寄成ギョウに転生したから、キャラの良さガン無視して善人になるニョロ〜!   作:ライダー☆

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最近漫画のデュエル・マスターズを全部読んで、ある程度デュエルの描写をある程度簡潔的にした方がいいのかなと思い始めた今日この頃。


真・第三話 ガイアハザード「カブト鬼」ここにあり!

 シンラが自然文明、すなわちクリーチャーワールドに閉じ込められてから、気がつけば二ヶ月が経過していた。

 

 最初の頃は、生きるというだけで精一杯だった。水を探し、食料になりそうな草木を見極め、正体不明のクリーチャーに怯えながら夜を越える日々。眠る場所すら安定せず、邪魔な枝を払い、葉の上で丸まって空を見上げて夜をやり過ごしたことも一度や二度ではない。

 

「……服の替えがない……このまま着続けるのも、まずいわよね……」

 

 肩の縫い目がほつれ、袖口はすでに限界だった。自然文明の湿気と土、汗が染み込んだ布は、洗ってもすぐに乾かず、嫌な臭いが残るようになっていた。

 ということで、巨大な葉、ツル、獣の皮、繊維状の植物などを使い、シンラは即席の服を自作することにした。最初は形もいびつで、着心地も最悪だったが、試行錯誤を重ねるうちに、防寒性と動きやすさだけはそこそこ整ったものが出来上がった。

 

 環境への順応は、思ったよりも早かった。

 

 何が食べられて何が毒か。

 どこに行くと危険なクリーチャーが出やすいのか。

 夜になると、どのあたりが異様に騒がしくなるのか。

 

 そういった“この世界の常識”も、今では身体が覚えてしまっている。

 

 妖精たちは、食料の探索、周辺の見張り、住居の補修などを分担してこなしていた。誰が指示するでもなく、それぞれが自然に役割を決めて動いている。

 

 ここまでの話で、察する人は察するだろう。シンラは「屋根のある場所」で生活している。

 数日間、自然文明を彷徨っていたある日、人里からかなり離れた場所に、ぽつんと一軒、妙に大きな家を見つけたのだ。明らかに長い間使われていなかったらしく、扉は軋み、床は埃で白くなり、風が吹くたびにどこかが軋んだ。

 

「……ここ……住めなくは、ないわね。」

 

 妖精たちを総動員し、掃除と整理を開始。

 床を拭き、埃を払い、崩れかけた柱を支え、どうにか“拠点”として機能する家へ仕立て直した。

 外見は、あえて何も手を加えていない。

 

「……下手に塗装したりしたら……また変なのに見つかる気がするのよね。このままにしておいた方が、注目の的になりにくいだろうし。」

 

 と、いう理由であった。

 

 

*****

 

 

「……ここに来て、もうかなり経つなぁ……」

 

 シンラは机に肘を付いて、天井を見上げた。

 

「……でも……シンラバンショーの在処が、全然わからない」

「自然文明は、ほぼ回ったはずなんですけどね……」

 

 隣でサラダを食べながら、トレジャーが言う。

 二ヶ月もの間、考えうる限りの場所を探し回った。大樹の根元、洞窟、廃墟、クリーチャーの集落らしき場所――どこにも、彼の痕跡らしいものはなかった。

 

 まるで、この世界に最初から存在していなかったかのように。

 そしてもう一つ、シンラの頭から離れないことがある。

 

「……シンラバンショーって……大悪党なのかしら……」

 

 自然文明で最初に会った存在――トンボ。

 初めてのデュエマの相手。

 

 彼に、「シンラバンショーを探している」と言った瞬間の、あの剣幕。

 

 ―そいつは自然文明を裏切った薄情者………そして…自然文明を半壊させた大悪党!―

 

 と、そう叫んだのである。

 

「……わかりません」

 

 トレジャーは、しばらく黙ってから、静かに言った。

 

「私たちは、確かに……あの人から命を授けられ、生まれ、生きてきました。とても“大悪党”と呼べるような方には思えませんでした」

 

 彼女は、サラダから視線を外し、記憶をなぞるように続ける。

 

「……あなたが、父親に敗れたあとも……必死になって、『あなた』を取り戻そうと……」

「……そうよね」

 

 シンラは、小さく頷く。

 

「シンラバンショーは……私を護る存在だって……そう、話していたもの」

 

 彼の言葉は、はっきり覚えている。

 

