暴食の精霊 《グラトニー》   作:赫夜叉

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お久しぶりです。グダグダ先延ばしにしてたらこんなに経っちゃってました。


55話

「ギャアアアア!!」

 

「熱い!熱いぃぃぃ!!」

 

DEM本社内は地獄絵図となっていた。そこら中から炎が立ちのぼり、周辺には破壊された機器や真っ黒な炭となった人間らしきものが転がっている。

 

「ハハハ……!」

 

そんな状況の中、1人笑い声を上げている者がいた。この事態を作った張本人、二亜である。

 

「か、かかれぇ!なんとしてでも奴を止めろ!精霊とはいえもはや生かしておけぶばっ!?」

 

背後から二亜に向けて攻撃の指示を飛ばそうとしていた隊長格の魔術師は、二亜が後ろに向けた杖から放たれた火球に当たり一瞬で灰燼に帰した。

 

「……チッ、ほんっと忌々しいよ」

 

笑みの表情から一転、怒りに顔を歪めると、二亜は振り向きざまに杖を思い切り振るった。

 

『うわああああ!?』

 

すると残りの魔術師達も全員が炎に包まれ、断末魔を声を上げながら燃え尽きた。

 

「ああ……なんて快感っ……!一体この時をどれだけ待ち望んでたか……!」

 

歪みまくった笑みを浮かべ二亜はその場で歓喜する。ようやくだ、ようやく自分の悲願を果たすことができるのだ。そして今、自分から生きがいを奪ったクソ野郎共が自分の炎によって無様に焼け死んでいく。

 

復讐なんて何も生まないなんてことをあの少年は言っていたが、そんなものは所詮憎しみを知らない者や他に希望を持つ者が言っている世迷言に過ぎない。

 

自分は囁告篇帙で人の醜い部分を知り1人になった。そこからは漫画しか自分には無かったのだ。だがそれすらもDEMに囚われ彼等のくだらない欲のせいでそれを描くこともできなくなった。

 

描きたいのに頭にうまくアイデアが浮かばず手が全く動いてくれない。グラトニーに助け出されそれが判明した時、どれだけ絶望したか。いっそ死んでしまいたいとも一瞬思った。

 

元を正せば、それもこれもDEMが存在したからだ。そもそもDEMが、ウェストコット達がいなければ、自分にここまでの絶望は降りかかってこなかったのだ。

 

「まだこんなもんじゃ終わらないよ。こんな場所、ぜんっぶ跡形もなく焼き尽くしてやる……!」

 

焼けて炭と化した死体を平然と踏みつけ二亜は突き進む。青き憎悪の炎をその身に燃え上がらせながら。

 

 

 

 

 

 

 

「どうだ?これが今下で起きている惨状だ」

 

モニターの横に立つグラトニーがそう言う。部屋にいる役員達の反応は様々だった。

 

映っている光景が信じられないという者、会社が崩壊していくことに絶望する者、自身の終わりを悟り力なく椅子にもたれ掛かる者など、いずれも共通しているのは、もうどうすることもできないということだった。

 

「アイツは入り口から徐々に上を目指している。それまでオレと一緒に待とうじゃねぇか。ああでも、こんなにいるなら1人や2人つまんじまっても文句は言われねぇだろう」

 

そう言うながら役員達を見て舌なめずりするグラトニーに、彼等は皆震え上がった。

 

これまで前線に出ることもなく安全な場所から見ているだけだった彼等だったが、まさか本社まで乗り込んでくるのは完全に予想外で、初めて実際に対面する埒外の化け物、しかもどうあれ殺されるのが確定している。

 

大人がするにはみっともない表情を浮かべ、中には失禁している者までいる始末だ。

 

そんな中ただ1人、部屋の最奥に座る男、ウェストコットだけは違った。

 

他の者達が悲惨な表情をしている中、彼はそんな彼等を見て悦にひたっていた。

 

「(ははは……!この感覚、やはりたまらなく素晴らしい……!)」

 

そうこの男、誰も知り得ないことだが、他人の絶望する姿を見ると快感を感じるという異常性癖の持ち主であり、始原の精霊を生み出し、DEMを立ち上げたのも、全てはもっと人の絶望を見て快楽に浸りたいという自分の欲望を満たすためだったのだ。

 

その過程で1人の少年を殺したことで、始原の精霊の長い暗躍が始まり、幾多の精霊が誕生し、幾多の少女が犠牲になった。

 

さらに精霊が複数誕生し現れたことで、その力に惹かれた一部の人間達によって人造精霊計画が進行。その結果グラトニーが生まれ、何万もの人間が彼女に喰われた。

 

彼の身勝手極まりない行動が発端で、多くの命が犠牲となり、世界がめちゃくちゃになってしまったのである。

 

そんな彼であるが、こんな状況にも関わらず周りの者達の絶望で快感を得ているのだから頭のネジが外れている。

 

バンッ!ドガッ!

 

すると、突如大きな音を立てて部屋の扉が蹴破られた。

 

「おお、来たか。意外と早かったなぁ」

 

グラトニーは誰が来たのか分かりきっているといった反応を示し、他の者達も先程の映像を見て察しがついていた様子で、恐る恐る入り口へ目を向ける。

 

 

 

 

 

 

 

「いた……ようやく、見つけた……!!」

 

そこには先程モニターに映っていた二亜が立っており、ウェストコットの姿を捉えると、杖を強く握りしめた。

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