えず巨大化する体その拡大範囲を見誤り避け遅れる。
「がああああ!!!!ザ・ワールド!」
右足が踏みつぶされてしまった。とっさに時間を止めたが間に合わず右足は圧倒的な質量でつぶされ使い物にならなくなった。
時を止めている間に右足の時を戻し復活させる。それと同時にこいつの攻略方法を考える。
「何かしらの糸口はあるはず。もう一度体を吹き飛ばしてみるか」
時が止まっているのを最大限生かしスライムを先ほどよりも高温にする。
「時は動き出す。そして再び爆ぜよ。エクスプロード。そして再び時を止めるスタープラチナ・ザ・ワールド」
時の止まった世界で敵をよく観る。爆発したスパルデントの体一つ一つに目を凝らして観る。
見つけた!
「まさかこんなに小さいとは」
核らしきものを見つけたがそれはこの巨体を動かすにはあまりに小さすぎるものだった。大きさにして米粒一粒程度、見つけるはまず難しい。
それに加えやつは自分の体が爆発すると分かるとピンポン玉くらいの水玉を作り出しその中に核を入れ先に体外へ排出しているみたいだ。だから先ほど体を爆発しても核はなかったわけだ。爆発するまでの時間はほんの0.何秒の世界なのにそれをやってのける技術恐ろしいものだ。
「そろそろ終わりにしよう」
宙に浮いている核をそのままスライムソードで切る。核は砕け散り消滅する。
「そして時は動き出す」
再び時を動かす。
「お前のことは生涯忘れない。我が敵であり友、スパルデントよ」
『見事なり』
「お前喋れたのかよ」
独り言としてつぶやいたのにまさか返事が来るとは。
そしてスパルデントの体は再び再生することなくそのまま雨となり地に降り注いだ。この辺りは今までの攻撃で一つの巨大なクレーターとなっており、雨はそのクレータのように降り注いでいる。
「これで温泉を作る手間が消えたわけだ。元からあいつは突発的に生まれた化け物じゃなく温泉のガーディアン的存在だったのかもな」
今回のことでよくわかった。俺はまだまだ弱い。時を操る能力を手に入れたのにもかかわらずこの苦戦。実に情けない。俺は慢心していたんだ。時を操る最強の能力を手に入れて最強になった気でいた。いくら能力が最強でも使うやつが未熟ではこのありさまだ。
スパルデントは俺にそのことを教えてくれた。だからこそやつは俺の敵であり友だったのだ。
俺はもっと強くなる。この温泉にかけて誓おう。
「さて、本題の温泉施設作るか」
とはいっても、俺一人では無理なのでアルファたちに協力してもらおう。ここは我が友が眠る地、そう易々と一般人に入らせるつもりはないのでシャドウガーデン専用にするつもりだ。
そのためには下山してアルファたちに会いに行かないとな。
そう思い歩きだした瞬間だった。体に力が入らずその場に倒れてしまう。
「流石に無理しすぎたか。誰も来ないし自然回復を待つしかないか」
しばらくこのままだと決意した時、温泉の方から再び腕が伸びてきて捕まった。
「まさかまだ生きて!」
このままでは本当に殺されかねない。何とか逃げる手段を考えていたが、その腕は俺をつぶすことなくなぜか服を脱がし温泉の方に放り投げた。
「何が狙いなんだ」
『疲れただろう。温泉に入りゆっくりしていくといい』
「そうするわ。って、何でまだしゃべれるんだよ!」
『最後の悪あがきといったところだ。お前が核を破壊したせいで持って数分といったところだ』
「・・・・」
そう言われると少し気に病むのだが。
『そう気に病むな。私はこの温泉のガーディアンとして守ってきた。ゆえにこうしてこの温泉を託せるものが現れてから消えるのは本望といったところだ。消える前に最後名を教えてくれないか』
「トキだ。覚えて逝けよ。我が友スパルデント」
『スパルデント、お前が名付けた私の名か。悪くないな。我が友ト、スパルデントの名に誓い今からここはお前のものだ。故にお前が認めた者以外がここに立ち入らせない。私の意識は消えるがこれからも無意識ではあるがここを守っていく』
「感謝する」
『そろそろ時間のようだ。さらばだ我が友トキよ』
スパルデントの意識が天に帰り、俺は温泉を堪能する。今までスパルデント話してて気が付かなかったがこの温泉は凄い。
先程枯渇した魔力や限界を超え動けないはずの体だったのだが既に回復している。それどころか力も漲ってくる。
これほどまでに力が漲ってくると何でもできる気がしてくる。
温泉には何かと1時間近く浸かっていた。
「さて、服も着たし下山するか」
♢♢♢♢