『――シンラの実の母が、地球に行く際に、お前を護るための存在として、俺を選んだんだ。』

「……私は、それが嘘だとは思えない……」

 

 だが――

 

「……でも、トンボの子の言葉も……嘘とは思えないのよね……」

「……必死だった、から……ですか?」

 

 トレジャーの問いに、静かに頷く。

 

「えぇ。……嘘なら……あんな切羽詰まった表情には、ならない……それに……」

 

 シンラは、唇を噛みしめる。

 

「“シンラセンショー”……元の名前も、言い当ててた」

 

 その事実は、重かった。

 

「……そこまで知ってるとなると……ただのデマとも、思えない……」

 

 テーブルに沈黙が落ちる。

 重たい空気が、食卓を覆った、そのとき――

 

「シンラ様~!」

 

 階段を駆け降りてきたのは、スリムだった。

 

「スリム、どうしたの?」

「大変です!!こっちに黒豆と白米が来ます!!」

「何を言っているの?」

「いや、それはそうなんですけど……本当なんです!二回の見張り台から見えました!」

 

 言い終わる前に、玄関の扉が――バァン!と勢いよく開いた。

 

 そこには、確かに――黒い豆と、白い米粒……いや、正確には、シルクハットに杖を装備した黒豆と白米が立っていた。

 

「あなた様が、シンラという名前のお嬢様でしょうか!!」

 

 黒豆が、やけに丁寧な声で言う。

 

「私たちは、ガイアハザード四天王の命を受け、あなたを生け捕りしに来ました!」

 

 白米が続けて言う。

 

「…本当に来た。……生け捕りって。なんかアンタらが言うとシュールね……ていうか、なんで私たちの居場所が分かったの!?ずーっとこっそり暮らしてきたはずなのに、外見もばれないように塗装してないのに!」

「あぁそれなら……」

 

 黒豆が、軽く杖で床を打った。

 

「白米が先日、そこらをふわふわ浮いていた妖精に聞いたらしいですよ?」

「名前は……リリーという子でした」

「リリー?――あの子かぁぁぁ!!!」

 

 頭を抱えるシンラ。

 

「一番子供っぽいと思ってたけど……ここまで!!」

『というわけで!さぁお嬢さん!おとなしく生け捕りになりなさい!断るというのなら……デュエマで勝負です!!』

「……じゃあ、デュエマで。」

 

 そうして数分後、

 黒豆と白米はぼろくそに負けた。シールド1枚も割れずに負けてしまった。

 

「つ、強い……ガク。」

「あぁ、白米!!」

 

 黒豆が駆け寄る。

 

「お前のりりしい顔が、まるで洗米する前の古米のようにザラザラではないか!なんと痛ましい姿……」

「痛ましいの?それ……」

「こっちからだとあんまりわかりませんね………。顔がどこかも。」

 

 トレジャーが言う。それと同時に、彼女は白米を見て思い出した。

 

「そういえばシンラ様、お米ありましたっけ?」

「あ!そういえば在庫キらしててわねー。」

 

 ただの何気ない会話なのだが、その会話を――黒豆と白米が、どう受け取ったかは、想像に難くない。

 

 ―こいつら飯にして食べようぜ。―

 

 と、捉えることができてしまう。というよりかは彼らはこの前に一回、一人の少年によって同じような目にあっているのである。

 とんでもない悪寒を感じた黒豆と白米。

 黒豆が白米を担ぎ、全力で逃走した。

 

「おのれぇぇ……次はこうはいきませんぞぉぉ!!」

 

 遠吠えだけを残して。

 彼らはいったい何だったのか、よくわからないまま、シンラは扉を閉め、再びサラダを食べ始めた。

 

「……何だったの、あれ」

 

 扉を閉め、サラダに戻りながら、シンラは呟いた。

 

「……なんか……ガイアハザード四天王、とか……言ってたわね」

「トンボの子も、言ってましたね、シンラ様。」

「ね。なんなのかしら。……まぁ、いいや」

 

 シンラは、再びサラダを一口。

 

「あ……これ美味しい。マヨネーズ……変えた?」

「はい、自然文明探検中に……巨大なマヨネーズタンクを……」

「………うん。」

「……持ち主が遠くにいたので……7割ほど……」

「それ、窃盗!!!」

「バレなきゃ犯罪じゃありません」

「今ばらしたわよねっ!!?この私にばらしたわよねっ!?まぁ利益がこっちにあるから何も言わないけどね私も!……なんか罪悪感!!けどおいしい!」

 

