凪の気分を   作:冴木甲士

200 / 200
第200話 今日も

 今年の卒業式および修了式の日は、いつになく暖かった。

 

 さすがに桜が咲くにはまだ早かったが、道中にある桜に似た木には花が八分咲きか満開ぐらいに咲いており、道を白や紅に色づかせていた。

 通りすがりの人々のなかには早くも半袖にしている人がいて、本格的な春の到来を予兆しているように見受けられた。

 

 

 本来であれば今日は俺達在校生にとっては、卒業式よりも学年の節目を告げる修了式の方が大事な式典である。

 しかし、世話になった先輩がいる在校生にすればそれ以上に卒業式の方がよっぽど大事になるだろう。

 

 俺はそこまででもないが、一人の先輩と疎遠になる一つのきっかけにはなっていた。

 その当の本人である先輩について、式が終わった後で改めて挨拶のために探した。

 

 少しして、校庭の方で同じく卒業した友達と写真を撮っていると思しき御本人を見つけた。

 友人との時間を邪魔するのもな、とその場で待機していたら御本人と目が合った。

 そして、「ちょっと待ってて」という具合のことをクラスメイトにしゃべったかと思うと、俺の方へやって来た。

 

「奇遇ね、黒山君」

 御本人とは、奄美先輩のことであった。

「卒業おめでとうございます、奄美先輩」

 とりあえず定番の挨拶を奄美先輩に掛ける。

 

「ありがとう。でも、おめでとうと祝われるほど、嬉しい気分にはなれないものね」

 奄美先輩が、横の校庭を見る。

 

 今は校庭をはじめ、校内の至る所に色んな人がいた。

 先程の奄美先輩と同じく友達で写真を撮り合ってる卒業生もいれば、同じ部活か何かでお世話になったお礼を後輩達に言われている卒業生、家族に思い出の場所を案内していると見られる卒業生……主に卒業生中心だった。

 

 各々にここにいた記憶は確かにあり、その一つ一つが今になって懐かしく感じているのだろう。

 そしてその一人に、今日は奄美先輩も含まれていた。

 その姿が、儚げに綺麗なものだった。

 

「まあいいわ。それと葵のこと、頼んだわね」

 

 そう言った後、奄美先輩は自身の友達の元へ戻っていった。

 結局、奄美先輩が葵と俺のことをどこまで知っていたのかは、聞けずじまいだった。

 

 

「……や、黒山君!」

 朗らかに俺を呼ぶ春野。

「おう」

 

「いやー、奄美先輩のこと、寂しくなるね」

 と安達。

「また何かのイベントに呼べば問題ない」

 と加賀見。

「そうだねー、春休みは何やろっか?」

 と日高。

 

 それから、

「私達もぜひ」

「何も決まってないなら僕ら考えるッスよ」

 深央と、奈央。

 

「春休みも楽しそうですね、胡星先輩」

 最後に、葵。

「一人でいる方が、楽しいけどな」

 

 目の前にいる奴らとともに、俺は今日も忙しくなりそうだった。

 




拙作について、今話をもって一旦完結とさせて頂きます。

今後、つまり主人公が高校三年生になったときの物語について構想はあるのですが、別作品の執筆に加え諸事情で複数の作品を同時に執筆する時間を取るのが難しくなっているため、大変恐縮ながら投稿時期は未定となっております。
ここまでご愛読頂いている皆様には申し訳ございませんが、何卒よろしくお願い致します。

代わりと言っては何ですが、その別作品について下記よりアクセスできます。
拙作、特に主人公が面白いと思っている読者様であればきっと気に入って頂けるかと存じますので、よろしければこの作品についてもお読み頂き、⭐などでご応援頂けますと大変嬉しく思います。
https://kakuyomu.jp/works/2912051604515980993

最後に、ここまでお読み頂きまして誠にありがとうございました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

塔が空から落ちてくる世界で、機動兵器に乗る傭兵やって生きてる(作者:梅酒わいん)(オリジナル:SF/冒険・バトル)

惑星ノスには空から塔が資源と敵を載せて落ちてくる。▼機動兵器ギアに乗る傭兵達は荒野を駆けて、塔に群がり、戦い、略奪し、笑いながら散っていく。▼そんな日常の中で傭兵カラスは無茶振りされ、振り回され、愚痴を吐きながら戦い続け、日々を生きていく。▼ギアに乗り塔に登り、チェーンソーを振り回し、ショットガンをぶっぱなし、ドラゴンと戦う。友達の機体を借りてグレネードラン…


総合評価:1485/評価:8.31/連載:109話/更新日時:2026年11月02日(月) 02:22 小説情報

マジック・メイカー -異世界魔法の作り方-(作者:鏑木カヅキ)(オリジナル:ファンタジー/冒険・バトル)

三十歳にもなりながら魔法を使いたいと思っていた男は不意に死んでしまい、目覚めると異世界に転生していた。シオンと名付けられた彼は、異世界ならば魔法もあるだろうと期待に胸を膨らませていたが、その世界には魔法が存在しなかった。▼落ち込み、無気力になるシオンだったが、ある出来事をきっかけに魔力の存在を発見する。▼「そうだ。魔法がないのならば自力で作ればいい」▼そう考…


総合評価:262/評価:8.14/連載:135話/更新日時:2026年11月03日(火) 18:44 小説情報

転生した私がゾンビアポカリプスの世界でコロニーを作る(作者:ソロモンは燃えている)(原作:They Are Billions)

They Are Billionsというゲームを元にしたゾンビ戦記です。▼人間同士の対立がメインになってゾンビが添え物になりがちな作品が多い中、最後までゾンビが脅威であり続け、人間側に足の引っ張り合いをする余裕がない話を読みたいと思って書き始めました。▼舞台は日本です。


総合評価:1382/評価:8.65/完結:48話/更新日時:2026年09月16日(水) 03:16 小説情報

貞操逆転世界の中堅冒険者(作者:だいたいおおそよだいたい)(オリジナル:ファンタジー/冒険・バトル)

貞操逆転世界に転生した男、フィル(29)▼フィルは自分の事をおじさんになりつつあるただの冒険者だと思っているが。▼しかし!!この男女比1対5の貞操逆転世界で無防備かつムチムチなフィルに劣情を抱かない女はいるか!?!?▼いや!いない!!!▼それはそれとして貞操逆転世界かつ中世な世界観かつ魔法もある属性テンプレもりもり世界で生きていく。▼そんな物語。


総合評価:1000/評価:7.56/連載:26話/更新日時:2026年05月08日(金) 00:04 小説情報

白髪赤目巨乳に腰ヘコ夜這いされながらも閉鎖空間から脱出するために推理する話(作者:ぽぶきち)(オリジナル:ファンタジー/恋愛)

地下室っぽい閉鎖空間で目覚めた青年、ダイヤ。なぜか全裸の美少女が自分の上にのしかかって眠っていた。部屋を出ると、同じく記憶喪失になった男女がいる。自分たちが集めれらた目的は? 外はどうなっている? 毎晩求めてくるこの少女はなんだ? なんで幸せそうなんだ? 早くここから出してくれ。干からびて死んでしまう。▼謎の閉鎖空間で目覚めた記憶喪失の青年が同じく記憶喪失の…


総合評価:753/評価:8.47/完結:9話/更新日時:2026年10月01日(木) 19:12 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>