王都に着くなり温泉施設を作ってくれと頼むべくミツゴシに行ったはいいのだが、なぜかいつもよりも慌ただしい。俺がいない1週間近くで何かあったというのか。ある程度ならアルファとガンマで対処できるはずなのにそれほどまでの異常事態というのか。
「アルファ、はいるぞ」
この事態の原因を聞くべく、アルファの執務室に入る。
「ん?何だこのお通夜みたいな雰囲気は」
入るなり、アルファ、ベータ、ガンマが葬式会場にいるみたいな顔をしている。
「クロ、ノス・・・・クロノスなの?」
「いや、それ以外に何に見えるんだよ」
「会いたかったクロノス!」
目に涙を浮かべたアルファが抱き着いてくる。流石にこれには困惑する。
「クロノス様ずっと信じておりました」
「ご無事で何よりです。クロノス様」
アルファの様子もおかしかったがベータとガンマの様子もおかしい、俺を見るなり涙を流しているのだから。
「いや、マジで何があったんだよ。俺が温泉堀に行ってる時に」
「温泉、ですか?」
「ああ、言ってなかったな。ここ一週間くらいずっと温泉堀に行ってたんだよ」
それを聞いたベータとガンマは力が抜けたみたいにその場に座り込んだ。
「だからいくら探しても見つからなかったのですね」
「それで何があったんだよ。アルファがずっと俺から離れないのに何か関係があるのか?」
「実はクロノス様、シャドウ様が裏切りを、いえ、我々を見捨てたといったべきでしょうか。クロノス様のお姿も見られずクロノス様も私たちを見限ったのだと」
「あーそのことか」
「知って、いらしたのですか?」
「大体な」
ここまでになるとは思ってなかったが。
「ベータ、ガンマ安心しろ俺はお前たちを見捨てたりはしない。アルファ、お前もだ。ごめん、心配かけたな」
「バカ、クロノスのバカ。なんでもっと早く来てくれなかったの。辛かった。シャドウだけじゃなくあなたにも見捨てられたら私は・・・・私は・・・・」
「ごめん」
アルファが泣き止むまで抱きしめ続けた。
そして落ち着いたのか俺の胸にうずめていた顔を上げた。
「クロノス、落ち着いて聞いて欲しいの」
「ああ」
「デルタが・・・・」
「デルタか?あいつならずっと俺の上にいるぞ」
『え?』
3人が一斉に俺の上に座り眠っているデルタを見上げる。
「クロノス様、デルタはいつからそこにいたんですか?」
ガンマが聞いてくる。
「え?廊下でデルタに会ってからずっとそのままだな。疲れてるのか俺の上に座るなり寝たんだけど。というか気づかなかったのか」
「はい、あまりにも違和感がなくて・・・・」
「起きなさい、デルタ」
それを聞いたデルタはビクッ!と震え起き上がった。
「はいなのです!」
「デルタ、あなた今までどこにいたの」
「デルタはボスの」
「まずは降りなさい」
デルタ、アルファの言うことは本当によく聞くものですぐさま俺の上から降りた。
「それで、何をしていたの?」
「デルタはボスの秘密のシークレット任務で・・・・」
「言葉は正しく使いなさい。でもデルタ、無事でよかったわ」
「さて、俺はやることがあるからいったんここで失礼する」
「わかった。でも、早く戻ってきてね」
「今日中には戻るさ。行ってくる」
やること、それはあの馬鹿を一発殴ること。今回の件ここまでにはならないだろうと思って放置した俺の責任でもあるが一番は引き起こしたやつが悪いということで殴りに行く。あとは、温泉に入って力がみなぎってるからどれほど力が出るか試したくもあるしな。
♢♢♢♢
シドの魔力をたどって来てみればなぜか獣人の男をタコ殴りにしていた。本当に今日は物事の一部始終しか見てないから何があったのかを理解できない。
「あーそこのお姉さん何があったのか教えてもらえますか?」
怪我をした人に聞くのは酷なのでもちろんしっかりと治療してからだ。
「この光・・・・もしかしてあんさんは、あの時の・・・・」
この程度の傷ならすぐに治せる。魔力を当てて数秒もしたら完治した。
「ずっとお探ししてたでありんす」
話半分で聞いていたが、あの時、探す、ということは昔どこかで会ったことがあるのか?さっきまで顔がよく見えなかったがこの人無法都市に居たユキメか。あの時もどこかで会ったことがある気がしてたんだが・・・・そういえば昔シドに連れられて獣人の集落まで行ったんだったな。まぁ別にそこが目的というわけではなくただただ盗賊退治という名の御金稼ぎだ。