 

 

 

 

――――

 

 

 

―――

 

 

 

――

 

 

 

 

 

 

 

 

「申し訳ありません……負けてしまいました…!!」

「シンラというデュエリスト、想像以上でした!まさか私を洗米する前の状態にまで戻すほどの力とは……恐ろしい!!」

 

 黒豆と白米は、敗北の報告を終えようとしていた。

 

 場所は、ガイアハザードの本拠地。

 巨大な聖木の幹の内側をくり抜いたような、自然そのものの会議室である。壁も床も天井もすべて蔓で覆われ、机や椅子ですら例外ではない。無数の蔓が絡み合い、浮き出るように形づくられた調度品は、有機的でありながら威圧感すら伴っていた。

 

 その中心に――

 ガイアハザード四天王、全員が揃っていた。

 

 ミノムシのような姿をした、最年少の幹部・ミノマル。

 カタツムリのような姿をした知識人・でんでん。

 蜂を思わせる敏捷な戦士・ハニーQ。

 そして、カブト虫を模した巨躯を誇る豪傑――カブト鬼。

 

 自然文明を護る、最強の四柱である。

 重苦しい沈黙のなか、最初に口を開いたのは、カブト鬼だった。

 

「……トンボからも聞いていたが……シンラセンショー、あの裏切り者に加担していた者が、まさか元女王様の娘だったとはな……!」

 

 その声には、怒りよりも――困惑と、受け入れがたい現実への拒絶が混ざっていた。

 

「DNA鑑定も、すべて一致しているでんでん……」

 

 でんでんはタブレットを操作しながら言う。

 

「……しかし、正面衝突をするのは考え直した方がいいかもしれないでんでん。トンボも、黒豆だんしゃくも、白米だんしゃくも……こうして敗れたでんでん。」

 

 タブレットの画面に、カード画像が映し出される。

 

 ――《革命の巨石》。

 

 自然文明には、本来存在しないはずのカード。

 

「……ありえないでんでん……この世界に、あのカードがあること自体……厄介極まりないでんでん……」

 

 でんでんは語気を強める。

 

「……それだけじゃないでんでん。黒豆だんしゃくたちからは、以前……ドラゴンの目撃情報も来ていたでんでん」

「ドラゴンだと!?」

「本来絶滅したはずの種族がいるでんでん。……複数の“異物”が同時に流れ込んでいる……」

 

 でんでんは画面を閉じ、結論づけるように言った。

 

「……かなり、深刻な異常事態でんでん……!!」

 

 その時だった。

 天井からぶら下がるようにして、ぷらーん、ぷらーんと揺れていたミノマルが、ぽつりと口を開いた。

 

「……シンラちゃん…。マル……その子と……友達に、なりたいマル~~!」

 

 一瞬、空気が止まったように静まり返る。

 

 ミノマルは、この四天王の中で最年少で、最も純粋で、最も甘い。

 彼にとって敵とは、「倒すもの」ではなく、「分かり合えていない存在」でしかなかった。

 

 しかし……

 

「ミノマル、甘すぎるぞ」

 

 冷ややかに言い放ったのは、ハニーQだった。

 

「……この世界を崩壊させかけた王の、娘だぞ……!?その血に、悪意が流れていないと、なぜ言える?」

「……うぅ~……でも……」

「……理想は理解する。だが……」

 

 ハニーQはわずかに目を細めた。

 

「……覚悟のない優しさは、裏切りと同義だぞ、ミノマル」

「………」

 

 ミノマルは一瞬だけ黙り込み、そして――

 

「……ありがとうマル……!」

 

 にこっと笑った。

 

「じゃあ、シンラちゃんを探して……お友達になってくるマルー!」

「…ど、どこを聞いたら、そうなるのだ……。」

 

 ハニーQのツッコミも虚しく――

 

 その時、白米が割って入った。

 

「いいえ!!あの娘は、とんでもない悪党です!!」

 

 全員の視線が、白米に集中する。

 

「私たち、デュエマに負けたあと……お米の在庫がなくなったという理由で……!」

「……食べようと、したのです!!!」

 

 場が凍る。

 本当のところは、単なる偶然と誤解である。

 だが、黒豆と白米の中では、あの瞬間は完全に“命の危機”だった。

 

「黒豆が、私を担いで逃げてくれました…………あいつらは、最悪です……!!」

 

 白米の声は、次第に震え始める。

 

「一刻も早く……あの娘を始末しなければ……!自然文明が、荒らされてしまいます……!!」

 

 ――それは、完全なる誤認。

 

 だが。

 

 その言葉により、ミノマル以外の全員が、明確な殺気を帯びた。

 立ち上がったのは、カブト鬼だった。

 懐からキセルを取り出し、火をつけながら問う。

 

「……黒豆だんしゃく。そのシンラという娘……どこにいる?」

「北東に……三キロほど進んだところに、森の離れに……大きな家があります……」

「……そこに、いるんだな。」

「……はい……」

 

 カブト鬼は、即座に天井の蔓を蹴り――外へと飛び降りる。

 そして、巨大な甲虫――シェル・フェイトへと跨った。

 

「……火の粉が燃え広がる前に……潰さねば!……たとえ女子だろうと、容赦はせん」

 

 羽音が、森を切り裂く。

 その時だった、遠くの山の一部分が橙色になっている。そうしてその橙は先端になるにつれて紅い。

 山火事だった。カブト鬼は進路を変え、急降下する。そして自慢の角で突風を起こし、火をかき消した。

 

「……山火事だと……!?……なぜだ……ここは、人の住まぬ山のはず……自然発火など起きるはずもないが……ん?」

 

 その時、カブト鬼の目に、異様なものが映った。

 地面――焦げた土の上に、はっきりと残る“跡”。

 

 細い。

 一直線ではない。

 左右に揺れながら、一定の間隔で続いている。

 

 それは――

 人ひとりが乗れるほどの幅を持つ、車輪の跡だった。

 

「……これは……」

 

 カブト鬼は、それを“知っていた”。

 だからこそ、背筋がひやりと冷えた。

 脳裏に、数か月前に聞いた報告がよみがえる。

 

 ――火文明のマスター、決定。

 ――候補は、スケボーに乗る、十歳前後の少年。

 

「……火文明の、マスター候補が……なぜ、ここにいる……!」

 

 歯を食いしばる。

 

「……脅威度で言えば…確かに、シエルという娘が、最優先だ……」

 

 だが。

 

 拳を、ぎり、と強く握る。

 

「……だが……今、この瞬間においては……」

 

 視線は、燃える森から、地面の車輪跡へと移る。

 

「……この……火文明の“芽”だッ!!潰さなくちゃあいけねぇのは!!」

 

 誰かが“火”を運び込んだ。

 そして、それが“偶然”でないことだけは、はっきりしている。

 標的は変わった。

 もはや、迷いはなかった。

 

 カブト鬼は地を蹴り、再びシェル・フェイトへと跨る。

 

 炎の匂い――

 新しい焦げ痕の方向――

 

 犯人が通った道を、直感で辿る。

 標的変更。カブト鬼は、火の匂いを追って飛び去った。

 

 それを、クリーチャーワールドから「まる二週間」帰ってこないシンラの身を案じ、自然文明へと足を踏み入れていた少年――ボルツは、知る由もなかった。

 いや、正しく言えば。

 

 彼は、そもそも火など、放っていなかった。

 山にも、入っていない。

 火を使った覚えも、ない。

 

 なのに。

 火の痕跡だけが、彼の存在を「犯人」に仕立て上げていく。。

 

 二人は、やがて出会った、

 森を裂くように降り立ったカブト鬼と、

 シンラの名を必死に呼びながら進んでいたボルツ。

 

 空気は、最初から張り詰めていた。

 

 そして、試すように――

 カブト鬼は、その槍のような視線を、少年へと突き刺す。

 

「……遠くの山で山火事が起きていた。そこには、スケボーの跡があった……」

 

 一拍、沈黙。

 

「一つ訊きてぇ……お前が、山を燃やしたのか?」

「……は?」

 

 あまりに唐突な言葉に、ボルツは、間の抜けた声を漏らす。

 

「何言ってやがる。冗談じゃねぇ……」

 

 彼は、はっきりと首を振った。

 

「俺ちゃんは山なんか入ってねぇよ。俺ちゃんは、友達を、探しに来ただけだ!もう、まる二週間帰ってこねぇ……」

 

 声に、焦りが滲む。

 

「嫌な予感が、してるんだよ。マジで嫌な、予感だ…」

 