その時に一人だけ生きていたから俺が治療したんだよな。そしてシドはお金を回収するなりすぐに帰っていったからしばらくの間その人のことをお世話するというか安全な場所まで連れて行ったな。まさかそれがユキメだったとは世間はなかなか狭いものだ。
「久しぶりだな。あの時もお前はこうして傷を負っていた」
「そしてあなたに助けてもらったでありんす」
「そういえばあの時の俺はまだ未熟だったから傷跡が残ってしまっていたな。それも今ここで治す」
ユキメにできた傷はかなり前のものだ。その時まで時間を戻せばユキメの体も大きく影響を受ける。だが、今の俺は傷跡のみを治療することができるはずだ。
傷跡に手を触れて時間を戻していく。意識を傷跡のみに向けて数年単位で時を巻き戻す。そしてある時を境にして手から傷跡の感触が消える。
「あの時の傷が消えている・・・・」
「これで本当に完治したな。女の子に傷は似合わないからな」
「あんさんには感謝してもしきりんせん。今も昔も」
「気にするな」
「今も昔も変わってないでありんすね。あなたにとっては全てたわいもないこと」 (昔、すべてを失ったわっちに救いの手を伸ばしてくれたことにわっちがどれほど感謝しているか。あの時のあんさんの手の暖かさは今でもわすれないでありんす)
「そう言えばまだ自己紹介をしてなかったな。トキだ。そしてシャドウガーデンのもう一人の主、クロノスだ」
「わっちの名前はユキメ」
「では、ユキメ聞くがこれはどういう状況だ。なぜあいつは獣人の男をタコ殴りにしている?」
「あの獣人はゲッタン。昔わっちの村の住人を皆殺しにした張本人でありんす。そしてジョンはんはわっちのことを助けてくださったでありんす」
「それでさっきから言え言え、言いながら殴っているがそれは?」
「おそらく、ゲッタンからわっちに対して何か言わせるため。本当に情が深いお方でありんす」
いや、それはない。と否定したいがそんなことを言えるわけはない。こいつがそんな情が深いわけがない。そんな情があるならユキメを助けて安全なとこに連れていく時にあいつも来るはずなのに。それどころか金貨奪ってそそくさと帰った奴に情なんてあるわけがない。
あいつが動くとすればすべて金のため。俺が予想するにあいつはゲッタンとかいうやつの所持金を奪うため金庫の場所とか開け方を言えと言ってるんだろうな。うん、間違いない。
しばらくして、満足できた答えを聞けたのか殴るのは終わった。それと同時にゲッタンの息の根も止まった。なんか哀れに思えるな。
「それで満足したのか?シド」
「シド?違うな、今の僕はスーパーエリートエージェント、ジョン・スミスだ」
「そうか。それでスミスさんは満足したのか」
「ああ、聞きたいことは聞けた。お前にも手伝ってもらうぞ。それはそうと例の件はどうなった?」
「ばっちりだ。あとで行くぞ」
「楽しみにしているさ」
今回あいつを殴ろうと思ったが辞めた。俺の掘り当てた温泉はセキュリティー付きの優れもの。もしも俺が許可する前にあいつが入ったらどうなるのだろうか。それを今回あいつへの罰とするか。
「何の話でありんすか?」
「温泉の話だ。ユキメも来るか?今まで疲れただろ?あいつに振り回されて。ここらで一回一息つこう」
「温泉、いいでありんすね。今ちょうど、ゆっくりしたい気分でありんしたの。でも、その前にやることを片付けてくるでありんす」
「わかった」
ユキメと別れ、今回の騒動について俺なりに調べたらそれなりに大きな事件だった。偽札をばらまき信用崩壊を起こす。これがジョン・スミスとユキメがやろうとしたことだ。だが、ジョン・スミスがやろうとしたのはおそらく偽札で一儲けするだけだったのだろう。
そして狙い通り金貨が大量に集まった。だが、その金貨は行方をくらませた。どこに行ったのかあの後ミツゴシを訪れて分かった。彼女たちが回収したのだと。だが、それについてシドは知らずゲッタンの仕業だと思ったのだろう。だからあれほどまでにタコ殴りにして聞き出した。といったところか。
俺の思った通り結局はシドのたくらみは失敗したが、もしも成功していたとしたら間違いなくミツゴシは潰れていた。次からあいつの悪だくみはしっかり観察しておかないとな。
七陰列伝や番外編みたいな話を入れるか?
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もちろん、入れる
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いらん