 そして。

 ぽつり、と――

 

「……シンラの身に……何か、起きてねぇかって」

「なにぃ、シンラだと!!!?」

 

 ――その名を聞いた瞬間。

 カブト鬼の目が、変わった。

 殺意が、疑念から、確信へと切り替わる。

 

「貴様……」

 

 低く、唸るような声。

 

「あの大罪人の仲間か!!」

「大罪人……何言ってやがるお前?」

 

 言葉の意味が、理解できない。

 しかし、カブト鬼はすでに行動を起こしていた。

 

「おい、マジに待てって!!おま……」

「……問答無用!!」

 

 次の瞬間。

 大地が歪み、世界が裏返る。

 ボルツは、否応なしに――真のデュエルフィールドへと引きずり込まれていた。

 

*****

 

 それを、山火事の起きていた山の中腹から、愉快そうに眺めている者が一人いた。

 燃え盛る木々の間に立ち、黒煙の向こうで、炎を背負うかのように佇むその影は、まるでこの惨状そのものを作品として鑑賞しているかのようであった。

 慈極魔虞麻。

 “十の暴悪”の一人。

 

「ヒヒヒ……バカ共め。」

 

 彼は、歪んだ笑みを浮かべながら、両足に備え付けられた「車輪」をギャルギャルとわざとらしく鳴らす。

 ゴムが土を削り、焦げた葉と砂利を巻き込みながら、不規則な軌跡を地面に刻んでいく。

 全身は、もはや生物というよりも機械であった。生物らしき箇所は、背中にある巨大な龍の頭蓋骨だけ。

 皮膚の下に覗く金属骨格。

 脈打つ血管の代わりに走る油圧管。

 関節部には無機質な光を放つ部品が露出し、胸部にはエンジンのような機関部が低く唸りを上げている。

 

 彼は、車のように改造された怪物だった。

 

「馬鹿な奴らだぜ。まんまと俺の作戦に引っ掛かりやがった……。」

 

 笑いながら、火の海に視線をやる。

 そして、その中を駆け抜けていったであろう「あの存在」を思い浮かべる。

 

 カブト鬼――ガイアハザードの先兵。

 そして――火文明のマスター、ボルツ。

 

 二人がぶつかる未来は、偶然などではない。すべて――この男が、ある程度仕組んだものだったのだ。

 

 

 一週間前。

 薄暗い施設の一室で、慈極魔虞麻は蹴鳴から話を聞いていた。

 

「ドラゴンがいる? 拿碌や“陸霧”みたいにか?」

「あぁ。」

 

 蹴鳴の声に、いつもの軽さはなかった。

 

「そいつは……今まで見たこともねぇような格好をしてやがる。銃だらけの服を着たドラゴンだ。そして、そいつを従えているのは……ジョーって名乗るガキでな。雰囲気からして間違いねぇ、“マスター”だ」

 

 その言葉に、魔虞麻は眼を歪める。

 

「マスターの……ガキ、か」

 

 思わず、唇の端が吊り上がる。

 

「……そういやぁ、拿碌が言ってたな。シンラっていうガキを、このクリーチャーワールドに封じ込める時……周囲に、友人らしきガキどもが三人ほどいたって。……そいつらか?」

 

 蹴鳴は、短く息を吐く。

 

「……おそらくな。警戒はしておくべきだ。と言いたいところだが――」

「あ?」

「これは、好機だ。マスターとはいえ……子供は子供。敵を“見つけさせれば”、そっちに意識を持っていかれる」

 

 蹴鳴の声は、低く、冷えていた。

 

「……ガイアハザードとマスターをぶつける。なに、簡単なことさ。子供の方に出会って、適当に“聞かせてやれば”いい」

 

 その一言で、魔虞麻はすべてを悟った。

 

「なるほどなぁ……それに、シンラっつうガキの友人なら、なおさらじゃねぇか?」

 

 口の端がつり上がる。

 

「純粋なガキだ。どうせ、“友人を助けるため”に、ここまで来るだろ。この世界の事情も知らねぇままによ。」

「……そうだろうな。実際、ジョーっていう奴も“探す”だのなんだの言ってたからな。」

 

 そして、蹴鳴は付け足すように言う。

 

「あと……ガイアハザードも、そろそろ動くだろうぜ。実は、ドラゴンを見つける前にな……黒豆と白米が、叫び声上げながら吹き飛んでいくのを見た」

 

 魔虞麻は、別の意味で眼を歪めた。

 

「……何言ってんだお前。」

「俺だってそう思ってる。意味が分からないと思うが、本当だ。それでな……水文明の連中に、そいつらの情報を洗わせた。」

 

 数秒の沈黙。

 

「……どうやら、ガイアハザードの部下らしい。」

 

 その瞬間、魔虞麻の目が光った。

 

「つまり……」

「黒豆と白米がドラゴンのことを報告しているはずだ!それで絶対に、マスターへの警戒が、高まってる。それ以外に目を向ける余裕は、ねぇってことだ。………いまだに存在を知られちゃいない、俺ら、「十の暴悪」には…」

「ははっ……!最高じゃねぇか……!!」

 

 魔虞麻は、狂気染みた笑みを浮かべた。

 

「チャンスだぞ、これは……!ありがとな蹴鳴。いい情報を教えてくれてよぉ。こっちも、そろそろビデオゲームに飽きてきてたんだ」

「……そのうち、マスターの顔写真を送る……じゃあな。あ、そうだ。あと一つ……」

 

 蹴鳴は、振り返る。

 

「“陸霧”から“完成が近い”って、連絡が来てた…。」

「マジか……!!」

 

 魔虞麻の顔が、歓喜に歪む。

 

「あれが完成すりゃあ、俺たちは無敵だ。誰にも負けやしないぜ。…どんどん、俺らに都合よく回ってきやがる……!!」

 

 光の中へと、蹴鳴は消えた。

 

*****

 

 数日後――

 送られてきた写真の束を、魔虞麻は無造作に床へ広げる。

 

「……へぇ……」

 

 そこには、奇抜な格好をした子供たちの顔が並んでいた。

 

「全員、派手だな……。いろいろと」

「拿碌に特徴を聞いて、そこから摘出した。水文明の技術力だ。」

「便利な時代だねぇ……」

「ていうか、水文明の奴ら、休み取れてんのか?」

「……“女帝”が部下に、全部やらせてるらしい……捨て駒だから、問題ないそうだ。」

「へー……ていうか、写真以外にも情報もあるんだな。」

「そうだ。」

 

 その中の一枚――魔虞麻の視線が、ある少年で止まった。

 

「……こいつか。」

 

 ボルツ。

 その顔を、記憶に深く、刻み込む。

 

*****

 

 そして――計画は、実行された。

 ボルツを見つけた瞬間、魔虞麻は訊く。

 

「なぁ、そこのお前。」

「あ?」

「……そんなに急いでどこ行くんだ。危ねぇぞ?」

 

 怪しまれぬように。

 敵意は、匂わせない。

 

「シンラっていう友達を、探してんだ。もう、二週間も帰ってきてねぇ……」

 

 魔虞麻の内心で、舌打ちではなく、喝采が鳴った。

 

「(――ビンゴだ)……そりゃ大変だなぁ」

 

 優しげに――。

 

「お前、このまま真っすぐ行くのか?だったら、俺は逆を探してやるよ。」

「マジか!?」

「あぁ。人数は一人でも多い方がいいだろ?」

「助かるぜ!!」

 

 ボルツは、無防備にも写真を差し出す。

 

「――これがシンラだ。見つけたら、すぐ言ってくれ!!」

 

 別れ際の背中を、笑顔で見送る。

 

***

 

 そして――

 

 魔虞麻は写真を、ビリビリに引き裂いた。

 

「……チョロすぎだろ。」

 

 紙屑を風に散らし、魔虞麻は山へ向かう。

 火を放ち、炎を育て、煙を上げさせる。

 そして、待つ。

 

 ――必ず、来るから。

 

 案の定、ガイアハザードの一体が現れ、憤怒と殺気を撒き散らしながら、ボルツのいる方向へ飛び去っていった。

 

「……っしゃあ!!」

 

 快哉を叫ぶ。

 

「計画通りだ!!ガイアハザードがそろそろ動くころだとは、昨日あいつらの話を盗み聞きしてて知ってるんだよなぁ~~!!」

 

 車輪の跡という、あまりにも曖昧な証拠。

 それだけで――すべてが、決めつけられた。

 

「さーって……」

 

 腕を頭の後ろで組み、くるりと背を向ける。

 

「俺は帰るとするか。もう、いいモンはたっぷり見させてもらったしなァ。しっかし楽しみだ…もうすぐで、俺の手にも「過去の英雄」が渡されるなんてよぉ!!」

 

 帰路につきながら――

 また、火を放つ。

 山は、なおも、燃え続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カブト鬼 キーカード:キングダム・オウ禍武斗/轟破天九十九語

 

ボルツ キーカード:勝利龍装クラッシュ“覇道”

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ったく、ちょっとは俺ちゃんの話も聞けよなぁ!!なんだ、テメェ!?」

「…カブト鬼!冥途の土産に覚えておきな、火文明のマスター!!!」

 

 ――マスター?その言葉が、俺ちゃんの耳に引っかかる。

 

(……俺ちゃんを、知ってやがるのか……?)

 

 だが、次の瞬間には、そんな疑問は吹き飛んだ。あの化け物の気迫が、肌を刺すほどに高まっていたからだ。

 

(……って、そんな場合じゃねぇ!!)

 

 こいつ――本気だ。冗談抜きで、俺ちゃんを“潰す”気で来てやがる。

 

(……なら、こっちもだ!)

 

 半端は通じねぇ。全力でぶつからねぇと――命が持ってかれる!!!

 

【かくして、勘違いから始まってしまった、カブト鬼とボルツのデュエマ!互いに全力をぶつけ合う戦い、クリーチャーを出しまくり、果敢に攻めまくる両者!そうしてデュエマは終盤、ボルツは新たなる切り札を出す!!】

 

 

ボルツ バトルゾーン:なし シールド:5 マナゾーン:5 手札:4

 

カブト鬼 バトルゾーン:ワ・タンポーポ・タンク シールド:4 マナゾーン:9 手札:1

 

 

 

ボルツ ターン6

 

「これ以上はテメェの意味わかんねぇ茶番に付き合ってる暇はねぇ!!一気に攻め込むぜェ!!」

 

 

 ミュージック………マジに、クゥライマァックスだぜェ!!!

 ドッド!ドドド!ドドド……ドロー!!!!

 

「来たぜ、俺ちゃんの、新たなる切り札!!」

「ほう……」

 

 余裕の顔見せてくれるじゃねぇか。そういやこれまでもずっと、表情を出してこなかったな。どうせ瘦せ我慢だろう、その顔ぶっ壊してやる!!

 

「もうマナチャージの必要もねぇ!!!呪文、“必駆”蛮触礼亞!その効果で手札から、ビートジョッキーを一体出せる!こぉい!クラッシュ“覇道”」ォ!!」

 

 次の瞬間――地面が、震えた。

 轟音とともに現れたのは、巨大なローラー戦車。

 前方に備え付けられた極太の鉄製ローラーが、大地を押し潰し、砕きながら前進する。

 その上に立つのは――

 赤を基調とした、超軽装な服を身にまとったビートジョッキー。

 しかしその服は、炎を思わせる曲線を描き、肩部には、ビートジョッキーらしい過剰な意匠が施されている。

 そして、右手には――武器とは思えぬほど派手な、燃えるような色合いのギター。

 弦を掻き鳴らした瞬間、爆音とともに、空気そのものが震えた。

 

 クラッシュ“覇道”。

 

 戦場を轢き潰し、音と衝撃で、すべてをねじ伏せる――

 まさに、ボルツの“攻めの象徴”。

 

「行くぜ――“必駆”蛮触礼亞の能力で、ワ・タンポーポ・タンクと強制バトル!!

 そして……クラッシュ“覇道”で、ダブルブレイクだ!!」

 

 ギターの音ととともに、巨大なローラー戦車が前進する。

 金属が軋み、大地がえぐれ、自然文明の重装甲――ワ・タンポーポ・タンクは、正面から叩き潰された。

 その衝撃の余波で、カブト鬼のシールドが二枚、無惨に砕け散る。

 

 だが――割れたシールドの向こう側で、カブト鬼の表情は一切変わらなかった。

 眉一つ動かさず、ただ静かに立っている。

 

「……表情を崩さねぇか。」

 

 ボルツは鼻で笑う。強がりだ、と判断するには十分だった。

 

「大した痩せ我慢だぜ。……なら、こいつはどうだ?」

 

 “必駆”蛮触礼亞。

 無尽蔵に巨大なクリーチャーを呼び出せる代わりに、いずれすべてを炎で焼き尽くす――あまりに極端な力。

 制御を誤れば、自滅に直結する危険な呪文だ。

 

 だが、ボルツは理解している。それを“弱点”ではなく、“起点”に変える存在がいることを。

 

「クラッシュ“覇道”は、破壊されたとき――タップされてれば、追加ターンを獲得できる!!」

 

 一瞬の沈黙。

 

「……この意味、分かるか?」

 

 その瞬間だった。

 カブト鬼の目が、わずかに見開かれる。

 表情は崩れない。だが、確実に――動揺があった。

 

 ボルツは、そこで初めて笑った。

 ようやく、相手の内側に届いたと。

 

「ボッさん、このまま行くっス!」

「おうよ、ダチッコォ!」

 

 戦場の空気が、はっきりと切り替わる。

 デュエルの主導権は、完全にボルツの手中にあった。

 

ボルツ ターン7

 

「ダチッコ・チュリスを召喚!そして……もう一度だ。“必駆”蛮触礼亞!!」

 

 迷いはない。

 炎の奔流が再び渦を巻き、戦場に新たな影が落ちる。

 

「出てこい――クラッシュ“覇道”!!」

 

 二体目の覇道が姿を現す。

 赤を基調とした西洋騎士の鎧、巨大なローラー戦車、そして派手なギター。

 戦争と音楽を同時に体現するような異形が、大地を踏み鳴らした。

 

「行け!残り二枚、全部割りやがれぇ!!」

 

 ローラーが回転し、轟音とともに突進する。

 最後のシールドが、無抵抗に砕け散った。

 

「どうだ……俺ちゃんのコンボは。」

 

 勝利を確信した声。次の展開は、すでに頭の中に描けている。

 

「このままクラッシュ“覇道”を破壊して――」

「俺っちが、止めを刺すっスよぉ~!!」

 

 だが、カブト鬼は、慌てなかった。

 崩れ落ちたシールドを一枚ずつ確認し、ゆっくりと顔を上げる。

 

「追加ターンを取り、一気に攻める……そのデュエ魂は認めよう、さすがはマスターとして認められるだけのこたぁあるな。」

 

 低く、重い声。

 

「だがな……この程度で天狗になっているようじゃあ――」

 

 次の瞬間。

 

 大地が蠢き、無数の蔓が噴き上がる。

 絡みつき、締め上げ、クラッシュ“覇道”を逃がさない。

 

「――俺には、到底敵わねぇぜ!!!」

 

 蔓はそのまま覇道を引きずり落とし、破壊ではなく、マナゾーンへと叩き込んだ。

 

「シールド・トリガー、ナチュラル・トラップだ。」

 

 煙管をくゆらせながら、カブト鬼は淡々と言う。

 

「“破壊されたとき”に効果を発動する?悪いが――自然文明は、マナ送りが専売特許だ。」

 

 視線が、冷たく突き刺さる。

 

「野蛮な火文明とは、土台が違う。」

「……チッ」

 

 ボルツは歯噛みし、短く言った。

 

「……ターンエンドだ」

 

 バトルゾーンは、空。

 だが、カブト鬼のマナは潤沢で、盤面は静かに整っている。

 

(……有利だ)

 

 自然文明単色。

 即座にシールドを割り切る手段はない。

 ボルツの口元に、余裕の笑みが浮かぶ。

 それを見て、カブト鬼は静かに言った。

 

「余裕そうだな。火文明のマスター」

「あぁ。ここから負けることはねぇ」

 

 自信に満ちた声。

 

「お前のデッキじゃあ、次のターンで――俺ちゃんのシールドを全部割ることは、できねぇはずだ!」

 

 その言葉を聞き、

 カブト鬼は呆れたように煙を吐いた。

 

「……くだらねぇ自信だ。」

 

 低く、しかし断定的に。

 

「さっき言ったはずだ。この程度で天狗になってるようじゃあ――」

 

 目が細まる。

 

「俺には、到底敵わねぇってな!」

 

 

カブト鬼 ターン7

 

 ドロー、マナチャージ。そして、カブト鬼のマナゾーンが10枚となる。

 それは、この男が待ち続けてきた数字。

 ガイアハザード四天王の一角、「轟破」のマスターカードを握る者――カブト鬼。

 煙管を下ろし、低く言い放つ。

 

「てめぇに……本当の“攻め”ってもんが、何なのか――」

 

 一歩、踏み出す。

 

「教えてやるぜ!!」

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